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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

クズ石回した転生者は今日もお貴族様の胃にダイレクトアタックを食らわせる

作者: クロ

──クズ石。


それはゴブリンなど弱い魔物から採れる小さな魔力結晶の事だ。

基本的には魔力ポーションの原料として使われるそれは一定の需要がある一方、子供でも採れる程度の代物であるため、冒険者という職業の大人には見向きもされない。


王都には、そんな臆病でみみっちい事を繰り返して日々の賃金を稼いでいた男が1人いた。

自分の事をサロマ=ヤスタカと自称するうだつの上がらない風変わりの冒険者だ。

彼は既に王都にはいない。

ある日、異国から来たという魔法使いと話をした彼は突然この王都を出て行ってしまったのだ。


彼の同業者達はそれを聞いて嘲笑った。

きっと彼の男は逃げたのだ、と。


そうして酒の肴になった彼は、王都の同業者(冒険者)達の記憶から姿を消したのだった──。


◇◆◇


俺の魂は農耕民族だ。

なので荒事は苦手だし、今みたいにガーデニングしてる時が1番楽しい。

とはいえ、そう簡単にそんな心穏やかな日常を送れないのがこの異世界だ。

魔法はあるし、魔物もいるし、山賊や盗賊といった犯罪者なんかもたくさんいる。

日本を知っていると、


治安世紀末かよッ!!?


とかツッコミを入れることだろう、俺は入れた。


この世界、普通に放火とかしてくるからね。

魔法って本当にたちが悪いと思う。

まぁそんな世界で生まれて二十と少し。

天涯孤独にはなったけど一応、平穏に近しい生活を手に入れた俺は今日も優雅に花壇の手入れをしていた。

花壇と言っても食える野草や野菜が主なんだけどな。


「──花壇って規模じゃありませんけどね」


休憩所として作った簡易的な四阿で、そうため息をついたのは領主の娘であるマリーだ。

この地方でよくみかける茶髪と碧眼の少女で、時たま街の外にあるココにやってくる。

その目的は俺の発明した魔道具の『研究』だ。


「どうせなら……って気分で毎年広げてみたら、結果的にこの広さになっただけだぞ?」


「広げたことではなく、一人で管理出来ているという点を疑問に思ってくださいな」


「管理っても虫がつかないか見て回る程度だし、マリーにも手伝ってもらってるだろ?」


「ただの留守番が手伝っているうちに入るなん」


バチィッ!!!


遠くで起こった放電の音がこっちまで聞こえてきた。


「て……また、ですか」


「ちょっと観てくるわ」


「乗せてくださいまし、(わたくし)も行きます」


そう言ってきたマリーと一緒に俺はまったりと音のした方へトラクターモドキを走らせるのだった。


◇◆◇


「ゴブリンだな」


「ゴブリンですね」


そこには数匹の焦げ臭いゴブリンの死体が転がっていた。


「いつもながら狼や鹿系の魔物はいないな」


「とにかく処理してしまいましょう。

 これでも冒険者なら報酬はでるのでしょう?」


「雀の涙程度なら。

 ゴブリンの活用法とかないもんかねぇ」


「……貴方がここで見出したものがそれですよ」


「そうかなぁ……」


魔力結晶以外の部分もどうにか使えないものか……。

とりあえず今は備蓄しているゴブリンの魔力結晶も余り気味だし、街で換金して調味料でも買うか。

冒険者ギルドに持っていくのと、鍛冶屋に持っていくの、どっちが良いかな?


◇◆◇


ヤスタカは変人。

それは領主の娘である私、マリー=ヴァンキッシュが保証します。

彼が喜ぶので、ヤスタカと呼んでいますが、彼の本当の名はドルエンですし、高い塀に囲まれた安全な街に住まずに、気の休まらない近場の森に土地を買って暮らしているのが何よりの証拠です。


しかし、それ以上に彼は天才発明家です。

ただの変人が近隣の村々に作物を売りにいけるだけの耕作面積を一人で管理なんか出来ません。

しかも畑の防備はかなり堅牢です。

先ほどの雷魔法が良い例でしょう。

しかし彼は、これは魔法ではない、と言います。


仕組みの話は聞きましたがはっきり言って理解が及びませんでした。

それが悔しくてこうして入り浸っていますが、そのお陰で多少は彼のやっていることが理解できました。


彼は文字通りの意味で回しているのです、魔力結晶を。


回すだけならば、遠方で生まれた技術である小さな魔法陣【魔術回路】が描ければ誰でも出来ます。


でもただ回すだけの回路なんて手習いか、子供のいたずら以外では誰も書きません。

そんな事をするなら、もっと大規模で複雑な魔法を書き込むでしょう。


しかし、それを大真面目にやったのがヤスタカです。

その恩恵は途轍もないものでした。


わかりやすいのが扇風機です。

氷魔法に頼らずとも夏が格段に過ごしやすくなりました。


分かりづらいのは旋盤です。

こちらは徐々にその異常性が如実になってきました。

いまや細工師にとって無くてはならない必需品になっています。


しかし、それらの市場に出回っているものはほんの一部に過ぎません。

ヤスタカの手にかかれば、回しただけで崖に穴が空き、木を伐採し、馬車が独りでに動きます。


この時点で余りにもおかしいのに、果ては柵に巡らされている雷魔法です。

回したら雷魔法が出せるそうです。

意味がわかりません。

その理屈はおかしいです。


でも事実、雷魔法でゴブリンを駆除できています。


嗚呼、お父様。

お父様の懸念は当たりました。

ヤスタカは世界の破壊者です。

だからどうか私の報告書を見たくないと駄々をこねるのはお辞めください。


END

お読みいただきありがとうございました


モーター替わりに魔力結晶を利用して技術チートをしているヤスタカの明日はどっちだッ?!

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