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第1話 (1)

―1―

──神様って本当にいるの?


 全てが変わってしまった、あの日の幼き俺は日生諷(ひなせ・ふう)にそう尋ねた。様々な混乱の中どうしてそんなことを尋ねたのか、なぜか覚えていない。


いるよ


諷はあっさりと答え、時刻は夕刻、日が暮れているにしては不自然なほど赤い空をずっと見ていた。そして、その赤い空を指さし、


あの果てしない空にね


と言った。俺は諷の指にそって上を見上げる。


でも、


いるって証拠は?と続けようとした俺の言葉を遮り、諷は話し始めた。


神様はね、皆の思いの力で存在できてるの。いるんだけど、見えないから証拠はない。私たちの思いって、どう頑張ったって見えないでしょ?ま、おじいちゃんから聞いただけだけどね


そういって顔をおろしふふっ、と笑って俺を見た俺をまっすぐ見ていた諷の顔には、涙が一筋流れていた──


 あの時俺は諷が何を言っているのかわからなかった。でも、今なら理解できる。


神という存在が?いや、そうじゃない。


「神という絶対的な存在を創造し、気の遠くなるような長い時の中、存在させ続けてしまうほどの人間の思念の力」を、だ。


 神だけではない。目に見えないもの、それら全てが思念の力で存在が保たれているといえるだろう。


この「思念世界」、「偲鬼」もまた──


―2―


 将来使いそうにもない数式を、これこそこの世の全てだというかのようにまっとうな顔で熱弁する教師を横目にシャーペンをくるくると回す。窓際の席はギラギラと照りつける日光のせいでかなり暑いが、あのどんよりとじめじめした廊下側の席よりはいくらか恵まれているのだろうか。


 本日は晴天。雲一つない夏の青空が、この最近、何も起こらない日々を表しているようだ。


11年前に起こった非科学的な災害がこの町で起こったとき、俺はまだ小学校に入学したての頃だった。建物が急に吹き飛び、地面が割れ、森の焼失、妙な耳鳴りに悩まされる、まさに地獄、といったところか。


この災害で町民の約3分の1が亡くなり、俺の親父も3日後、300m吹き飛ばされたと推測された建物の中で見つかった。


 町からの撤退を余儀なくされ、親せきの家に母親と妹の3人で転がりこんだ。その後見たニュースでこの災害は「霊災」と呼ばれる、全ての生き物たちから発せられている思念の集合体が何かのはずみで波長が乱れ、暴発を起こすという理解しがたいものらしいことがわかった。

霊災は11年前よりも以前からたびたび起こっていたらしいが、規模が地面が少しわれたり、小火がでたりとその程度でそんな非科学的な災害を誰も信じなかったため、内密にされていた。しかし、俺たちの町で起こった霊災は過去最大の大きさのようで隠すことができない状態となってしまい、霊災の存在は一般の人々にも知られるようになった。


 昨年ようやく町に帰れるようになり、未だ復興は続いているが一通りの生活ができるようになった。


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