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4.王子様の見ているモノ(後編)

第4話です。本気を出した雅の妄想力はいかに。

「おそらく直感眼は実務じゃほぼほぼ役に立たないんだよ」


デコピンされた黄色い人形はカタンと音を立てて倒れた。

さて、ここから先は私の妄想力が試されるぞ。


「は? そんなわけあるか。正解がいきなり見えるんだぞ?」

「正解だけしか見えない、の間違いでしょ。

 そこへ至るルートが見えないでどうやってそこに到着するのよ」

「っ……!」


どうやら私の推測は当たっていたようだ。

色々ネット小説を読んでいる私にはわかる。

一見強力そうに見える能力はとんでもない弱点を内包しているもんだ。

そしてあえて「無敵」とか「万能」とか「未来視」とかとも違う「直感眼」という名称も絶妙だ。

これは裏を返せば「直感しか能力がない」魔眼とも言えるわけだから。


「例えば勝利条件が「悪逆非道な王様を倒す」だとして、

 直感的にその王様が死んだ姿が見えるから誰を倒せばいいかはわかる。

 でも、その王様を倒すための道中での苦労は見えない。

 もしかしたらその直感に至る前に自分が殺されるかもしれない」

「……大当たり。ずいぶん詳しいんだね」


三崎よ、驚かせたり凹ませたりメンタルぶん回して済まないとは思うけど、

まだ私の考察は途中なんだよね。


「その点で行けば理解眼のほうがこのケースでは役に立つかもね。

 どうにかして王様を殺す、という結果を見ることができれば、そこまでの道のりを予知できるわけだし。

 作戦立てとかやらせれば割と無敵だったんじゃない?」

「知ってたんですか!?」

「ただの推測と勘。それと今まで読んできた知識の積み重ねだよ。

 で、最後に解析眼だっけ?」


一木の顔がかなりこわばっているのが見て取れる。

うーん、どう切り出すべきか。


「解析眼はこの2つとはちょっと性質が違う気がする。

 なんというか、状況じゃなくて「モノ」に対して使うというか」

「そうだ」

「それなら一木が一番この世界を満喫できるよ。

 なにせいわゆる異世界と違って、この世界は文明レベルの高い物理な道具に溢れてるから、

 解析やり放題して帰ればあっちの世界を一変させることができるはず」


ここでほか二人の目線が一木に集まる。

……え、これってもしかして秘匿事項でした?


「アンタの言うとおりだよ。

 俺が転生に志願したのは、国にこの世界の技術を持ち帰るためだ。

 だが、それを戦争や政争に持ち込む気はない。

 俺はあくまで国が発展すればいいだけだからな」

「うーん、けどそれって理想論だよね」

「……アンタ、喧嘩売ってるか?」


どうやら今私に詰め寄っている一木は情報の価値ってものに疎いようだ。

それならなおさら、ここで一度教えてあげるべきか。


「国家間の情報や技術のバランスが崩れるってことはそこに上下や不平等が生まれるってことだよ。

 上の国は下の国を支配したがるだろうし、一木一人で侵略に走る閣僚を止められるわけもない」

「ぐ……」

「だからこそ、一木の「解析眼」が一番影響力がある。よくも悪くもね」

「ケイン、もしかして君がこっちに来た理由って……」

「違うんだリーヴェ! 俺は……」


一木は反発、二条くんは疑念、そして三崎は、驚愕から笑顔。

そして一木がケインで二条くんはリーヴェっと。本名はやっぱり西洋基準……

三崎はさっきホークって名乗ってたのが本名だろうが、なるほど、これが「直感眼」。


「ミヤビちゃん、勿体つけずに言ってあげなって」


数秒くらい言い方考えるの待ってほしかったけど、まぁいいや。


「一木、これは大事なことなんだけどさ。

 情報も技術も道具でしかないんだよ。

 それで国を富ませるも滅ぼすも自由な「道具」なんだよ」

「……」

「だから一木がここで学んだ情報は、存分に政争に使えば良い」

「……は?」


あー、王子様のお勉強にはそこらへん含まれてなかったっぽいな。

それならさっきの悩み様も納得がいくわ。


「この世界でできる限りの解析をして、それを秘密にしとけばいい。

 自分の国だけを発展させるって義務は、一木にはない」

「何を言っている! ウーディアは、俺の国には発展が必要だ!

 そのために俺は……」

「だったらこの二人に助けを求めればいいじゃん。

 幸いにしてしばらくは共同生活するわけだし、協力してくれる人脈作っちゃえば?」


一木はこれを聞いてぽかんとしている。

全く、なんで彼に政治や駆け引きってのは教えられなかったんだか。


「有益な情報と引き換えに二条と三崎の国から資源と人員を集めれば良いって言ってるの。

 そうすれば一木が制御をきかせている限り、ここにいる三人が敵対することはなくなる。

 ま、あくまで一つの例だけどね」

「なんだと……?」

「ここのメンツが存命中に国ぐるみで仲良しこよしになっておけばしばらくこの三国間の争いもなくなるでしょ。

 その間に、争うよりも協力する方がメリット大きいって刷り込んじゃえばいい」


まぁ、外交周りが色々大変になるかとは思うけど、

おそらく彼が望む展開を作るためにはそれくらいは必要だろう。


「さっき三崎には見えたんじゃない?

 ここの三人が和気あいあいやってる「帰った後の未来」ってのが」

「あ、バレた?

 ミヤビちゃんから言ったほうが良いのかと思って黙ってたんだけど」


気遣いレベルが高いのはわかったから三崎はもう少しポーカーフェイスを覚えろ。

と心のなかで言いながらも話を続ける。


「直感でゴールを把握して、理解で道順組み立てて、

 必要な物資や技術は解析した中から引っ張り出す。

 こっちの世界が全部そういう関係で平和に回ってるとは言わないけど、

 これならここのメンツが仲違いすることはないんじゃない?」

「本当か!?」

「大体、魔眼保持者ってだけの関係じゃないでしょ君たち。

 誰かが誰かを心配して、思いやった結果事故って三人一緒に来たんじゃないの?」

「それは……」


よし、もうすぐわだかまりが溶けそうなのでここは押し通ろう。


「ちなみに私が遭遇した神様(仮)は、この儀式を社会勉強と言ってたことも伝えとくよ」

「は?」

「だからここで存分に仲良くなって、必要な知識を揃えてから帰りなさいな。

 「社会勉強」で帰還できないなんてオチはないだろうからさ」


そう。あの神様(仮)は不出来な子供を武者修行に出す母親のように「社会勉強」とのたまった。

大体、いたずらに転生の儀式なんて使われたら私が言った通り国同士のバランスが無茶苦茶になる。

つまり、「あえて」あっちに伝えてないだけで、帰る手段は存在すると考えるのが自然だろう。


「二条くん、ここまで聞いて道順は浮かんだ?」

「いえ、まだです……でも、絶対見つけてみせます」

「その意気だ。あとは一木。多分判断の底辺、中間管理職の君が一番たいへんだよ。

 ……平和を勝ち取る覚悟はできたかな?」


ま、聞くまでもないか。

三人それぞれが自分が消えることを是とするなかよしなんだ。

ここでNOとか言ったら張り倒してやる、と思っていたが……


「もちろんだ。俺たちがウィル・メイガの平和を作ってみせる」


うむ、良い返事だ。それでこそ一国の王子様。


「だからその、バカでかい扇で俺を殴ろうとするのはやめろ」

「いやぁ、真面目な話すぎてついひとボケ入れたくなっちゃって」


大丈夫大丈夫。この元我が家にあったハリセンはお祭りの景品でもらったブツだから痛くないよきっと。


短編だったらここで終わりかな、と思っていましたが、なんとびっくり、現時点で20個くらいまで書き溜めているので、まだまだ続きます。

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