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=BlanK † AWard=  作者: 久遠蒼季、すたりあ、緑茶、リブ本
《ChapterⅡ》
36/99

ⅩⅩⅩⅥ:晴not耕雨読

リレー小説『=BlanK † AWard=』

執筆者:緑茶



   ○



 雨の音が、くぐもって聞こえる。

 《ワイヤードジェム》の障壁の力によって、ありさと次郎の居る森の奥深くはちょっとした閉鎖空間となった。

 ありさと次郎は空間の中心にある大きな木を挟んで、背中合わせで立っている。

 こうしているのは次郎曰く『平等性を確保するため』で、戦いが始まった瞬間、どちらかにハンデがつかないようにするため、らしい。

「あぁ、雨って感じだなぁ。蛙もかたつむりも、よく溺死しないな」

 息をするようにロジックを組み立てる次郎だが、時折さらりとこういう素朴なことを言うのである。

「くすっ」

 それが、ありさにはちょっとおかしい。

「なんで笑うんだい」

「なんでもないわよ」

 だから、次郎は面白いのだが。

 雨の音は遠い場所で降っているように聞こえる。それでいて雨の日に特有のじめじめした感じはちっとも遮断できていない。なんという器用貧乏だろうか。


 戦いが始まれば、それに必死になるだろうから。

 だからありさは、なんとなく言ってみる。

「雨に濡れるの、嫌って言ってたわよね」

「うん」

 木を挟んで、返答がくる。

「同感。自分の場合は、雨自体好きになれないけどね」

 その理由を話す気にはなれない。今は、今は。


 色々な事が起きた。

この世界には恐ろしい奴もとんでもなく強い奴も大勢居て、そいつらはみんなそいつらで必死なのだ。そういうことを、ありさは学んだ。

 だから、必死な奴らと張り合うには、自分ももっと必死にならなきゃいけないし、自分以外の仲間も必死にしなきゃいけないのかもしれない。

 しかしそれは、もっと皆が皆お互いのことを話し合って分かり合わなければかなわない気がする。しかし――今は、ちょっと、出来ない。

 自分はずるいのかもしれない。しかしそれは次郎だって一緒だ。反対側に立っているこの男は、いつも本ばかり読んでいるのに、自分のことはちっとも知らない、みたいな態度を崩さない。一度、その顔の下に何が詰まっているのか見てみたい。しかし、それをやるには、まず……。


「このままじゃいけない、ってことは、分かってるつもりだけど……」

 ぽつりとありさは零す。

「何か言ったかい」

「言ったけど、言ってない」

「なんだい、そりゃ」

 ははは、と雑念なく笑う次郎。

「雨が嫌いなら、今日じゃなくてもよかったのに」

 そうかもしれない――それでも、今日でなくては、雨の降っている今日、何かをしなければならない、そんな気がしたのだ。

 だから今、ありさはここにいる。

 ――向き合い始める時が来ているのかもしれない。

「そう。でもここ来ちゃったし。ねぇ、気分最悪の私に免じて、手加減してくれない?」

「それは嫌だなぁ。僕も男だからね。断ったらどうする?」

「しばく」

「怖いなぁ」

 また、笑う。


 雨の日に起こったことの清算は、雨の日にしなきゃいけない。

 別にありさは、ロマンチストでもなんでもない。しかし、そう思わせるだけの何かが、あった、気がする。

 この間の戦いはとんでもなく疲れた。それのご褒美というか、対価が、今自分がここに居ることなら、それはずいぶんと無粋だし、味気ないことだが。

 だから、今日じゃなくても――いつかの、いつかの……。

「……きっと私は。またいつかの雨の日に、あいつと向き合わなきゃいけないんだ」

 そう、ありさは思った。


 模擬戦闘が始まるまでの残り数十秒間、二人はそうして雨の音を聞いていた。


どうも緑茶です。

リアルは秋ですが向こうは初夏のようですね。個人的には雨好きなんですが。

古今東西、雨はいろんなものになぞらえてきました。だから今回はちょっとクサい感じ(?)にしてみました。

いろいろあって短いですが、雨ってロマンチックだよね、みたいなのを共有できたらいいな。

ではまた。

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