第十五話 アイスドレイク戦後の後始末
奥の手を使わずにアイスドレイクを倒せたことに安堵しながらステータスカードを確認すると、なんとランクが四つも上がっていた。
しかも竜殺しという新しいスキルまで獲得しているという嬉しいおまけ付きで。
(やっぱり上級の魔物の経験値は桁違いだな。てか、そもそもがこのランクでアイスドレイクと戦うこと自体があり得ないんだけど)
しかもそれで勝つとか普通ではどんな手を使っても不可能でしかない。
でもそんな不可能を成し遂げたからこそ、こうして劇的なランクアップがなされた訳だ。
「あれ? そう言えばいつの間にか吹雪が止んでるな」
どうやら偵察班のスキルが通用しない妙な吹雪は、このアイスドレイクが原因だったらしい。
でもE級の探索者のスキルが通用しなかったのもそれなら理解できる。
(アイスドレイクほどの魔物となればスキルレベルも相当高いはずだからな)
なお同じ種類の魔物であっても個体ごとに所有するスキルやそのレベルには差異があることが確認されている。
その種族固有のスキルなどは同じでも、それ以外で差が生まれる形だ。
だからC級ダンジョンとB級ダンジョンで出現するアイスドレイクも後者の方が強い場合が多い。それで考えると、このアイスドレイクはB級ダンジョンで現れる個体ではないと思われた。
(戦い方とかにもどこか油断や驕りがあったからな)
もっともそれでもどうしてこの個体がE級ダンジョンに現れたのかは未だに不明だが。
沈黙したアイスドレイクの死体は何も語らないし。
「……って、なんで死体が残ってるんだ?」
これだけランクアップしたからアイスドレイクを仕留めたのは間違いない。
こいつほどの魔物を倒しでもしなければ、こんなことは絶対にあり得ないだろう。
でもだとしたら、どうしてその死体が消えていないのだろうか。
それにダンジョンコアも現れていない。
(……前にもこんなことがあったぞ、おい)
とにかくこのまま死体を放置しておくと何かあった時に怖いのでアルケミーボックスに収納しておくことにした。
素材としてもこれらは貴重で有する特性も優秀なものだし。
そうしてアルケミーボックスにアイスドレイクの死体を収納すると、一瞬でその巨体が消える。
だがその場にはあるものが残されていた。
そしてそれを見た俺は驚愕に目を見開いて息を呑む。
「って、お前ら死んでなかったんかい!」
氷の彫像となってアイスドレイクに呑み込まれたベルセルクブル。
きっちりその五体が解凍されてその場に横倒しになっていた。
「驚かせやがって。また試練の魔物の時みたいなことが起こるのかと、ちょっと考えちまったじゃねえか」
確認してみると五体とも虫の息だが、ギリギリで生きている。
どうやらあの状態でもアイスドレイクの腹の中で生き残っていたらしい。
狂乱状態だったこともあってVITとかも高まっていたのが功を奏したのだろう。
「結局は意味ないけどな」
こいつらがボスである以上は仕留める対象だし。でないとダンジョンコアを出現させられないのだから仕方ない。
(仮にそうじゃなくても仕留めるけど)
魔物は倒すべし、慈悲などない。
探索者の大事な心得を実践するべく俺はサクサク倒れているベルセルクブルに止めを刺していった。
なお、複数体のボスの場合は最後に倒した個体の魔石が残ることになる。
「……これをダンジョンコアに戻せばどうなるんだ?」
恐らくはベルセルクブルが新たなボスとして現れるのだろう。
あのアイスドレイクは出現の仕方などからしても何らかのイレギュラーのようだったし。
だが万が一、という可能性もなくはない。
もしその万が一とやらが叶えばこれほど美味しい話はないだろう。
だから念のため各種回復薬で万全の状態に戻っておく。
そして期待を込めてボスの魔石をダンジョンコアに返却してみた結果、現れたのは何の変哲もないベルセルクブルが三体だけだった。
そしてしばらく待ってみてもアイスドレイクが上から現れる気配すらない。
「……だよな、知ってたけど」
それでも落胆は隠せなかったので八つ当たりでベルセルクブルを瞬殺した。
(いや、まだだ! もしかしたらベルセルクブルが五体出現させるのが条件なのかもしれない!)
半ば無理だとは分かっていたのだが、どうしても期待を捨てきれなかった俺はその最後の希望に縋るべく周回を行なった。
だがその結果の果てに得られたのは獣殺しというスキルだけで、俺は落胆の念を禁じ得ないまま、そのダンジョンは消滅させることとなるのだった。
八代 夜一
ランク19
ステータス
HP 248
MP 240
STR 236
VIT 231
INT 233
MID 249
AGI 234
DEX 235
LUC 226
スキル 錬金レベルⅦ 錬金素材作成レベルⅥ 錬金真眼レベルⅣ 霊薬作成レベルⅡ アルケミーボックス 錬金術の秘奥 剣技覚醒 水銃レベルⅠ 昆虫殺しレベルⅤ 過剰駆動 竜殺しレベルⅠ 獣殺しレベルⅠ
ジョブ 錬金剣士レベルⅦ
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