五日目 三時のおやつと明日の傾向と対策
「まずはもう一度確認です。わたしとマビァさんはお咎め無しってことでいいんですよね?」
コニスが身を乗り出してイルマさんに聞く。
「ないない。他の誰にも見られてないしな。大体あのルールは他の男どもがロージルに変な気を起こさせない為の予防線の役割。それにマビァくんの偽能力……、この子を淫乱女に見せてる魔法ってヤツじゃあ幻獣召喚相手には使いようが無いってのをアピールする為のモンだろ? この四人の内輪でならこの子が何回アレになったって対処できるんだから問題ないじゃないか」
イルマさんは苦笑して答える。とは言ってるが言葉の裏には『ロージルが他の人の前でアレになったらルール通りに執行するからな』って意味が隠れてるんだろう。ロージルさんの取り扱いについては、ちょっと前のアリアさんとの会話の時もギリギリヤバかったみたいだし、俺とコニスはうっかりには気を付けといた方が良さそうだ。
「よかったー! ねっ? マビァさん。助かりましたね」
「まぁな。お互い次から気を付けよーぜ。それよりロージルさん、かなりの出血だったって聞いたけど仕事の相談しても大丈夫かな?」
「そうですね、お昼から頭をフル回転で使いましたし、血糖値がかなり下がってそうです。甘い物でも食べたら持ち直せると思うのですが……」
ケットウチって言葉は知らないが、多分全力戦闘した後のダルさみたいなもんか? そういやザンタさんのお父さんの件で二社分の新聞を十五年分、僅かな時間で全てに目を通すなんて神業やってるんだよこの人。
「昼ごはんだってコニスに貰ったスキルに慣れる練習しながらだったからちょっとしか食べてなかったもんな。よし、あたしが食堂でなんか買ってきてやるよ。取り敢えず話を進めときな。仮にロージルが寝ててもスキルが勝手に聞いてんだから問題ないだろ?」
「ありがとうイルマ。迷惑ばかりかけてごめんなさい」
「こんなことでいちいち謝ってちゃあ、この先あんたの口からはごめんしか聞けなくなるんじゃないか? 途方もなく前途多難なんだからさ」
「もう、意地悪」
ロージルさんの頭をポンと叩いてから立ち上がり部屋を出ていくイルマさん。
「じゃあ、さっきマビァさんが終らせた仕事についてから説明しますね。なんと、この仕事も次の依頼も領主様から直々になんだそうですよ。 それに終わった仕事だって無茶苦茶なんです。見て下さいよこれ!」
そう言ってコニスはロージルさんにカイエン侯爵に持たされた封書の中身と小切手を手渡し、愚痴と俺への罵倒を交えながら仕事の説明を始めた。
模擬戦の方の仕事の説明が終わった頃、入口の扉をドンドンと叩く音が聞こえた。
「おぉーい、開けてくれ。手が塞がってんだ」
と、イルマさんの声が聞こえたので扉を開けに行くと、お盆に人数分のカップとポット、飲み物の入ったグラスが一つに、甘い匂いのする食べ物を何種類か大皿に山盛りにして帰ってきた。
「うわ、なんかうまそーですね。まさかロージルさんが全部食べるんですか?」
「いやまさか。丁度三時の休憩時間だしな。みんなで食べようと思って持ってきた。あたしのおごりだから遠慮なく食ってくれ」
出会ってから初めて見る、一番嬉しそうな顔でイルマさんが部屋に入ってくる。キツくて怖い印象ばかりあるイルマさんでも甘いお菓子は嬉しいようで、いそいそとロージルさんのいるベッドへと運んだ。
「やったー! ありがとうございます!」
コニスも両手を上げて喜ぶ。
「ロージルはミックスジュースな。果糖が一番効率がいいんだよな?」
よく冷えて水滴の付いたグラスに入った濃い黄色の飲み物を渡す。ジュースってことは果物の搾り汁っぽいからたぶん甘いんだろう。俺達の分は温かいお茶だ。
「しっかり食えよ。失った血を作っとかないと夕食作る時までもたないからな」
取り皿と紙のナプキンをみんなに手渡すイルマさん。
「ええ、ありがとう。美味しそうね」
ロージルさんはお礼を言ってからジュースをストローでひと口飲み、丸く真ん中に穴の空いたお菓子に手を伸ばして取り皿に載せナプキンで挟んでひと口食べる。そして嬉しそうに微笑んだ。
食べ方は手掴みでいいんだ。
お菓子の種類は三つ。ロージルさんが食べたのとは違う穴空きの物をイルマさんが取り、コニスはパイに見える物にかぶり付く。
ロージルさんが食べてるのは、穴の空いた揚げパンのように見えるお菓子に黒っぽい何かが反面だけかかっており、その上にピンク・水色・黄色・白と色とりどりな細長い小さなチップみたいなものがいっぱいついている物。
イルマさんのは同じく穴が空いていても生地は捻って揚げてあり色は白っぽく、上下に切り分けて間に白いクリームを挟み、上から白い粉を振り掛けてある物。
もう一つはパイかな? 赤黒い木の実のジャムみたいなのが格子状の生地の下に覗いて見えた。
「マビァさん、食べないんですか?」
俺が三人の食べ方を見てると、コニスが聞いてくる。
「いや、どれか一つだけでも貰おうかな? 昼飯食い過ぎてまだ食欲無くてさ、今日は全然運動量が足りてないんだよ」
昼にうな重二杯にステーキ二枚も食った上に、模擬戦では汗一つかくことなく終わった。食ったエネルギーを何一つ消化した気になれない。
「基地で百人斬りなんかしてきといて、なんで運動不足でいられるんですか……」
「だって十分くらいしか動いてないんだぜ? あんなんじゃ汗もかかないし息も切れねぇよ」
肩を竦めて言ってやると、三人はげんなりと呆れた顔をしてこちらを見ていた。
「…………ま、まぁそうなんだろうさ。じゃあマビァくん。どれが食べたい?」
イルマさんが手を伸ばしてくるので、素直に取り皿を差し出す。
しかし、どうしたものか……。
「俺、甘いお菓子ってあまり食べたことなくってどれも始めて見たから味も想像できなくってさ。これがパイみたいなもんだろうなってのは予想できるんだけど甘いんですよね?」
元の世界で食ったことのあるパイもお菓子ではなかったし、パイは教授のところで食べたミートパイが最高だったので食事としてのパイなら受け入れやすい。だがお菓子となればどうなんだろう?
「うっっそ?! マビァさん、お菓子のパイもドーナツも知らないんですか? 信じられない……」
コニスが俺をこの世の者でないものを見るような目で俺を見る。……まぁハズレではないんだけど意味が違う。
「別にいいだろそんなこと。それよりどれがなんなのか教えてくれよ。どーなつって言ったか? この二つは」
「黒くて色が可愛い方がチョコ・スプリンクルってドーナツです。フワフワのイーストドーナツにチョコのホロ苦さと上のスプリンクルの甘さと食感が絶妙な逸品なんですよ。
色の薄い捻った形のドーナツはシュー・クルーラーにホイップクリームを挟んだものですね。シュー生地のドーナツは食べごたえも軽く、生クリームも甘さ控えめですから甘いのが苦手な方でも食べやすいですよ。ただし想像以上に高カロリーですので見くびって食べ過ぎると間違いなくプヨります。
このパイはダークチェリーパイですね。ダークチェリーの甘酸っぱさと下のカスタードクリームの相性が抜群で、香ばしいパイ生地を食べるのにこれ以上の組み合わせは無いとわたしは断言しますよ。これもバターとお砂糖たっぷりのプヨ系な食べ物なんですけどね。
いずれのお菓子もここの食堂では人気の高いスイーツなんですよ!」
聞いたことのない名称がいくつも出てきたので全然覚えられず耳を通り抜けたが、どれもコニスが大好きなんだろうってのだけは伝わった。
しかし、ロージルさんはにこやかに二つ目に手を伸ばしたのに対し、イルマさんの表情が少し硬くなり二つ目を口に運ぶ手が止まる。
あ……、もしかしてコニスがプヨプヨと言うもんだから気になったのか? どちらかというと細身で太る心配なんてなさそうなイルマさんでも、やはりこの中では最高齢。もはや三十路二歩手前にいらっしゃるのだ。俺らに比べりゃ一度脂肪が付くと中々落としにくくて苦労しているのかもしれない。
まったく、火炎魔法が得意なクセに自分の脂肪を燃やすのが苦手だなんて笑え……。
「マビァくん。何か言ったか? 良く聞こえなかったんだが」
「い、いえ、なんのことでしょう? 俺は何も言ってませんけど?」
燃え上がるオーラを纏い、怒気を孕んだ声で問うてくるイルマさんに一瞬怯み、声に出して言ってたのかそれとも心の声を読まれたのかと考えてしまう。だがそんなわけはないと信じてすっとぼけた。
「そうか? まぁいい。どれを食べるのか悩むくらいなら全種食べてみればいいじゃないか。三つと言わず五つでも六つでも構わないぞ? よくやってくれている君へあたしからの感謝と好意をぜひ受け取って欲しいな」
どんっどんっと三種を二個ずつ皿に山に盛り、俺へと返すイルマさん。
「え、いや、ちょっ…………はい」
助けを求めようとコニスとロージルさんに視線を向けるもニコニコ嬉しそうに食べ続ける二人。
イルマさんの急変にこの感の良い二人が気が付かないわけがない。コニスは自分のプヨプヨ発言がきっかけでイルマさんの手が止まったのを見ただろうし、ロージルさんが歳上の親友のデリケートな部分を知らないわけがない。二人とも俺に丸投げしやがったな。
まぁイルマさんに対して不埒なことを考えていたのは確かなので、仕方なく諦めて食うことにする。
確かにひと口目はどれも絶品のお菓子だった。食べた事のない味や食感、香りに驚かされたが、やはり空腹具合が万全ではない為、どんなに美味くても苦痛になってくる。カップ一杯のお茶では流し込める量ではなかったので、お茶のおかわりを何杯もしてしまった。
しかし、ドーナツにしてもチェリーパイにしてもお茶よりウェルの宿のコーヒーの方が合いそうな気がする。お茶だと弱すぎて何杯飲んでも口の中の甘さが残ってるんだよなー。
「では、もう一つの依頼の話をお聞かせ願いますか?」
ゲップが出そうになるのを堪えながら、胸焼けの胸と膨満感の腹を摩っているとロージルさんが声をかけてきた。
俺が黙々と食っている間に、イルマさんに模擬戦の方の仕事の説明が終わったようだ。仕事内容と報酬額を見ても二人はコニスの様に騒ぐことなく、呆れたように苦笑いを浮かべただけだった。
『ヌーメリウスの鐘』についての簡単な説明と、カイエン侯爵がその遺跡への再攻略を明日の朝六時から決行する件を話す。
「で、追加の戦力を冒険者ギルドに、補助の為の神官を一人教会に依頼したいんだと。誰を何人連れて行くかや教会への依頼、それに報酬額もこっちで決めていいんだってさ」
「あの国内最強って噂されるカイエン侯爵とお付きの方が一度諦めた遺跡なんでしょ? 『鐘』の効果がホントなのか分かりませんけど、そんな遺跡の中で立っていられる冒険者や兵士なんていないんじゃないですか? マビァさんだけで何とかならないんですか?」
「カイエン侯爵とテイレル大佐はそれぞれ得物が違うみたいだけど、多分スピードタイプの二刀流だ。その二人が倒しきれないほどワラワラと大量に出てくるって話だから、俺一人が増えたところでどうだろうな? やってみないと分かんないけど侯爵は一発で昼までに終わらせたいんだとさ」
衛兵とやらがどんな物なのかも見てみないことにはなんとも言えない。地を這うタイプと宙に浮くタイプの二種類が出るっていってたっけ。
「この国で遺跡調査が始まった頃、各街にある遺跡で必ず同じ二種類の機械の様な魔獣が確認されています。宙に浮き回転刃で斬りかかってくるものを『キリバチ』、地を這い電撃で攻撃してくるものを『ヒラグモ』と呼称したそうです。大半の遺跡では少数が守っており討伐されているのですが、ここカレイセムの地下深い遺跡では、これらが無数に襲撃してくるため、未だに未調査のままです。
この二種の魔獣は死骸の調査がされています。どちらも核にジェムと同質の物を有するも命を持たず、ジェムを破壊するか抜き取ると崩れて砂の山になるみたいですね。名前の通り体の構造は昆虫型の魔獣に近いようですが、古代文明の魔法で造られている可能性が高いというのが当時の研究者達の見解です」
あっさりと情報を引っ張り出すロージルさん。さすがだ。
「地下遺跡でなきゃあたしとロージルの全力魔法で殲滅できそうなんだけどね。あたしの超高温の火炎で焼いてからのロージルの瞬間凍結で粉砕……。一度やってみたいが、あたしの炎で遺跡がダメになるかもしれないし、多分空気がなくなって息できなくなるな。実に残念だ」
「…………だからなんでイルマ先輩の様な人が事務員やってるんですか。天職は絶対事務職じゃないでしょ」
つまらなそうに溜息を吐くイルマさんに、呆れてツッコミを入れるコニス。
冒険者ギルドなのに、最強(最凶)なのがヒラの事務員って……。
「あたしに必要なのは安定した平穏な生活だけだからね。たまには刺激が欲しいが危険からはなるべく遠ざかりたいんだ」
縛った後ろ髪を弄りながら少し恥ずかしそうに答えるイルマさん。それを見たロージルさんが小さく笑ったように見えた。
「ではやはり、戦力として期待できる方々というのは……」
ロージルさんは俺が誰に目星を付けているのかさすがに分かっているみたいだ。
「まぁ、ザンタさん達夫婦くらいしかいないよなぁ。問題は長年のブランクと持久力の衰えかな? 戦いの感みたいなもんは大丈夫そうなんだけどね。後は引き受けて貰えなかったら他に伝がないってのも心配だよな」
『黒い三連狩り』に盾だけ持たせて防御に専念させるのもありか? いや、あいつらに限らずやる気のある冒険者達は、今頑張って運動してる筈だから、明日は筋肉痛で碌に動けなくなるだろう。
「持久力の方は神官の神聖魔法でなんとかなるんじゃないか? ほら、ナントカって名前のがあっただろ?」
「『ギャロピスの永走』ですわね」
イルマさんの疑問に答えるロージルさん。
神聖魔法の力の源である女神サスティリアは、人や野生動物のみならず魔獣も平等に愛する神様なのだそうで、この世界の創世期において、魔獣達に特殊能力を与えたのも当然神様ということになる。
それぞれの優れた能力を人にも付与できるのが神聖魔法の内の付与系魔法なのだそうだ。
ギャロピスの持つ特殊能力は、黒い装甲板のように見える甲殻が太陽光や自然に溢れるあらゆるエネルギーを吸収して蓄えられるという機能を持つらしい。本来生き物が持つ持久力で走った後、この蓄えたエネルギーを消費して走り続ける事ができ、更にその間に回復した持久力で走りながら甲殻にエネルギーを蓄えるというのだから凄い。走る際に筋肉が発する熱までエネルギーに変換し、冷却までするという。
これによって馬の十倍以上の距離を走り続けるというのだから、馬の利用価値は随分と下がるんだろうな。
『ギャロピスの永走』って魔法は持久力の継続的回復。つまり一定時間の間、じわじわとスタミナが回復するというものらしい。
回復するペースに同調して動いていると、まったく疲れを感じないようにできるというのだから、かなり便利な魔法だ。あくまで回復されるのは疲労感のみで、あとに残る筋肉痛とかは別の方法で回復させる必要があるそうだ。
魔法自体が持つ回復力に加え、周囲の自然エネルギーと、付与された者の運動で発する熱すら持久力に変換するので、汗もかかずに戦い続けられるんだとか。効果時間は約十分。同じ魔法の重ね掛けは不可。リキャストタイムは五分なので、かけ直して付与し続ける事は可能だが、地下遺跡という閉鎖された空間で、どれだけ周囲のエネルギーを吸収できるかはやってみないと分からないらしい。
「へぇ~。そんな便利な魔法があるならなんとかなるかもな」
「この街の教会に使える神官が居ればの話ですけれどね。他にも防御力を上げる付与魔法もありますので、一人に限らず数人神官を雇った方が良いかもしれませんわ」
なるほどもっともだ。でも遺跡内が狭かったらあまり人数を増やさない方が動きやすいかもしれない。
「じゃあこれで大体の指針は決まりましたかね? ロージル先輩、報酬の前例になる案件ってありますか?」
パンッと手を打って仕切るコニス。そういやサブマス様だったっけ。
「なさそうよ。最低報酬を高めに設定しておいて、成功報酬の上限を決めずに依頼……という形にした方が良さそうですわ」
ベッド脇のサイドテーブルに置いてあった、ロージルさん愛用のケースから筆記用具を取り出し、サラサラと依頼書を書き始めるロージルさん。書き終わるとそれをコニスに渡す。
「本当はわたくしが依頼に赴きたいところですが、体調が万全ではないからコニスにお願いしてもいいかしら?」
あれイルマさんは? と一瞬思うが、この人は圧がなかなかスゴいので依頼だの交渉だのには向かないかもしれない。組織内部の男女の勢力バランスの調整とかの方が向いてそうだ。それが分かってるからロージルさんはイルマさんを端からスルーしてるんだろう。
「い、いや。あたしが行ってもいいぞ? 午後は大して忙しくないし、たまには外での仕事をしてみたいし? な? な?」
突然立ち上がり教会行きを志願するイルマさん。ロージルさんとコニスに目配せをして、どうにか仕事を確保しようとしている様に見える。
あまりに不自然で唐突な言い出しに俺らは意表を突かれたが、ロージルさんがそんなイルマさんを諌めた。
「イルマは性格的に交渉に向かないじゃない。特に今回のような強引な依頼にはいつも反発しているでしょう? 自分でもそれが分かっていたから、そういった仕事をこれまで避けてきたのでしょう。 突然なんで交渉の仕事をしたくなったの?」
あ、ロージルさんもイルマさんに対しての感想は俺と同じだったんだ。イルマさんって表裏ない感じするから分かりやすいもんなー。
「あー……、いやー……、その、なんだ。今すごく人が増えてるから、ついでに街の様子を見ておきたいとか? あ、ついでにサボりがちな教会での礼拝をしておきたいみたいなーとか?」
あははー、と、笑いでごまかそうとするなんとも歯切れの悪い言い訳を重ねるイルマさん。どうにかして教会行きを勝ち取りたいという慌てっぷりというか、取って付けたような理由とかがなんからしくない。
「イルマには試験場運用の調整をしてもらわなければなりません。そちらの方が得意でしょう? そちらも急務なのです。ここは適材適所でいきたいですわ」
「あー……、うん、解ったよ」
ロージルさんに正論をぶつけられ、イルマさんはコニスとロージルさんの間に視線をさまよわせたあと、諦めたように頷いた。そんなイルマさんを見てコニスは肩を竦め立ち上がる。
「あー……、かしこまりです。まずは教会に行く方が良さそうですね。その後『冒険野郎』に行きますか。マビァさんも一緒に来て下さいね」
なんだか気の乗らない返事をして俺をぐいぐい押すコニス。
「分かってるよ。教会はともかくザンタさん達には俺からお願いしたいしな。じゃあ行ってきます」
「おう、頼むなー」
ヒラヒラと手を振るイルマさんと微笑むロージルさんを残して、俺達は医務室を出た。
「……気を使わせちゃったなぁ……」
「あ? なんか言ったか?」
静かな廊下を歩く中、後ろのコニスが何か囁いたような気がして聞き返す。振り向こうとすると、ドンッと強く背中を押された。
「うほぅ!」
「なんでもないですよーっ! ほら急ぎましょう!」
急な衝撃に変な声が漏れるが、そのままコニスがぐいぐいと押すので、押されるがままに速足になる。
なんだか空元気な感じのコニスといい、さっきの不自然なイルマさんといい、付き合いの短い俺でもなんとなく感じる何か。
不安とか心配とか気鬱さとかのような……はっきりとは言えないが、わずかにそんなことを感じさせるさっきのやり取りが気にかかり、まさかまた面倒事か? と、不安が過った。
すみません。これよりまたしばらくの間、更新をお休みさせていただきます。
更新できるようになりましたら、また活動報告にて事前にお知らせ致します。
続きが気になる方だけでも構いません。よろしければまたお付き合い下さいませm(_ _)m




