五日目 教会への依頼
トイレに行くと嘘を吐いて部屋を出てきたが、お菓子の時にお茶をガブ飲みしたので急に尿意を催した。ついでにシャルにトイレの場所を聞いて用を足してから部屋に帰ることにする。
途中の通路で何人か神官とすれ違った。どの神官もとても礼儀正しく俺に一礼してくれるのだが、その後に決まって誰もが不思議そうな顔をする。
部外者があまり通らない建物なのだろうか? だが今回のようにギルドからの依頼とか治癒魔法の依頼とかで部外者が入ることもあるだろうし、シャルからも何も注意されず当たり前のようにトイレの場所を教えてくれた。
じゃあ俺の見た目に変なところでもあるのか? トイレに入ると手洗い場に鏡があったので姿を映してみても何もおかしなところは見付けられない。
不思議に思いながらも用を足して部屋へと戻る。
神館長室の扉を開けると、コニスは突っ伏したエリンテルの脇のカーペットの上で、抱えた膝の上に顎を載せて座っていた。
「どうした? そんなところで」
「エリンテルさんが床に放置されているのに、わたしだけ一人ソファーで寛いでるなんて、なんかわたし悪い人みたいじゃないですか~。それに罪悪感だってあるんですよ。大怪我させちゃったし、死ぬほど追い詰めちゃったし……」
やはりコニスなりに責任を感じているのだろう。
さっきは俺も「釣った魚はちゃんと食べろ」みたいな鬼畜な事を言ったが、どっちかといえばコニスは被害者なんだろう。
例えば、蝶が綺麗な花に惹かれて近付くと、その花は実は肉食昆虫の擬態で、蝶はその昆虫に食われました。さて、この蝶が騙されたのは悪いことなのでしょうか? って話にちょっと似てる気がする。
別にエリンテルさんはコニスを騙そうとした訳ではないだろうし、心底好きになってしまったのも事実だろう。
しかし身体が脆いのはともかく、精神も弱くてふられたショックで自殺を謀るなんてのはダメだろ。
コニス曰く、その点は反省してもう二度としないと誓ってくれたらしいが、今見たエリンテルさんの愛のかたちは身勝手で一方的で相手の気持ちなどお構いなしだった。
意図的ではないのだろうが、結果的に怪我したことと自殺しかけたことでコニスが離れられなくなるようにしている。
シャルも兄を守りたいが為にコニスを引き込もうとしている。
シャルもコニスのことが大好きなのは嘘ではないのだろう。ただ謀略の為だけに『お姉ちゃん』などと呼んだりしていないのは間違いないと思う。
恐らくこれらの何処にも悪意は全くないのだろう。愛情や同情、思い遣り、優しさや罪悪感で誰もが動いてるはずだ。
それらは全て他者に対する善意の塊みたいなもので、エリンテルやシャルもコニス自身も、良かれと思って行動した結果、コニスをこの状況に縛り付けてしまっていた。
しかし、そんな中で唯一悪意というほどではないが疚しい下心が最初のコニスにはあった。明確に街一番の美青年であるエリンテルさんを自分に惚れさせようとしてたんだからな。これさえなければコニスは被害者だと言い切れるのに……。つくづく残念なヤツだ。
「あ、さっきイルマさんがお前と仕事を代わろうとしてたのって、お前をコイツに会わせないように気を使ってたからなのか?」
「……はい、多分そうだと思いますよ? イルマ先輩もわたしとこの人の噂を聞いたことがあったみたいでしたから。イルマ先輩って不器用だけど優しいんですよ」
やっぱそうか。確かにあの人は語調が荒いわりに気配りがすごい。ロージルさん案件では暴走しかけるがそれも彼女を大事に思ってのことだ。そのせいで俺に対する当たりはキツいが、優しいことには代わりない。
それにしても、エリンテルさん(……あぁもう名前長いしこんなのエリ公でいいや!)の俺的評価は今のところは最悪だ。それは俺が『ド変態紳士』モードしか見てないからで、誰もが慕うという姿をまだ見れていないからだ。
これはロージルさんを『無自覚痴女』モードだけ見てその人の人格を決め付けるのと同じくらい危ういものに思えた。……全く別人にしか見えないんだよなぁアレ。
通常モードの方もちゃんと知ってからでないと正しい判断はできないだろう。通常モードで自分の行いを悔いたり、コニスに迷惑を掛けていることを理解しているのならまだ見処はある。
「その辺は気に病むことないと思うけどな。『ド変態紳士』モードのこの人の愛情表現はお前に殴られて当然の行為だと思うぞ? さらにふられたから自殺なんてのはサイテーな遣り口だ。本人に悪意が無かろうとな。それにお前と会わなきゃ多分他の人に一目惚れして、同じことになってたはずだ。たまたまお前が真っ先に釣り上げただけなんだろうよ」
入り口を入ってすぐのところに真横に突っ伏すエリ公を跨いでソファーに座る俺。コニスが恨めしそうに俺を見つめてきた。
「そんなこと言うんなら、なんでさっきわたしにこの人を押し付けるようなこと言ったんですか?」
「お前がこの人を自分に惚れさせようとした目的は何だ? 街一番のイケメンを誰よりも先に落として自分がモテるのを証明したかっただけか? それともいつもの男漁りか? これが俺相手なら逆ハーレムの要員を増やす程度の思いでやってんだろうなってのは判るんだが」
「…………マビァさんにいつまでも誤解されっぱなしなのは嫌なのでハッキリ言っときますけど、わたし逆ハーレムが目的で男の人を集めてる訳じゃないですからね? サブマスとしてギルドを統率しやすくする為に味方を増やしているだけなんですから。残念なことにわたしのスキルが男性相手にしか有効でないからたまたまそう見えるだけで、ホントは女の人にもスキルを使いたいんですよ。マビァさんに対してもとんでもない戦闘力をギルドに迎えられそうだと思ったからで、別に本気で惚れさせたいって思ってた訳じゃないんですから。……まぁ絶対に逃したくないって焦りはあったかもなので、ちょっとあざとくなったかもしれませんけど」
後半恥ずかしそうに顔を赤らめて呟くコニス。さすがにあざとかったのを自覚したか? いや、そんなことよりも。
「なん……だと……? お前、アイドル(笑)じゃなかったのか?!」
「なっ、なんですかそれ?!」
驚愕の事実に仰け反り嫌なものをみる目でコニスを見つめると、言ってる意味が判らなかったのか憤慨された。
「いや、だってお前、ギルド支部なんていう小さな組織の男の大半を誘惑して、指先ひとつで大勢の男どもを動かせる程度の小さな喜びで満足してる小物アイドルにしか見えなかったから……」
「ムキーッ!! わたしがそんなしょーもない人間に見られていたなんて心外です! わたしにはギルドの建て直しって崇高な目的があるんですからね! 大体アイドルってなんなんですか? その(笑)ってのになんか悪意を感じるんですけど!」
立ち上がって俺の後ろに回りポカポカと殴ってくるコニス。そうか、こっちにはアイドルの概念はないのか? 確かザンタさんにサインを求められた時に舞台女優などの有名人に書いて貰うもんだって言ってたからそういった人気を集める職業はあるらしいんだけど。
「いたいいたい。誤解してたのは悪かったって。アイドルってのはすっげぇ人気があって影響力もある美しい歌姫や踊り子なんかのことだよ。(笑)ってのはなんちゃってみたいな意味合いだ。お前、人気も影響力もあるけど歌ったり踊ったりするわけじゃないだろ?」
「むむ……。なるほど、それならまぁいいですけど」
『人気があって美しい』と言われて悪い気がしないのか、真意を隠した俺の説明に騙され納得するコニス。ふ~やれやれ、なんとか誤魔化せた。
「大体誤解してるの俺だけじゃないだろ? ロージルさんだってお前が男漁りしてるって思ってたんだからさ」
「ロージル先輩とイルマ先輩は午前中に誤解が解けたんですが、確かに他の女性職員にも誤解されてるかもしれないですねぇ。味方にした男の人達にはちゃんと目的を伝えてますし、善意で協力してもらってるんですよ?」
「善意ねぇ……。まぁいいや。話は戻すけどコニス、エリ公に対しては俺ら冒険者やギルド職員相手と違って、ちゃんとお付き合いするつもりで近付いたんじゃないのか? お前はコレのこと好きにはなってないのかよ」
ソファーに座ったまま後ろのコニスを見上げると、俺の質問が予想外だったのか背凭れに置いてた両手を離し、頬を掻きながら照れて目を逸らす。
「エ、エリ公呼ばわりですか……。ま、まぁ、最初のうちは言った通り軽い気持ちででしたし? こんな綺麗な男の人なんて見たことも無かったから、うわぁってドキドキなりますよ。それに中身だって誠実で優しいんですよ? 惹かれて当然じゃないですか。べ、別に一目惚れとかじゃないですよ? 好きとかじゃなくてステキな人だなぁって。何度か話してるうちに仲良くなれればいいかなぁ~くらいには思ってたんですけどねぇ。で、でも今は仕事が楽しいですし、まだ十六歳になったばかりですから結婚なんて考えられないですよ。……早すぎます」
段々声が萎んでいくコニス。嫁入り案に追い詰められていることを思い出したな。
「それはお前次第だと思うんだけどなぁ。俺はこの人の通常モードを見たことないからなんとも言えないんだけど、人望厚いみたいだしさっきの『ド変態紳士』モードの時みたいにお前の話を全く聞かないってこともないんだろ? どういうお付き合いならできるとか、まだ結婚は早いとかちゃんと話し合えばなんとかなるんじゃないか? お前だって曲がりなりにも乙女なんだから、惚れた男とどうなりたいかくらい妄想するだろ。それぶつけてみりゃいいじゃんか」
「曲がりなりにもってなんですか! やっぱり、その、ど、『ド変態紳士』モード……ですか? あっちがなくならないとちょっと考えられないですよ。それに惚れたってほどでもなかったのでそんな妄想はしてないですし、アレのせいで怖くなっちゃったんですから。……あの、この二つ名なんとかなりません?」
なに言ってんだ。これほど的を射た二つ名はないだろう。とツッコミを入れ掛けた丁度その時、扉をノックされシャルが戻ってきた。
「お待たせしました~。あ、お兄様このまんまでしたねぇ」
うんしょ、うんしょ、と兄を跨いでからテーブルにティーセットの載ったお盆を置くシャル。
「あぁ、悪い。下手に触って大怪我させちゃいけないかと思ってさ。なぁコニス」
「う、うん。シャルちゃん待ってからの方が確実だから」
「はい、わかってますよー。おきづかいありがとうございます。お手数ですがマビァさん、こっちのソファーに運ぶのお願いしてもいいですか?」
ペコリとお辞儀をした後、俺にお願いするシャル。
「い、いいのか? 俺が持ち上げると死んじゃわない?」
「はい! 昔から脆かったので『骨格強化』の加護付きのお守りをいつも使ってたんですけど、コニスお姉ちゃんにひっぱたかれてからさらに強力なものに交換しましたから、おもいっきりけったりなぐったりしなければだいじょーぶなんですよ」
そんな便利な付呪効果のアミュレットがあるのか。てか、それがなきゃこの人自重でバラバラになるんじゃないか?
そう聞いてもやはり心配なので慎重にエリ公の身体を起こし、いわゆる横抱きで持ち上げる。赤ん坊ならまだしも男相手にこの抱き上げ方するとは思わんかったわ。
歳上の男とは思えないほど軽かったので、俺より背が高いけど運ぶのは楽だった。
俺とコニスが座る対面のソファーにエリ公を無事に座らせ、緊張の糸を解いて大きく溜め息を吐く。
「ありがとうございます」
俺が運び終わるまでにシャルはお茶の用意を済ませる。
「なぁシャル。エリ公をコニスに会わす前に、あの聖書で事前にぶん殴っとくってわけにはいかないのか?」
俺が横にあるエリ公の机に置いてある聖書を親指で指しながら聞くと、俺のエリ公呼ばわりに困り笑いの顔になった後、シャルは横に首を振った。そして聖書に近付きこちらへと見せる。
「エリ公ですかぁ。あんな姿を見ちゃったあとですからしかたないかなぁ、マビァさんは普段のお兄様をしらないですし。これはお兄様がこれ以上やっちゃダメー! ってことしないと使えないんです。さっきので言えばコニスお姉ちゃんの手にほっぺたすりすりしだした時に使えるようになりました。この表紙のジェムが赤く光らないとダメなんですよ」
今はその緑色のジェムは光っていない。
「それ、いつもわたしの我慢が限界ギリギリになるまで光ってくれないんですよ~。シャルちゃんに叩かれるまで堪えるのがいつものパターンですね」
「変わった発動条件なんだな? コニスの方に反応してんのか?」
「いえ、これは女神サスティリア様に御力を授けられた神器ですから、サスティリア様のその時のご判断だとおもいますよ?」
なんと、こちらの神様は一個人を見張って干渉してきたりするのか?
「サスティリア様は生きとし生けるものの創造主様ですから、すべてをごらんになっておられるのです。この神器もわたしと大神官様の真剣な祈りがサスティリア様に伝わったから御力を授かり生まれたんですよ」
そう言って一度胸に聖書をギュッと抱いた後、テーブルの上に置き聖印を切るシャル。
「わたしも休みの度にエリンテルさんをどうにかできないのか女神様に真剣にお祈りしてるんですけどね……」
ぐったりとソファーに深く沈み込み、女神に対する愚痴をこぼすコニス。見ておられるんだろ? 罰当たってるからの現状なんじゃねぇか?
コニスの願いは届いていないのか、届いたからこそ聖書の効果が続いているのか。まさに神のみぞ知る、だな。
「ではそろそろお兄様を起こしますね」
そう言ったシャルはもう一度聖書を手に取り、エリ公の頭をぶん殴る。
殴られたエリ公は、
「ぐはぅっ!」
と呻き、頭をぐらんぐらんと回した。
「……そんな乱暴な方法しかないのかよ」
俺が踏みつけるマネで足を上げただけで大袈裟に騒いだのに、やってること自体はシャルの方が酷い。
「あははは~……」
と、コニスは笑って誤魔化す。もう何度も見た光景なのだろうが多分俺と同じ感想のようだ。
「はっ! 私はまた暴走してしまったのか? ああコニスさん。また貴女に迷惑をかけてしまいました。まさか昨日の今日でお逢いできるとは思いもしなかったものですから、いつもより激しく迫ってしまった気がします。なんとお詫びすればよいのでしょう!」
ソファーから降りて土下座をし、カーペットに額を擦り付けて謝るエリ公。
「昨日とそんなに変わらないですよ? 毎回あんな感じです。謝らなくていいですから早くその体質をなんとかして下さい。それよりもお仕事の話を致しましょう」
何度も同じやり取りを繰り返しているのだろう。抑揚のない平坦な声で無表情のまま返事をするコニス。
「っ…………」
声にならない呻き声を漏らし、ソファーへと座りなおすエリ公。もう謝罪すら受け取ってもらえない状況に酷く落胆しているようだ。
「……おい、気持ちは分からんでもないがあんまり追い込んでやるなよ。何かあったらどーすんだ?」
「わたしだって抑え切れない怒りがあるんですよ……」
俺の差し出口にプクッと頬を膨らせて拗ねるコニス。
「お気遣いありがとうございます。しかしコニスさんのご怒りはもっともですのでお気になさらずに。貴方とお会いするのは初めてですね。もうお聞きかもしれませんが、私は当教会の神官長を務めさせて戴いておりますエリンテルと申します」
エリ公は立ち上がって聖印を切りお辞儀をする。その立ち居振舞いは容姿と相まってとても美しかった。
「俺は冒険者のマビァってもんだ。あんたはさっきコニスに夢中になってて俺が居たことに気が付かなかったんだろ? さっきのを見せられてあんたに敬語を使う気には悪いがなれない。あんたのことはエリ公と呼ばせてもらう。あんたも俺をただのマビァと呼んでくれ」
「それはお恥ずかしい限りです。ではそのようにお呼び下さいませ」
俺の横柄な態度に一時キョトンとしたが、すぐに困り笑顔になりOKをもらう。懐は広いようだ。
「はて? マビァとは確か……」
「はい! さいきん毎日しんぶんにのってるお方ですよ。一昨日お肉をいただいたワニさんをやっつけたお方です!」
シャルがエリ公の隣に座りながら説明してくれる。
「おお、貴方がお噂の聖騎士様でいらっしゃいましたか。はて? 失礼ながら新聞とは印象が少し違うように感じますが……」
不思議そうに首を傾げるエリ公。またか。ハンセルの写真の影響はデカい。
「マビァさん、今は盾も剣も持ってませんからね。あの写真と結び付けるのは本人を知らなければ無理だと思いますよ?」
と、コニスが苦笑しながらまぁまぁ失礼なフォローをしてくれる。
なるほど、ここで会った他の神官達が不思議そうにしてたのもそのせいか、昨日の朝から既に剣と盾が目印になってたらしい。目立ちたくないとは思っていたが、自己紹介をしてもすぐに信じてもらえないほど印象が違うとなると、ちょっと困るかも。
「聖騎士もあの写真も大袈裟に造られたもんだから忘れてくれ。見ての通り本人は冴えない男だよ」
「申し訳ありません。その様なつもりで言ったのでは……」
「もういいから仕事の話をしよう。コニス頼む」
エリ公の謝罪をバッサリと切る。正直態度悪いことしてる自覚はあるよ?
一礼をして引き下がるエリ公の辛そうな表情にチクリと胸が痛むが、今はちょっと我慢だ。
「はい、ではこちらが今回の依頼書になります。大変申し訳ありませんが、緊急の依頼になります。書面に合わせて口頭でも説明致しますので、こちらを確認しながらお聞き下さいますようお願い致します」
仕事モードに入ったコニスが、黒い革でできた四角い二つ折りの板のような物を持参したケースから取り出す。それは表面に冒険者ギルドの紋章が刻印されていて、これに依頼書が挟んであるみたいだ。持つ向きを変えてエリ公に渡す。
「拝見致します」
エリ公がそれを開くと、シャルが横から覗き込んだ。
「明朝六時に、この街の地下古代遺跡の攻略を冒険者ギルドが主導で行うことになりました。目的は衛兵の殲滅、または防衛機能の停止。その機構があると思われる基部への到達です。
参加人数は冒険者ギルドからはマビァさんを入れて五人の予定。古代文明研究所からはアドバイザー兼技術者として三人随行致します。
教会側への派遣依頼の条件として、持久力継続回復魔法『ギャロピスの永走』が使える者が第一で、可能ならば物理防御上昇と電撃耐性上昇も希望致します。能力の有無で一人~三人の派遣をお願いしたいのですが、あまり広くない通路ですので少数精鋭で挑みます。そのことをご留意下さいますようお願い致します。
集合場所は古代文明研究所前。時刻は五時五十分です。
入り口から基部までの距離は二百~三百メートルと予想。作戦予定時間は三時間。
依頼報酬は一人につき百万カルダ。成功報酬は五十万カルダを最低限とし、状況によって追加致します。
難易度の高い作戦と予想される為、人命最優先で挑みます。作戦指揮者が危険だと判断した場合、即座に撤退致しますが、報酬の減額はありません。
以上で説明を終わりますが、ご質問があればお願い致します」
長い説明を立て板に水が如く、何も見ずにスラスラと言い終わるコニス。……普段とのギャップが激し過ぎて未だに信じ難いが、やっぱ優秀なヤツなんだなぁ。
「特に何もありません。条件も報酬も申し分無いと思われますので、この依頼お受けしたいところですが、問題は人選ですね。その結果を見てから判断させて下さい」
顔を上げ、にこりと微笑むエリ公。無駄にキラッキラしとる。これはコニスが言うように、世の女性達が放っとかないってのが俺にも実感できてきた。
「では、派遣する者を選定致しましょう。教会堂へいらして下さい」
と、エリ公は自分を殴った聖書を持って立ち上がる。続いて二人が立ち上がるので、俺も釣られて三人の後に続いた。
神官を集めて希望者を募るのかな? それとも条件に合う神官を呼び出し、教会堂で任命するのだろうか?
前を歩く三人にとってはいつもの事らしく、迷いなく進んでいく。
まだ見たことのない光景が見られるのかもしれない。
俺は新鮮な気持ちで後を追った。
読み続けて下さっている方に感謝です。ありがとうございます。
またもやしばらくの間更新を休ませていただきます。
年末も近いので続きは何時になるやら…………。
よろしければまたお付き合い下さいませm(_ _)m




