第二話 沈黙
第二話投稿です。前回の続き、彼女の謎に迫っていきます。
冷静になって考えると吐き気がするようなことばかりだ。
どうして彼女は僕の小説を知っていて
僕が作者だと知っていたんだ?
そして温かいようで温度のない機械のような笑顔
「知っていますよ。」のあとの瞬きが、どこかズレていた。ほんの少し、機械的に。
やっぱり彼女はー"ただの読者"ではない。
彼女の"異常さ"が僕を惹きつける。
彼女を知りたい、いつの間にかそう思うようになっていた。
冷たくなった図書室の扉を開き、彼女に会いに行った。
彼女は授業の終わりを待つ人体模型みたいにただ座っていた。
話しかけて良いのだろうかー
でもいつの間にか舌は動いていた。
「こ、こんにちは。」
「あら、昨日の。」
まるで針と糸で縫われているような開きにくい口で彼女に聞いた。
「あの、えーっと、その、昨日のことで、」
「どうして僕が作者ってわかったの?」
そう聞いた時、まるで僕の声は彼女に届かずどこかへ行ってしまったように図書室には時計の針が動く音だけが響いていた。
彼女は質問には答えてくれなかった。ずっと黙り込んだまま。彼女の周りだけ空気が抜けているみたいに。
「ごめん、ごめん急でびっくりしたよね。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
(その返しかただと、怖いんですけど。ねぇ)
この質問には"普通の人"のように言葉のボールを返してくる。
でも僕の中では沈黙が続いていた。
そして彼女は僕が僕の触れてはいけないところまで見透かすようにこちらを見ていた。
ああ、あの日から僕は人と向き合うということをしていなかったのか。
僕には家族がいた。5年前までは。幸せが壊れるというときはほんの一瞬。
僕もそうだった。朝、起きると家は静寂に包まれていた。おはようが聞こえない。食器を準備する音が聞こえない。僕にとって異常な朝だった。リビングへ向かうと
目の前には暖かみを失った家族がいた。
犯人は、5人の大学生らしい。それを聞いた時、僕の中で何かがプツンと切れた音がした。そこから僕は人が信じられなくなった。だからこの本という世界に逃げてきた。現実を見ないために。振り返らないために。
いまの沈黙があの朝の静寂に似てる気がした。
読んでいただきありがとうございます。第二話いかがだったでしょうか。第二話では、澤田の過去に触れました。
気になるのはやはりあの異常性。しかし涼は彼女にどこか惹かれているようです。
不可解な彼女と主人公はこの先どんな関係になっていくのでしょうか。
ぜひ楽しみにしていてください。
アドバイスお願いします。