2 汗だくな女
真夏にエアコンも付けず、窓も開けていない状態で作業をしていれば、汗だくになるのも無理はなかった。
スカートが太ももにまとわりついて動きにくい。もっと動きやすい服を着てくればよかったと、今さらしても仕方がない後悔をする。
垂れ落ちる汗を拭いながら、大量に購入したトイレ洗剤と入浴剤をエコバッグに入れ、レシートはゴミ箱に捨てた。クローゼットを開けて、ずらりと並べられている衣装の中から、紺色の制服と付属品を鞄に詰め込む。
どうしてこんなことに。
こぼれた赤ワインを拭き取りながら、割れたボトルの破片を片付けていたら、指を切ってしまった。
血が溢れる指先を舐めていたつもりが、強く噛んでいた。イライラが収まらない。手も震え出した。
こんなつもりではなかったのに。
部屋を出てスーツケースを引きずるたびに、車輪がぎゅるぎゅると悲鳴をあげているような気がする。
本来入れるべきではないものを入れた代償は大きいようだ。階段や段差を乗り越えるたびに、あちこちにぶつかり、苛立ちを助長してくる。
どうしてこんなことをしなければならないのかと、腹立たしさがこみ上げてくる。
だが、ほかにはいないのだ。
あの人が達成する事ができなかった最後の望みを、代わりに叶えてあげられるのは、自分しかいないのだ。