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黄昏、渚、風の歌。

作者: 耀雪メイカ

そういえば掌編小説にまだ挑戦した事無かったとふと思い立ちまして、砂絵をテーマに書いてみました。

実際やってみると思った以上に字数制限に苦しみましたが、どうにか800字以下(795字)に収める事が出来ました。


遥か遠く水平線の彼方に、優しく太陽が滲んでいく。

空はその青さを暫し忘れ、世界が黄金色に包まれるひととき。

潮風は砂浜に立つ私の髪を優しく撫でて、カモメたちは高らかに歌う。

波打ち際は静かに煌めき、私にとって最高のカンバスが出来上がった。


「いい風……」


そう呟いて大きく深呼吸し、ありのままの自然美を堪能する。

日頃抱えた鬱憤も全て忘れて、純粋に自由になれるような開放感。


空を仰げば雲は茜色に染まり、果て無く透き通った空は心を遠くへと誘う。

私は脳裏に湧き上がった構図に身を委ね、第一筆に取り掛かった。


長い木の棒を両手でしっかりと掴み、絵筆のように走らせる。

砂の柔らかい手応えと共に特上のカンバスに描く線、そこに迷いは欠片も無い。

重ねていく線はやがて輪郭となり翼となる。


今日の気分で選んだテーマは、この夕暮れ空を飛ぶカモメ。

大空を逞しく飛んでいける強さへの憧れを、しっかり表現していく。

円な瞳は凛々しく、嘴は鋭利に。

尻尾に連なるなだらかな体を描き、模様を繊細に砂上に刻む。


物心付いた時から絵を描くのは大好きだった。

あの頃も今も、“好き”をこうして形に出来る事への喜びが私を駆り立てている。

線を足して引いてをまるで漣のように繰り返し、全体を整えていく。

消しゴム要らずの砂は、やっぱり最高のカンバスだ。


「出来た!」


私は思わず歓喜の声を上げ棒を手放す。

遂に完成を迎えた絵の全容を、岩に登って俯瞰する。

波打ち際に描いたカモメは、夕暮れの光に照らされ穏やかに佇んでいた。

祝福するようにカモメたちの声が連なり、私は自然と微笑む。


折角の力作も、やがて満ちる潮に飲まれ消えていく。

けれど寂しくも虚しくもない。

だって愛おしい自然の環から生まれた私の絵が、また自然へと還るのだから。

例え残らずとも美しい環の一部となる事、きっとそれも一つの芸術の形。

そんな思いを抱きながら私は眺めた、美しい自然風景とそこに溶けゆく私の絵を。

思い立ったが吉日ということで挑戦するも削って削っての連続で大変難しい取捨選択の連続でしたが、とてもいい刺激受けたような感じがします。


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