ⅩⅩⅩⅡ:重き一撃を
リレー小説『=BlanK † AWard=』
執筆者:リブ本
「とりあえず陽動をお願いするよ。必ずなんとかする」
次郎はそう刃巫女に耳打ちする。刃巫女は頷き、飛び出した。ハウンドの尾にぶたれ、壁に打ち付けられた体が鉛のように重い。
―――でも、それが何だっていうんだ。世間一般は、いや少なくともここで闘ってる人達はまずそんなことで勝つのをやめたりはしない。そうだ、こんなところでやられちゃいけない。こんなところでくたばっては――――何故自分が闘っているのか、結局わからずじまいじゃないか!
周囲を見渡す。入り組んだ工場のなかで何か、生意気なワンコロの度肝を抜いてやれる良いものはないか。僕の能力で、何が出来るのか―――
(フフ、あったぞ)
地を震わす咆哮と、突き出す岩塊。
「ワンちゃん、こっちよ」
甘い声でハウンドを誘いながら刃巫女が駆ける。転がるボールを追う犬のようにハウンドが続く。壁際まで引き付けると視界を喰らい素早く跳躍、壁を蹴って背後に回る。ハウンドの両前足が壁を叩きつけるが、捕らえられない。ガリガリ、とコンクリートの壁に凍った爪痕が大きく刻まれた。ときおり白井とコンタクトを取りつつ、刃巫女は入り組んだ地形を縦横無尽に飛び回りながらハウンドを弄んだ。
白井も思索を巡らせる。
(易々と陽動に応じる辺り、あまり賢くはないようですね。例え、言葉は解しても)
次郎は次にどのような手を用いるか。神出鬼没の彼が我々の前に姿を現した瞬間を逃さず、確実に勝利につなげなければな――――
白井はそこで思索を中断。
倉庫の高い天井の際の際に、巨大な魔法陣が浮かび上がったのだ。
「刃巫女!」
とっさに白井は刃巫女を呼びとめ、魔法陣の真下を指差した。刃巫女はげっと顔を歪めた。
(そこまで誘導しろってこと!? 結構遠いんですけど!)
目指すは開けた場所のど真ん中。当然だがハウンドのほうが足は速い。地形でかく乱しつつならまだしも、直線距離を移動すればあっという間に追いつかれるだろう。
(―――あのクソッ、これで決めなきゃ承知しねえ!)
刃巫女は心の中で次郎をどなりつけ、残る体力を振り絞り全力疾走。
やはりというもの刃巫女とハウンド、みるみるうちに二者の距離は縮まっていく。魔法陣までいま少しのところでやがてはハウンドは刃巫女を必殺距離圏内に 捕らえ、大きく振りかぶった。
「烏丸次郎!今ですよ!」
刃巫女の右腕にシュルリと鋼線が絡みついた。白井が力の限り右手を引くと、彼女をハウンドの攻撃から逃れさせる。同時に左手の鋼線でハウンドに足払いをかけた。
魔法陣の有効部分がひときわ輝く!
次に浴びせられるのは光弾の雨か?それとも光線か?
否。
「巨大精密機器だッ!」
ガシャアアアアアアンッ!
次郎のありったけの叫びとほぼ同時にけたたましい轟音! ハウンドの頭上に落下したのは用途不明の中身の詰まった巨大な機械。損失額一千万は下らないだろう!
―――完全に下敷きになったハウンドから遅れて発生する凄まじい白煙。今度こそ勝利したのだ。
「……これはまた、随分と思い切りましたねえ。まぁ、この程度の機械などこのレイドが町に放たれた際の被害総額を考えれば安いものでしょうが」
白井は几帳面に衣服の乱れを直し言った。刃巫女は息も絶え絶えで座り込み、悪態をつきまくる。
「ああんもう! マジで死ぬかと思ったわよ! おい尻尾野郎、一回降りて来い!」
そんな光景はどどこ吹く風。次郎は使い物にならなくなった機械の上で脚を組んで座り、全身に白煙を浴びながらつぶやいた。
「いい気分だよ。でも、何も知らないレイドじゃ僕を本当に満足させることは出来ないのさ」
リブ本です。孔雀丸さんは戦闘にロマンを見出すタイプですね。とにかく華麗にキメたいんでしょう。
…スミマセン、正直に言うとキャラを考案した時点でロードローラーのパロディやりたいと考えてたんですよ。打ち合いや爆発はしないですけどね。今までで一番書いてて楽しい回でした。ではではまた次回お会いしましょう!ありがとうございました!




