第八話 ゴブリンダンジョン攻略 その3 ボス戦以下略
本日も9時と17時に更新します。
あとそれとは別に20時あたりに軽い設定集的なの(一部のスキルとかの詳細)をあげるので多少のネタバレ気にしない人や興味ある人は覗いてみてください。
ゴブリンダンジョンは全50階層とG級にしては多いため、一日で踏破することはあまりない。大抵は五階ごとに存在するどこかの一室のセーフエリアで休憩を挟んで何日か掛けて攻略するものだ。
だから半日も掛けずにボス部屋まで辿り着いた俺達は新記録を樹立したとみて間違いないだろう。もっとも誰もそんなものを目指してないし記録してもいないからどうでもいいことだけど。
「さてと、最初のボスは何が出るかな」
「あれ? ここのボスって決まってないんですか?」
「ゴブリン系の何かが出るのは決まってるよ。ただ幾つか種類があって、おまけに複数の場合もある。まあどれだろうと問題ないけど」
あれから想像以上にガッツのある愛華の指導に比重を割いたこともあって俺のランクは上がっていない。その遅れはここで取り戻すとしよう。
ボス部屋に入ると戦闘に参加させられない愛華には壁際に下がってもらって見ていてもらう。
(ゴブリンキングが一体だけか、微妙だな)
視線の先で待つボスはF級からE級ダンジョンで現れる魔物だ。
ホブゴブリンのように人間に近い体型ではなく、姿形はゴブリンのまま二メートル超えの巨大化したような奴である。
つまりバランスの悪さは通常のゴブリンと一緒。勿論力が強くなっていたり多少は賢くなっていたりなどの強化はされているが、それでも俺の脅威になるかと言われれば答えはこれまでと変わらない。
時間を掛ける必要もないので一直線に敵に迫ると反応して殴ってくるその拳を紙一重で躱しながらその身体目掛けて剣を薙ぐ。
(流石に一撃では終わらないか)
腹部にそれなりの傷が出来て緑色の血がかなり溢れ出しているが、HPもそれなりに増えているせいか終わらない。
「グオオオ!」
そのまま追撃して終わらせても良かったのだが、確認してみたいことがあったのであえて次の一撃を防御せずに受けてみた。
繰り出された拳が俺の腹に決まって吹き飛ばされる。
「先輩!?」
「ああ、大丈夫。わざと受けただけだから」
倒れることなく着地してそうは言うものの、内臓が傷ついたのか口から吐血した状態では心配にもなるか。
まあHPにそれなりのダメージは入っているだろうしその分の痛みもかなりある。
更に衝撃で胃の中身が出てきそうだ。
だが逆に言えばその程度でしかない。
(ランク3でゴブリンキングの攻撃をまともに受けてもこれだけか)
普通のランク3なら、初期VITがどれだけ高かったとしても、骨が砕けた上で内臓が潰れて確実に死んでいる。
その前にゴブリンキングの動きについていくことすら難しいだろう。
「あはは、最高だ!」
そのことを自覚して思わず笑みがこぼれる。
自分が強くなれることが分かって楽しくてしょうがない。
「ありがとよ。お前のおかげで尚更実感できた。俺は強くなる。どの探索者よりもな」
そのことを確かめさせてくれたゴブリンキングに感謝を捧げよう。
そしてもう用済みなのでさっくり終わらせよう。
「グオオオオオ!?」
幾ら攻撃しようとも今度は掠りもしない。
それどころか回避の度に切り刻まれてダメージを負うばかり。その状況に攻めるのを躊躇ったゴブリンキングだったが、だからといってこちらが待つ必要はない。
「じゃあな」
思わずといった様子で下がろうとしたその隙を逃さずに加速して前に出てその首に剣を滑り込ませる。サイズ的に両断はできなかったが深い切れ込みが入ったことで勝負は決した。
そのまま倒れてゴブリンキングは魔石だけを残して消えていく。そして今度は試練の魔物が現れるなんてイレギュラーは起きずに普通にダンジョンコアが出現した。
「先輩、お腹は大丈夫なんですか?」
「問題ない。まあ最悪は内臓が幾つか潰れてるかもしれないけど回復薬があるから大丈夫だ。低位体力回復薬でも多少の肉体の損傷なら治るのは確認が取れてるからな」
でなければ試練の魔物の攻撃で潰されかけた目が治りはしない。
あれも完全に潰されていたらどうなるか分からなかったことを考えると幸運だったと言うべきか。
まあ仮にそうなっていた場合でも、その後に手に入ったドロップアイテムがあればどうにかなっていたので大した違いはないとしよう。
「これでこのダンジョンもクリアしたし今日の目的は達成ですね」
「何を言ってるんだ? これからが本番だぞ」
「え?」
「ん?」
これだけのために俺がダンジョン攻略する? そんなことある訳ないだろう。
「ああ、そうか。もう疲れただろうし帰りたいんだな。それなら先に帰っていいぞ。こういう階層が多いダンジョンだとボスを倒した際にダンジョンコアと同時に帰還ゲートが現れることが多いからな」
現にここでも帰還ゲートは現れている。あれに入ればダンジョンの入口まであっという間だ。
「いや疲れたのは疲れましたけど。そうじゃなくて先輩は残ってこれから何をするんですか?」
「周回」
「しゅ、周回?」
「そうさ。そもそも俺がなんでここを選んだと思う? G級の割に階層が多くて、しかも現れるのがゴブリンという売れない魔物の不人気ダンジョン。だからこそ人目にも付かずに愛華を鍛えられるしボス部屋を占領しても何も問題が起きない」
下手に人の多いダンジョンだとこんなことはできない。他にもボス戦を行おうとしているパーティが居たらその度に譲らなければならなくなるからだ。
だがここならその心配は皆無。存分にボス戦周回を行えるというものだ。
「ちなみにその周回っていうのはどのくらいやるつもりなんですか?」
「正確に決めてないけど、とりあえず丸一日くらいはやると思うぞ」
「丸一日!?」
「最低な」
ここで経験値稼ぎが出来ると踏んでいたからこそ、ここまでは愛華の鍛錬の方を重点的に行なってきたのだ。
ここからは本格的に俺の時間である。
「それとももしかして愛華もまだ訓練を続けたいか? 流石に疲れてるかと思ったから今日はここまでにしようと思ってたんだが、それなら今から一階層まで逆走してもいいけど」
「いや、いいです! 私はもう疲れました!」
「だよな。肉体はともかく精神的な疲労は回復薬じゃどうしようもないからしっかりと休んでおくといい」
俺はいいのかって? この程度で疲れるような軟な精神はしていないので大丈夫。
むしろ最高効率で周回を行なって早くランクを上げたくてウズウズしてるくらいだ。
「……丸一日は付き合えないので先に帰ります。だけどもう少しだけ見学してもいいですか?」
「構わないぞ。帰りたくなったら声を掛けてくれ」
万が一の時の為に転移石を渡しておくので問題ない。
それでは早速ボス戦周回を開始するとしよう。
「お、今度は当たりな方だな」
ダンジョンコアに魔石を返還すると新たにゴブリンキングが二体も現れてくれた。
単純計算で経験値が二倍である。
そしてもうあえて攻撃を喰らうつもりはないので勝負は先ほどよりも早く終わらせられるはず。というか効率を考えればそうすればするほど経験値を稼げるのだ。やらない手はない。
(意味のないタイムアタックかもしれないけど、割とこういうの好きなんだよな)
そんなことを考えながら俺は獲物へと飛び掛かっていった。
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