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お前を勇者にしてみせる!  作者: 糸冬すいか
序章:リロード&コンティニュー
5/43

05:祝福とロマン

 呪術と、解呪術。

 今、全く正反対な感じの言葉が聞こえたような。

 いや、ある意味順当な組み合わせかもしれないけども。なんかしっくりこない、っていうか。

「……なんだろう……勇者ポジションを期待したのに、闇を極めた僧侶みたいな……」

「ごめん、さすがによく分からないな。混乱してるね?」

 ちょっと予想外すぎまして。

 眉間の皺を揉み解して、ラストの生八橋を口に放って咀嚼。飲み込んで、神様が淹れてくれたお茶をすする。うまい。

 よく考えると、俺、神様が手ずから淹れたお茶飲んでるのか、すごいなぁ。

 ……落ち着いたところで、再び口を開いた。

「えっと、呪いをかけたり、解いたりってことだよな。……呪いって?」

「分かりやすく言うと、キミの世界の御伽噺みたいなものさ。百年の眠り、外見を変える、他者を操作する……あ、恋に落ちる魔法も呪いだったかな」

 意外とメルヘン。……いや、分類が呪いの時点でメルヘンも何もないわ。

「でも呪いってことはこう、怪しい儀式とか、魔女の大鍋とか、多大なリスクとか……」

「いや、そういうのはないよ。ただ、他の魔法と違ってちょっと手順が必要なだけ」

「手順?」

 やっぱり儀式か、地下室で魔法陣を描いて怪しい呪文を唱えたりとかするのか? それとも深夜に藁人形を打ちに行くのか? 人を呪わば穴二つなのか?

「キミの中の呪いのイメージは根強いねぇ……。普通の魔法は呪文を詠唱するだけなんだけど、呪術は使うときにきっちりと条件を決めなきゃいけないんだ」

 条件、と言われてもしっくりこない。魔法が呪文を詠唱してっていうのはなかなかファンタジーでかっこいいけど、それにプラスして条件?

「呪いが発動する条件と、呪いが解ける条件。その条件の難易度によって、呪いの強弱が決められる」

「あれ、じゃあ解呪術っていうのは? それで解けるんじゃないのか」

「解呪術は呪いの効果を和らげたり、条件を占ったりする魔法でね。完全に解くには条件を満たすしかないよ」

 想像とは結構違うみたいだ。

 どっちかって言うと、本当に童話に出てくる悪いおまじないみたいだな。糸車で指を刺すって言うのが発動条件で、死の呪いを百年の眠りにするのが解呪術の効果、でもって王子様のキスが解呪条件みたいな感じか。なんかやっぱメルヘンだ。

 発動条件が難しいと、解呪も難しい強い呪いになる。使うときはその条件を吟味しないといけないし……戦闘中に使うってわけにはいかないよなあ。

 下準備してこっそりと、策略。

 ……地味だ。

 表だって戦うのは勇者で、俺は脇役なんだってのは分かってるつもりだけど。それでも、かっこよさとか求めたって良いじゃない。男の子だもの。

「まあ、実際に使うのはだいぶ先になるでしょ。それまでにいろいろ調べて試してみれば良いんじゃないかな」

「ん、そうだな」

 あんまり神様に頼ってばっかりって言うのも情けないし。意識が戻ったらいろいろ勉強してみるか。それにこういうニッチな力が、いざと言うときに役に立つとかよくある話(テンプレ)だ。

 そう、たとえば、えっと、――勇者が人間を滅ぼそうとしたとき、とか。

 ……マジでありえそうだな。チート勇者相手じゃ普通に戦うなんて無理だし。条件を厳しくした呪術なら動きを封じるくらいはできるかも。頭の片隅においておくか。

「凶悪な発想するなあ……まあいいか。それじゃあ、他の祝福についても説明しようか」

「他の?」

 祝福って、今の特典だけじゃないのか? 他にもなんかあるのか。

 まあレア魔法とはいえ、呪術と解呪術の力があるだけで、勇者にうまく干渉できるかって言うと微妙だし。なんだろう、基礎的な能力値を上げれるとかだったら嬉しい。

「バトル脳だなぁ。……ボクがたまに夢枕に立っちゃう、天啓の力とか」

「おお……!」

 これは、嬉しい……! これで離れちゃったらもう会えないかと思ってたからな。死んだら会えるかもしれないけど、それは一回こっきりの最終手段だし。

 うん、やっぱり、ほら。神様可愛いし? 気になっちゃうって言うか?

 これからもちょくちょく会えるとか、オイオイ、これっていけちゃう? がんばればいけちゃう?

「……あくまでボクの方から呼びかけるだけだから、キミの方からコンタクトを取ることはできないよ。必要なときだけだから大して使うとも思えないし」

「スルーかよ!」

 せめてツッコミはいれてほしかった! 心読めるんだし!

 今までにない表情が見れたけど。能面のような無表情だけど。

 いや、これはこれで……だめだ、見た目子供な神様に蔑まれて喜んだら、俺の大事な何かが終わる。そこは死守しないと。

 神様は呆れたようにため息をついてお茶を淹れていた。急須にお湯を注いでふたをし、揺らしながら話を続ける。

「……あと、確実に勇者に巡り会うために、キミには出会いの幸運も与えよう」

「出会いの、幸運?」

「キミに必要な人に出会える運。上手くいけば勇者以外の実力者とも出会えると思うよ」

「おお、最強パーティーだな……!」

 つまり、ご都合主義的な出会いが期待できると。悲鳴を聞いて駆けつけたら、そこには亡国のお姫さまが! ギルドで知り合った美女が仲間に! 可愛い魔法使いが俺の応援を!

「出会ったところで、勇者に取られるんじゃない?」

「だよな!」

 期待したって無駄だと分かっていても、妄想くらいはしたかった。だって男の子だもの!

 勇者っていうくらいだから、顔面にも補正がかかってるんだろう。でもってハーレム属性もきっと持ってるんだろうな。ちくしょう、イケメンなんて。

 神様は無言でお茶をすすり、しげしげと俺を眺めた。

「いや、そんなこと言っても……キミも人間としては整っている方だと思うよ?」

「慰めはいらな……あ、そっか、転生したんだもんな」

 鏡がないのでわからないが、神様のお墨付きと言うことは結構な美少年なんじゃなかろうか。すべすべ真っ白な肌にふわふわサラサラの金髪。このまま成長して美青年になれば、ハーレムとまでは行かなくとも結構イイ線いくんじゃないか。

「ありがとう神様。俺にも、希望が見えてきた……!」

「かっこいい台詞の無駄遣いだね」

 すぅ、と辺りのものが消え始めた。ああ、まただ。もう終わりなのか。名残惜しいと言うか、神様と話しているのは結構楽しいのでちょっと残念だ。

 と、神様が立ち上がり、俺に向かってかがみこんだ。え、まさか。これって恒例なのか!?

 また、額に柔らかな感触。二度目とはいえ、聞こえてきたリップ音に心臓がばくばくと音を立てる。そして、

「……べ、別に、ボクだってキミと会って話すのがすごく楽しみとか、思ってないんだからね?」

 そのすねた口調に、俺は戦慄した。

 ここにきて、まさかの、ツンデレだと……!?

 ちくしょう神様。なんてヤツだ。別れ際に爆弾落とすのが趣味なのか、俺を落とすのが趣味なのか。後者だとしたら、俺はまんまと策にはまっている。



 可愛い女の子のために世界を救う。これって男のロマンだよな?



7/21 誤字訂正。

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