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五日目 SIDEロージル マビァさんの恋愛模様? 前編

 時間の流れはそのままに、ロージルさん視点に切り替わり、一人称で物語は続きます。

 前後編の二話です。楽しんでいただけたなら幸いです。

 ザンタさんに礼儀正しくお辞儀をするマビァさんを見ていて、


 (あぁ、この子も歳相応の態度を見せることがあるのですね)


 と、改めて感心致しました。

 いつも相手をよく見ていて、場合によっては人を食ったような態度をしてみせますし、随分と大人びて見えるものですから、まだ十七歳だということを忘れてしまいそうになるのです。


 わたくしがマビァさんと初めてお会いしたのが三日前。四日前の夕方に初めてギルドにお出でになられた時には、わたくしはもう帰宅する為にギルドを出た後でした。ですから初日にはお会いしておりません。

 三日前、朝の新聞でギルド内は既に騒ぎになっており、午後一時から来るというその冒険者希望の若者が何者なのか、期待と不安で満ちておりました。

 夜勤明けのコニスは、


 「すっっごい人が来たんですよ!」


 と興奮して、新聞にコメントした以外のことも教えてくれました。

 試験用のAランクまでの幻獣を全て一撃で倒したということにも驚きましたが、その後ギルマスに対してギルドの現体制を批判し、ご自分がAランク認定されることを拒否され、突然やってきた駐屯軍統括のラクスト大尉共々、言葉巧みに軽くあしらった上に放置して帰ったと言うのですから、どんな人物か興味を持つのも無理のない話だと思いますわ。

 コニスが受け付けた登録希望届には十七歳と書かれていましたが、そんなことの出来る十七歳の男の子なんて聞いたこともないのですから。


 出入口から現れ、ギルマスとコニスに迎えられた男性は、古めかしい鎧を身に纏った、少年と青年の間に見える若者でした。

 今、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長している若手実業家のウェルゾニア氏と登場したことにも驚かされました。(のち)の新聞では、お隣のヨーグニル王国で知り合ったと書いてありましたが、少々怪しく思えます。

 お二人は多くの職員や冒険者の注目の視線が向けられていても臆することなく、むしろ堂々とした態度で会議室へと入って行ったのです。


 ギルマスの当初の予定では、しばらくの間マビァさんから色々と話を聞いた後、昨日の試験結果を信じない者達に、もう一度見せてもらえるよう頼んでみると仰っていたのですが、僅か数分で出て来たマビァさんは、皆の前でバーンクロコダイルを倒して見せると試験場へと降りて行ったのです。


 見せられた出来事は、誰もが驚愕し言葉を失うものでした。

 昨日の再現ということで、鎧を脱いで下着姿になった状態にも関わらず、僅か三十秒ほどでワニを一頭倒し、さらに三度続けて別の方法で、やはり三十秒ずつくらいで倒していったのです。

 それはあの巨体のワニを、まるで大きな遊具で遊ぶ子供のような気軽さで、サクッと倒してしまうのですから、見ている全員が現実の出来事として受け入れられずに放心してしまうのも仕方のないことだったでしょう。


 その後、ワニ一頭との幻獣戦を体験し無惨に大敗した冒険者の『黒い三連狩り』の三人と、ラクスト大尉とケラル伍長の二人を理路整然と丁寧に諭した後、ついに本性を現しました。

 それまで丁寧な言葉で話していたのは、本来の口調で怒鳴り付けても聞く耳を持ってもらえないから、自分の言葉を聞いてもらう為に、わざと口調を変えて諭したというのです。

 歳上のプライドの高い男性を諭すなんて、なかなか出来ることではないでしょう。戦闘で誰よりも強いだけでなく、理知的な面もあるようです。少し腹黒いように感じましたが。


 そして言ったのです。


 「さあ、ギルドのダメなところを洗い出して、大改革を始める!」と……。


 それから会議室で決まっていった様々なことで、ギルド内はしっちゃかめっちゃかになりました。職員は常勤組も夜勤組も全員で、翌朝にかけてたちまち必要になる書類を作り始めたのです。


 ……地獄のような一晩でした。


 会議室で立ち会い、情報を収集していた職員はわたくしだけでしたので、仕事の振り分けと変革に納得のいかない職員の説得に苦労致しました……。



 「どうしたのロージルさん? 遠い目をして」


 マビァさんとの衝撃的な出会いを思い出していたせいで、少しぼーっとしてしまいました。

 ザンタさんとの攻撃スキルについての遣り取りで何かを掴んだマビァさんが、キラキラした少年のような瞳でこちらを覗き込んできます。

 どちらかと言えば腹黒い言動が多い彼が、こんなに生き生きとした表情になるなんて……。


 はっ、もしかしてマビァさんはザンタさんに!? いけませんわ! 先ほど奥様のアリアさんにお会いしたばかりですのに。

 万が一にもマビァさんとザンタさんがそのような関係になったとして、それがアリアさんに露顕するようなことになれば、怒りのモーニングスターが唸りを上げるかもしれません。なんとか阻止しなければ……。


 そうですわ! コニスから授かったスキル、『真実の愛の物語』を使えば、マビァさんとザンタさんの感情を知ることが出来ます。

 午前中にマビァさんに使用した際には、あまりの情報の多さで混乱致しましたが、イルマとのカフェでの昼食中に、周囲のお客で少し練習致しましたから、試しに使ってみましょう。


 と、マビァさんがこちらの顔を覗き込んできてから、ここまでの思考に要した時間は〇・二五秒。

 不自然に思われないように、返事を致しましょう。


 「いえ、ザンタさんの剣技があまりにも凄まじかったものですから、見とれてしまいましたわ」


 実際に凄かったのです。攻撃のスキルもマビァさんのを見たのが初めてでしたので、マビァさんのものと比べて実戦に向かないように思えましたが、上段斬りから右からの横斬りまでの円の四分の一を、十九回もスキルを放ち続けるなんて、どんな魔獣でも倒せそうな気が致します。


 「だよなぁ。俺もスキルの組み立てを最初から考えないといけなくなったし、自分で技を編み出せるかも知れないんだ。ザンタさんに会えて良かったよ。まだドキドキしてるもん」


 興奮に頬を赤らめて、眼を輝かせザンタさんを見つめるマビァさん。胸に手を当て呼吸を整えようとしています。


 やはりこれは恋?! 昔こっそり読んだ姉さんが好きだった本の中に、師弟関係にある殿方同士の恋愛模様を綴った作品がありました。当時のわたくしには少々刺激が強すぎて、最後まで読むことが出来ませんでしたが、以前から姉さんがちょくちょく話題に出していた殿方同士の恋愛というものが、本当にあるのだとあの時学んだのです。

 マビァさんがもしそちら側の人だと仰るのなら可哀想ですが、ザンタさんはダメです。不倫はダメですわ! 絶対に!


 コニスに教わったスキルの活用法に、『自分に対する相手の感情を見るモードから、第三者に対する相手の感情を見るモードに切り替える』というのがありました。それを使ってみましょう。


 数々の小窓がマビァさんの心情を教えてくれます。ピンクのハートは大きくなって強い鼓動を刻み、その下の顔絵は目のまわりにキラキラと星の輝く『尊敬の眼差し』を表現しているようですわ。

 好感度グラフでは、右上の窓の中間へと光点が移動していて、ザンタさんに強い感心と好意があることを示しています。そして光点はやや上にジリジリと移動中ですので、やはり愛情寄りにザンタさんを想っているようです。


 これはやはり恋なのでしょうか? 正直まだ判断しかねます。まだスキルを使い慣れていないせいもあるのかもしれませんね。コニスでしたらすぐに分かったのでしょうけど。


 「おう、マビァくん。とっとと十箱運んじまおうぜ」

 「うす!」


 ザンタさんが倉庫横の扉を開けると、そこは店の横の通路に繋がっているようです。そこに置かれた荷車に二人で木箱を積み始めました。


 「サイズの内訳は、S二・M五・L三でいいかな?」

 「了解だ。箱の上に書いてあっからそれぞれこっちまで持ってこいや。俺が荷台に積んでいくからよ。扉のところ、足元きをつけろよ? 段差があっから」


 こっ、これは、姉さんが時々呟いてた、殿方同士の愛の形の一つ『誘い受け』というものなのでしょうか? よく意味は分かっていないのですけれど。

 そう思うと木箱を受け取るザンタさんの笑顔がとても怪しく思えてしまいますわ。ザンタさんもスキルで見てみましょう。


 あぁ! なんということでしょう!

 ザンタさんの好感度グラフの窓が開いた途端に、マビァさんに対する感情を表す光点が友情度MAXの右上窓の右端に突き刺さり、愛情度も三分の二以上まで上がっています。

 顔絵の表情は目尻の下がったデレデレ顔で、とても喜んでいるようですわ。

 こ、これはザンタさんを気を付けた方が良いのかもしれませんね。


 「ロージルさん、さっきからなんかおかしいよ? 大丈夫?」


 荷物を運び終わったマビァさんが、両手を(はた)きながらこちらを心配して聞いてきます。

 いけません。わたくし無言で立ってるだけなのに、無意識に多くの小窓に視線を移したり表情をコロコロ変えたりしていたようです。

 怪しまれるので気を付けるようにと、コニスに注意されていたのに。


 「あ、あの。このままギルドに帰られるのでしたら、アリアさんにご挨拶していきたいな、と思いまして」

 「あぁ、そうか。じゃあ俺も行くよ。ザンタさん、いいかな?」

 「おう、俺はコイツを表まで出しておく。俺も一緒にギルドまで行くから、ついでにそのことも言っといてくれや」


 なんとか誤魔化せました。表通りに向かうザンタさんと別れて、わたくし達は店へと続く扉をくぐります。




 「おや、もう交渉は済んだのかい?」


 ハタキで棚の商品をパタパタしてたアリアさんが、わたくし達に気が付いて振り向きます。と、同時にアリアさんがマビァさんに向ける感情が小窓に現れました。

 なんとアリアさんも友情度がMAXで、愛情度もかなり高くなっていたのです! 顔絵は目を強く瞑り頬を赤く染めながらキャーキャーと叫んでいるものです。これはよく分かりませんが、なにやら楽しそうですね。


 こ、これはザンタさんと同じくらいの、マビァさんへ向ける愛情を感じます。

 ハッ、とマビァさんの顔を見ますと、やはりザンタさんに向けるのと同程度の愛情を抱いているのが分かりました。


 これは一体どうしたら良いのでしょう……。三人がそれぞれ愛し合っているとなると、三人で仲良く出来るのでしょうか? それともマビァさんを奪い合って、夫婦同士の決闘でも起きるのでしょうか? もうわたくしには手に終えません。と、狼狽えていると、頭に『情報分析』スキルの声が響きます。


 《情報不足。要、コニスに相談》


 そうですわね。今すぐどうこうということはないでしょうから、戻ってすぐコニスに相談致しましょう。

 しかし、やはりわたくしの『情報分析』はわたくし同様に恋愛関連の情報には疎く、こちらの方面ではあまり作動していないようです。わたくし自身もイルマに「あんたはホントにこの手の話に疎いよな」と時々言われておりましたが、今回こんなことになってこれまで何も考えてこなかったのだなと、つくづく痛感させられております。


 「アリアさん、お邪魔しました。ギルドまで荷物運ぶのをザンタさんに手伝ってもらうことになったんだ。帰ってくるまで店番を頼むって言ってたよ」

 「あら、もう帰るのかい。つれないねぇ……。そうだよねぇ、新聞でも忙しそうだったもんねぇ。ウチの人とばかり仲良くしちゃってさ。悔しいったらないよ。また遊びにでもおいでよ。色々と話を聞きたいんだからさ」


 またマビァさんの両手を掴んで振りまわすアリアさん。今のは明らかにザンタさんに嫉妬していましたわ。


 「はい、俺もアリアさんの現役時代の話や、モーニングスターのスキルについて聞いてみたいです。今日はバタバタしてますけど、時間が開いたら寄らせてもらいますね」


 マビァさんがそう言うと、アリアさんは嬉しそうに跳び跳ねて喜びました。頭の大きなお団子が元気に弾みます。そして次にわたくしの方へ身体を向けます。と、その時またスキルの声が頭に響きました。


 《ビーッ! 危険率七十八パーセント! 至急 冷温・風魔法による被膜コートを推奨》


 これは……。もしかして話の流れでわたくしがアレになる可能性を先読みしたのでしょうか?

 超加速する思考の中、ゆっ………………くりとアリアさんがこちらへと両手を伸ばしながら嬉しそうに近付いてきます。アレになるのはマビァさんの為にも絶対に阻止しなければなりません! わたくしは焦らず冷温と風の魔法で胸から上を薄く纏うことに成功します。アリアさんがわたくしの両手を掴んだ瞬間に思考の加速が終わりました。


 「ロージルちゃんとも全然話せなかったねぇ。ぜひまたおいでよ。あ、もしかしてあれかい? あんたら二人恋人さん同士かい?」

 「い、いえ。そういうわけでは」


 マビァさんとの仲を勘違いされたのでしたか。それでしたらまだ冷静でいられます。


 「そうなのかい? じゃあウチの息子の嫁にどうだい? 今は王都に勉強に言ってるんだけどさ。あんたみたいにべっぴんさんで賢そうな()が嫁に来てくれると、あのバカ息子も少しはマシになりそうだし、何よりあたしの人生が楽しくなりそうだ。どうだい、ちょっと考えてみてくれないかねぇ?」


 お嫁入りのお誘いでしたか。これまでもその様なお話やお見合いのお話をいくつもいただいておりますが、わたくしお会いしたこともない殿方と伴侶になって生涯を共にするなんて想像も出来ませんし、お相手は誰であれ結婚生活なんて考えたことすらありません。

 そう言ったお話でしたら、いつも通りに冷静にお断り出来ます。

 しかし、アリアさんに丁重にお断りしようとしたその時、マビァさんが割って入りました。


 「ダメだよアリアさん。そりゃロージルさんは才色兼備で料理上手の完璧超人だけどさ、ロージルさんには心に決めた人がいるんだから」


 『料理、心に決めた人』その言葉を聞いたとたん、ガラムさんの素敵な姿を思い浮かべてしまいました。そして、今晩もまた彼の晩御飯を作れる喜びも……。

 ドクンッ! と強く打ち鳴る鼓動。全身を熱く駆け巡る血流。いけません! アレになる前兆ですわ。

 わたくしは焦らずに冷温と風の魔法を調整して、気持ちを落ち着かせるのに必死になります。

 しかしマビァさん。また貴方ですか! わたくしはこれ以上貴方に迷惑をかけてはいけないと気を張っていますのに、どうして貴方はいつも何気ない一言でわたくしを追い詰めるのですか!


 本当に悪いのはわたくしの体質なのですし、マビァさんにわたくしでは気付けなかった醜態を教えていただけていなかったら、今頃どうなっていたのかなんて、考えるだけでも青ざめてしまいます。ですからマビァさんにはとても感謝しているのです。


 でも、この手の話になると、いつも後先考えない言動でわたくしを突発的に追い詰めていることについては、いいかげん憤りを覚えてしまいます。


 でも、その怒りのお陰か、ガラムさんへの想いが奥へ退いていきました。

 心を落ち着かせ、マビァさんの目を見つめて無言で訴えますと、マビァさんもそれに気が付いたようで「あ、しまった」とバツの悪そうな顔をしています。


 「ありゃ、そうだったかね。そりゃウチにとっては残念だったけど、ロージルちゃんの幸せは祈らせてもらうよ。その話はスッパリ諦めるからさ、良かったらあんたもいつでも遊びに来ていいんだからね?」

 「はい、ありがとうございます。仕事面でもこれからお付き合いさせていただきますので、アリアさんにも冒険者についてご相談したいことも出るでしょう。その時は宜しくお願い致します。もちろんプライベートでも。今度お茶でもお誘いさせて下さい」


 アリアさんの両手をわたくしから掴みなおし、これからもお付き合いしてもらえるようにお願い致します。

 お友達の少ないわたくしにとって、同姓の人生の先輩はかけがえのない先生にもなります。

 幸いイルマとも気が合いそうなお方ですので、今度三人でお話出来ればさぞや楽しいかと思います。




 笑顔で見送ってくれるアリアさんを残して、わたくし達三人はギルドへと向かいます。ザンタさんが荷車を牽き、マビァさんが後ろから押して、わたくしは人通りが多い道を先導し、周りの人に声をかけて道を開けてもらいながら進みました。

 かなり大きな荷物を運んでいるので、周囲からは必ず注目されています。その時横手から声をかけられました。


 「おや、マビァさんにロージルさん。冒険者ショップのザンタさんもご一緒とは、面白い組み合わせですなぁ」


 一昨日お会いした『タブロイド・カレイセム』の記者ハンセルさんです。


 「やぁハンセルさん。今朝はありがとう。何とか解決しそうだよ」


 マビァさんがお礼を言います。わたくしも続いて頭を下げます。


 「ハンセル様。この度はマビァさんにご助言して下さり、まことにありがとうございます。このご恩は必ずお返しさせていただきます」

 「いやぁ、そんなに大袈裟に捉えんで下さいや。私はただ、貴女のような可憐な女性が酷い目に合うのを見過ごせなかっただけなんですわ。まぁどおしてもってんでしたら、冒険者ギルドの改革が波に乗った時にでも取材させて下さい」


 ハンセル様はボサボサ頭を掻きながらわたくしの礼を受け入れて下さいます。今は大変忙しい時期ですし、この先の見通しも立っていませんから何もお答え出来ませんが、いずれ必ず取材を受けさせて戴きます。


 チラリと視線をマビァさんの方へと向けると、呆れた顔をしており、顔絵も同じ表情をしています。

 気になり好感度グラフに目を向けると、光の軌跡が一度左下窓の嫌悪方向に大きく動いた後、中央に戻り、右上窓に移り斜め上に少し動いて発光していました。

 こ、これは……と思い、ハンセル様に視線を移します。なんとハンセル様の好感度グラフも、マビァさんと同じような動きをしていました。

 一度嫌いになってから好きに? それとも嫌いな振りをして実は好き?

 これが姉さんが言ってた『つんでれ』という愛の形なのでしょうか? しかしマビァさんはなんて恋多きお方なのでしょう。次から次へと会う人を好きになっているのでしょうか?


 「ところでこの沢山の荷物はなんです? ザンタさんの店で買い物ですかい?」


 ああ、そうでした。今後の為にハンセル様に記事にしていただかなくては。


 「これはマビァさんがザンタさんのお店で見付けて気に入った鎧なんです。冒険者達の訓練に使うのに丁度良いと仰るのでわたくしが交渉に赴きました。初回はマビァさんがご自分の資金で十セットご購入なさいますが、鎧着用での訓練や実戦に効果があるとわたくし共が判断した場合、ギルドで買い取ることになっています」

 「ほほ~。それはまた……。マビァさん、これを記事にしても?」


 ハンセル様も不審に思われたようです。イルマとコニスもそうだったように、個人の資金で他人の為に安くもない鎧を何セットも購入するなんて、資産家の慈善でもない限りあり得ない話です。マビァさんには何か事情がおありなのでしょうが、どうやら隠しておられるようですから、そこは誤魔化さないといけません。


 「あぁ、いいよ」


 というマビァさんの返事で、事前に用意しておいたわたくし共にとって都合の良いシナリオをお話致しました。

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