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チュー、したい!( ショート・ラブストーリーズ)  作者: 山田さとし
第1話 プロローグ
1/116

ある少年の妄想

これ、実話です。


昔、むかし。

僕が中学生の頃。


部活の帰りだったか。

田舎の学ラン着た、ニキビ面の中坊6人ほどで。


僕はバスケ部で。

同じく奥村、田中。

他に卓球部の西島、赤石。


それと。

中島・・・だっけ?


卓球部でスタイルも良く、イケメン。

普段はクールで無口。


というか。

不愛想で、ちょっと、苦手でした。


彼女はいません。

結構、オクテなのです。

中2だと、みんな、そうだったけど。


少し、神経質で。

ズボンの裾のタックを、いつも気にして。

ピンとなっていないと、気になるのだそう。

仲間からは「気にし君」と、あだ名されてました。


その六人で。

部活の疲れを引きずりながら。

とりとめない話をしていました。


中でも。

僕がしゃべりの中心でした。


この頃から、おバカな話をするのが大好きで。


この日は。

「女の子にモテる、ラブレターの渡し方」

について、語っていました。


普段の妄想を、アドリブで話しています。


「ラブレター、渡すんだよ・・・」


みんなも異性のことは関心あるのか。

口を挟まないで、聞いています。


「場所は・・・」

ニヤついて、聞いているもいます。


「体育館脇の階段下」


あるある。

頷く、赤石。


「ンッ・・・て」


「ンッ・・・?」

田中が聞き返す。


「黙って、渡すのっ・・・」

「ンッ・・・て」

「なまじ、しゃべるとボロ出るだろ?」


「なるほどぉ・・・」

奥村は、いつも僕の味方。


「だからさぁ・・・」

それに気をよくして、僕が続ける。


「渡したらさぁ・・・」

中2のくせに、タメを作ってる。


「逃げるんだよ・・・」


「逃げるぅ?」

田中が間髪入れずに突っ込む。


その陰で、中島が冷たい視線を投げてくる。


「そう・・・」

意に返さず、答える僕。


「前かがみで・・・」


「前かがみぃ?」

赤石が続く。


「ダッシュするんだ・・・」


「何で、そんなことすんの?」

これは、西島。


「バカ、恥ずかしい気持ちの演出だよ」


「何じゃ、そら?」

田中が疑わしい目つきで聞く。


「まぁ、まぁ・・・」

奥村がとりなす。


「それで?」

尋ねる西島越しに、中島の顔が見える。


「それでぇ・・・」

ひるまず、僕が続ける。


【フンフン・・・】

みんな結構、聞き耳たててます。


「こけるの」


「え・・・?」

奥村の目が丸くなる。


「こけるんだよっ」

徐々に、熱弁になっていく。


「ザザーと、ヘッドスライディング!」

得意げな僕。


【何じゃ、そらぁ?】

四人の声がそろいます。


「何で、こけるんだよ?」

「そ、そりゃあ・・・」


田中君の突っ込みに。

もったいつけて、口ごもります。


「可愛いってぇ・・・」

両手を組んで、声を裏返す。


【はぁ?】

又も、四人の大合唱。


「山田クン、面白い人ぉ、可愛いっ・・・」

ますます、高音で。


「・・・って」

「思うんだよ」

「彼女がぁ・・・」


【ダッセー・・・!】

と、同時に大爆笑。


男子中学生の帰り道での、おバカな会話です。


笑いこけながら。

ふと。

後ろを見ると。


中島が。

群れの後方で歩きながら。

相変わらず、ズボンの裾を気にしていました。


そして。

小さく呟いたのを、今でも覚えています。


「やっぱ、俺には無理・・・だな」


この日から。

中島のことを。

チョッと、好きになりました。


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