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五日目 チーダスさんによるスキルの説明

 『キューブ』が遠い昔のここの住人の能力の制御と管理のために使用されたもの? 俺が冒険者ギルドのギルマスに聞いた話だと、『キューブ』はそれに入っているスキルを、そこそこ高額な金さえ払えば誰でも修得することができる便利魔道具だったはずだ。

 しかし、チーダスさん達研究者からすると、どうも、それだけではないらしい。


 「『スキルキューブ』。通称『キューブ』と呼ばれている物は、この街でもいくつか公開されていて、費用を払えば誰でも使用することができるよね。魔力さえ切らさないように気を付ければ、永久的に使えるとまで言われているすごい古代文明の遺産なんだけど、長年の研究で本来の使い道が別にあることが判ったんだ」


 それが人のスキルを吸出し、奪い取るというものだそうだ。


 「じゃあ、この街にもある『キューブ』は、大昔に誰かが修得して奪われたものを公開して売ってるってこと?」

 「人聞きが悪いけど、まぁそうなるんだろうね。発見した時の記録では、誰かが踏みいって荒らした形跡がなかったとあったから、その部屋が封印された当時のままだったと推測できる」


 何千年だか何万年だか前の人が修得したスキル。確か『槍単発スキル、ストライク』『釣り』『イーグルアイ』『解読』『魔獣使役スキル、獣使い』の五つだと聞いた。どれも今でも普通に使えそうなスキルばかりなので、(いにしえ)の……って感じがまったくしない。


 「最初にこの街で見つかったのはその五つだね。それから二百年以上経ってるんだから、もっと沢山発見されてるんだ。この街だけでなく、国中どころか世界中あちこちでね」


 なんと、ギルマスから聞いた話は極一部だったようだ。確かに二百年以上、発掘研究をしていれば、数が増えて当然だろう。


 「とは言え、公開したところで売れないだろうってのが殆どなんだ。既に発見された『キューブ』と同じスキルを持った物が多く発掘されているのもあってね、レアなスキルが見つかったとしても、『釣り』の様に下手に売り出せない物もあるから仕方がないんだけどね」

 「どこの国でも言えることだが、武器の技スキルが大半を占めるそうだな?」


 教授はチーダスさんに向かって手を伸ばし、ちょいちょいと指を動かす。チーダスさんは持っていた書類綴じを教授に渡した。


 「これは一応極秘書類なんだから、口外はしないでよ?」

 「ふん。どの国も貴重な『キューブ』の情報は隠しとるに決まっとろう。これに載っとるのはどうせ大したことのないカススキルばかりだろうよ」


 教授はグラスを片手にペラペラとページを捲る。目に留まるような項目が無いのか、捲るスピードが緩まらない。


 「それは?」


 チーダスさんが取り出した時から気になっていたので聞いてみる。


 「これは世界中で発見され、学会に公開されている『キューブ』の一覧表なんだ。一応学会で『一般人には公開しない方が良いもの』まで載ってるから、君や父さんは見れない物なんだけどね。カイエン侯爵様から『マビァには出来得る限り見せるように』とのご命令があったから持って帰ってきたんだ。普段は厳重にしまってある物なんだよ」


 紅月が研究所に忍び込んだ時に、入れなかった部屋にあったものなのかもしれない。わざわざ持って帰って来てくれたことにお礼を言って、話を戻す。


 「さっきの話だと、『キューブ』でスキルを吸出されたら『鐘』の状態異常の効果を受けるようになる……でしたっけ?」


 今の俺からスキルを二つ三つ抜いたところで、突然『鐘』の効果が効き始めるとは思えないんだけど。


 「人には鍛練によって見えない数値の上昇による、基礎能力の底上げみたいなものがある……ってカイエン侯爵様から聞かなかったかい?」


 うん、それはさっき聞いた。頷いて先を促す。


 「更にスキルには修得するだけで、その基礎能力に(プラス)の補正が付くのではないか? という仮説があるんだ。そっちは知ってるかな?」

 「えぇ?」


 まったく知らない情報だったので、ブンブンと首を振る。


 「例えば、さっき出た『イーグルアイ』だと、『キューブ』からスキルを修得した時点で、ちょっとだけ視力が良くなるんだ。普段メガネが必要な人が、無くても少しだけ楽になるって具合にね」


 どうやら、そのスキルに関連のある能力に+補正がかかるらしい。


 「そしてスキルを成長させ、マスタークラスにまで上げれば、修得初期とは比べ物にならないほどの補正がかかるんだ。もっともスキルの成長は早くないしマスタークラスまでは何年もかかるから、『視力が随分と回復したな』って程度の自覚しかないらしいんだけどね」


 本当なのだろうか? スキルをいくつもマスタークラスにしている俺からしたら、その恩恵で強くなってる実感なんて全然無い。


 「俺、さっきも言いましたけど、スキルを修得したばかりですよ? その説が正しいなら、ちょっとは実感できそうなもんなんですけど」

 「それは君が二十以上もスキルを修得しとるからだろう? 更にマスタークラスがいくつもあるのなら、修得初期の+補正なんぞ微々たるもんだ。他の+補正に紛れて分かりゃせん」

 「そうなんだろうね。もし君のスキルを全部『キューブ』に吸い取らせれば、異常な程の倦怠感や脱力感を感じるかも知れない。『キューブ』での吸い出し方はまだ解明されてないけど、空の『キューブ』には近付かないことをオススメするよ」


 そんな怖いことになるなら、絶対に近付かないよう気を付けよう。まだまだ弱いってのに、更に弱くなるなんてたまったもんじゃない。


 ……待てよ? 元の世界では、各教会で任意のスキルを消してもらうことができる。あれでも実は弱体化するのか?

 聞いといて良かった。あまり考えずに必要の無いスキルを取り育てるのは、時間的にも金銭的にもかなりの無駄になるんだ。「使ってみて気に入らなきゃ消せばいい」って精神でやってきたから、さっきも『黒い三連狩り』の武器でスキルを修得して、あいつらに実演して見せてもいいか? って考えてたくらいだ。もうちょっと慎重にやろう。


 「じゃあ、スキルを抜くことで弱体化させ、『鐘』の効果で抑止して治安を守ってたってこと?」

 「吸い出したスキルに武器攻撃スキルが多いのは、反乱の意志の抑止に他ならない、くらいには思ってるよ。『キューブ』に入っている武器攻撃スキルのほとんどが単発の低ランクのものばかりでね。使い手が成長する前に抜き取られていたと考えられている。弱体化が目的ではなくて、成長の阻害のためにやってたみたいなんだ。でもそれだけだと鍛練による基礎能力のまでは止められない」


 スキルが使えなくなり、+補正が無くなったとしても、鍛練で身に付いた体捌きや筋力までは無くならないもんな。


 「恐らくだけど、ここにいる三人やカイエン侯爵様、テイレル大佐なんかはスキルを全て失ったとしても、『鐘』の効果は効かないんじゃないかな? 基礎能力のレベル自体が戦闘慣れしていないスキルすら知らない人達とは段違いだろうからね」


 チーダスさんはそれほど戦闘慣れしてそうには見えないけど、なんせ教授の息子さんだ。底が知れない。


 「そういった人達も当時は当たり前にいたはずなんだ。明日の僕達と同じように、長い歴史の中で『鐘』の停止を目論んだ連中が何組かいたはずだ。でも、止められた『鐘』は世界中のどこにも発見されていない。つまりそんな連中でも抑えられていたと思っといた方がいいだろう。だから『キューブ』の機能か、はたまた別の物か、管理者は何らかの方法で基礎能力のレベルを下げられていたと考えられている。まぁ可能性の話だよ」


 可能性を言い出したら切りがないよね、と笑うチーダスさん。つまり明日の遺跡には、俺らの基礎能力を下げる何かがある可能性だってあるわけだ。

 慎重に考えてばかりで、前に進まないなんて俺には向いていない。


 「さて、じゃあ本題に入るか」


 パタンと書類綴じを閉じてこちらを見る教授。


 「……えっと、なんでしたっけ?」


 何の話してたっけ? この街の大昔の話を聞きに来たんだっけ?

 俺が首を捻ると、教授はジト目でこちらを見つめ、大きく溜め息を吐いた。


 「……マビァくん、君がこっち(・・・)に来た当初の目的はなんだった?」

 「あ……。そうでした。今日もワケわかんないくらいバタバタしてたからすっかり忘れてた」


 ついさっきもカイエン侯爵達に話したばかりだってのに、なんかやることが増え過ぎて本来の目的が希薄になっている気がする。


 「やれやれ……。確か『危機探知スキル』だったか? もう一度詳しく聞かせてくれんか? コイツにもまだ話してないしな」


 親指でチーダスさんを指しながらナン教授が言う。


 「そうですね。俺もまだボンヤリとしたイメージしかないですけど……」


 えーと、と頭を捻りながら曖昧なイメージを伝える。


 「……つまり、周囲に潜む魔獣や敵対する人物、罠や危険物を察知、または探知できるスキルってことでいいのかい?」

 「そう! そんな感じのです」


 俺の拙い説明からチーダスさんが要約してくれた。


 「そのものズバリなスキルは聞いたこともないけど、確か『釣り』スキルの系統に『魚群探知』ってのがあった筈だよ。それと『罠発見』ってスキルがあるね。これらの複合アレンジ的なスキルと考えればイメージしやすそうだね」


 丸太の上にノートを広げてカリカリと何やら書き始めるチーダスさん。

 描いたのは人型の絵と、そこを中心に広がる輪。そして輪に触れる魚の絵だ。


 「この街じゃ『釣り』スキルの『キューブ』での販売は禁止されてるんだけどね。なにも漁師が自力で修得したものまで禁止にしているわけじゃないんだ。かといってあまり大っぴらにできるもんでもないから、釣り系統のスキルを持っててもバレないようにこっそりと使っているらしいんだ」


 『魚群探知』とは、船の上から自分を中心に波紋の様にスキル特有の波長を広げ、水中に潜む魚の群れを探るスキルなのだそうだ。スキルレベルが上がれば魚介の種類まで判別できるようになるし、探知範囲も広がるんだとか。

 イメージとしては近いのかもしれないが、水中限定で魚介類限定だと俺には使いどころが殆ど無い。


 「俺もコイツをざっと見たが、マビァくんの言う能力そのもののスキルは載っておらんかった」


 教授は書類綴じをポンと叩くと、脇の台の上に放り投げる。


 「あぁっ! 雑に扱わないでよ!」


 チーダスさんが急いでその書類綴じを回収し、鞄へと納める。


 「じゃあ、俺の求めるスキルは世界中で公開されてる『キューブ』からじゃ手に入らないってことですかね?」


 この街で見つからなかった場合、他の街や他の国を巡るつもりだった。その際に各地の『キューブ』を一から調べて「またここにもなかった」と、精神的に食らうダメージと無駄な労力を未然に防げたことはありがたいのだろうが、同時に多くの希望も失ったことになる。何を当てにして探せばいいんだろう?


 「そう悲観的になるもんでもないぞ。まずは基本から見直そうじゃないか。ほれ、チーダス。説明せい」

 「そうだね。じゃあ修得方法別の分類なんだけど……」


 チーダスさんの説明によると、修得方法の違いでいくつかの系統に分かれるんだそうだ。


 まず一番簡単なのが、同じ動作を繰り返し鍛練することで修得できるタイプ。

 これは武器攻撃スキルなどがそうで、集中して正確に同じ動作を繰り返せば、必ず修得することが可能なんだそうだ。

 これは昼に体験したばかりだから納得だ。


 二つ目は技能の上達によって才能に目覚めるように修得するタイプ。

 『鍵開け』や『罠発見・解除』、『釣り』『イーグルアイ』『猫の目』などがそうらしい。

 ウェルの『臭気分析』やフェネリさんの『認識阻害』、紅月の『忍』もこちらに入るのかな?

 元からその技能を得意としているか、天賦の才を持っている者が修得しやすい。

 スキル修得後に、飛躍的に能力が上昇するが、それは元の技能の延長上であって、方向性の違う能力を修得するわけではないそうだ。


 三つ目は特殊な修得条件を満たした時のみに修得することが可能なタイプ。

 これはそのスキルを修得した者も、その条件とやらが何だったのか判らない場合が多いらしい。

 ガラムさんの『九十九神の言霊』や、ロージルさんの『情報分析』と『情報管理』。クロブの『英雄への道程』『超人化』『超回復』『第六感』などがこれに入るのかもしれない。

 確かに特殊なものばかりだし、どうやって修得したのか本人に聞いても答えられないんだろうな。


 ちなみに『種』で他人に譲渡できるスキルは、主に二番目のものが多いそうだ。

 誰にでも譲渡できる『種』にも欠点があり、自力でスキルを修得した場合と違って、『技能の上達』という過程がすっぽり抜けているため、確実にスキルを修得できる反面、初めは使い慣れるのに苦労するらしい。


 「僕達一家が修得してる『獣使い』は三番目の特殊スキルに入るんだけどね。ある程度の取得条件を父さんと母さんが解明してるから、僕やカイラは比較的簡単に修得できたんだ。これが知れ渡ると『キューブ』の利用者が激減して、街の収入が減るから秘密なんだけどね」


 チーダスさんが口に人差し指を立てて見せ、ウィンクする。大丈夫、「黙ってろ」って言われるまでもなく誰かに話す気なんてないから。


 「昨日の土木ギルドのインディはかなり良い線いっとるな。あのまま育てば自力で『獣使い』を修得できる筈だ。だが職業柄、あと二~三年で『キューブ』で取らされることになるだろう」


 詳しいことは聞かないが、修得条件を知らずに自力で『獣使い』を修得するのは、場合によっては一向に条件を満たせずに、一生得られない可能性もあるんだとか。

 『獣使い』のスキルを使う職業自体がまだ限られているので、その職業を目指す子供は、成人前の見習い期間中に『キューブ』から取らされるんだそうだ。だから本来『獣使い』の自力修得なんて思いもよらないらしい。このクリゲイル一家が特殊過ぎるみたい。


 「それで、だ。君の言う『危機探知スキル』は二番目に分類されるのではないかと俺は思う。つまり、特殊な条件を満たさずとも鍛練を怠らなければ、いずれ自ずと修得できるのではないか……と思うわけだ」

 「うん、僕もその意見に賛成だね。もしかしたら三番目に入るのかもしれないけど、三番目の特殊スキルは修得困難な分、得る力も大きいんだ。周囲の何かを発見する、または感じとるくらいの能力だと三番目だったとしたら割に合わないんだよね」


 なるほど、そう言われれば納得できる。


 ……ん? まてよ?


 「あれ? それって俺、こっちに来る必要がまるで無かったってことになりませんか?」


 なんか俺がここに居ること自体を根本から否定された気がしたんだが。急に目の前が真っ白になりかける。


 「いやいや、君の場合は特殊過ぎるからな。一概にそうとも言えん。君をこっちへ放り込んだという……そう、『プレイヤー』とやらにはなんらかの意図があったはずだ。まるっきり意味の無いことではないと俺は思うぞ」


 教授の言葉に、『プレイヤー』のことを思い出す。

 アイツ、俺がどう行動するのかを観るのが目的みたいなこと言ってたもんなぁ。

 俺がこっちの世界へ来た目的は『危機探知スキル』の入手。二人から『自力で修得できる可能性』の話を聞いた今、ある意味目的を達成したと言えなくもない。

 二人に話を聞かなければ、それには気がつけなかっただろうし、こっちの世界へ来なければこの会話は無かった。つまり、この会話がここへ来た目的の終着点?

 後は元の世界に戻ってからじっくり自力で鍛練して修得しろってのが結論? これでこの旅は終わり?

 どうも納得いかないし、しっくり来ないな……。

 ナン教授の言う通り、結論を出すのは早すぎるのかもしれない。ぐるぐると思考を回していると、チーダスさんも頭を捻る。


 「え、なに? なんか話が判らない方向に飛んだけど? マビァくんが特殊って……まぁ普通ではないんだろうけど、多分意味が違うよね? なんの話だよ父さん」

 「うむ、彼がいないところで俺が勝手に言いふらして良い話でもなかったからな。彼は異世界人だそうだ。文字通り、こことは違う世界から来たらしい」

 「…………は?」


 「この酔っぱらいオヤジ、何言ってんだ?」って目で教授を見返すチーダスさん。確かにさっきから強い酒では無いとはいえ、カパカパとグラスを空けている教授だが、酔った感じはまるでしない。

 まぁその反応が普通だよな。こんな話普通なら誰も信じるわけがない。


 「いきなりぶっちゃけましたね、ナン教授……。急に信じられる話でもないでしょうに」

 「なに言っとるか。『元の世界で使うためのスキルを異世界に求めて来た』などという常軌を逸脱した事態、少しでも理解せねばならん。ことスキルに関しては俺よりコイツの方が専門家なんでな。すぐに信じられなくとも話さんわけにはいかんだろう?」


 そう言われて、ようやく俺がとてつもなく異常な存在だということに気が付いた。

 クリーム色で何もない『プレイヤー』のところから、朝日の照す爽やかな草原で目覚めた俺は、奇妙な空間から嗅ぎ慣れた草原の丘への転移だったので、異世界に来たというよりは見知らぬ地を旅している感覚の方が強かった。

 平和で豊かでかなり文明の進んだこっちの世界での日々は、言葉や金銭的な不自由もなく、新鮮な喜びと驚きに満ちていたので、興奮度高めでただ楽しんでいた。

 だから、こっちの人達にとって俺の存在はどうなんだろう? なんてあまり気にもしなかった。

 まぁ、新聞で毎日騒がれるくらいだから普通ではないんだろうけど、俺は「何を大袈裟な」程度にしか思っていなかった。

 俺の事情を信じてくれているナン教授は、すごい権威ある先生らしいので、俺の存在を深く考えてくれていたみたいだ。

 

 「君の世界のことはチラッとしか聞いとらんが、人体の構成にこちらとの差はそんなに無さそうだから、物理法則はそう変わらんのかもしれん。しかし『神の摂理』はどうなる? 君の受けたシャルちゃんの神聖魔法もそうだが、スキル修得も含め、この世界の(ことわり)は女神サスティリアのお力によるものだと言われておる。そのあたりは君の世界ではどうなんだ? ザンタにスキルの基礎を教わって、すぐにスキルを一つ修得したと言ったな。アイツが教えられるのは武器攻撃スキルくらいだから、君が得たのもそうなのだろう。こちらのやり方でも修得できると判ったのは朗報だが、なぜ異世界人の君が女神サスティリアの恩恵を受けれたのかは謎だ。それは全てのスキルに適応されることなのか? 君の世界でのスキルとの違いは無いか考えてみなさい」


 多分、俺が異世界人だと告白した時から考えていたんだろう疑問を纏めて突き付けられた感じだ。

 う~ん、と頭を捻りながら疑問を一つずつ考えていく。その間にナン教授はチーダスさんに俺のことを説明するようだ。


 まず、こっちの世界でスキルを修得した場合、その力を与える大元にあるのが唯一神の女神サスティリアということらしい。

 スキルを修得可能になった時に『○○を修得可能です。修得しますか? イエス・ノー』という問い掛けが、脳裏に声と文字という形で現れる。

 元の世界でも同じ感じだったし、疑問に思ったこともなかったが、よく考えれば誰に問い掛けられてんだ? って話だよな。

 それがこちらの世界ではサスティリア様ということになるらしい。女神様の声にしては生気も色気も感じない素っ気ないものなんだけど。って、よく知りもしないのに勝手な願望を押し付けるのはダメだよな。


 では元の世界ではどうなのか?

 あっちの世界では神様はいっぱいいるし、俺はどの神様の信者でもないので、特定の神様がスキルの力を司っているって感じがしない。

 孤児院での詰め込み教育の中には、神話に関するものは無かったので、俺が知っている神様の名前はシーヴァの街にある教会の半分も無いだろう。

 神話を良く勉強していて、神様達がそれぞれ何の力を司っているのか知っていれば分かったのかもしれないが、俺はそんなに博識じゃあない。


 じゃあスキルそのものの違いはどうか。

 名前が違うけど同じ能力のスキルだろうってのはいくつも見つけた。それらの覚え方もほぼ同じっぽい。

 ロージルさんにガラムさん、クロブ達の特殊スキル系は驚くものばかりだし、あっちの世界でも同じようなものがあるのかは俺は知らない。

 でも『赤竜石隊』の人達のことを思い浮かべると、あっちの世界にももっとすごいスキルがゴロゴロありそうに思えるんだよなぁ。

 それに『種』の譲渡。これは聞いたことも無かった。あっちでも可能なんだろうか?

 

 「……って感じなんですけど、なにか気づくことありますか?」


 頭で考えたことを整理しながら二人に話す。


 「神様が沢山いる世界ってだけでも想像しにくいなぁ。まぁ、こちらでも全く礼拝に行かない人もいるし、信仰心が薄くてもスキルは授かれるし、神聖魔法で回復もしてもらえる。その辺は気にしなくても良さそうかな?」


 とりあえずナン教授の話を信じてくれたチーダスさんが頭を捻る。


 「『種』を作ることができないとなると、多少の理の違いがありそうだな。これは君が『種』を受け取れるかどうかに関わってきそうだが、試してみるか?」

 「いえ、スキルの修得可能枠の上限までの空きがどれだけあるのか判らないから、今は気軽に増やせないんですよ」


 ナン教授のありがたい申し出だが、お断りする。


 「一つのスキルで複数の枠を使うものもあるからねぇ。『獣使い』も枠三つ使うんだ」

 「そうなんですか?! それは知らなかった……」


 チーダスさんの言葉に驚く。能力の高いスキルほど使用枠の数が多いらしい。これは元の世界でも同じなんだろうか?

 色々と話し合うが、俺自身がスキルに関して精通しているわけじゃないので、やっぱり埒があかない。


 「確かに君自身の努力次第で、自力で修得できるのでは? って可能性は見えたけど、何をどうすれば修得に至るのかまでは全くの不明だよね。今元の世界に帰っても何もできないんじゃないかな?」


 確かにそうだ。何かを探したり気配を探ったりしてれば、いずれ身に付くのだろうか?


 『罠検知』の場合は、罠が仕掛けられていないか気を配り、罠とその周囲との違和感を感じれるよう感性を研くことで身に付くとレイセリアに聞いたことがある。

 スキルのレベルが上がると、自然と罠に目が行くようになるそうだ。

 ちなみに、罠になんてどうやって遭遇するのかというと、人知れず開いた『ゲート』から出たゴブリンなどの人型の魔物が、森の奥や洞窟などに住み着き、集落を作ったりすることがよくあるのだ。

 そういうところに討伐に行くと、粗雑な罠が設置されたりしている。それでも素人の俺では気付けないので、斥候と罠の検知と解除はレイセリアに任せきりになっている。


 「俺は魔獣を見つけるのは大抵は『猫の目』と『蛇の目』で事足りるから、そう色々と一度に見付けられるスキルを得ようと思ったことがないからな」

 「僕も父さんも職業柄『罠発見』のスキルを持ってるんだけど、使う機会も少ないからねぇ」


 職業柄? 聞いてみたところ、チーダスさんは古代遺跡に入るので一応訓練して取ったらしい。

 とはいえ、進み過ぎた文明の罠となると、発見は困難だし解除もほぼ不可能なのだそうだ。ワイヤーに足を引っ掻けたら発動するなんてお粗末な物などなく、多分アレのせいで罠が発動したんだろうって思うち~~さな穴とか、ちょっとだけ光沢の違うこれまたちっちゃいタイルを床や壁に見付けられる程度なんだとか。

 罠も警報と思われる音が鳴ったり、衛兵(ガーディアン)が湧くものが殆どで、直接攻撃されるものは無いらしい。

 一方ナン教授の方は、魔獣にも罠を仕掛けるタイプのヤツがいるんだとか。

 例えば蜘蛛とかアリジゴクなどの昆虫タイプや、鳥タイプや猿タイプ、海の魔獣なんかも罠を張って獲物を獲るヤツがいる。大型の魔獣だと人間だって捕食するから、生態を調査するナン教授のような研究者には『罠発見』のスキルは必須みたいだ。


 「取り敢えず『危機探知スキル』のことはおいておこうか。ここでできる情報交換はこれくらいだろう。明日の遺跡もそうだけど、調査が全然進んでない遺跡はまだあるから、そこで『キューブ』が見つかるかもしれない。明日は早いんだから、そろそろお開きにしとこうよ」


 チーダスさんが言いながら視線を横に移す。釣られてそちらを見ると、壁にかかった時計が九時半近くになっていた。


 「マビァくん、君から聞いた話だと『プレイヤー』とやらが言ったのは『こっちの世界で力を手にいれたら、元の世界に戻してやる』という内容だったな? ならまだこちらでやれることがある筈だろう。今の話し合いだって大きな進歩になるかもしれん。君が来てからまだ五日だ。焦らずに、まずは明日を乗り越えることに集中しなさい」


 グラスをかざし、ニヤリと笑って忠告してくれるナン教授。ホント助かる。


 「ありがとうございます。チーダスさん、明日はよろしくです」

 「うん。頑張ろうね」


 立ち上がって二人に一礼してから庭へ出た。

 一応子供達に気付かれないようにそっと門を開けて通りに出て、宿へと走る。


 すっかり遅くなってしまった。結局腹はまだへった感じがしない。もう晩飯はいいから風呂に先に入らなきゃ時間がなくなってしまう。

 明日が休日だからか、通りには人が多い。

 俺は人にぶつからないように気を付けながら、帰り道をできるだけ急いで駆け抜けた。

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