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五日目 チーダスさんによる古代文明遺跡の説明

 数分でナン教授の家に着いた。

 そう高くない門扉に手をかけようとして、ふと視線を向けたその先に、丁度母屋から出てきたナン教授と目が合う。


 「あ、ナン……」


 俺が声をかけようとしたところでナン教授は、なにやら慌てたように人差し指を一本立てて口元に当て、こちらへと小走りでやってくる。


 「悪いなマビァくん。丁度孫達が寝るために三階に上がって行ったところなんだ。君が来たと知られれば興奮してとんでもないことになるから、静かについて来てくれ」


 小声で言いながらナン教授は門を静かに開けて俺を中へ入れる。

 確かに判らないでもない。俺が出身の孤児院に差し入れをするのが遅い時間になった時は、嬉しさのあまりに子供達は大暴れし、院長からは「差し入れはありがたいのですが、時間を考えなさい」といつも怒られている。

 俺にしてみれば、厳しい孤児院生活の中での先輩達の差し入れや、聞かせてくれる話は最高の楽しみだったので、興奮する気持ちの方がよく判るから止めるつもりはないんだよね。


 今回は大人の話し合いに来たので、カーリーやチックと遊んでいられないだろうから、当然ナン教授に従う。


 向かうのは母屋から二階の渡り廊下で繋がっているナン教授の木工工房のようだ。

 扉を開けて魔光灯の灯りをつけて俺を中に入れた。

 室内に籠る木の香りが鼻腔を擽る。

 積み上げられた短い丸太の塊。壁に貼られた見たこともない魔獣のスケッチ画の数々。大きな回転式の丸い台に彫られてる途中の彫像が載せてあり、その脇の棚にも途中のものが数体並ぶ。様々な形の彫刻用の刃物。壁にぶら下がる大小のノコギリ……。

 とても趣味の空間とは思えないほどの本格的な工房に、思わず呆けて眺め回す。


 「……すっげぇ……」


 この家のあちこちに置いてある完成品を見た時から、教授の腕前の半端無さには驚かされていたが、工房を見て本当にここであれらが造られているんだと思うと、更にその凄さを叩き付けられて心地好い圧倒感に浸される。


 「今、息子を呼んでくるから適当に座っててくれるか」

 「は、はい」


 言いながら渡された丸椅子を受け取り、綺麗に掃かれた床に置く。でもあれこれ見ていたくて座ってなんかいられない。

 ボーっと立ったままの俺に苦笑を漏らして、ナン教授は出ていった。




 「悪い悪い、待たせたな。これが息子のチーダスだ。なんでも領主様の命令で君もコイツも明日朝早くに遺跡に潜ることになったんだってな? 随分と急な話じゃないか」


 「そうなんですよ。カイエン侯爵は俺という戦力がこの街にある内にやっておきたいみたいで、いいように使われています」

 

 若い男性に扉を開けさせて、ナン教授はお盆に酒瓶とグラスを載せて入ってきた。

 チーダスさんは二十代半ばに見える優しげな人だ。どちらかといえばホーリィさんに似ていて、線も細く学者って感じがする。


 そもそもナン教授が学者って感じが全然しないほど、背は低いがガッチリしているし、身形もどう見ても研究者風には見えないので、本来ならそっちに違和感を感じるべきなんだろう。

 しかしナン教授には、太い鎖を使い魔獣を捕らえたり、重いウナギを担いで見事に捌いたり、素晴らしい彫刻を見せられたりなどなど、色んな面で『教授』や『先生』や『師匠』と呼ぶしかないほどの実力を見せつけられているんだ。

 多才なナン教授が俺の価値観を狂わせているんだから、息子さんとのギャップがあっても仕方がないと思う。


 短く薄茶色の髪の毛はボサボサで、丸いメガネがよく似合っている。身長は俺と同じくらいで、着崩れたシャツとズボンが少しヨレてて、一日働いた後に寛いでた感じが見て取れた。

 苦笑しながらチーダスさんがこちらに手を伸ばす。

 「いやはやお互い様ってわけだね。初めまして、チーダスです。父さんから噂は色々聞いてますよ。明日は命を預けることになりそうなので、よろしくお願いします」

 「こちらこそ。やってみなくちゃ分かんないことだらけですけど、安全第一の作戦らしいので護りますよ」

 カイエン侯爵に巻き込まれた者同士で握手を交わす。


 「一杯やりながら話をせんか? マビァくんはもう呑めるんだろう?」


 言いながら、グラスに酒を注ぐナン教授。もう三杯分注いでるじゃん。


 「あまり強くないヤツなら大丈夫です」

 「それなら問題ない。コイツもあまり強くないからな」


 キュッとコルクの栓を酒瓶に閉めながら、ニヤリとチーダスさんの方へと視線を向ける。


 「父さんが強過ぎるんだよ」

 「何をいう。ホーリィも強いがカイラは俺の比じゃあないじゃないか」


 なんと、カイラさんがこの家で一番酒に強いらしい。今は妊婦さんなので一切呑んでないそうだから、男二人も母屋での晩酌は遠慮気味なんだそうだ。


 彫刻用の丸太を一本床に立て、上にお盆を置いて三人囲むように丸椅子に座ってグラスを掲げ、軽く打ち合う。


 「明日の作戦の成功を祈る」


 教授がそう言って、ぐいっと一気に飲み干して、キュポンと栓を抜いて二杯目を手酌で注ぐ。俺とチーダスさんはその様子を見て少し呆れ、顔を見合わせて苦笑した。


 「まぁその作戦のせいで、我が家はさっきまで大事だったんだがな」


 教授はやれやれと大きく溜息を吐き、ふふん、と笑い声を漏らす。


 「何かあったんですか?」

 「おおよ、大変だったぞ? コイツが孫どもと明日朝から一緒に休日を共にすると約束しておったのに、領主様からの急なお達しで、予定では昼までとはいえ約束を破ってしまうことになってなぁ」


 チラリと視線をチーダスさんに向け、続きを促す教授。俺もチーダスさんに視線を移す。


 「『おとーさんのうそつきー!!』って、二人にわんわん泣かれて大暴れされて大変だったよ。父親としての信頼ガタ落ちさ……」


 ガックリと肩を落とすチーダスさん。ありゃりゃ、それはお気の毒に。

 ギャン泣きする子供のパワーってすげぇもんなー。俺も小さい子の世話をしてきたから判るわ。


 「カイエン侯爵の予定では、昼までには終わるつもりらしいんですけど、チーダスさんは二年前の遺跡攻略に参加したんですか?」

 「あぁ、碌に進まないうちに衛兵(ガーディアン)に囲まれて、こりゃダメだって逃げ出したからね」

 「あの時は俺もこの街に居なかったからなぁ。居ればアドバイスの一つもできたんたが、なんにせよ前衛二人では戦力不足には代わりない。侯爵様も様子見程度にしか考えておらんかったのだろう」


 ナン教授は当時、他の国に魔獣の生態調査に出かけていたそうだ。


 「ナン教授は遺跡の衛兵も研究してるんですか? 魔獣とは違うって聞きましたけど」

 「魔獣との違いを研究するために、若い頃に外国で何種類か調べたことがある。衛兵は魔獣に模したものが多く、ジェムに似た核を持つが、その体を構成するのは全く同じ形の大量の小さな砂粒のような物質でな。生物ではなく魔術で操るゴーレムに近い存在らしい」

 「この国の『ヌーメリウスの鐘』を守る衛兵は『キリバチ』と『ヒラグモ』で、他所の国では『サーキュラーソーホーネット』と『ライトニングスパイダー』という名前で知られてるんだけど、倒しても倒しても無数に湧いてくるのは『鐘』のような特殊な遺跡だけなんだ」

 「特殊な?」

 「うん、学会で出ている結論では、太古に世界全体を統一していたとされる唯一の『国』が管理していた重要施設ではないか、と言われている遺跡ばかりなんだ」


 『学会』とは、古代遺跡に関する調査を世界的に行い、情報を共有しようという国際機関『世界古代文明研究学会』というものなんだそうだ。

 その歴史は以外と浅く、まだ設立から二百年も経っていないらしい。

 確かこの国で『キューブ』が初めて発見されたのが二百数十年前だとギルマスが言ってたな。それよりも遅い立ち上げなのは当然か。

 その為か権威や強制力はあまり無いんだと。


 この国の各街にある『古代文明研究所』自体は国営で、各国の代表者が数年に一度研究成果を持ち寄り、学会で報告され情報が世界中に流布される。

 しかし当然、各国の思惑で流す情報は制限され、他国との優劣に関わる情報までは「全てを(つまび)らかに」というわけにはいかないらしい。

 ガラムさんの故郷。滅亡したナクーランド帝国は学会に参加拒否し、自国で発見された古代文明の超技術力を独占、再現して国力の差を他国と大きく広げていた。結果、急ぎ過ぎたせいか滅んだって話だけど。


 「俺はザンタ達から酒の席での自慢話で、無限湧きの衛兵攻略の話は聞いていたから知っていたが、あいつらが攻略した国は情報の公開を渋ったみたいで、この国の研究所には伝わっていなかったらしい。侯爵様がそれを先に知っていれば、それか俺がこの街に居てコイツにその話をしていれば、二年前の無謀な挑戦もなかっただろう」


 ハイペースで酒を呑んでも酔った様子のない教授の言葉に、なるほど、と頷く。

 

 『国』が運営する施設の中でも、反対勢力に乗っ取られたらヤバい重要な施設にだけ、無限湧きの機能が備わっているそうだ。

 それ以外の施設。例えば個人宅だったと思われる遺跡や、商店や倉庫だったと思われる遺跡でも、発見時に未だに稼働する衛兵がいたりするそうなのだが、同じ『キリバチ』や『ヒラグモ』が守っていたとしても、一度倒せば二度と湧いてくることはないんだそうだ。


 元々、何千年だか何万年だか昔の施設が、経年劣化もせず未だに稼働していること自体が驚異的なのだが、更に無限湧きの機能がある時点で、当時でも余程重要な施設だったことは想像に容易い。


 ちなみに『国』の名前が判明されていないのは、紙媒体の資料は全て朽ちて崩れており、残っている文字は、金属でも粘土でもなさそうな素材で作られた劣化しない素材に書かれたり刻印されたりした文字と、全世界で無数に見つかっている『キューブ』を使った際に脳裏に浮かぶ文字くらいで、そこから解読し得られた情報に『国』を示す固有名詞が見つかっていないかららしい。


 学会の見解の一つに、「そもそも国名自体が無かったのでは?」という意見もあるんだとか。


 「国に名が無いなんてことがあるんですか?」


 物にも人にも土地にも必ずそれを示す名があって当然だと思っているので、その見解には驚いた。


 「名付けをするのは、『他と区別するために必要』だからだよね? 古代文明の成り立ちはまださっぱり解らないんだけど、『もし初めから一国しか無かったのなら、そもそも国名を付ける意味なんて無かったからなのでは?』ってのがその根拠なんだって。だから僕らも便宜上、勝手に国名を付けたりせずに、『国』とただそう呼んでるんだ」


 はー。そういう考え方もあるんだ。それはそれで不便そうだけど、研究者達が納得してるんなら俺がどうこう言うことはない。


 「話が逸れたね。我が国で言う『ヌーメリウスの鐘』と同等の施設は、実は世界中にいくつか同じものが存在してるんだ。『鐘』の効果は聞いてるんだよね?」

 「はい、聞き続けることで『恐怖』の状態異常を知らないうちに植え付けられて、争いを抑えている……であってますかね?」

 「うん、よく理解しているね。そこのダムラス川より北だけ『鐘』の施設が点在していて、ちょうどその範囲に栄えた国が、このドライクル王国なんだ。じゃあ、なんでこの『鐘』がある地域は限定されていて、世界中にいくつか存在していると思う? 古代文明は何故こんな地域を作ったんだろうね?」


 ……なんか、授業を受けてる気分になってきたぞ。

 俺の育った孤児院では、甘えたり頼ったりする親がいないから、その分早く自立して社会に出る為に厳しい教育が施されていた。

 その時の座学を思い出すが、チーダスさんは誘導の仕方が上手い。俺もちょっと楽しくなってきて、「ん~~……」としっかり考えてしまう。


 「……世界に国が一つしかないなら、他の国との戦争が無いわけで、紛争や内乱を防ぎたいなら世界中に『鐘』を置いた方が、平和の維持にはいい筈ですよねぇ。この街を見る限りじゃ、市民同士の喧嘩すら無いほど効果が出ているみたいだし……。『鐘』が無い地域の方が広いんですよねぇ。……………ん~、あ、むしろ逆にここだけに必要になった? いやいや、結果古代文明は滅んでるんだから、『鐘』の範囲外だって平和だったわけじゃないのか?」


 俺が独り言をブツブツと言いながらウンウン考えているのを見て、教授はガッハッハと、チーダスさんはハハハと笑いだした。


 「いや、笑ってごめん。かなり正解に近づいたのに、なんか明後日の方に飛んでっちゃったね」

 「うむ、流石マビァくんだ。思考も柔軟で速いし面白い!」


 ん? 何がおかしかったんだろう。判らずに首を捻る。


 「ここだけに必要になったってのが正解だね。世界各所の『鐘』がある地域での長年の調査で判ったのは、大勢の人々をこの地に住まわせ、反抗心を抑制し、労働をさせる。言わば、巨大な強制収容所や監獄みたいなものだったっていうのが定説なんだ」

 「ドライクル王国の国土全面が監獄!?」


 そこまで巨大な監獄なんて聞いたこともない。俺が見たのはここカレイセム近郊だけだけど、それだってルーリライアス領地の三分の一だって話だ。領地がこの国にいくつあるのか知らないが、十以上はあるのだろうから、その広さは想像し難い。


 「監獄と言っても僕らが想像するようなものとは随分違ってたみたいでね。収容されていたのが犯罪者だったのか反対勢力だったのか、それとも下位階級の者だったのかまでは解らないけど、微かに残る生活の痕跡から見ても、かなりの自由と高い生活水準は保証されてたみたいだね。無かったのは仕事を選ぶ自由、後はこの地域から出る自由かな?。食物の生産をやらされていたようだよ」

 「肥沃な大地に山森も湖川(こせん)もあるから、農業・畜産業・水産業なんでもござれだ。恐らく当時の主要都市の食糧庫の役割をしていたのだろうな」


 今のカレイセムみたいに林業はなかったのかと疑問に思ったが、遺跡の構造物から見るに、木材で建物を作ったりする文明ではなかったらしい。生活圏内での木材の利用すらあったのか判らないんだそうだ。湯を沸かすだけでも薪を焚かなければならない俺にとって、身近に木材や木製品の無い生活なんて想像できないな。

 と、ここでカイエン侯爵から聞いた話を思い出す。


 「そういえば『鐘』の有効範囲は半径三・五キロくらいって侯爵から聞いたんですけど、それだと全域はカバーできませんよね?」


 俺が最初にこの世界に来た場所は、街から二十キロくらい離れていた。当然『鐘』の音も聞いていない。そして、街中で何回か聞いた『鐘』の音は、うるさく感じなかった。

 三・五キロ先まで届く音を響かせようとしたら、本来なら『鐘』の側では耳を塞がないと堪えられないほどの大音量で鳴らさないといけないんじゃないかな? 

 この街よりもずっと大きいシーヴァの街にも数ヶ所に時を告げる鐘があるが、高い防壁に囲まれた街の外へ出るともう聞こえなくなる。鐘の音って思ったよりも遠くに響かないんだよな。

 それでも三・五キロ先まで聞こえるってことは、流石古代文明の魔道具といったところなのだろう。


 しかし、それでさえたった半径三・五キロ。他の『鐘』のある街まではもっと距離があるらしいから、街と街の間にどうしても空白の地域ができるんじゃないかな?


 「それも仮説ながら判ってるんだ。『鐘』からちょうど三・五キロくらいのところに謎の遺構をいくつも見つけてね、それは各『鐘』を中心に同心円状にあるんだ。恐らく『鐘』の音を届けるための中継器のようなものだったんじゃないかと思われている。調査結果を記した地図を見たら驚くよ? 見事に国内全域をカバーしているんだからさ」

 「つまり、古代文明における『鐘』は、それだけ大規模な効果を継続的に発し続けねばならない重要な施設だったということが判るわけだ。そういった施設がどれだけ古いものか知らんが、未知の力によって未だに新品のように稼働しておる。不朽不滅にして無数の衛兵による防御機構。君らが明日挑戦するのはそんな場所なんだよ」


 ……なんか思ってたよりヤバくない? 教授の言葉に心配になってきた。


 「で、でも、ザンタさん達パーティは攻略したんですよね?」

 「あれは『鐘』ではない、もう少し小規模の施設だったらしいからな。比べてみんと判らんが規模の大小で難易度が変わるかもしれんだろ? 用心するに越したことはないさ」


 む~……。ザンタさん達が楽しげに思い出話をしてくれたから、『ちょっとバトルのあるワクワクドキドキ遺跡探索ツアー』くらいにしか考えていなかった。


 「父さん! そんなに脅さないでよ。マビァくん、確かに二年前は数分ともたずに逃げ出したけど、あの時は前衛がたった二人で、後は非戦闘員が三人だったんだ。それでも大した怪我もなく逃げられたんだから、即死するほど危険な作戦ではない筈だよ。僕ら研究員も今回は盾を装備するし、兵士の防具も借りてるんだ。武器は仲間を傷つけそうだから持たないけどね」


 研究員さん達が自分でも防御してくれるのなら、戦術の幅がグンと広がる。更にシャルの防御魔法と治癒魔法があるから、二年前よりはマシな筈だ。もし今回でダメなら諦めるしかないんじゃないかな? 余所から俺より強い人を連れてくればなんとでもなりそうだけど。


 「元々が『鐘』で戦えなくした住人達から施設を守るための防御機構だったといわれているんだ。だからそれほど苛烈な仕様にはなっていないと思うんだよね」


 そう言われれば確かに。『鐘』の影響を強く受けているここの兵士や冒険者達じゃ遺跡に入っても何もできないだろう。それは一般人でも同じ筈だ。でも……。


 「でも、俺や教授、ザンタさん達やカイエン侯爵達みたいに『鐘』の影響を受けずに戦える人も当時はいたんじゃないんですか?」


 ロージルさんやイルマさん、ガラムさんにクロブも『鐘』の影響を受けていないだろう。数日でこれだけの非影響者に出会えたんだ。当時だってそんな連中を集めて作戦を練り、連携を訓練すれば攻略だってできたかもしれない。


 「さっきも言ったように、住人がある程度自由に幸福に生活できていたんだとしたら、反乱の意志がそもそも芽生えなかったのかも知れないんだけどね。でも確かに僕らのような『鐘』の影響を受けないスキル持ちは当時にも居ただろう。スキルは努力次第で誰でもどんなものでも修得できるようになるんだからね」

 「どんなものもですか?」

 「もちろん不可能なものもあるんだろうけどね。例えば『自由に空を飛びたい』とか『水の中で呼吸をしたい』なんてのは、もしかしたら修得可能なのかも知れないけど、何をどう訓練すればいいのかわからないし相当難しいだろうってのは分かるよね? 本来人の身ではなし得ない能力なんだから。でも『跳躍力上昇』や『潜水』なんて近いスキルは実際にあるし、比較的簡単に修得可能なんだ。万能ってわけじゃないだろうからね」


 う~ん、そうなんだろうか? ここで言えばクロブなんて時間制限や燃費の悪さがあるとはいえ相当すごいし、『赤竜石隊』に至っては次元が違い過ぎて、神だと言われたらあっさり信じられるほどバケモノじみている。それを思うと不可能なんてなさそうなんだよな。俺がその力を手に入れられるかどうかは別にして。


 「そういえば、ロージル嬢ちゃんから聞いたんだが、ザンタからスキル修得の基礎を教わったそうだな?」

 「はい、その後ちょうど良いタイミングで実戦形式の模擬戦ができたんで、そこで試したら上手い具合にスキルを一つ修得できましたよ」

 「「ブフッ! ……ゲホッ、ゲホッ……」」


 俺の言葉に、親子二人して口に含んだ酒を吹き出し噎せた。


 「……なんと、まったく君は規格外だな」

 「スキル修得なんて、普通何日もかかるんだけどね……」


 二人にえらく驚かれる。……十分もかからなかったって言わない方が良さそうだ。


 「スキルってのは一定の条件さえ満たせば、誰でも修得可能なんだ。簡単なことではないんだけどね。そして、いくつかのスキルを身につければ、ある段階から『鐘』の影響を受けにくくなる。これは流石に古代の管理者側も判っていたことでね。住人の能力の制御と管理のためにあるものが使用されていたんだ」


 チーダスさんは言いながら、持ってきた鞄から硬い革の書類綴じのようなものを取り出す。


 「それがこの街でも公開されている『キューブ』なんだ」


 そこそこの厚みのある書類綴じをポンと叩き、チーダスさんは微笑んでみせた。

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