五日目 模擬戦
反対派の陣形、練兵場の横幅いっぱいに広がった両翼が俺を囲むように内側へと閉じていく。
まさかとは思ったが、やはり俺を取り囲んでの一斉攻撃で早々に方を付けるつもりらしい。
……それって多数対少数の場合、誰でも思い付く一番単純な包囲戦なんだが、まさかバカ正直にその手を使ってくるとは思わなかった。
対戦経験が全く無いのだから仕方がないのだろうけど……。
さて、変な噂のせいで俺が幻影魔法か何かで卑怯な手を使っていると疑われ、カイエン侯爵にその手の技を使わないように注意された以上、『威圧』のスキルは使えない。あれを使えば二十人ほど一気に無力化できそうなんだけど、使えばやはり魔法だインチキだと騒がれて、この模擬戦自体が無効になってしまうかもしれない。
だから、徹底的に物理的にアイツらをボコってやるしかないって訳だ。
俺は前進する速度を調整しつつ、接敵にあと三秒といったところで剣に『シャープシフト』のスキルをかけ準備を整える。
『うおおおおぉぉぉぉぉ!!』と雄叫びを上げながら迫り来る兵士達。
Cの形に俺を取り囲み、その円を狭めながら突きの構えで突進してくる。
……あまりにも単純で直線的。こんなにも大勢の敵がこちらに武器を突き出すタイミングまで手に取るように分かるなんて、実戦では経験したこともない。
ゴブリンだってフェイントの一つも入れてくるぐらいなのに、ホントにコイツら国を守る為の兵士かよ。
まぁ動きが分かりやすい方がこっちも動きやすい。俺を逃がさないよう大勢で一斉に貫ける人数は、リーチの短い剣だと円が狭まり過ぎて精々十人くらいで、槍だとその倍くらいだろう。
一応その辺は考えてあるのか、最前衛が剣で俺を突き、第二層目が槍装備で隙間から突こうとしている。合わせて三十くらいの刃が俺を串刺しにしようと迫るが、残り七十人強は前がつかえて勢いが止まっているようだ。
当然、俺の後ろに回り込んでCの途切れた円を塞ごうとするが、やはり距離が遠い分手薄になっている。円が閉じる直前に俺は後ろへと向きを変え、大技を一発繰り出す。
突進範囲斬撃スキル『スクリューライド』
前傾姿勢で閉じられようとするCの隙間に身体を捩じ込み、三回転の斬撃で左右の十数人を吹き飛ばす。あまり使う機会の無い技だけれど、こうも敵が単純だと面白いように決まるな。
『シャープシフト』の恩恵で倍の射程を得た斬撃は、本来なら兵士達をバラバラに切り裂いていただろう。しかし練兵場の機能の効果か、刃が切り裂く感触は手に伝わるも、剣は兵士達の身体をすり抜け衝撃だけが襲い掛かったみたいで、俺の回転する斬撃に打ち上げられ叩き伏せられ悲鳴を上げる。
これには正直焦った。剣を握る手にマジで大勢の人を真っ二つにした感覚が伝わってくるんだもん。
練兵場の効果なんて嘘で、十人ちょいを殺してしまったかと慌てて振り向くと、どこも斬り裂かれていない兵士達が宙を舞っていたので安心した。
痛みはない筈だが、斬られた恐怖と全身を襲う痺れと麻痺による不快感で、倒れたまま動けずに呻き声を上げる兵士達。大半は斬られた瞬間に気を失い横たわったままピクリとも動かない。
俺の手に肉を斬り裂く感覚が伝わってきてるんだから、あいつらは斬られた感覚が身体に残っているはずだ。痛みは無くても死を予感させるほどの斬撃を初めて食らったはずだから、精神的には相当堪えているんじゃないか?
「え…………?」
俺の繰り出したたった一手目で、一割の戦力を失った現実が恐怖となり、兵士達にじわじわと伝播していくようだ。
俺を初手で潰すつもり満々だった兵士達にとって、俺のこの反撃による甚大な被害は意外だったようで、次の手を考えていなかったのか目の前で起こった惨状に固まる。
その隙に一・五秒という長めの硬直時間を消化して、俺はゆっくりと立ち上がり振り向く。
あまり睨み付けてビビらせても勝負にならないので、無表情で兵士達を見つめ返したのだが、
「ひぃ!」
と小さく悲鳴を上げられる。
「どうした終わったのか?! 何故固まって動かん!」
ヤーデン中尉は反対に居たので、俺の攻撃が見えず状況が把握できずに戸惑っているようだ。
しかし兵士達は動かない。一手目で大技過ぎたかな? 仕方がないので俺から端の兵士へと近付く。
「ほら、打ってこないと模擬戦にならねぇだろ」
両手を広げて隙だらけで立ち止まり、兵士達を誘う。
「くっ! 一人で当たるな! 囲え!」
一人の兵士が声を上げ、他の兵士達がジワジワと周囲を囲いだす。前の兵士に手招きするとやっと打ってかかってきたので、それを盾で逸らす。
「いいぞ、どんどん打ってこい」
俺の誘いに周りの兵士も打ってきだした。それらを盾や剣で逸らし、弾き、跳ね返す。
中には小狡いヤツもいるようで、俺の背後の兵士の後ろから陰に隠れ槍で突いてくる者もいた。しかし動きがバレバレで簡単にかわせてしまう。
むぅ、やはり作戦らしきものがあったのは最初の一手だけで後はただの烏合の衆だ。連携して隙を突けばこちらを捉えることもできるのに、あっさりとかわせてしまう。攻撃すること自体が怖いのか、武器に殺気が込もっていない。
一度に攻撃してくるのは十人程度で、他の兵士は周りに立っているだけだった。
やれやれ、これじゃあ防御の練習にもなりゃしない。カイエン侯爵の開始の号令直後にあった勢いはすっかり影を潜めて、ダラダラと締りのない模擬戦になっている。
ならばこちらのやりたいことをするまでだ。
後ろから斬りかかってくる兵士の剣をバッシュで弾き飛ばす。何人かを巻き込んで倒れるのを飛び越え包囲から抜けると、一人の兵士の鼻先を掠めるように縦斬り単発スキル『スライス』を放つ。
「ひっ!」
鼻先を薄く斬られた兵士はスキルの速い斬撃に驚き硬直する。スキル後〇・五秒の硬直が解けた俺は『スライス』の終わりの姿勢から斬り上げる。今度は兵士の股下から脳天まで剣が身体をすり抜けた。
「ぐぁぁ!」
と苦痛の声を上げ後ろに飛ばされ倒れる兵士。またもや兵士達の手が止まるので、「ほら、来いよ」と誘い、攻撃をかわして『スライス』からの斬り上げ。それを繰り返していく。
そう、これはザンタさんに見せてもらったスキルの修得法の実践。『スライス』から繋がる下からの斬り上げをスキルとして修得する為の練習をしてるんだ。
横斬り単発スキル『スラッシュ』は左右どちらからでも出せるので、技後に反対側からもう一度発動しようとしても、クールタイムの二十秒があるせいで、すぐにはスキルで切り返せない。
でも『スライス』は斬り下ろしのスキルなので、斬り上げのスキルとは全くの別物だ。これを修得できれば単発スキル二つの連結が可能になるかもしれない。
丁度良い練習相手が大勢いるのだから、実戦形式で利用させてもらわないと損をする。
相手の攻撃を弾くかかわして『スライス』。斬り上げて倒し、次の兵士へ。
これをどんどん繰り返す。
俺があまりにも淡々と流れ作業のように一定のペースで兵士を倒していくものだから、他の兵士達は『次のターゲットが自分にならない事』だけに考えが囚われてしまい。碌に動けなくなる。
次に俺に狙われた兵士は、斬りかかってくるか、固まるか、背を向けて逃げようとするかのどれかだ。
どう動こうが関係無く俺は作業を繰り返す。
「何をやってる! 動け! 数で有利なのは我々の方だ! そんなワンパターンな攻撃、数で押せばどうとでもなる!」
遠くから命令だけ出すヤーデン中尉。ならお前がやって見せろよと思うが無視無視。アイツは最後にとっておこう。
これだけ同じ攻撃を繰り返せば、どんなに阿呆でも対策を考えるもので、斬り上げを盾で弾いたり、『スライス』後の硬直を狙ってきたりもするのだ。
しかし、先にこちらがその狙いに気付けてしまうので、『スライス』を打つふりをして誘い、フェイントに引っ掛かった相手を返り討ちにしたり、剣が弾かれた勢いを利用して『スラッシュ』で盾ごと薙ぎ倒したりしてやると、また兵士達の動きが鈍くなる。
何十人この方法で倒したか数えてないけど、脳裏にピロリンと音が弾けた。
《片手剣斬り上げ単発スキル『リバースウィンド』が修得可能になりました。スキル枠を一つ利用することで使用可能になります。修得しますか? イエス・ノー》
と、脳裏に文字が浮かぶ。
俺は初めて自力でスキルを修得できた嬉しさのあまりに興奮して、
「よっしゃきたぁーーっ! イエス!!」
と、大声で叫んでしまった。
周りの兵士達がビクッと驚いて、更に固まってしまう。
さっそく試し斬りだ。手近な兵士に向かって『スライス』を空振りし、〇・五秒の硬直後に『リバースウィンド』を発動。
剣が赤い光を纏い先程までとはまるで違う速さと威力で兵士を下から斬り裂いた。兵士の身体をすり抜けた剣の軌道が止まると同時に、兵士は後ろへと弾き飛ばされ、物理的に切り裂かれた空気も左右に弾け吹き荒れる。
おお、中々の威力で使い勝手も良い! 案外簡単に修得できたのは、練習に使った全ての兵士に会心の一撃を放ち続けたからかもしれない。
よぉし! これでこの模擬戦での目的の一つは果たせた。後はさっさと蹴散らして、終らせてやろう。
つい嬉しくて嬉しくて、ニヤける俺に不穏なものを感じたのか、じわりと後退しそうになる兵士達。
その群に向かって俺は突進する。
『ライトニングシュート』で群を穿ち、二十人ほど弾き飛ばす。
別の群へと走り、もう一度『スクリューライド』で群ごと捻り潰す。
逃げようとする数名に向かって『スワローダッシュ』で距離を一気に詰め、『ワイドスラッシュ』でまとめて斬り伏す。
くるりと見渡し、死屍累々と横たわる兵士達の姿に満足して一つ頷き、残るは呆然と佇むヤーデン中尉だけとなった。
「さぁてヤーデン中尉殿。もうあんただけだが、威勢のいいのは口だけか?」
「くっ!……」
俺の挑発に剣を構えるヤーデン中尉。へっぴり腰でじわじわと後退している。構わず俺はすたすたと近付いた。
「ま、負けん! 我らドライクル軍人は貴様らならず者ごときには負けんぞー! わ、わが剣舞を受けて死ねぇ!!」
と、震えながらも珍妙な構えをとり、なにやら剣を振り回し出した。
踏み込んだ足には力が入っていないし、振られた剣は左右にふらふらとぶれる。荷重移動を攻撃に活かせていないし、柄をちゃんと握れていないのが一目で分かる。
「ほりゃ! へりゃ!」
ふにゃふにゃとした剣の軌道には何の意味もなく、剣先がこちらへ届いていない。届いたとしても一歩退くか左右に身をかわすだけで余裕で避けられる。剣を振って踊っているように見えるから『剣舞』と言えなくもないが、動きが変過ぎてなんだか魔力でも吸い取られていそうな気がしてくる。
「ぅふん! ぜー……。んはぁ! ぜー……。ぁはん! ぜー……」
十回も振らない内に息が切れ始めた。掛け声もなんだかなよなよした感じになる。声が高く裏返り、なんだか艶っぽく聞こえるのが腹立たしい。男の声では聞きたくない。
なので、振り下ろされる剣に『ハードシフト』を付与した『スラッシュ』をおもいっきり叩きつけた。
簡単に剣は弾かれヤーデン中尉の手から離れ、打たれた箇所から二つに別れて宙を舞い、遠く離れて地面に落ちた。
ありゃ? この練兵場の機能で武器破壊はできたのか? 鎧や身体は傷ひとつつかない仕様なのに。
まぁいいやと俺は剣を鞘に戻し、ヤーデン中尉へとさらに歩み寄る。胸ぐらを掴みおもいっきり引き寄せてやる。
ヤーデン中尉は、
「あ……ひぃ……」
と、震えながら呻き声を漏らしているだけで逃げもしない。さっきまでの威勢はどうしたよ。
「なぁヤーデン中尉。あんたには感謝してるところもあるんだ。ありがとな」
「…………へ?」
礼を言いながら掴んでいた手を離し、ポンポンと襟元のシワを伸ばしてやる。俺の突然の感謝の言葉にマヌケな声を上げるヤーデン中尉。
「俺は余所者で胡散臭いのは確かだし、やってきたことも少々大袈裟過ぎたかもしれない。あんたに言われて反省したよ。突然やってきたワケわかんないヤツに引っ掻き回されて気分いいわけないよな? 悪かったと思ってるよ」
「……ふ、ふん。そうか、分かってくれたか。では今後はもう、貴様らごとき冒険者風情がでしゃばるような真似は二度と……」
「それはそうと、あんたウナギを素手で倒せるなんてありえないってバカにして大嘘呼ばわりしてくれたよな?」
こっちが下手に出たと思ったのか、勢いを取り戻し上からものを言い出すヤーデン中尉。それは許せないんだなぁ。カチンときたので声を荒げもう一度胸ぐらを掴みながら言葉を被せるように質問する。
「え……? い、いや。その……」
「どうやったら素手で獲物が倒せるか見たいか? 見たいよなぁ? よし、見せてやろう!」
右腕をぐるんぐるんと回して目一杯後ろにぎりぎりと引き絞って構える。
「大丈夫、痛くしねぇから。それにお礼の意味も込めて一撃で屠ってやるよ」
「ひっ、ひいぃぃぃ?! ままままて、痛くないのはこの施設の機能で! 他の兵士も全員一撃で倒してるじゃないか?!」
「そうだっけ? まぁいいじゃんかそんな細かいことはさぁ」
「や、やめろ……。やめて、やめてくだ」
言い終わる前に右手で手刀を作り、ヤーデン中尉の顔面目掛けて突き出す瞬間に『ネイキッドダガー』を発動。
鋼鉄の如く重く硬化した手刀が、恐怖で頭を庇おうとした腕ごとヤーデン中尉の顔面を捉え後頭部まで貫く感触が伝わる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ…………」
実際にはヤーデン中尉の腕や頭は無事で、武器と化した手刀が練兵場の機能で後頭部まですり抜け、衝撃だけが実在し後ろに弾くだけなのだが、ヤーデン中尉にも腕を切断され頭部を貫かれた痛みの無い感触が伝わったのだろう。死を実感したのか悲鳴を上げ、後ろに倒れて気絶した。
このスキルは手刀を重くし硬化させるだけなのだが、人体ぐらいなら鎧ごと貫ける貫通力をもつ。
ヤーデン中尉の細い前腕をへし折り顔面の骨を砕き、柔らかくネチョッとした脳に手を突き刺した感触が残る右手をワキワキと動かし、この練兵場の機能の奇妙さに改めて驚く。
これだけ斬って貫いて殺し殺されたリアルな感触が両者に残るのに、無傷で痛みが無いってのが不気味だ。
斬られた側が痛みを感じないのがヤバいかもしれない。歴戦の戦士が大怪我を負っても強い意志で無かったことのように戦えるのと、痛くないせいで防御が疎かになったり、怪我を怖れなくなったりするのとでは話が全然違う。
痛みは命を守る為の目安であり、どの程度なら無視できる痛みなのか、命の危険がある怪我なのか経験し、即決即断できるようにならなければ戦場では生き残れない。
なのに、この施設では痺れや麻痺程度の痛みの無い不快感しか与えないので、ここで訓練し続けるとそういった痛みに対する意識まで麻痺してしまいそうだ。
そんな理由もあって、この施設は利用されなくなっていったのかもしれないな。と、一人納得した。
ぶっちゃけ俺はもう二度と使いたくない。しかし、これで俺のこの数日が無駄ではなかった事が証明された。さっき落ち込んで立ち直ったのもきっと無駄にならない筈だ。
「カイエン中将ー。終りましたよー」
カイエン中将の方を向いて手を振る。大尉やケラル達も近くにいて、みんな口を開けたまま呆けていた。
「………マビァ。やり過ぎだよこれは……」
やれやれ、と苦笑をするカイエン中将。テイレル大佐も呆けていたが、ハッと気が付いて練兵場の機能を消す止めの操作を始める。
「百対一なんて勝負をふっかけておいて、何言ってんですか。これでも時間かかった方なんですよ」
スキル修得に時間を使ったから、十分くらいかかってしまった。ただ速さを求められていたらもっと速く終わっていただろう。
「それに俺がワニやウナギを倒せるか証明するための模擬戦なんですよね? だったらそれなりの力感見せつけなきゃ伝わらないかと思って。思いっきりやれって言ったの中将じゃないですか」
「それにしたって、これほど一方的な蹂躙になるとは思わなかった。これを良い機会に我が軍の訓練の見直しを図ろうとしていたのだが、この百人はしばらく再起不能だろうな。殆どの兵士が身体を二つか三つに下ろされたのだから、その恐怖はそう簡単には拭えんだろう」
未だ死屍累々と横たわり、時々ビクンビクンと痙攣する兵士達。
「そのために試しにこの施設の機能を使ってみたのだが、逆効果だったようだ。まぁ先達が使うのを止めた理由が分かったのだから良しとするか」
フムフムと頷くカイエン中将。機能が使えないというのに残念な感じがまるでない。
「テイレル大佐、これって斬ったり斬られたりする感覚って消すことできないんですか?」
演壇で機能の操作らしきことをしているテイレル大佐に聞いてみると、「えーと……」となにやら手を動かしてから答える。
「……なさそうですねぇ。シビレや麻痺の強度の調節はできるみたいですけど」
……いらん機能しかついていなかった。試しにその調節をしてみたのか、後ろの兵士達のビクンビクンが数秒激しくなり、呻き声も大きくなる。
「ほほう」
その反応を何度か楽しんだテイレル大佐はようやく練兵場の機能を切った。壁の赤いジェムの光が消えていき、俺のペンダントの光も消える。
……テイレル大佐は穏やかな顔をしてやることがなかなかエグい。この人に恨まれたらいつまでもしつこく嫌がらせをされそうな気がする……。怒らせないように気を付けよう。
「だったら訓練用の木製武器使って訓練した方がはるかにマシですよ。場所はここを使ってもその機能は邪魔なだけです」
「そうだな。高価なジェムを毎回使うくらいなら木製剣を買い揃えた方が安いくらいだ。よし、この件は終わりとしよう。そこの反対派に参加してた六人は、下の連中が気が付いたら会議室で待機するように言っておけ。あとここの片付けをしておくように」
「はっ、はい!」
六人は敬礼をしてバタバタと下りてくる。俺はペンダントをケラル伍長に返し、側に転がっているヤーデン中尉を爪先でつついていると、カイエン中将に声をかけられる。
「マビァ。ラクスト大尉と来てくれ。場所を移して話をしよう。報酬も支払わないとな」
ニヤっと笑ってテイレル大佐と練兵場を出ていった。
俺もラクスト大尉と出入り口で落ち合おうと決めてそちらへと向かう。
久しぶりに全力で動けたのと、新しいスキルを修得できた喜びで、まぁまぁ意義のある依頼をこなせた気がする。
でも、ここの兵士の弱さ加減にはこっちが驚かされた。弱いなんてもんじゃない。ただの木偶人形より動くだけマシなレベルだ。
これを立て直すのは大変な仕事になるだろう。俺は絶対にやりたくない。
ただの平和ボケってだけで、ここまでヘタレになるものなのか?
この街に来てからずっと感じる違和感を考えながら外へと出た。




