カイさんとヒヨリさん
カイさん。彼は宇宙人。顔にはカイゼルひげがついている。頭には一本毛が生えており、感情によってあちこち動く。身長は私の膝小僧ぐらい。それがうちにやってきたのは、数週間前のことである。
私はヒヨリ。少額五年生。好きなものはハンバーグ。カイさんは突然うちにやってきて、第一声にこう言った。
「今日からここに住むことになった。私はカイ。どうぞカイさんと呼んでくれたまえ」
なんだこの生き物は。いきなりやってきてそれはないだろう。しかも頭の毛がぴんぴん動いて気色悪い。
「あのー、急にここに住むといわれても困るんだけど」
「構わん構わん。お前さんの部屋にでも住むわい」
「いやいや待って。すごく待って。勝手に住まれても困るんだよ。早く出ていってくれないかな」
「なんと!地球人はなんと優しくないのか。わしがここまで下手にでておればいい気になりおって・・・」
「な、何よやる気?」
「うわああああん。ひどいひどい!そんな風に言わなくてもいいじゃないかああああ!」
そういうとカイさんは泣きながら、というか大号泣で家を飛び出していってしまった。
「なんだったのよもう・・・」
私が、ぶつぶつ言いながら自分の部屋に戻るとそこにはなぜかカイさんがいた。
「やあ、おかえり。早かったじゃないか」
私はザザーッとすべりこけた。
「なんでここにいるの?!」
「なんでって、ここに住むのだからいて当たり前じゃろ?」
「私にとっては当たり前じゃない!どうしようこれから・・・」
「大変じゃのー、ヒヨリ」
「なんで私の名前知ってるの?」
「そこのかばんを見たら名前が書いてあったんじゃ。合っとるじゃろ?」
「確かにあってるけど、なんか怖いな」
「これからよろしくな、ヒヨリ」
あれからどれくらい経っただろう。もうカイさんといても何の疑問ももたなくなった。
「今日は朝から雨か。明日遠足だし、てるてる坊主でも作るかな」
私はいそいそとてるてる坊主を作り出した。それを窓の近くに吊るして遠くから眺めてみた。うんうん、我ながらよく作ったものだ。すると、一番はしっこで何かがバタバタ動いている。よーく見ると、カイさんが一緒に吊るされていた。
「ふぅーひどい目にあったわい。まさか一緒に吊るされてしまうとは。というかヒヨリ、普通作ってる途中で気づくじゃろ」
「ごめーん。なんだかゾーンみたいなのに入ってて気づかなかった」
そして私はぐっと親指を立てて、ニカッと笑う。
「いいじゃない、そっくりなんだから」
「お主この世から抹消されたいのか・・・」
その時のカイさんの顔は鬼の形相だった。あの表情は一生忘れないだろう。
「確か明日遠足といってたな。残念だが、明日は台風だから遠足はなしじゃよ」
「うっそだー。だってこんなにてるてる坊主作ったんだよ?きっと大丈夫だよ」
次の日。カイさんのいったとおりゴォーという音とともにすごい風が私を襲った。
「だから言ったじゃろ、危ないから早く部屋に入りなさい」
「カイさんは超能力でも持ってるの?」
「こんなの朝飯前じゃよ」
その日の夜は、夢にカイさんがでてきた。
「カイさんの頭の毛はよく動くけど、もしかしてそっちが本体なんじゃないの?」
すると、カイさんの動きが止まり、頭の毛だけが動き出す。
「よく見破ったな。そう、私が本体なのだ。正体を知られたからには、消えてもらうしかないな」
私は身動きひとつとれずに、ガタガタ震えだしてカイさんを見る。カイさんはどんどん大きくなって、私を踏みつぶそうとしていた。
「ぎゃぁぁぁぁー!」
私は叫び声とともに起き上がった。すごく怖かった。それだけは覚えている。まだ体は震えている。横を見ると、カイさんが心配そうにこちらを見ていた。
「大丈夫か?なんだかうなされていたぞ?」
誰のせいだと思っているのか。私は苦々しく思いながらもまだ朝は遠いのでもう一度寝ることにした。