第七話 ゴブリンダンジョン攻略 その1
マンションの廊下のような通路をどんどん進んでいく。
その過程で現れるグリーンゴブリンは全て一閃で切り伏せながら。それを繰り返して二十階まで来たところでランクが三に上がった。
ちなみに手に入れたレシピだが今は素材が足りなくて作れない物だったので省略する。
ランク3
ステータス
HP 44
MP 36
STR 32
VIT 27
INT 29
MID 45
AGI 30
DEX 31
LUC 22
普通ならここまで連続して魔物を相手にしたら体力が持たない。
疲労を考えれば適度な休憩が必要になるし、そもそも安全を考えるならソロで連続して戦い続けること自体が無謀と言えるだろう。だが俺はゴブリン相手なんて慣れている上に体力もランクが上がれば上がるほどに増えてむしろ楽になっていく。
あとは同じことの繰り返しによる、また魔物という危険な相手との命を懸けた戦いにおける精神的疲労が難点となるのかもしれない。
もっとも俺は割とそういう精神的な面はタフなのか、長時間の戦闘も苦にならない性格をしていることもあって全く問題なく殲滅と探索を継続できていた。
「よし、俺の方もランク3になって大分余裕が出てきたからそろそろ愛華にも戦闘に参加してもらおう」
「私もやるんですか?」
「今後のことを考えれば戦闘経験を積んでおいて損はない。大丈夫、俺と同じペースでやれとは言わないから」
魔物から得られる経験値は通常では最後の一撃を行なった者にしか入らない。
そこまでどれだけダメージを与えていても止めを刺した人物が総取りすることになるのだ。だからこれまでの戦闘で愛華は経験値を一切手に入れていない。
「とりあえずの俺達の目標はランク10になることだな。そこまで行けばG級ダンジョンのボスとも十分に戦える。それに加えてF級の昇格試験を受けても問題ないし他にも色々と役に立つスキルやジョブも手に入るからな」
そうしてグリーンゴブリンとの戦い方の指導に入る。これもビッグラットと同じでそう難しいことではないので指導自体は簡単に済んだ。
まずは集団と遭遇した際に一体だけ残して始末する。その最後の一体に対して愛華が動いた。
「よいしょっと!」
愛華の得物はメイスだ。それをステータスで強化された身体能力のおかげで軽々と振りかぶる。対するゴブリンはその動きを見て持っていた刃こぼれした剣で防ごうと頭の上でそれを横に構えた。
それを待っていた愛華は振りかぶったメイスをそのままに前蹴りを放つ。その蹴りで腹を蹴られたゴブリンは不意を打たれたこともあってかあっさりと後ろにひっくり返った。
そんな隙を晒せばどうなるかは言うまでもない。
「そこ!」
今度こそ容赦なく振り下ろされたメイスがゴブリンの身体を打ち据えてあとはそのまま滅多打ちで終了した。
解析が完了した魔物の死体はアルケミーボックスで解体できるのでその機能を使うことにする。これでいちいち解体する手間が省けるので有難い限りだ。
「ゴブリンはビッグラットと同じで頭が悪い。だからフェイントを仕掛ければほとんど決まる。その上であいつらは体が小さいくせに頭が重くて体のバランスが悪いから、一度でも倒れると中々起き上がれない。そこを突ければ初心者でも楽勝って寸法だ」
ただし力はG級にしてはそれなりに強いので、今の愛華が攻撃を受けるのは避けた方が無難だろう。少なくとも集団相手はもう少しランクが上がってからでないと何かイレギュラーな出来事があった時に危ない。
もっとも今は俺がいるから大抵のイレギュラーにも対処できるので心配はいらない。だから体力が続く限り狩りをしてもらうとしよう。
「ある程度、戦闘をこなしてゴブリンとの戦闘に慣れてきたら二十五階層の中ボスに行こう。そこもクリアできたのなら五十階層のボス戦だ」
ただし中ボス及びボス戦は愛華にはやらせず戦うのは俺だけだ。
単にランクを上げるだけなら俺が弱らせたボスを愛華に倒してもらうのが一番手っ取り早いがそれはまだやるつもりはない。
何故ならあまりに早い段階でそれをやってステータスを上げてしまうと、戦闘経験を積むという点からあまり宜しくないからだ。
加減を誤った促成栽培で出来上がるのは歪な成長の仕方をした脆い探索者だけ。
そもそもそんなやり方で腕の立つ探索者が量産できるのなら、ウチの会社やその他の企業でも率先して行なっていることだろう。そうでない時点でその方法が良くないのは察せられるというもの。
(その方法でやってるところもあるにはあるが、その大半が探索者を使い捨てのように考えている質の悪いところばかりだからな)
色々と厄介な面倒ごとに巻き込んだ手前、愛華についてはしっかりと育てる責任が俺にはあると考えている。少なくとも本人のやる気がある内は探索者として一人前になれるようにするつもりだ。
その道が楽だとは口が裂けても言えない。けれどその苦労に見合う成果は出せるようにするのでそれまでは辛くとも我慢してもらうとしよう。
「そう言えばこのゴブリンの素材ってどれくらいで売れるんですか?」
そう思ったがこうやって金のこととなると疲労がする。
「グリーンゴブリンの魔石は一つ百円くらいで買取されてるな。他の肉や骨はもっと安かったはず。まあ稼ぎとするには大分効率悪い部類だわな」
「稼ぎにはならないんですね。じゃあ先輩にあげます」
こいつ堂々と稼げないなら興味ないと言わんばかりに押し付けてきやがった。
俺もグリーンゴブリン素材については解析が完了しているのでそこまで必要ではないのだが。まあ血肉は錬成水、骨は錬成砂になるようなので分解して素材のストックにさせてもらうとしよう。
そちらなら特別枠なので容量を圧迫しないし。
「まあいいか。とりあえず25階層までは集団と遭遇したら一体を残して殲滅するから、残したそいつで人型の敵に対する基礎を学びながら進んでいこう」
「分かりました」
グリーンゴブリンメイジなどの少し変わった奴が出てくるようになるのは、中ボスを越えた26階層以降なので今のところ相手にするのは普通の通常種と呼ばれる奴だけ。これなら対処の仕方さえ間違えなければ問題になることもないはず。
その予想通り残り五階層の間は特に何も起こることなくあっさりと中ボス部屋まで辿り着くのだった。
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