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五日目 反対派の主張とカイエン中将の提案

 「ヤーデン中尉、まぁ待ちたまえ。貴君の言い分は分からなくもないが、軍においては階級は絶対だということは理解しているだろう? それは生まれの身分とは別で、上官が下級貴族であれ平民であれ従わなければならない。貴君のラクスト大尉に対する発言は看過出来ぬものだ。その点は弁えてもらいたい」


 ひとしきり笑い終えたカイエン侯爵は立ち上がり、ヤーデンを諌める。おっと、口調が昼食の時とは違う。お仕事モードってヤツだな。ここでは軍人としての立場を優先しているのかな? だったら呼び名はカイエン中将の方がいいか。


 「はっ……。つい感情的になってしまい、申し訳ありませんでした」


 ヤーデンもカイエン中将に対しては即時に非礼を詫びる。上に居る中将には見えない角度で俺と大尉を睨んではいるんだけどね……。


 「此度のバーンクロコダイルに対するラクスト大尉及び市議会からの具申は、まだ報告の域を出ていない。ラクスト大尉は部下を納得させた上で、カレイセム駐屯基地の総意として私に進言する責任がある。そう言った意味ではラクスト大尉は君達の意見を聞く立場にあるのだが、丁度当事者である冒険者が到着した。ヤーデン中尉、反対派の意見を改めて聞かせてもらってもいいかな?」


 カイエン中将は座りながらヤーデン中尉を諭す。ちらりと俺に向けた視線は「お前も話を聞け」ということなのだろう。俺は小さく頷きヤーデン中尉に向き直った。


 「ではお答えします。此度の一件はこのマビァと名乗る何処の誰とも分からない人物がこの街に来たことによって始まりました。四日前、西の丘で起きた火災の原因がバーンクロコダイルのものだと判明し、その現場を確認したそこにいるケラル伍長と他二名による鑑識により、マビァが一人無傷で倒したと断定したことによって話が進みます」


 ヤーデン中尉はジロリと練兵場の入り口に佇むケラル伍長を睨む。ケラル伍長は一瞬身を竦ませるが、その目をしっかりと睨み返す。


 「翌日、ラクスト大尉とケラル伍長が何らかの方法でマビァの言いなりになり、バーンクロコダイルに対する方針を、我々に対し事前の相談もなく決断し、我々への説得を図ったのです。二人が言うにはこのマビァが僅か数十秒であのワニを仕留めたと言い張るのです。新聞にも似たような事が書かれていましたが、その現場を見ていない我々には信じられない内容でした」


 ヤーデン中尉のご高説に、後ろに控える兵士達もうんうんと頷く。一応反対派に参加している東の沼の現場を見た兵士達は、目を逸らしている。その件に関してはヤーデン中尉には賛成しかねるようだ。


 「更に翌日、東の葦原での火災でワニ二十数頭を討伐したと(うそぶ)くのです。明日ウェルゾニア商会が企画したワニ肉を振る舞う催しがある以上、討伐された数を疑う訳にはいきません。しかし現場にはこの街最強のクロブ氏が居たとの報告を受けております。ならばこの得体の知れない若造よりもクロブ氏が活躍したからこそ、その頭数を討伐できたと判断するのが正しいのではないかと」


 反論したいことが多過ぎて、どう言ったらいいものか悩み言葉に詰まる。あまりにも俺達にとっての現実と、ヤーデンが突き詰めた結論とでは乖離が酷過ぎたからだ。


 そもそも俺が倒せたのは十一頭だけだし、紅月の活躍やナン教授の鎖縛術、土木ギルドの魔獣達の活躍がなければ、あの場に居た何人かは確実に死んでいただろう。

 更に、その場に来てくれたクロブは俺達の命の恩人だ。

 ワニを一頭たりとも殺すことなく退けたので、今回の討伐数には関わらないのだが、彼の活躍を持ち出されてしまうと、それまでの言い分が間違っていても、つい反論しにくくなってしまった。

 大体、言葉で人を説得するのが得意でない俺が、ヤーデンの間違いを第三者にも語弊なく伝えるなんて出来っこない話だし、ヤーデンの畳み掛けるような持論に対処出来ていない時点で、俺の思考力が彼より劣っている証明なのかもしれない。


 「その後の冒険者ギルドにおけるワニの幻獣十一頭を一度に相手にして倒して見せたという記事も信憑性に欠けます。タブカレを毎日読む者であれば簡単に気付くことですが、これまでの流れに反して急にマビァを讃える記事になりました。これは何らかの裏取引があり、タブカレの記者がマビァ、あるいはウェルゾニア氏によって取り込まれ情報操作に利用されている可能性があると考えられます。SSランク指定もマビァの存在をより大きく見せる為の策略でしょうね。全く子供騙しにもならない行為ですが」


 むぅ、確かにハンセルを取り込んだのは間違いないが、それはいつものような記事で読者に嘘を吹き込み、こちらがさも悪人であるかのように見せるのを防ぐ為で、こちらの都合が良いように嘘を書かせる為ではない。

 実際には真実をちょっと大袈裟に盛った記事になっていたが、いつもの、誰であれ対象を貶める記事ばかりを載せるタブカレとは全然違う内容になっていたのは認めざるをえない。


 SSランクに関しては、あれは完全にコニスの悪ふざけだ。

 俺だって無かったことにしたいが、他人を騙す為に付けられたランクではなく、コニスが俺個人に押し付けた嫌がらせだ。ヤーデン中尉の指摘は間違っている。

 しかし説明するのが死ぬほどバカらしくて面頭臭い。上手く説明できたとしても相手が納得してくれるとは限らないからだ。


 反論しない俺を追い詰めていると思ったのか、こちらにニヤリと見下す視線を送り、ヤーデン中尉は更に言葉を放つ。


 「そして、昨日のギガントイール討伐に関しては、大勢がその肉を食したので間違いないのでしょう。しかし冒険者ギルドでの幻獣召喚で素手で倒して見せたというのは、あまりにも馬鹿馬鹿しくて信じられる筈もない内容です。あの記事が捏造なのは調べるまでもないでしょう」


 どうだ! と言わんばかりに両手を広げて胸を張るヤーデン中尉。


 「しかし、最初のバーンクロコダイルの件以外は全て複数の目撃者が居る。それらの証言はどうする?」

 「そんなもの口裏を合わせればどうとでもなります。見たと言い張る連中が新聞の発売までに街中で噂を広めれば、新聞記事も受け入れられやすく、人々への洗脳も可能でしょう。簡単な情報操作ですよ。我々を騙すことはいくらでも可能なのです。事実を見たと言う証言が必ずしも真実だという証拠にはなりえないでしょう?」


 「フフン」と鼻で笑い、そんなことも分からないのかとばかりに言い放つヤーデン中尉。


 それはもう暴論としか言い様のない発言だが、否定しにくいのも事実だ。

 ヤーデン中尉の言っている事は、事実に直面した人間よりも何も知らない人間の方が多く、知らない人間が抱く疑念を大多数の総意として事実を捩じ伏せる行為で、まさに多数決を悪用する真骨頂とも言える。

 たとえ事実は一つでも、大多数が嘘を信じれば、事実は塗り潰され書き換えられる。そこに悪意は無くても不条理に正しい意見が消され殺される。

 異世界だろうが人が作る社会はどこでも同じらしい。

 ……クソッ! ちょっと嫌なこと思い出しちまったじゃねーか。


 「ではヤーデン中尉。なぜマビァはこのようなことをしていると考える?」


 カイエン侯爵はこちらにチラリと視線を向けた後、ヤーデン中尉を促す。……なんか状況を楽しんでる感じがするな? テイレル大佐も拳で口を塞ぎ軽く咳払いをしているが、なんか笑いそうになるのを堪えているようにも見えた。


 「私が推測するに、おそらくはウェルゾニア商会と冒険者ギルドが結託して、この街での地位と利益の向上を図っているのではないかと思われます。狂暴で手の付けられなかったバーンクロコダイルを、街の発展に利用するという逆転の発想。そして明日のワニ肉料理の無料配布によって、イメージ戦略は成功してしまうのです! これは由々しき事態ですぞ!」


 …………うん? 今のは何も間違っていない気がする。逆に褒められてないか?


 「ヤーデン中尉……。それの何がいけないのかな?」

 「……はっ?」


 カイエン中将の問いの意味が分からずに聞き返すヤーデン中尉。…………アホなのかな? この人。


 「市民達が困っているバーンクロコダイルの間引きができて、肉や皮で名物料理や特産品が作れ街が潤う。君の言う通りだが何が悪い?」

 「……はっ! い、いえ。結果としては街の為になるのかもしれませんが、問題はそこまでの過程なのです! 東の葦原を焼き払い、大嘘を並べて街の人々を洗脳し、我々にまで賄賂紛いに肉を振る舞って……。それをこの得体のしれない男が主導しているのが納得いかないのです! それにこの男は冒険者達の強化を図るために特訓させているのですぞ。あんなならず者の集団ごときが力をつければ、街の治安も悪くなるに違いありません! この街のことをよく知らぬ者が勝手に引っ掻き回して良いことではないでしょう!」


 ギリリ……と歯を食いしばってこちらを指差し睨んでくるヤーデン中尉。


 …………知らんわ。


 結局は俺が気に入らないだけかよ。それに冒険者達が自分らより強くなるのが許せないんだろうな。

 でも俺が強くしようとしてるのは兵士達もだよ。大尉はその事言ってなかったのか?


 「では、マビァの身の潔白が証明され、新聞記事が事実であれば問題ない訳だな?」

 「そ、それはそうかもしれませんが。その方法がこのマビァが冒険者ギルドの幻獣召喚でワニやウナギを倒して見せると言う意味でしたら反対致します。冒険者ギルドの者が幻獣召喚の魔法を使うのであれば、どんな卑怯な手を使って騙されるか分かったものではありません。そもそもそれ自体がこの男の魔法か何かで都合の良い幻影を見せられたのでは、という噂まで立っているのです。見せられたものが真実だとは言えないのが現状ですので、とても信用できる筈がありません」


 しつこく食い下がるヤーデン中尉。あの噂、もうこっちにも広がってんのかよ。

 またワニを十頭以上狩れとか、ウナギを素手で狩ってみせろって言われるのは面倒臭いにも程がある。うんざりと二人の遣り取りを眺めていると、カイエン中将がとんでもないことを言い出した。


 「なるほど。では諸君が身を持って体験するならば信じられるという訳だな? 君達対マビァ。約百人対一人の模擬戦というのはどうだ?」 


 「………………は?」


 「………………へ?」


 ヤーデン中尉に続き、俺もマヌケな声を漏らす。


 「これでマビァが勝てば納得せざるをえないだろう?」


 ニヤリと笑い練兵場に佇む兵士達を見渡すカイエン中将。テイレル大佐も同様に微笑みを湛えて俺達を見ている。


 ヤーデン中尉の後ろの兵士達もザワザワと騒ぎだした。

 さっきからずっと黙って隣で立っているラクスト大尉を問い詰めるつもりで見ると、大尉は既にこうなることを知っていた様で、黙ったまま一つ頷いただけだった。


 「モ……モギ? もぎせん? ……あ、模擬戦ですか? い、いえ、しかし……。いくら何でも百人で一人を袋叩きというのは……」


 ……なんだその『模擬戦』という言葉すら知らなかったみたいなリアクションは。

 なんとか言い訳をして模擬戦を避けようとするヤーデン中尉だが、あまりにも急に方針が変わったので理解が追い付かない様だ。


 カイエン中将の表情を見る限り、これは決定事項なのだろう。

 やらなければいけない事ならば、俺はどうすればいいのか。軍人達の遣り取りが進む中、悪い頭をフル回転させて考える。

 ここにいる百人がラクスト大尉やケラル伍長と同程度の戦力ならば、ゴブリン以下の強さなので百匹いようと大した事はない。だがこいつらは人間の兵士だ。統率の取れた戦術をされるとやられる可能性もある。

 例えばスキル後の硬直中に周囲を囲まれて一斉に突かれたらさすがにヤバい。まぁ誰にでも思い付く戦法なのでやってこないとは思うけど。


 「ラクスト大尉の見立てでは、マビァの実力は新聞に書いてある通りかそれ以上の強さだそうだ。ケラル伍長にも聞いたが、やはり同じ感想だった。マビァがそんなに強いのなら兵士百人相手でも簡単に一人で蹴散らしてしまうかもしれんな。彼らの感想が確かなら遠慮する必要はない。むしろ諸君の方が心配だと言える」

 「なっ……!」


 カイエン中将の言い様に見下されたと感じたヤーデン中尉と後ろの兵士達が驚いた声を上げる。まさか中将に自分達が冒険者よりもはるかに下だと言われるとは思わなかったのだろう。

 しかし、さっきのケラル伍長の言い様では、ウナギの幻獣を素手で倒したのは二人とも信じられなかったと言ってた。カイエン中将、ヤーデンを煽るために話を盛ったな?


 「ヤーデン中尉を筆頭に反対派の諸君が、マビァの実力を既知の情報からでは信じられないと言うのならば、マビァに再現してもらうしかない。しかし、自身の目でそれを見たとしても疑念が残るというのなら、その身で体感してもらう以外無いだろう? それとも諸君が大嘘吐きと呼び、その行いの全てを否定し、蔑むべき対象だと言い張るマビァ一人を相手に、誇り高きドライクル王国の軍人である諸君が、百対一という圧倒的に優位な模擬戦すら受けずに敗けを認めるというのかね? 私としては、それで駐屯基地の意見が纏まるのであれば、一向に構わないのだが……」


 少し悩ましげな表情で兵士達を煽るカイエン中将。

 その言葉を受け、歯を食いしばり俺を睨むヤーデン中尉とジワジワとやる気を漲らせていく兵士達。

 そりゃ百対一なんて勝負にもならない模擬戦ですら勝てそうにないと言われ、それでも逃げるようでは軍人の名折れだ。

 ここに集まる軍人至上主義の連中にとって、今のカイエン中将の煽りはこうかばつぐんだ。


 ……でも、こちらを無視した展開には正直腹が立つ。俺がこの街でやってきた色々と、少し大袈裟ではあるが事実を書いてある新聞記事の否定……。

 俺、ここに来てから何も悪いことやってないのに(横流しの鎧の事は置いといて)、勝手に誤解され蔑まれ、新聞記事まで否定されては、これまでに関わってくれた人達全員も一緒に愚弄されているってことになる。俺がバカにされるのは別に構わないが、周りの人達も精一杯力を貸してくれてるんだ。それは看過出来るものではない。

 それに、カイエン中将は俺寄りの立場で話を進めてくれているようだが、まるで道具のように都合よく利用されるのは、例え上位貴族だろうが、ウェルの兄貴だろうが正直気に入らない。

 俺はカイエン中将に向かい一歩前へ出て見上げ言い放つ。


 「カイエン中将、随分と勝手に話を進めてくれていますが、俺の意志は無視ですか。俺は別にコイツらに認めてもらおうなんて思っちゃいませんよ?」

 「マ、マビァ君……!?」


 ラクスト大尉が驚いてこちらを見る。まさか中将閣下に反論するとは思っていなかったのだろう。


 「大尉、俺はあんたがワニの倒し方を知りたいと言うからやって見せたし、倒せるようになりたいと願うから協力してもいいと思ってる。だけど部下を纏め上げるのはあんたの仕事だし、俺は軍がどうなろうが知ったことじゃないんだよ。コイツらがこれから先ずっと、ワニの一頭も倒せない役立たずの税金泥棒だろうが、更生して真面目に訓練するようになろうがどっちでもいいんだ。それに俺は軍人じゃねぇから、誰の命令であろうが従う義務はないだろ。違いますか、中将?」


 俺はカイエン中将を睨み上げる。「あんたやテイレル大佐が面白そうに見下しているほど、俺は面白くもなんともねぇんだよ」って意味を込めて。


 まぁ軍人であるカイエン中将には従わなくてもいいかもしれないけれど、領主であるカイエン侯爵に対しては従わなければいけないかも。

 ここは彼の領地であり、その中に居る間はここの法に従わなければならない。この態度が貴族に対する侮辱罪とかに当たらなければいいんだけど。


 俺が言いたいのは「勝手に人を使うな。手を貸して欲しければ筋を通せ」ってことだ。

 正直コイツらとの模擬戦には興味がある。さっきザンタさんのところで教わったスキル修得の基本。

 あれを試してみたくてウズウズしてるんだ。

 さすがに模擬戦中に新たなスキルを修得するのは無理だろうけど、今は軽く暴れたい気分だからヤツらは打って付けな相手だったりする。

 だから大尉への説明にヤツらへの悪口を混ぜ込んで煽ってやった。上手い具合にヤツらの怒りが高まっていく。後は俺が模擬戦に参加してもいい口実があれば……。


 「いや、まったくその通りだ。マビァよ、理由も説明せずに呼びつけておいて、更には勝手に話を進めてしまい申し訳ない。では冒険者としてのマビァへの依頼としてではどうだろう?」


 カイエン中将は立ち上がり頭を下げて謝罪をする。……これはあれだな。俺がこう言い出すまで織り込み済みだったってわけだ。ここで俺に謝罪するのも決まってたのなら、下々の俺ごときに頭を下げるなんてなんともないだろう。


 「依頼ですか」


 すっかり毒気を抜かれた俺は、もうカイエン中将の流れに任せることにして、合図として肩を竦めてみせる。


 「うむ、正式な依頼なら、まずギルドを通してマビァに指名依頼をし、報酬の交渉をしてから契約成立なのだが、今回は手間を省く為ギルドには事後報告という形にしてもらいたい」


 確かに今、両者ともテンション上がってるから、間を開けて後日またなんてのは嬉しくない。それに時間を開ければ開けるほどあちらは作戦や対策を練ってくるかもしれない。こっちにとっては今の方が好機だ。


 「了解です。で、依頼内容は? 成功条件はなんでしょう?」

 「百数人対一人の模擬戦で、何人倒せるかで良いだろう。出来ればヤーデン中尉の言ってた噂のような、幻影を見せるだったかな? もしそういう魔法だかスキルだかを持っているのならそれは使わないでほしい。一人倒す毎に一万カルダでどうだ?」


 ゴブリン一匹の魂石の買取り額が五百チルだから、なんと二十倍だ。 美味し過ぎる条件だけど、やり込められっぱなしは面白くないのでちょっと吊り上げてみる。……多分これも読まれてるんだろうけど。


 「全員を打ち負かしたら完全成功として報酬を倍にしてもらいたいですね。どうせ何割かはギルドに納めなきゃいけないんでしょうし」


 おどけて倍額を要求すると、


 「貴様! 調子に乗るのも大概にしろ!」


 と、ヤーデン中尉とその部下数名が騒ぎ出す。


 「止めろヤーデン中尉。諸君が勝てば良いだけの話だろう」


 と、カイエン中将に止められ静かになる中尉達。


 「倍額だな。認めよう」


 「そうそう、後もう一つお願いがあります」

 「……!!」


 もういっちょ中尉達を煽るついでに、ダメ元で要求を増やしてみる。怒れ怒れ。怒った分だけ剣先が鈍り統率も執れなくなってこっちが有利になる。


 「何かな? 要求内容次第では追加してやろう」

 「ありがとうございます。俺がこの街に来た理由、ウェルから聞いてますよね? あるスキルを探してたまたまここに寄ったんですが、全く手懸かりがない状態でして。カイエン中将とテイレル大佐、お二人はいくつかスキルをお使いになるんでしょう? それを教えて下さい。俺が欲しかったものがあればその修得方法も」


 俺の要求が想定外だったのか、中将と大佐の二人はきょとんとこちらを見返す。


 「ふむ、それくらいなら良かろう。では交渉成立だな?」


 二人は頷き合った後、中将は交渉の終わりを認め席に座る。


 「はい、依頼承ります」


 俺はカイエン中将に深々と礼をした。

 ラクスト大尉は隣で話についていけずに放心し、ケラル伍長も入り口に佇んだまま。

 反対派は一部を除いてイキり立ち、怒りの視線をこちらにぶつけてくる。

 除かれた一部は俺らと肉を一緒に食った連中だ。彼らは集団からゆっくりと離れていっているから戦意喪失かな?


 ……さて、どうやって潰してくれよう。油断したらあっという間にやられるだろう。

 模擬戦である以上死ぬことは無いだろうが、負けるのは嫌だし試したいこともある。


 手足をブラブラと振って準備を始めて、一つ忘れてはいけないことを思い出した。

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