第十二話 試験内容と不安な先行き
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試験内容の説明はいたってシンプルだった。
「F級探索者になればF級ダンジョンに潜れるようになります。その際にそのダンジョンの魔物を倒せないのでは話になりません」
だからこれからとあるF級ダンジョンに行って、そこで探索しながら魔物と戦う姿などを見せてもらう。
簡単に言えばそれが今回の試験の内容だった。
「基本的に私は命の危機に陥るまで手を出しません。自分達でどうにかするように」
この森田という試験官はいざという時は助けてくれるが、仮にそれに頼った場合はその時点で試験は失格となる。
当然だ、試験官がいなければ死んでいるような奴では、この先もF級ダンジョンでやっていけるはずがないのだから。
「なお、今回はこのメンバー間で出来る限り協力して試験に臨んでもらいます」
「ええ? 聞いてないんだけど」
そう言ったのは俺が唯一合格しそうだと思った男の方で桐谷というらしい。
「F級以降ではソロ活動は厳しくなるのでパーティを組むことも増えます。今の内からその経験を積んでおくのは大事なことですよ。勿論、協力してもらうといっても全てではありません。少なくとも一度は魔物と一対一で戦ってもらいます」
一対一がある以上は運良く一緒に試験を受ける奴が強くても、あるいは金で雇った護衛を引き連れてもダメな訳だ。
「ちっ、お荷物のお守りをさせられんのかよ」
そう言ってこちらを睨んでくる桐谷。
どうやらこいつは女子二人とは違って俺が誰だか分かっているようだ。
「まあまあ、そうカリカリしないで。協力して頑張りましょうよ」
最後の一人である優男の加藤がそう宥めている。
彼は実力の方はあまり高くなさそうだがコミュニケーション能力に優れているのか、俺達にも話題を振って互いに自己紹介をする流れを作ってくれた。
「桐谷」
もっともこの態度の悪い奴は名前を言うだけで、こちらとの会話をほとんど拒んだままだったが。
「なにあれ。態度わる」
「何だよ、そこの女。雑魚のくせに文句あるなら言ってみろよ」
「はあ? なんで私達が雑魚だとあんたに偉そうにされないといけないわけ? 強いっていったって同じG級のくせに」
「なんだと!」
「凄めば黙ると思ってんの? あんたは原始人か何か?」
「ちょっと、ひまり!」
どうやらひまりは気が強いのか完全に売られた喧嘩を買う態勢に入っていた。
実美や加藤が止めに入っているが、熱くなっている二人はその制止を聞こうともしない。
といっても完全にキレてはいないのか手が出る様子はない。
段々とお互いに吐く暴言が過激になってきているかもしれないが、それでもあくまで口喧嘩の範疇だった。
「どうします?」
「ほっとけ」
「ですよね」
こんな意味のない争いに労力を割くのがもったいない。
そんなことするくらいならスキルレベルを上げるためにこっそり錬金と回復を繰り返す方が断然有意義だ。
「そう言えば愛華はさっきなんであんなに驚いてたんだ? もしかしてあれか、俺が初対面の相手に普通に接したからとかか?」
いつもなら猫を被っているのにと思われたのかもしれない。
だがあれは会社の一員として活動している時の話だ。今の俺は探索者であり会社とは関係ない立ち位置にいると自分では認識している。
ならばわざわざあんなガワを被る必要はないのだ。
そう思ったのだが愛華が驚いた点はそんなことではなかった。
「いや、あの先輩が恋愛とかの話をするんだなって思って」
「おい、それはどういう意味だ?」
「てっきりその辺りの感情は全部探索者に不要だからってダンジョンにでも捨ててそうだなって」
「ははは、言うようになったな。優秀な我が後輩よ」
最近になって特に生意気になってきた素晴らしい後輩の頭の上に手をポンと置いてやる。
その瞬間はびっくりしたのか若干顔を赤くしてこちらを見てきた愛華だったが、すぐにその表情は崩れた。
「痛いです! 痛いですよ先輩!?」
「安心しろ。装備でステータスも若干上がってるからこの程度なら怪我はしない」
「絶対に嘘! 今にも頭が潰れそうですって! ミシミシ言ってますって!」
「心配するな、最悪でも凹むくらいだし、そうなっても回復薬で治してやるから」
「いたたたた! 暴力反対!?」
魔物をぶっ殺すのが仕事な探索者が何を言うか。それにこれは暴力ではなくお仕置きだし。
「……はあ、今日の試験は大変そうだな」
そんな俺達の様子を見て試験官の森田がそう呟いたのが聞こえた。
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