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THREE   作者: 解体新書
第一章 精子の頃
5/9

精子 ウンドウ

子宮頸部地点には一番のりで到着した。しかし、困った事が起きた。

辺りには何もない。次に進む道がどこにも見当たらないのだ。

俺が次の道をどこだどこだと見渡している間に、後ろからどんどんと精子がたどり着いてきた。

せっかく1番乗りで進んでいたのに、また振り出しに戻ってしまった。

俺は追いつかれたことに少し腹をたてた。しかし、このぐらいのハンデがあっていいという余裕の心もあった。「どうせ誰も俺には勝てない。ここまで頑張っていても優勝は俺なのによくやるよ」たくさんの精子に対して鼻で笑った。

しかし、俺が1番腹がたった事があった。この子宮頸部地点に最後にたどり着いた精子である。言葉には表せない泣きくしゃんだ顔をしていて「みんな本当にありがとう」と意味のわからない事を言って、もっと泣きくしゃんだ。「なんだ、こいつ、泣くんだったら死ね」と思った。


ちょうどその時であった。上からものすごい量の液が流れこんできたのである。俺は死を覚悟した。さっきまでは、上から酸が降ろうが楽々と越えていったが、今回の量は異常であった。

俺達精子は、みんなその液に飲み込まれた。


「なぜ俺達は生きている!?」液を浴びたあとで俺は思った。

実はその液は『頸官粘液』であったのである。子宮頸部地点から子宮頸部へ精子を導いてくれる役割をしてくれるものである。また、酸性ではなく、アルカリ性なので精子が死ぬことはないものである。

理由は分からないが生きている事にラッキーと思いながら、その液を利用して子宮頸部へと泳いだ。


子宮頸部へ到着した。また一番乗りである。次の目指す所は子宮である。これがまた難関である。

目の前に幾重に枝分かれしたトンネルがたくさんあるのである。この中から子宮へ続くトンネルを探さなくてはいけないのである。正解のトンネルは何個あるかは分からない。

とりあえず深呼吸をする。理由は今目の前に見えるトンネルだけでもざっと100は見えたからである。

考えた結果、虱潰しに行くかと考えた。「ここだ」と思った所のトンネルへと走る。中に入るとまたもや枝分かれしていた。俺は自分の赴くままに、走っていった。


運が良く、俺は見事一発で子宮にたどり着くことが出来た。この子宮までたどり着ける割合0.0012%(約3000個)といわれている。

次の目指す所は卵管である。そろそろこのレースも後半の後半まできた。

しかし、この子宮から卵管までいくのがこのレース最大の難関である。それは、まるで果てしなく広い草原から一輪の花を探し出したり、指輪を海に思いっきり投げて指輪を探し出すようなものである。

俺はすぐに卵管を探す事にした。


卵管はいっこうに見当たらなかった。後から精子がぞろぞろときて俺と同じように探している。

どのくらいの時間が経ったかは分からない。だが相当の時間を使った気がする。

ちょうどその時であった。ここが最大の難関と呼ばれている要因となっているやつが現れた。

そう、『白血球』である。精子を有害物質と勘違いし、排除しにきたのだ。捕まったら一巻の終わり、死の鬼ごっこが始まった。精子は一斉に白血球から逃げた。


どんどんと精子が白血球にやられていく。俺は上手いこと逃げていた。そう、上手いこと逃げていた。がしかし、精子がどんどんと死んでゆくものなので、だんだん俺に白血球が集まってきたのである。

そして、5つの白血球に囲まれてしまった。絶体絶命である。

「5つの白血球に死角がない。ここで終わりか………」俺は悟った。

5つの白血球が目の前の距離まできたその時であった。

5つの白血球が止まり始め、逆に離れ始めた。

状況が読めなかった。白血球の後ろに2個の精子が見えた。のちのガクモンとユウコウである。



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