秋葉原ヲタク白書82 チョコレートブル
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第82話です。
今回は、インドの山奥から来たスパイ団が秋葉原で麻薬のサイドビジネスを始めますが、利権をめぐり内紛が起きます。
コンビは"褐色肌のブルドッグ"と捜査を進めますが、行く手に女相撲の巨女が立ち塞がって…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 インドの山奥
熱いミストが狭い部屋に充満している。
ゴツい顔に大岩のような肉体をした、全裸の"女"達がひしめき合う。
場所はアキバだが、堅気の腐女子が寄り付くハズもナイ公衆岩盤浴場。
「失礼」
腰巻き一丁の褐色の肌が、糞溜めの牢名主のような巨女を跨ぐ。
全身から汗を噴き、目を閉じていた巨女がウッスラと目を開く。
「待ちな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
正午、と逝っても真夜中の午前零時過ぎ、僕とミユリさんは腕を組み、ルンルンで歩く。
御屋敷を閉めたミユリさんを誘って店外デート。そう!コレはアキバの"アフター"だ。
あ、良い子はマネせぬよう。
アキバじゃ店外交友は厳禁w
「お待たせしました!あぁお腹空いちゃったわぁ!」
「じゃステーキ食べよう!今なら期間限定でトリュフソースがかかってるよ!」
「"あまおうシロップ"のフワフワかき氷も食べたーい!」
その時、人影の絶えた雑居ビルのショーウィンドウが木っ端微塵に割れて砕け散る!
ややっ?躍り出たのは、相手を地面に叩きつけようと、四つに組んで光る女の肢体w
光る肢体?汗?
ぎゃ!全裸だ!
「相撲は国技だ!負けないよ!」
「風ょ火ょ水ょ!アーユルヴェーダ!我に力を!」
「テリィ様、危ない!気狂いですっ!」
ミユリさんが素早く僕の盾に←
ビヤ樽のような白い巨女とヤタラ高身長な褐色肌の大女の女相撲だ!
呆気にとられる僕達の前で、大女がアスファルトに叩きつけられるw
取組を制し軍配が上がるのは…
「玉ノ輿〜」
やや?行司はドレミちゃんだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ドレミちゃん、驚いたわょお!ねぇ。アレは一体何だったの?」
「しっかし、ミユリ姉様とテリィたん…揉めゴトになると必ず現われるょね?嗅覚なの?戌年?」
「 (( _ _ ))..zzzZZ」
とりあえず、ココは神田明神下の交差点にある24時間営業のファミレス。
そして、発言はミユリさん、ドレミちゃん、アーリア系?超巨乳の大女。
因みに、大女のは発言でなく"イビキ"だw
ドレミちゃんは、ヤタラ闇社会に目が効く情報屋で、昼はカルチャーセンター勤務。
そして、超巨乳アーリア美人は…誰?誰と相撲をしてて何でドレミちゃんが行司を?
ってか何で寝てるの?
「カルチャーセンター主催の"相撲エクササイズの打上げで、みんなで岩盤浴に逝ったの。で、その巨乳ちゃんは、プリヤ。先週、インドの山奥からアキバに来たばかり。ちょっち目を離した隙に、クラスのボスの玉ノ輿さんと相撲になっちゃってw」
「ちょっ、ちょっち待ったぁ!コロナで海外封鎖中にどーしてインドの山奥から入国出来るンだょ?ってかインドの山奥って何処?メッチャ気になるwソレから、何度も悪いけど、何で寝てるの?」
「あ、投げられた時に頭を打ったのカモ。玉ノ輿の投げって強烈で、今までに何人も病院送りなの」
その話を聞いた僕は、慌てて隣のテーブルでギャハハと大笑いして盛り上がってる玉ノ輿サマ御一行様に生のジョッキを差し入れる。
楽しいアフターがナゼか接待モードだw
「アララ。ヲタクのクセに気が効くじゃナイの!ぎゃはは」
「いえ。ホンの気持ちです」
「またベンガルの雌虎が目を覚ましたら教えて!いつでも相手してやるよっ!」
いゃ結構です、と彼女に代わって心の中で答えたら、何と偶然そのプリヤが目を覚ます。
「ココは何処?私は誰?」
「おや?お目覚めかい?じゃもう1番…」
「寝言です!あ、お会計!」
立ち上がりかけた玉ノ輿をドレミちゃんが押し留めてる間に、僕とミユリさんの二人掛かりで大女プリヤを力業で店外へと連れ出す。
「打撲と腱板断裂。左頭部に脳内出血の疑いもアル。人差し指に恐らく玉ノ輿さんの血液…あと、君って毛がナイねw鼻の中にも。何か化学療法やってる?」
「コレは検視?私は死体なの?化学療法のお陰で腫瘍は完全に消えた。あと股関節の骨移植も見事ょ。見る?」
「no thank you。で、僕とミユリさんは、押し付けられた君を何処へ連れて逝けば良いのかな?まさか"インドの山奥まで"とか逝うなょ?」
どーやらエキゾチック美人だが、未だ足元のおぼつかない大女を担ぐのはタイヘンだ。
ファミレスの狭い螺旋階段を逃げるように降りて、今は街灯の下で途方にくれているw
「大丈夫。私達のアジトは直ぐソコ」
そう逝いながら、彼女はガンジス川の対岸を見晴らすかのように、闇夜の一角を指差す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
プリヤが大らかに指差したのは神田明神通り沿いにある輸入食材屋"スパイシーネット秋葉原"で、ファミレスからは目と鼻の先だ。
余りに近くて、後はお任せとドレミちゃんはサッサと姿を消すwおーい逃げるな!待て!
で、店は意外にも24時間営業で、見たコトも無いアジアの香辛料や肉や魚を売っている。
さらに意外なのは店番で、黄色い僧衣を着た白髪の老人。白い顎髭が腹まで伸びている。
仏教のサンタ?
「いらっしゃいませ!先ず、秘密保持契約を結んでいただきたい。サインをお願いします。ココとココ」
「え?秘密保持契約?何で?僕達は、寝たフリして無銭飲食した大女をお届けしただけだょ?謝礼の領収書ならサインするケド?」
「大丈夫!心配ナイ。型通りの内容だから。我々の秘密を守るだけだ。我々は敵が多く、君はソンな我々の店に来てしまった。重要性はわかるね?」
全くワカラナイw
「ってか…お爺ちゃん、誰?」
「提婆達多」
「お台場だった?この店、お台場からアキバに来たの?」
すると、僕の遥か頭上でサイクロンのような溜め息をつく風音がスル。
大女のプリヤがついた溜め息だ。人が好意で貸している肩の遥か上で。
「私達はインドの山奥から来たスパイ。命を救ってくれて、ありがと」
え?じゃ女スパイが全裸で女相撲…
うーんヒロピンAVの設定資料かょw
「スパイ?君達、スパイなの?仕事の度に秘密保持契約とか結ぶンじゃアチコチで正体バレバレだろ?」
「確かに…でも、本国からの指示なのでな。実は、ワシは事務仕事が大の苦手なのだ」
「何だかなー。じゃサイン。私は女相撲に負けた大女の世話をしたコトを他人に言う権利を放棄します…ってか?」
第2章 消えたプリヤ
翌日の夜。
昨夜は極めておかしな夜だったが、アキバ的にはアリなのカモと妙な納得をしていたら…
「アース様だ!アース様が御帰宅だ!」
「マグマ大使も一緒か?」
「嫁のモルは?」
ココは、僕の推し(てるメイドである)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷。
西欧文明と融合したインド占星術に準え"白道二十七宿バー"とも呼ばれる。
御帰宅はアース様ではなくて昨夜のダイバw
うーん風采的にニアリーイコールだからな。
「おかえりなさいませ、提婆達多様。昨夜は、お疲れ様でした」
「あぁ昨夜の彼女…ホントに秋葉原のメイドさんだったのか。実物と話すのは初めてじゃが、何だか萌え萌えじゃ」
「あら。アキバは初めてですか?」
メイド長、直々の御給仕。
ソレをダイバは無視して…
「おお、テリィたん!助けて。貴方だけが頼りです」
「またかょ。ソレ、スターウォーズのレイア姫だょね。爺さん、イメージ壊れるからヤメてくれ」
「プリヤが…プリヤがポイントXで任務中に消息を絶った。殺されたのカモしれん!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「えっ?ココがポイントX?単なる水たまりでは…」
「水たまりに惑わされるな!もしかしたら、異次元に続くワームホールかもしれん。ソレに、昨夜の雨で血がほぼ流されてイル。事故にしろ拷問にしろ、目撃者は皆無。因みに、不審な入院がいないか病院を当たっているトコロだ」
「勝手に流血騒ぎにするなwソレに、そもそも昨夜は雨は降ってナイし。で、余り逝いたくナイけど、君達スパイでしょ?残念だけど、プリヤは今頃、もう闇に葬られてンじゃナイの?死体の場所なら、大体の想像つくンだケド」
ダイバに連れて来られたのは、パーツ通り界隈にある路地裏の…水たまり?
ミユリさんは御屋敷を離れられズ、不本意だがダイバと2人で現場検証中w
「え?プリヤの死体の場所がわかるのか?アキバのヲタクってすげぇ。何で分かるンだ?で、何処?」
「あの角にある標識に拠れば、ココは今朝まで駐車禁止だ。でも周りはゴミだらけ。つまり清掃車が違法駐車の車を避けて通り、その後で違法駐車の車はレッカーで移動されたに違いナイ」
「なるほどっ!」
「と逝うコトは、プリヤは、このプリウスから電柱までの何処かで殺され、ソノ後で車の下に押し込まれた可能性がアル」
「テリィたんは、プリヤの死体が車の底に引っかかってると思うのか?」
「思うンじゃない。事実だ…ホラ!ココに死体…の代わりに、アレ?ペシャンコのアルミアタッシュが出て来たぞ?」
ゼロハリのアルミアタッシュだけど…完全に潰れてるwまるでゴジラに踏まれたようだ。
「コ、コレは、プリヤのゼロハリだ!」
「襲撃されて、アタッシュの中身を強奪されたのでは?誰かプリヤを恨んでた人は?」
「いない。プリヤは、大きいが優しい女だ。みんなに好かれてた。実は、ココまで生きるとも思ってなかった。彼女は骨肉腫で化学療法を始めたが既に手遅れ。でも、神を信じ、つい先月、寛解したと診断されて任務に復帰したばかりだ」
「プリヤは、よく深夜の任務で出歩く?」
「きっと、新たな指令が出たのだろう。昨夜指令が出たのなら記録があるハズだ。セーフハウスに戻ろう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
セーフハウスはスパイの隠れ家で、どんな秘密基地があるのかと思えば昨夜の食材店だw
「今から秘密の金庫を開けるので、向こうを向いててくれ」
「随分アバウトな保安措置だな。昨夜、秘密保持契約も結んだコトだし構わないだろ?」
「えっ?うーん確かにソレもそーだな。でも、金庫の場所を知られたくない。コレは、テリィたんのためでもある」
僕は、壁の風景画を無言で指差す。
「な、何で金庫の場所がわかる?テレパスか?」
「未だ床におが屑が落ちてる。最近になって金庫を取り付けた証拠だ。警報装置も新しい。警備を強化したな?」
「実は、先月強盗に入られて…」
おいおい!ホントにセーフハウスなのかw
果たして絵を外すと隠し金庫の扉が現れる。
ダイバが解錠…暗証番号は123に誕生日だw
オレオレ詐欺必見な最低の暗証番号だょ…
「プリヤの人柄は?」
「良いボスだった。わざわざインドの山奥から出て来たワシを助手に雇ってくれた」
「なぜ彼女は昨夜ココに来たかわかる?」
「思い付かない」
「一昨日の夜、彼女には激しく争った傷があった。おそらく怨恨だ。彼女を呼び出しそうな人物はいないかな?」
「思い当たるフシはナイ。ソレに彼女は、一昨日の夜は…ヤタラ寝てたょな?」
「う、うーん。確かにそうだな。念のために聞くけど、昨夜は何処に?」
「友人達と徹夜でマージャンしてた…金庫に作戦指示書が入ってた。コレによるとプリヤは"ヲタヲタ団"を調べていたようだ」
「"ヲタヲタ団"?」
「ミスターWO率いる、アナーキーな組織だ。ミスターWOは、息子をゲーム廃人にされたコトから、ヲタクを憎むようになり、ヲタク壊滅を企むようになった。彼等の団体歌に"黄色いヲタクをやっつけろ"とある」
「そりゃ迷惑な八つ当たり野郎だな」
「確かヲタクに偽札を配って、日本経済をアキバから破綻させる"Mプラン"を、アダルトなミニスカでヤタラ色っぽい女幹部ヲルガにヤラせてたりしたが…」
「M資金?」
「Mプランだ。2字も違う。M字開脚とも違う。平和であるコトに慣れすぎたヲタクに、逆説的に"生きる"コトの重さを今に語る、実に特異な存在でアリ…」
「(うわ面倒だw)お?帳簿が入ってる。しかも、暗号だw用心深いな」
「失礼。ソレは暗号ではなくてヒンズゥ語だょ、テリィたん」
「あちょ。じゃ訳してょ。お店の経理の書類と荷物の伝票のコピーもくれ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の店外交友。
今宵こそミユリさんと水入らず?でアンガスビーフをトリュフソースのコクでお楽しみ中。
まぁ不本意ながら、ダイバから仕入れた帳簿と伝票の読み込みしつつではあるンだけどなw
「香辛料だ。焦がしネギの香ばしさでやっとわかった。徹夜で思考が曇っていたケド、サッと日が差した感じだょ。プリヤは香辛料の密輸業者を追っていたンだ」
「帳簿が解読出来たのですか?」
「いや。ソレはダイバがヒンズゥ語から翻訳してくれる。でも、伝票だけなら普通に読めるし…コレで十分カモ」
「やはり"ヲタヲタ団"の陰謀なのでしょうか?」
「その"ヲタヲタ団"って、何処にも出て来ないンだょ。ただ、去年の2月からプリヤ宛にインドの山奥から盛んに荷物が届き始めた。送り主は、在日大使館の通訳。ただし、彼は、去年の1月に心臓発作で死んでる。でも、彼の私書箱をプリヤは閉じてナイ。外交特権で、彼の荷物は税関で調べられナイから、ソレを利用した香辛料の密輸をやってルンだ」
「外交郵袋ですか!でも、香辛料を運ぶのに大袈裟な」
「香辛料は、麻薬取引をカモフラージュする時の基本のキだ。七味唐辛子には大麻の実が入ってるけど、アレが街中で公然と売られてるのは、実は珍しいコトなんだょwソレに、プリヤは食材店の内張りのない隠し金庫に、宝石商のような黒い布を貼ってたょね?アレは、白い粉が落ちた時に見逃さないためじゃナイかと思うょ」
「つまり、インドの山奥のスパイ団アキバ支部は、支部ぐるみで麻薬の密輸に精を出していたワケですね?」
「加えて、かなりの偽善者だ。帳簿の124ページにチリソースのシミがあった。匂いからして、恐らくザリガニのホットドッグだと思う。ヒンズゥの戒律に激しく反するなw」
「いずれにせよ、毎月最終水曜日に香辛料がインドの山奥から届く…」
「そして、ソレをプリヤはアルミアタッシュに詰め、卸売業者に売っていた」
「誰かがソレに気づき、狙いをつけた…ソレが"ヲタヲタ団"かしら?」
「でも、不正な香辛料を扱う食材店は少ないケド…ソレを麻薬として買う輩は多いからねぇ」
「ネットで調べたら、アルミアタッシュを潰すには、最低でも225kgの力が必要だそうです」
「約4分の1トンの力だ!」
「でも、女相撲の力士なら可能です。いずれにせよ、今回の犯人は怪力と逝うコトでしょう。リフティングで225キロを挙げる人なら、何人かネットで見つけましたが…」
「ネットで吹聴しない人の方が可能性アリそう」
「では、先ずカルチャーセンターの相撲エクササイズから当たりましょう。力自慢が集まるコトで有名です。しかも、ポイントXからホンの2ブロックだし」
「しかも、ソコには!ミユリさんを姉と慕う情報屋さんもいるコトだしね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ミユリ姉様!オマケでテリィたんも…この前は途中で消えてスミマセン!お2人のお邪魔しちゃイケナイと思って!」
ウマいイイワケだw
情報屋のドレミちゃんをカルチャーセンターの相撲エクササイズのクラスに訪ねる。
愛想良く応対する彼女の後ろでは、汗みどろで女相撲"地獄稽古"の赤い気炎が上がる。
「えっと。ミユリ姉様に逝われて調べてみましたけど、先ずクラスに前科者はゼロ。"相撲エクササイズの受講生って、みなさん善良ですょ。2〜3、薬物所持はアルけど麻薬ではありません。特に暴力沙汰もナシ。今、巨乳マネージャーを呼ぶから、テリィたんも会員になったら?」
ドレミちゃんの話を聞きながら土俵を指差す。
「見ろ。玉ノ輿だ。彼女は、自己顕示欲の塊だょ。重量挙げで241kg挙げた写真をネットに投稿してたゼ」
「あら。駐車違反もナイのょ彼女」
「話せる?」
ドレミちゃんがトレーニング中の玉ノ輿に話をつけに逝く。
話に頷きつつも時折、僕に向かって鋭い視線を放つ玉ノ輿。
ノシノシと僕に向かって歩いて来る。怖いw
例によって、素早くミユリさんが僕の盾に←
頼むぞ!ミユリさん!
「アタシのファンだって?サインなら後にしておくれ」
「あのね。先日、貴女に投げ飛ばされたプリヤさんだけど、街から姿を消して困ってるのよ。貴女、心当たりは?」
「誰なの?アンタ、婦警?」
ミユリさんの後ろから僕が援護射撃!
「万世橋"の方"から来た者だっ!」
「バッチは?」
「…洗濯中」
「じゃあ話すコトは無いわ」
「し、新橋鮫とは知合いだ。彼となら話すか?」
「とっとと帰って。マジ、ウザい」
そりゃ好都合だ!ホント殺気がヤバいので、独りでサッサと回れ右して帰るコトにw
君子危うきに近寄らズ。触らぬ力士にツワリなし。後はミユリさんから話を聞こう←
「テリィ様、お待ちください」
あと一歩で安全圏!と逝うトコロで呼び止められるw
振り返ると、ドレミちゃんと…げげっ!玉ノ輿だょ!
さらに、ミユリさんが笑いながら手招き。
「テリィ様、玉ノ輿さんがお話があるそうです。彼女にとって、不都合なお話もあるようですが、全て自供して、さらに有益な情報もくださるそうですょ」
「た、例えば?」
「まもなく起こる可能性のある犯罪についてです。だから、お急ぎだとか。一刻を争う事態です。情報と引き換えに、司法取引に応じる用意がある旨、テリィたんから新橋鮫に口利きして欲しいそうですが」
やや?玉ノ輿が初めて異性と言葉を交わす乙女のようにモジモジしているケド?
ミユリさん、僕が逃げ出して数歩歩く間に玉ノ輿に何を話したの?まるで別人w
「合理的な範囲で寛大な処置を期待します。でも、たとえ許されなくても、私は、道義心からお話したいの。でないと…彼女は、もっと殺すわ」
え?もっと殺す"彼女"とは?
「プリヤよ。"彼女"から、強盗と殺人を頼まれた。私は、家族のために、お金が必要だったから引き受けた」
「金で雇われた?ヒットマン…いや、ヒットウーマン?」
「プリヤは、私のブログを見つけて連絡して来て、突然アルミアタッシュを押し付けて来たの。私、もう怖くて」
身をよじる玉ノ輿。
お前の方が怖いょ。
「で、その中には何が入ってたンだ?」
「知らない。ソレに中身を知ってたら捨てなかった。私への報酬はたった50万円だったのょ?」
「今、その金は?」
「ギャンブルに使ったわ」
「おいおい。家族にお金が必要ナンだろ?」
「とにかく!プリヤが、また殺せと言ってきたの。今回、彼女が挙げた名前は3名。3名全員が標的。でも、私は自首スル。しかし、プリヤが捕まらない限り、その3人の命が危ないわ」
「嘱託殺人か」
「プリヤは"あのクソを殺れ"とか"しくじればガッポリ稼げないぞ"とか口汚くて…しかも、3人の内、1人に限って、襲撃の場所や時間も細かく指示して来たの。かなり、個人的な恨みがある様子だったわ」
「そのプリヤの個人的怨嗟を買ってる1人とは…」
「ソノ名は…提婆達多」
第3章 女相撲 vs カラリパヤット
提婆達多の命が危ない!
夕陽に染まる神田明神通りを、僕とミユリさんは"スパイシーネット秋葉原"へと急ぐ。
慌てて店内に飛び込むと、奥からダイバが何事か?と顔を出す。セーフ。未だ生きてるw
「ダイバ!タイヘンだ!アンタ、命を狙われてるよっ!」
「何だって?」
「プリヤが麻薬の密輸をしてた事は?」
「え?何?聞いてないぞ。何も知らない」
「…おや?ソレにしちゃリアクションが薄いなw」
余りにとってつけたよーな反応なので、流石に僕の頭の中で警報ランプが点灯回転スル。
「…わかった。実は、テリィたんに未だ話してないコトがアル。実は、先月ある女が店に来てプリヤを脅してた。殺してやると」
「ナゼそーゆーネタを黙ってるかな」
「ネタなのか?と、とにかく、関わり合いになるのが怖かった。いかにも組織の大物風だったし、プリヤ失踪との関係もワカラナイ。ソレに、報復が怖かった」
やれやれ。困った爺さんだ。
「ダイバ!アンタの命も狙われてルンだぞ!詳しく話してくれょ」
「例の"ヲタヲタ団"だ。奴等が店に来て、大女のプリヤを壁に叩き付けた。安売りするな!と怒鳴り始めて、確か客がつけあがるとか何とか…」
「多分、闇市場で麻薬が値崩れスルのを防ぐためだな」
「知らない。後でプリヤに聞いたけど、自分を誰かと勘違いしたようだとか…嘘だとわかったが、深入りしたくなかった。その時、連れが2人いてリンデとトニバと名乗った」
コレでプリヤの"殺人依頼リスト"に載った3人の正体が判明?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜は、そのままミユリさんと"同伴"しカウンターに頬杖して色々と考えてたら、ダイバから話忘れたコトがアルと連絡が入るw
やれやれ。加齢が進むと何ゴトも1回では済まなくなるモノだ。明日は我が身。
御屋敷が混み出しミユリさんが手を離せなくなったので僕独りで彼の店に逝く。
秋葉原公園を横切って神田明神通りへ…
「アンタがテリィたんね?」
「え?自衛隊の勧誘ならお断りだけど」
「我々は"ヲタヲタ団"よ」
我々と逝う割には独りだが、ソレはさておき浅黒い肌のエキゾチック大女に呼び止められる。
「我々は、ヲタクに家族を廃人にされた恨みを持つ恐怖のヘイト集団よ。目下、アキバのヲタク殲滅を企んでいるぞ!」
「ソレで、先ず僕から始めるのか?恐怖のヘイト集団と逝う割には、何ともガンジス川の流れのように、ゆるやかに、とめどなくしてるなw」
「そうだ!覚えてろ!」
「え?もう帰るのか?」
「いや、コレからだ!」
どっちナンだw
「あのな!何国人か知らんが、アキバでヲタクを襲えば、日本では良くて強制送還、悪けりゃ終身刑だぞ!しかし、どーせビザ切れのアンタにも風光明媚な刑務所に入れる可能性はある。何なら口を効いてヤル。取引しよう」
「えっ?ホントか?是非お願いします!」←
「プリヤの殺害教唆と他2名の共同謀議を認めろ。認めれば"ヲタヲタ団"への破防法の適用も見送ってヤル(って何様ナンだヲレw)」
が、何か後ろめたいモノでもアルのか、エキゾチック大女は顔面蒼白で大きく頷いてるw
「わ、私は何の殺人にも関わっていません!プリヤ…さん?なんて知りません!何の恨みもありません!日本人、みんな親切!」
「嘘つけ!この前"スパイシーネット秋葉原"でプリヤに掴みかかって脅迫したろ?」
「え?諜報網?あ、あの輸入雑貨屋にカモフラージュした在日スパイのアジト?じゃあの人がプリヤ…さん?なの?うーん確かに店には行ったカモ。いえ、行きました。あ、急に思い出しました!私は確かに暴力をふるいました。ゴメンナサイ。でも、アレは感情が高ぶった結果であって、全てプリヤさんがビジネスの環境を乱したから!…だそうです」
「つまり、安売りをした?」
「アベノマスクを?」
「え?」
恐ろしく話が噛み合わないw
大女は明らかに動転してる←
「そうそう!安値で私達の客を奪ったのょ!実に無礼なやり方だわ!」
「ホーラ見ろ。口ではヲタク殲滅とか逝ってるけど、実は"ヲタヲタ団"は麻薬の密売組織なのだね?」
「そうよ!でも、もう解決済みなの。プリヤは、麻薬の密輸はもうヤメると逝ってたわ。だから、ウチが彼女を殺すワケがナイでしょ!」
いきなり重要ピースが飛んで来るが、余りにメチャクチャでジグソーパズル全体の絵が全く見えないwココは変化球を投げてみよう。
「おい!テメェ、ちょっち最近とっ散らかってるヤクの値段、闇なら上りはいくらでぇ?」
「え?え?何で急に江戸っ子?」
「クソッタレ!ちっくしょう!バッカ野郎!黙れょクソ。クソだょなテメェ?」
僕の突然のベランメェに呆気にとられパニックに陥った大女の顔に冷や汗?が一筋流れ…
や?汗が流れた跡の地肌が真っ白だと?肌に浅黒い顔料を塗ってるのか?君は…日本人?
「確かに"萌え萌え団"は、同郷のプリヤを脅して客を奪ってたカモしれない。しかし、君の訛りは母国語のハズのサンスクリット語には程遠い。しかも、モノホンのプリヤは、メールも喋りも汚い俗語ばかりだったが、君は違う」
「だから?」
「だから!君は大女は大女だが"萌え萌え団"ではナイし、ましてやプリヤでもナイ。君は…玉ノ輿だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「バ、バレたっ!どーしよー、ダイバの爺ちゃん!助けてぇ!」
「こら!玉ノ輿、取り乱すな!高い金を払ってルンだから、ギャラ分は芝居しろっ!」
「げ!ついに黒幕登場?ってか爺さんが黒幕だったとはー」
発言順は玉ノ輿、提婆達多、僕だ。
ビル陰から橙色の僧衣が現れる。
「やはり、ワシの存在を嗅ぎつけたか!アキバのヲタク、恐るべし!」
「いや。単なる偶然で全く想定外の展開だ!黒幕が爺ちゃんだなんて夢にも思わなかったょwこりゃヒデェ話だ!」
「確かにヒデェがアキバのヲタクほどじゃナイだろう?」
「黙れ!ヲタクは趣味じゃない。人生だ。アキバを舐めるな!」
「うるさい!こうなったら、何もかも道連れにしてやる!玉ノ輿、このヲタクを畳んじめぇ!」
インドの山奥から出て来た割には、最後だけだが見事な江戸言葉だ!
すると、玉ノ輿がドスコイとシコを踏み始めて絶体絶命のピンチにw
ミユリさーん!助けてぇ…すると!
「待ちやがれぃ!おいおいおい!土俵モンが大勢でモヤシなヲタク1人を囲んで何しやがルンでぇ?!アタシが相手だよっ!」
「だ、誰だ?この登場パターンは…まさか、貴女は…水戸黄門?」
「違うだろ!ココは普通、遠山の金さんだょ!でも、今回はミユリさんに違いない!あぁ助かった!」
全員ハズレw
最初は、街灯が生命を得て動き出したのかと勘違いしたホドだけど…
見上げるばかりの大女がビルの角を曲がり秋葉原公園に入って来る!
この鉄人28号並みのデカさは…
今度こそプリヤだ!前に担いだコトがアルからわかるぞw
行け!チョコレート色の大女!制限時間一杯待ったナシ←
何処から現れたのかドレミちゃんが行司役を買って出るw
秋葉原公園を土俵に、玉ノ輿とプリヤの大取組の一番だ。
お互いにシコを踏み、目を合わせつつ腰を落として逝く。
発気用意…やや?プリヤが顔の前で両手をクロスさせる?
気が合わない?仕切り直し?が、次の瞬間…
「ぐっ!グゲェェェ!」
白眼をむいた玉ノ輿が、口から泡を噴きながら、ドウッと前のめりに倒れる!
ドッシーン!大地を揺るがす大音響と共に玉ノ輿の巨体が崩れ落ちる!何事?
「プリヤ山〜」
ドレミちゃんの乾いた声が響く…
第4章 国連大使のお出掛け
「驚いたわー。プリヤさん、玉ノ輿を蹴り倒したンだって?インド武術、スゴいわ」
「アンタの御主人様のピンチだったのサ。次は、アンタが面倒見てあげンだょ」
「あいよ」
ミユリさんの戯けた答えに御屋敷が沸く。
翌日夜。関係者が御屋敷に集合している。
因みに、プリヤはインド武術カラリパヤットで最強の"ライオンのポーズ"から必殺の蹴り技を繰り出して瞬殺KOしたとのコトだw
「でも、プリヤ。貴女、プロローグとエピローグだけ登場して…その間、一体何をしていたの?」
「ソ、ソレを言われちゃ面目ねぇ。実は、戦いに疲れると唐突に眠りに陥るンだ。ヨガの修行のせいかもしれん。だから…寝てた」
「ナルコレプシーかょ。レインボーマンみたいだな。だから、その間に悪がはびこるンだょ。ダイバとかさ」
もともと一匹狼タイプのダイバは、流れ着いた異国の地でプリヤに仕えつつ、彼女の麻薬ビジネスを乗っ取る機会を虎視眈々と狙う。
帳簿にソースを落としながら密輸を手伝い、プリヤの骨肉腫の進行を待つが奇跡的に寛解し挙句に心を入れ替え足を洗うと言い出すw
ココでドレミちゃんが口を挟む。
(彼女の御帰宅は激レアで貴重w)
「ちょうどその頃、カルチャーセンターの会員だったダイバは、玉ノ輿とサウナで知り合い、彼女が金に困ってるコトを知ったの」
「そこで、ダイバは、玉ノ輿に金を渡してプリヤを始末させ、早々に麻薬ビジネスを乗っ取るコトを思いついた」
「売り物を盗んじゃダメょね」
ミユリさんがカウンターの中で溜め息w
「しかし、僕達には自分も狙われてると思わせ"萌え萌え団"に疑いが向くようにしてたンだ。恐れ入るょね」
「彼は、インドの山奥の元高級官僚だった。奴と格闘した時、私の爪に残った奴のDNAを照合してアタシも驚いた。そして、母国から訓令が届き、突如ダイバは国連大使としてニューヨークに赴任するコトになった。もはや外交特権に守られた彼を起訴するコトは、何者にも出来ナイ。出国を妨げるコトも不可能だ」
「まさか、元青年・スポーツ省とはなー。日本の文部省みたいな?で、結局ダイバが率いてた"ヲタヲタ団"って何だったの?実在スルの?」
"ヲタヲタ団"は実在するNGOで教育上有害なゲーム類を取り締まる、PTAの実働部隊みたいな組織らしい。ソレはソレで恐ろしやw
何しろ、インドのモバイルゲーマーは2億5千万人、スマホゲーム市場は120億円。
今や米中を足しても追いつかない、世界最大のデータ消費量を誇る大国なのだw
「しかし、お相撲は、女子とは逝えど日本の国技です。だから、プリヤさんに横綱は譲れない…でも、そうなったらなったで"お相撲のワールドシリーズ"とかも楽しそうw」
「その時こそ、ヒンズゥが勝つ!アタシはチョコレート色の肌をしたブルドッグ。喰らいついたら離さねぇ」
「途中で寝ちゃうけどな」
僕がまぜっ返し、御屋敷が爆笑に包まれる。
「僕達はヲタクだ。政治家とは違う。国境を超えた友情があったって構わないさ」
「⌘¥〓﹆〆⁂♂√♀」
「おいおい、プリヤ。ダメだょヒンズゥ語はサッパリだ」
すると、彼女はミスワールド(2000年)みたいに妖艶に微笑んだんだが…
おーい、誰か?彼女は今、何て逝ったのか、僕達に教えてくれないか?
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"インドもの"で、秋葉原で新萌え要素として注目の"褐色肌"をネタに、インドの山奥から来た褐色肌の女ブルドッグ、そのNo.2、女相撲の巨女力士、街の凄腕情報屋などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、パンデミック第2波最中?の秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。