ⅩⅣ:Green
リレー小説『=BlanK † AWard=』
「ⅩⅣ:Green」 ※旧10話
執筆者:すたりあ
○
「何匹倒した?」
刃巫女が問いかける。
「九・五」
「あら、私も九・五匹なのよ」
ありさと刃巫女の視線が合う。
「一匹足りない。二十匹いたはずなのに……!」
「そうなの、この勝負引き分けね」
刃巫女がため息混じりに言葉を吐いた。
「そうじゃなくて! どっかに逃げたってことよ! 追わないと!」
ありさの表情が強張る。そして、次の瞬間にはグラウンドに向けて駆け出していた。
刃巫女はその背中を見送ると、視線を右手に落とす。
その手には、巾着袋があった。戦闘前に、ゆうなが彼女らに渡したものだ。
刃巫女はそれをポケットに入れる。
「バカよねぇ、あの子。すぐ周りが見えなくなるんだから」
先程しまい込んだ巾着袋、これは戦闘中にありさからこっそりくすねたものだったのだ。
「貴重なモノをいただいたわ。帰ったらじーっくり調べてあげる」
校門前。
「やっと来たかクジャク丸」
「遅くなってごめん」
次郎はハインツのバイクの隣に自転車を止めると、白井秀蓮の方を見る。
目が合った二人に緊張が走る、しかし、今は争っている場合ではないことを把握する。
なぜなら、ハインツが秀蓮を呼んだという予想がついたから、そして、学校を包む結界を目の当たりにしたからだ。
「この結界は……」
「外部との接触を遮断している。おそらく《アワード》の能力かと」
「そういうことだ、クジャク丸。コイツをブッ壊して中に入るぞ」
「そうはさせない」
凛とした声。三人が声のする方を向くと、黒い外套を着た女性――、涼原美奈が立っていた。
「誰だお前。何しに――」
「邪魔をするならここで消えてもらう」
ハインツの言葉を無視し、臨戦態勢に入る。彼女の手には《アワード》が握られていた。
それを確認した三人も、それぞれを《アワード》を取り出す。
今まさに戦闘が始まろうとしたその時。
「戦う必要はない」
校門から塚崎がハウンドを連れて悠々とやってくる。そして、一冊の本を取り出す。
赤のベースに、金と銀の装飾。
見間違えるはずがない。あれは間違いなくゆうなのものだ。
「貴様! なぜそれを!」
ハインツが食ってかかる。しかし、塚崎はひるむことなく話しかける。
「君たちがここで戦うなら、今すぐこれをばら撒く」
ハウンドが大きく口を開ける。中には大量の輝核が蒼、紅、翠に輝いていた。
彼らはすぐに想像がついた。もしこれらが撒かれてしまったら、町に尋常な被害が及ぶことに。
ましてや今は昼。一般人が巻き込まれる可能性もある。
彼らにできることは、塚崎たちが去っていくのを見送るだけだ。
「行くぞ、涼原」
「はい」
くるりと方向を変え、塚崎たちは歩いていく。
その背中に、一撃を叩き込むことができたなら……。
「すまない……」
静寂の中、ハインツの懺悔がかすかに聞こえた。
「ゆうな! 刀真!」
ありさが駆けつけた頃には、塚崎の姿はなく、その場に立ち尽くす刀真と倒れているゆうなの姿があった。
ありさが恐る恐る聞く。
「……何があったの?」
「ゆうなちゃんの《アワード》が……アイツに取られた」
「……は?」
理解が追いつかない。あのゆうなの? 《アワード》が? 取られた?
「……」
数秒経ってから、ありさは状況の深刻さを理解する。代わりにふつふつと怒りが沸いてきた。
「ごめん……。俺がゆうなちゃんを守れなかったから……」
「うっさい。過ぎたことごちゃごちゃいってどうすんのよ。取り返しに行くよ」
「それはダメ」
か細いゆうなの声。
「なんで――」
「学校のみんなが優先だよ」
ゆうなの一言で刀真は黙り込む。彼女が間違った判断をすることはないと十分に理解していたからだ。
ありさも同じく理解はしていたが、納得がいかなった。
「でもっ、ゆうなの――」
「いいから」
「……分かった」
刀真がゆうなを背負い、二人はゆうなを手当てするため保健室へと向かった。
こんにちは、すたりあです。
ついに物語も10話。記念すべき2桁突入です。
そんな節目の回を書くことになるとは思いませんでした。
ちょっぴり嬉しいです。
本編の方ですが、矛盾が発生するレベルのミスをして2回ほど書き直しています。
完成稿として提出する前に気付けてよかったです。
やり直しとか言われたら発狂モンですよ。
そうならないために物語はちゃんと読もうって思いました。
今日の教訓。
今回はこの辺にしておきます。
ではまた次回、お会いしましょう。




