追放1
今日も今日とて変わり映えのない一日を過ごしていく。眠気を誘うようなつまらない授業をひたすらに続ける数学教師を横目に、俺は窓の外を眺めていた。高校2年生になっても去年と変わらず友達が少数しかおらず、ほとんどを一人で過ごしている。
「宗司。もうとっくに授業終わったぞ。今日もゲーセンよってくだろ?」
一人物思いにふけっていた俺に話しかけてきたのは俺の数少ない親友、兵頭伸介だ。本人によると自分は地味なんだそうだが、整った顔に爽やかな笑顔が特徴のイケメン野郎だ。しかもそれなりにこいつの事を好きなやつもいる。それに加えてよく俺と過ごすため腐っている方々には俺たちはいい素材らしい。隅っこの方で噂されていたのを聞いたときはさすがに縁を切るか悩んだが、数少ない友を手放すことはぼっちの俺にはなかなかにハードなことだった。
「おー、わが友伸介君じゃあないか。言われるまで気づかなかったぞ。そんなに遊んでて大丈夫なのか?」
「おう。赤点は回避できるぞ。宗司が教えてくれたらな」
「おまえな、何で真剣に授業受けてて点が取れないんだよ」
「なんで授業聞いてなくて点数とれるんだよ」
こんな話をしている最中にも後ろの席の宮島さんと向井さんが顔を赤らめてこちらを見ている。勘弁してくれ。
「今日は格ゲーしたいな。うん。そうしよう」
「男子二人がくんずほぐれつ汗をかきながらかくとうだって」
「ゴクッ……」
まじで勘弁してくださいな。いやほんとに。
「進学できなくてもほんとに知らないからな」
「ああ、心配ない」
後でテストの範囲でも詰め込んでやるか。
そんな感じでいつも通りゲーセンへと行こうとしたのだが、教室のドアに何人かが集まっている。
「なにしてんだ、あれ」
「ほんとだ。後ろのドアもだね。何かあったのか?」
そう伸介が聞くとドアに集まっていた内の一人が
「ドアが開かないんだ」
と答えた。
「ドアが開かないなんてことあるのか」
「建付けの問題じゃないの」
「後ろも集まってるってことは違うんじゃないのか?」
そんな時だった。教室の床に魔法陣のようなものが現れ突如光だした。
「なんだこれ」
「怖いよー」
「みんな逃げろー」
そんな声を聞きながら俺は意識を失った。
目が覚めると俺たちクラスメイトは神殿のようなところにいた。まだ目が覚めているのは俺だけのようだ。
「おい、おきろ。伸介、早く起きろ」
「う~ん、後5分」
「ふん、」
「ふべしッ」
寝ぼけた伸介の顔を殴り俺は再度辺りを見渡した。
神殿のような場所にはクラスメイト全員と今年で30歳になる男性独身数学教師がいる。女神のような像が祭ってある。
俺たち以外に人はいないようだ。何人か目を覚ましたものもいるが状況を飲み込めていないようだ。
教室で見た魔法陣が床にも描いてあった。
「なあ、宗司。これどうなってんだ」
いつの間にか伸介も目覚めたようだ。
「分からないがめんどくさいことに巻き込まれたのは確かだろうな」
「もしかしてこれって異世界ってやつじゃないのか」
「伸介もそう思うか」
「ああ。あんな魔方陣みたいなのを見てこんな雰囲気のところにいたらそりゃあね。ってことでステータスオープンッ」
「おい、何があるかわからないのに変なことするなよ」
しかし忠告は遅かったようで伸介の前には半透明の板のようなものが現れていた。
「うおー、すげー」
兵頭伸介 16歳 人間 賢者
HP 500/500
MP 1000/1000
筋力:340
俊敏:270
知力:40
器用:60
魅力:590
運 :320
魔法適正:火 水 土 風 光
スキル :詠唱省略 魔法攻撃上昇<小>
称号 :異世界人 馬鹿
うん。なんだろう。取り合えず馬鹿だな。賢者のくせして知力がもとない。
「俺が賢者か~。魔法使えるのかな。かっこいいな」
「(その知力で使えると)いいな」
「だろ~」
やっぱり馬鹿だ。
「で、宗司はどうだ。見てみろよ」
危険はなさそうだし見るだけ見てみるか。
「ステータス」
ブウォン、と音と共に先ほどの半透明の板が出てきた。
相沢宗司 16歳 人間 ガンナー
HP 800/800
MP 800/800
筋力:460
俊敏:360
知力:540
器用:370
魅力:530
運 :20
魔法適正:
スキル :指銃《魔弾》《リボルバー》 スコープ《千里眼》《鑑定眼》
称号 :異世界人 撃ち抜くもの
色々と言いたいことがあるがまずは運低くね。なんで。20て。不幸すぎだろ。それに魅力が伸介を基準にすると高い方だよな。俺は自分の顔が平凡だと自負しているためあまり納得がいっていない。
それに職業もスキルも変だし、魔法に関しては使うことが出来ない。
「宗司の変だな」
くっ。ほんとのことだから言い返せない。
「魅力と運は俺の勝ちだな」
「勝ちとかないし。てかほんとにこれって正しいのか?」
「まあ運は知らんが魅力はあってると思うぞ」
「変な慰めはよせ、くそイケメン」
「嘘じゃあないんだけどな」
周りのやつらもステータスを見れることに気づいたらしい。
そうこうしていたら大きな扉から人が何人か入ってきた。