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女体化した騎士団長

帝都の東、王城に隣接する騎士団本部の朝は、今日も変わらず厳粛に始まった。


「……団長がお見えになるぞ!」


背筋を伸ばした部下たちが整列する中、重厚な扉が開く――だが、そこに現れたのは。


「……おはよう」


高めの声。艶やかに揺れる銀髪。騎士服に代わり、身にまとっていたのは、露出の多いワインレッドのスリットドレス。胸元は大胆に開き、背中も大きく露出しており、腰のラインにぴったりとフィットするそれは、どう見ても“色仕掛け”用の衣装。


「…………………………誰ッ?!」


騎士団詰所に集う団員たちが全員フリーズした。


その“女”が一歩前へ出る。脚線美が強調されたハイヒールの音が、カツンカツンとタイルに響いた。


「……私だ。セルヴィスだ」


「はっ?!」


硬直していた部下たちが一斉に声を上げる。


「だ、団長?!」


「な、何が……その……え? 女装?」


「いや胸あるよな?! 完全に“女”じゃねぇか?!」


セルヴィスは疲れ切った目で自分の服の胸元をちらりと見て、ため息をつく。


「……わかっている。私がいちばん驚いている」



事の発端は、昨晩の任務だった。


王命により、ある呪詛使いの拠点を急襲した際、敵が放った“呪符”がセルヴィスに命中。その直後、激しい眩暈とともに体が焼けるように熱くなり、目覚めた時にはこの状態だったのだ。


「なぜか体だけでなく声まで変わっている……おまけに筋力も低下していて、鎧が合わん」


「っていうか、何でそのドレスなんですか?!」


副官のベイルが、真っ赤になりながらツッコんだ。


セルヴィスは一つ咳払いをして視線を逸らした。


「……任務で、色仕掛けが必要なときのために女性用の装備を何着か自宅に用意していたのだ。他にまともな服がなくてな……これが一番、布地が多かった」


「布地が多い……のか……?!」


露出度の高いスリットに、背中も開いているドレス。布地の面積は…あくまで“任務用”としては多い、という意味なのだろう。


「それに、この服、動きやすいのだ。見た目のわりに」


「“見た目”のわりに、ですね……」


部下たちは誰もが目をそらしていた。騎士団長の性転換+セクシードレス姿という、頭がついていかない情報量の前に、処理が追いついていないのだ。


セルヴィスは顔を覆いながら苦々しく呟いた。


「……こんな姿では、皇帝陛下にもお目通りできぬ。呪いは術者が倒れたにもかかわらず解除されておらず、持続型である可能性が高い。しばらくはこのままで活動せねばなるまい」


「うわぁ……まじかぁ……」


「えっ、これで鍛錬にも出るんですか?」


「むしろ“ドレスで斬りかかる団長”って新手の威圧感あるな……」


「うるさい。訓練は通常通り行う。目を逸らすな。手を抜くな。もし私の姿に耐えられぬという者がいれば、今日の訓練相手に指名するぞ」


「「「は、はいッ!」」」


こうして――帝国の騎士団は今日も混乱と笑撃に包まれながらも、真面目で硬派だった団長のもと、地に足つけた鍛錬を続けていくのだった。


……ただし、布地少なめで。


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