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お前を勇者にしてみせる!  作者: 糸冬すいか
2章:ハーレム&チートスペック
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06:質問タイムと新しい日常

 別にティルと飯が食べたくて誘ったわけじゃない。何が悲しくてわざわざ男と食事しなければならないのか。つか、いつも食堂で一緒に食ってるし。

 大事なのは、ティルが俺をリドヴェルトだと認識していないってことだ。キドの姿で今後会う予定はないし、いくらでも怪しまれたり嫌われたりしても良い。

 つまり、変な質問だって出来る。

 この際だ、ティルのいろいろ不透明な部分について根掘り葉掘り聞いておきたい。あいつを竜と人を結ぶ勇者にするなら、まずはティルの背景を知らなきゃな。それで誘導してやらなければならない。

 とりあえず安い軽食を二つ注文して、わくわくと目を輝かせるティルを見る。うん……こいつ異様に食べるの好きだよな。どこに入るのかってぐらいに食べるし。

「で、あー、ティート、でいいんだよな?」

「うん、でもティルでもいいよ。友達はそう呼ぶし」

 ここは素直に受け取っておくか。呼び方変えてたらそのうちボロが出そうだし。まずは遠まわしなところから。

「おう、じゃあティル……あのさ、前に持ってた竜のアレ、どうやって手に入れたんだ?」

「えっと、お父さんとお母さんに貰ったよ」

「ご両親は冒険者か何かなのか、名前は?」

 と、ティルが困ったように黙り込んだ。う、質問しすぎたか……正確な名前さえ分かれば、ギルドを通じてティルの家族について調べられないかと思ったんだが。家族について分かれば、ティルの過去とか背景もな。

「言いづらいことだったか……?」

「う、ん……、あんまり外でお父さんとお母さんのこと話しちゃいけないって言われたから」

 ごめんなさい、と申し訳なさそうに頭を下げる。うん、ご両親はどうやらマトモというか、しっかりしてるようだ。こいつポロポロしゃべりそうだもんな。

 まぁ口止めしてるってことはそれなりの理由があるはずで……ディラーグ姓について調べてみるか? あんまり聞いたことがない響きだけど、どこの国の言葉だ。

「つか、君はどこから来たんだ。移民だろうとは思ったけど……」

「えっと……、帝国の、南の方」

 南……リドヴェルトの実家は帝国の南東方面にあるし、ちょうどまっすぐに南から東に突っ切ってきたのかな。でも南って言ったら皇国側だ。あの辺りは竜の住む谷を挟んで国境争いでピリピリしてるから、異民族とかもいないって聞いたけど。

 これ以上詳しく聞いても、口止めされてそうだし……とりあえず、南方でディラーグ姓について調べてみるか。後は……あ、これも聞いておくか。

「ところでティル、さっきお前を追いかけてた女の子は彼女か?」

「かの……」

 ぶんぶんと激しい勢いで首が横に振られた。そんなにオリヴィエが嫌なのか……やっぱ、パーティー組むのは避けたほうが良いかなぁ。補助魔法使えるしいい組み合わせなんだが、問題が多すぎるか。

「美人だったけどなー。何だ、ティルは大人っぽい感じの子は苦手なのか?」

「う、むぅ……苦手って言うか、よく分からないし、なんだか怖い」

 うーん、ティルは良くも悪くも素直で裏がないからなぁ。だから人の言葉の裏を読むこともできない。遠まわしな言い方が多いオリヴィエは合わないのか。でも誰かとくっついてラブ&ピース作戦をまだ諦めたわけじゃないぞ。

「男にとって女は皆よくわからないところがあるもんだよ。いっそ付き合ってみたら分かるかも知れねえぜ?」

「えぇ、無理だよぅ……タイプじゃないもの」

「マジか……」

 こいつ、好みなんてあったのか……!

 てっきり「恋ってなーに、食べれるの?」状態だと思ってたんだが……。オリヴィエを無視してたのはタイプじゃないからかよ。あれがタイプじゃないってことは、もっと活発な感じとかが良いのか?

 今はまだ望み薄だけど、うん、これからの出会いによってはラブ&ピース作戦もいけそうだな。

「んじゃ、どんな感じがタイプなんだよ」

「ん、んー……綺麗で強くてかっこいい人かなぁ」

 あ、なんかダメっぽい。思考回路が小学生だ。タイプっていうか女の人の理想像みたいなのじゃねえか、具体性にかけてどうにもならん。

 ちなみに俺は笑顔の可愛い子が好きです。神様とか。

「まぁなんだ……もうちょっと現実に目を向けろよ?」

「?」

 首を傾げて純粋な笑顔。相変わらず精神年齢が幼い。まぁこれじゃ恋愛とか言ってもなー、小学生レベルじゃ話にならねーし。ラブ&ピース作戦はちょっと保留か。

 そこまで話したところで軽食のセットが届き、会話は中断した。ティルもだけど、俺も正直腹が減った。話して喉も渇いたし、ここらで休憩としよう。

 あれもこれも保留。どっから手をつけるか困ってるのに、日々の勉強だってあるわけで。

 神様、もうちょっとヒント下さい。



   +++++



 なんて思ってたところだったんだが。

「で、ティル……それは何がどうなった結果なんだ?」

「……わかんない」

 困惑と怯えと嫌悪を混ぜたような微妙な顔をして、ティルは棒読みで言った。力がない……。

 朝はジュスターと三人で登校することが多いんだが、まあ今日はたまたまバラバラで、少し遅れて教室に入った。まあ別に迷子になるってわけでもないし、男同士でべたべたするのも気色悪いしな。で、いつも通りにティルの隣に座ろうとして、――それが出来ないことに気付いた。

「ティート様、今度わたくしの知り合いの店にお食事に行きませんか? いろいろな料理を取り揃えておりますから、ティート様の好みに合うものもあるはずですわ」

「ちょっとオリヴィエ、あまりベタベタするのは下品よ。ティルも嫌ならそう言いなさい」

「あら、自分が出来ないからといって僻むのはみっともないですわよ?」

「わ、私はただ、貴族の淑女であればもっと慎み深くあるべきだと言っているのよ!」

 右にリリーアンジェ、左にオリヴィエ。最近は俺とジュスターで占めていた位置に2人が座っていた。タイプの違う女の子2人に挟まれたティルは、ぐったりというかげっそりというか、朝見たときより生気が抜けている。

 視線をずらせば、後ろの席にジュスターが座っている。そっちに行き、こっそりと声をかける。

「で、何なんだアレ」

「最初はオレがオリヴィエの位置に居たんだが、すぐにどかされた。そして復帰してきたリリーアンジェが気付いて逆側に陣取り、以来ずっとあの調子だ」

「いやそうじゃなくて……まぁ分かりやすいけどさ、でもさっぱり分かんねーぞ」

 俺の言いたいことをくみ取ったんだろう、ジュスターはため息をついて頷いた。凄い不満げだ。

「気持ちは分かる。オレもどうしてティルがモテてるのかさっぱり分からん」

「オリヴィエは声かけてきたし、何となく分かるけど……リリーアンジェとなんかあったのか?」

 見舞いにいかせたときも、「気がついたから帰ろう」とろくに話さずに帰っちまったし。まぁ少しは話したみたいだけど……いや、デバガメとかではなくて、ただ単に話し声が聞こえただけだ。何話してたのかは分からなかったし。

「ティルのどこが良いんだ? 友達としては良いヤツだと思うが、あんなぼけたヤツが良いのか? 女子は分からんな」

「あー、もう逆にそこがいいんじゃね? 母性本能をくすぐられるとか」

「母性本能をくすぐれば良いのか? ならオレはオリヴィエの胸に飛び込むぞ、全力で」

「止めろ。マジで。お前までボケに走ったら俺が疲れる。つかそれは母性本能を刺激しねーよ」

 うん、意外とジュスター、真面目にボケるやつだった。まるでアーノルドのような言動に、初めて聞いたときは「アーノルドが乗り移った!?」と本気で心配したくらいだ。

 ちなみに、貧乳は許せないらしい。

 小一時間ほど胸の柔らかさの魅力について語られたときはどうしようかと思った。いや、俺だって男だし、女の子に興味ないわけじゃないけど。神様マジで美少女だったからな……同年代の女子がかすんで見えるぜ。

 ジュスターとぼそぼそと話しているうちにも、どんどんティルの覇気がなくなっていく。イメージとしては毒状態だな、1ターンごとにHPが削られる的な。助けた方が良いか……いや、もうしばらくはこのままにしておこう。マネージャー的に勇者が誰かと仲良くなるのは大歓迎って言うのが一つ。

 後もう一つ。全然勇者らしくないくせに、ハーレムはしっかり作ってやがるのがなんかムカつくから。そのままぐったりしてろ、俺を含めた多くの男子の心からの思いだ。

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