ⅩⅩⅧ:地の槍と氷の剣
リレー小説『=BlanK † AWard=』
執筆者:リブ本
ゴァッ、ゴァッ!
輝核を飲み込んだハウンドは低い姿勢で震えながら、地響きのような呻き声を上げる。メキメキと体組織が軋む音――――。その体躯は元よりさらに一回り大きく、筋肉の束の様な四肢はその一本一本が大人一人の大きさに相当する。―――そこから繰り出される爪撃は、《アワード》で強化された肉体すら安々と引き裂きうることは想像に難くなかった。
「これは……」
次郎のもとに駆け寄った白井はその光景を目の当たりにし、戦慄する。
「輝核をもうひとつ、飲み込んだんだ」
次郎はいつになく緊迫した声色で答えた。
「―――来ますよ」
ハウンドの慟哭が大気を裂いた。地面より突き出した岩塊が二人に迫る!
白井はその場を飛びのいた。次郎もすんでのところで身を翻し、魔法陣へと消える。
後方に姿を現した次郎はありったけの声で叫んだ。
「ハウンドの動きを封じるんだ!」
(大声で次にやることを宣言したとしても獣であるレイドには通じない。その点、幾分か人間相手より戦いやすくはある―――)
そう考えた。
白井は着地ざまに向き直り、手を水平に振るう。ひゅっと唸りを上げて五本の鋼の糸が放たれ、それらは的確にハウンドの前足に絡みつく―――と思われたが。ハウンドがいきなり後ろに跳躍!
「かわされた!」
空を切った鋼線はシュルンと白井の指先へと吸い込まれる。
二人は同時に青ざめた。そう、次郎の立ち居地が跳躍したハウンドの影の中なのだ。今から横に飛ぼうが避け切ることは不可能。あの質量が振ってきてタダで済む筈がない。
「あ……、」
視界が暗くなる。
早送りの無声映像が脳裏を一瞬で駆けた。
見覚えのない男女、蛍光色の薬品、注射器――――
「何してんのよ、このグズ!」
転がりこんだ刃巫女が次郎の手を思い切り引く。直後、ハウンドが轟音とともに着地した。その直撃こそ避けられたが、続けざまに振るった尾の一薙ぎが二人を弾き飛ばす!
「ぶっ、」
コンテナに叩きつけられる打つ二人。その衝撃が次郎を現実に引き戻した。よろよろと起き上がりざま、刃巫女に話しかける。
「―――どうやら相当頭が良いみたいだ。もしかしたら―――言葉を理解している可能性だってある」
刃巫女は呆れた顔をした。
「はぁ? あんたそれにビビッてでボサッと突っ立ってたの? 諦め早すぎなんですけど」
その返答は次郎にとって予想外であった。
(諦めが早い? そういうことなのか?)
とぼけた表情で黙り込む次郎に刃巫女はつまらなさそうに口を尖らせる。
「煽ってんだからちょっとは怒んないもんなの? まぁいいや、とっとと片付けるわよ」
―――まぁ確かに、あの人たちに比べればそうなのかもしれない。戦う理由、あるいは信念の差だろうか。
巨大生物大好きリブ本です。レイドを動かすのは楽しいです。
今回やっちゃったなぁと思ったのは、倉庫シーンはそろそろ佳境に入ってきているというのに新たに登場したハウンドを強そうにしすぎたところですかね。今回のメインターゲットは塚崎先生じゃないですか。だからその戦闘が終わるよりも前にこいつが倒されなきゃいけないんですけど、まぁ、なんとかなりますよね。
ではまた次回お会いしましょう。ありがとうございました。




