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第2部 18話 コルナリン侯爵家夜会 後編

 その後も社交は続きます。

 私とドリィは、お祝いの言葉やポーションや翡翠蘭(ジェードオーキッド)ハーブティーについての質問などに対処し、噂話に耳をすませます。


「かなり好意的な反応が多い。俺も辺境騎士団も名誉が回復できた。嬉しいな」


「ええ。一安心です」


 この夜会は、様々な派閥役職身分の貴族が参加しています。大半から好意的な反応を頂けているということは、私とドリィの努力が実ったと言っていいでしょう。

 もちろん、お義母様たちやナルシス伯爵夫人のご協力あってのことですが。


「必要に迫られて社交に力を入れたが、今後のミゼール領のためにも良かった。これも、ルティが新特級ポーションや翡翠蘭ハーブティーを作ってくれたお陰だ」


「ドリィがミゼール領辺境騎士団を盛り立てて、魔境を浄化し続けたお陰よ。本当に凄いことなんだから」


「しかしそれもルティのポーションのおかげで……ははっ」


「ふふ。お互い様と言うことにしましょう」


 微笑みあった後、ドリィが声をひそめて囁きます。


「あの男……パーレス・グルナローズの評判は地に落ちたようだ」


「でしょうね。あの日からその話題でもちきりですもの」


 近衛騎士隊特別訓練時の暴挙が広まり、私と婚約しているという事実無根の妄言を吐いていることも知られたのです。

 ほぼ自動的に、私たちの悪評を流したことも認知されてしまいました。

 あちこちから噂話が聞こえてきます。


『騎士は戦うしか能のない野蛮人だとさ。酷い侮辱だ。辺境伯家の三男ともあろう方が、騎士の何たるかを知らないらしい』


『ベルダール辺境伯とプランティエ伯爵の婚約に横入りするのは無理だ。すでに承認されたも同然、しかも政略的にも優れた婚約だぞ』


『以前から世情に疎い方とは思っていたが、いささか浮世離れし過ぎていらっしゃるようだな』


『まだお若いのだから仕方ないさ。まずいことをした自覚はあるのだろう。最近はどの夜会にも出ていないそうだ』


 確かに、世間の反応を受けてか近衛騎士隊長様から抗議されたからかはわかりませんが、令息は社交の場には出ていないそうです。

 ドリィが囁きます。


「デなんとかを初め、取巻き連中も見かけないそうだ」


「デルフィーヌ・アザレ伯爵令嬢様ですよ。覚えて差し上げて」


「必要ない。奴らは終わったも同然だ」


 確かにそうです。

 パーレス・グルナローズ辺境伯令息の名誉も信頼も、地に落ちてめり込んでいます。浮上しようもありません。

 また、取巻きごと適切な処理が終わるのも秒読みだと聞いています。


 ただしそれでも、令息が流した噂を信じる方、噂を利用しようとする方は居ます。

 高貴な血を引く準王族で、見た目だけはいいからでしょう。


『惨殺辺境伯め。噂以上の無礼者だな。高貴なお方に恥をかかせるとは何様だ』


『プランティエ伯爵閣下、お可哀想。ベルダール辺境伯と無理矢理婚約させられて……』


『ふん。色気のない貧相な方ですこと。偉丈夫のベルダール辺境伯を満足させれてるのかしら?』


『アメティスト子爵家はいくら渡されたんだ?前から腹黒いことをしてると思ってたんだよ』


『元魔境産の翡翠蘭だって?ずいぶん高値で売るらしいが、飲むと魔獣になりそうだな』


『あのパーレス様から望まれているのに応えないなんて……お高く止まりすぎよ』


 聞こえよがしの噂話。私たちは内心大激怒ですが、あえて反応しません。


 お義母様とお義姉様からも忠告されました。


『ルルティーナ、アドリアン坊ちゃん。直接言われれば叩き潰して構いません』


『お母様、叩き潰しちゃ駄目でしょ。もっとバレないやり方でヤるのよ』


『駄目なものですか。伯爵と辺境伯への無礼ですよ。一昔前でしたらその場で処刑です。

 それはともかく、直接言われてない噂話は無視しなさい。反応しても喜ばせるだけです。

 それに、もう直ぐ全てが終わります』


 お義母様のおっしゃる通りでしょう。

 でも、油断はいけません。令息はあれから接触してきませんが、手紙攻撃は続いています。


「幾つかの不穏な動きも報告されています。

 エディット様の視線と態度も気になります。疑いたくありませんが……」


 あの令息たちは、若い女性を弄んでは良いように扱っているとか。そこまでではなくても、たぶらかされて心酔している女性は多いそうです。

 先ほど聞こえよがしに『パーレス様に応えないなんて』と、言った女性もそうです。

 特に、傷心の女性は狙われやすいと聞きます。


 エディット様が、ジュリアーノ・ナルシス様と婚約破棄してまだ一年も経っていません。


 当時は相当お辛かったと聞きます。今は立ち直ったとはいえ、つけ込む余地はあるでしょう。


「エディット様がたぶらかされていないといいのですが」


「エディット嬢はしっかりした方だ。無いと思う。あの態度は別の理由がありそうだ。

 ただ、警戒するのは大事だ。奴らも焦っているらしいからな」


 令息たちは、なりふり構わず私を手に入れようとするでしょう。ゾッとします。


 ですが、そうはさせません。


 私は、私に出来ることで令息の野望を挫きます。



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