メタボ会社員、異世界で“魔王の座”に就く
田所修二、35歳。
冴えない中年の会社員で、特技は“Excelの関数を組むときだけ異常に集中力が上がること”。
社内でのあだ名は「地味スペック」。
もちろん女性経験は聞かないでほしい。
そんな男の人生は、帰宅途中に唐突に終わった。
正確には、終わったと思った。
■ 気がついたら、岩壁の部屋の中だった。
「ここは……どこだ?」
目を開けると、薄暗い石造りの部屋。
足元には魔法陣のような紋様。
天井には青白い光を放つ鉱石が浮かんでいる。
そして――。
『目覚めよ、新たなるダンジョンマスターよ』
頭の奥に直接響くような声。
反射的に身構える田所。
「えっ、ちょっと待って! 俺はただの会社員で――」
『前任者は死亡した。よって、次に通りかかった魂を管理者として登録した』
「前任者死んだの!? 怖っ!!」
混乱する彼の前に、ふわりと青い光球が現れる。
どうやらこれが“ダンジョンコア”と呼ばれる存在らしい。
■ ダンジョンマスターの力、発動
光球が淡く輝くと、田所の脳内に膨大な情報が流れ込んだ。
・魔物生成
・罠の設置
・階層の拡張
・侵入者の捕獲
・環境操作
・地形編集
「……え、俺、チート能力持ち? え? 本当に?」
興奮と恐怖が入り混じる中で、田所はとんでもない事実に気づく。
“このダンジョン、まるごと俺が管理できるじゃん!”
しかも、ダンジョン運営は「魔力」ではなく「ポイント」で行われ、
ポイントは侵入者を撃退したり、罠にハメたりすると増えるらしい。
「つまり……だ。」
ごくり、と唾を飲む。
「TADOKORO☆僕はこのダンジョンのマスターだ!」
初めての高揚感とともに、田所は拳を握りしめた。
■ しかし、最初の侵入者は――
そんな田所の前に、突然システムアラートが鳴った。
《警告:侵入者を感知。ランク:SS》
「は?」
一瞬で顔色が青ざめる田所。
「いやいやいや! 初心者狩りやめろ!!
俺まだスライム1体も生成してないんだけど!!?」
しかし、入口の方からは
金属音とともに近づく重い足音。
――“ドラゴン・スレイヤー”と呼ばれる英雄が、そこにいた。
「さあ、出てこい。新たな魔王よ。」
田所は泣きそうになりながら叫んだ。
「待って!? 俺まだチュートリアル終わってないんだって!!」
続く――?




