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摘まみ出された箱の中

 気が付くと、目の前はまだ白かった。いや、白いと言うよりクリーム色? ギルドの本陣で食ったシチューを思い出した。あれ美味かったなぁ。タダで腹一杯食える機会なんてそうそうないもんな。もし残ってたら孤児院のみんなにも食わせてやりたいな。後で交渉してみようか。あぁ俺もなんか腹減ってきたな。あのシチュー食ってからどれくらいたったっけ? などと思いつくままに思考を流していて、やっとここ何処だっけ?ってことに行き着き、うつ伏せで寝ていたらしい身体を起こし胡座をかいて目を擦る。

 景色は変わらず地面も空もクリーム色で境も見えない。なんだここ? 俺何してたんだっけ? と考え、脇に転がる皮袋を見付け手に取り、その重さでやっとさっきまでのことを思い出す。

 「……そうだ。俺、ゴブリンに麻痺毒のナイフに刺されて……死んだのかな……なんか死んだっぽいかな?」

 皮袋の中身は思った通りゴブリンロードの魂石と護符で、全身血塗れ土塗れなのにここが倒れた場所じゃないし、見るからに普通じゃない空間からそう結論付ける。

 「ざんねーん。まだ君は死んでないのだよ。マビァくん!」

 突然聞き覚えのない大声が空間に響き、耳に痛みを覚え咄嗟に耳を塞ぐ。

 「なっ! なんだぁ? 誰だ!」

 俺は大声で叫び聞き返す。すると、

 「ああ、ゴメンゴメン、ピーーガガガ…これでどうだろ。音量は聴きやすいかな? ゴメンね~。これ使うの初めてなんだ」

 と、声は呑気に言う。確かに聴きやすくなった。が、姿は見えない。

 「あんた誰だ?」

 「あ、そうだね。ボクのことは『プレイヤー』とでも呼んでくれ。残念ながらボクはそこに行くことができないんだ。でもそうだね。どこから話しかけられているか分からないと君も不安だろうからアレを使ってみよう」

 プレイヤーと名乗る人物がそう言ってすぐに、どこからか宙に浮き細い腕が二本生えてる丸い物体が俺の前に現れた。スイカのように大きな球の真ん中に大きなガラス板があり、そこに線と点、丸で描かれた落書きのような顔がある。その顔がこちらを見ると手振りしながら喋る。

 「これでどうだい? 取り敢えずコイツをボクだと思ってくれればいい」

 その球体はそういうと、両手を上げくるりと回ってビシッと腰に…腰はないがその辺りに手を当て胸を張る仕草をする。

 「…これがプレイヤー…さん? あんたこんな姿してんの?」

 全く見たことのない空間と謎の浮く喋る球体に、頭が追い付かず驚くこともできないが、話はできるようなので少しは進展がありそうだ。この球体のことはプレイヤーと呼ぶことにする。

 「いやいや、これがボクの姿って訳じゃないよ。ボクはそことは違う場所にいて、そちらに行けないから、君が話しやすいように用意した道具だ。このように身振り手振りや表情でこちらの想いを伝えやすくしてるんだ。君らの世界で言うなら、『遠くの人と話をするための魔道具』だといえば分かりやすいかな?」

 「そんな魔道具聞いたこともねえよ」

 俺は呆れて言い返す。どんな物かは分かったが、街を出て他所の国や街に行ったことのない見識の狭い俺にとっては初耳な道具だった。

 「そうかい? 確かに世間には広まってないのかな……。あぁ、やっぱりあったよ。リズブレッドって女性が作ってその仲間が使ってるみたいだね」

 またあの人かよ! 確かにあの人なら遠くを見聞きするガラス板を作った超天才だから造ってそうだよな。てことは俺の見識は世界標準で良さそうだ。

 「リズさんのことを知ってるのか?」

 「知っていた、というよりは何時でも見ることができるって感じかな」

 それを聞いてもわんもわんと妄想しそうになる。なんて羨ましい…。

 「君は結構ゲスいねぇ。そういう意味じゃないよ。君達の世界の誰でも、過去から現在までのいつでも見れるって意味さ」

 プレイヤーは肩を竦め、やれやれって表情をする。俺のは当たり前の反応だろ。あんなエロいローブ姿を見た十七才が(ほとばし)らない訳がない。何がとは言わないが。ここでちょっと気になったことを聞いてみる。

 「さっきから俺達の世界って言ってるけど、プレイヤーさんは別の世界の人間なのか?」

 「あ、さんはいらないよ。そうだね。別の世界って言うとちょっと違うかな。人間かどうかも明言は避けておくよ」

 …分かったような分からないような。人間かも怪しくなってきた。

 「どうゆうことだ? 俺達の世界の他にもうひとつあんたらのいる世界があるってことじゃないのか?」

 異世界というので俺達が真っ先に頭に浮かぶのが『ゲート』の向こう側だ。プレイヤーはあちら側にいるのか?

 「君の言う『ゲート』は、ボクにとっては異世界でもなんでもないんだ。君達の世界の一部でしかない。そして異世界とは本来他の世界と交わることのない世界を指す言葉なんだ。その異世界達はボクが知るだけで数十万、数百万と存在しているんだ。君達の世界もその中のひとつだよ。ボクはそれらの外側にいると思ってくれれば分かりやすいかな」

 なんかちょくちょく俺の考えてることを読まれて話している気がするが、不都合はないしまあいい。

 イメージしてみると、沢山の世界が入った袋の中をプレイヤーが覗いて見てるって感じでいいだろうか。

 「そうそう、そんな感じだね」

 やはり読まれているらしい。

 「それで、ここは君だけを袋から取り出して、机の上の箱の中にでも入れたって感じだと思ってくれればいい」

 なるほど、イメージしやすいな。…ん? でも何で俺は取り出されたんだ?

 「おいおい、さっきの思い出したんじゃなかったかい? 呑気だなぁ君は。もう一度思い出してごらん。君がいた世界での最後の記憶を」

 ん~…と顎に手を当て首を捻り考えると、すぐに思い出した。

 「ああ! 俺死んじゃったんだっけ!」

 「すぐに…じゃなかったよ。ちょっと待ったぞ」

 プレイヤーは肩を落としため息を吐く。

 「正確には君はまだ死んでいない。ボクの気紛れでね。ちょっと来てもらったんだ」

 まだ死んでいないのか、良かった。は~と長いため息を吐くが状況が読めない。気紛れってことはここは死んだら誰もが通る天国の入り口って訳じゃないのか?

 「なかなか察しがいいね。君達の世界の人は死んでも残念ながら死後の世界なんてないよ。というと語弊があるかな。死後の世界がある異世界もあるけど、その世界で死んでも世界の外へは出ることはない。今回君をボクが摘まみ出したみたいにしないかぎりね。」

 「じゃなんで俺だけ摘まみ出されたんだ? できれば戻ってこれからも生きたいんだけど」

 俺達の本当の戦いはこれからだって誓いあったのに、あんなマヌケな最後だったなんて情けなすぎる。

 「そうっ! そこだったんだよ決め手は。ボクは君達の世界を退屈に見ていた。そろそろこれも見るの止めてもいいかなーと思っていた頃に君を見つけたんだ」

 そういうと口に手を当て肩を揺らして笑いを堪えるプレイヤー。

 ん…? なんか嫌な予感がする。

 「あのゴブリン相手に無双からの大演説! 久々に笑ったね。見る見る? 今ここで再生できるよ?」

 うがあぁ?! やっぱりアレだったのか! プレイヤーの落書き顔が消えてガラス板に戦闘中の俺が映る。大きく叫んでオーガに向かって突進している。

 「わっわっわあああっ?! 止めてくれ消してくれーっ!」

 俺はプレイヤーにすがり付きバンバンガラス板を叩く。本日二回目の黒歴史の瘡蓋(カサブタ)剥がしに真っ赤になりもう必死だ。死んでるのに心の傷が痛いなんてあんまりだ!

 「ゴメンゴメン、もう消したよ。でね、もう少し見てみるかって矢先に君は死んじゃったってわけ」

 ぜーぜー呼吸を荒くしながらしゃがみこんでいた俺は涙目の顔を上げ、プレイヤーを見る。

 「…つまり退屈していたところに面白い俺を見付けて興味を持った途端に死なれた、と」

 「そのとおり! いやーさっき言った数百万の異世界にも君ん所と酷似した世界が一杯あってね、剣と魔法の世界で、ハンターギルドや冒険者ギルドなんてものがあって、魔物がいて戦争があって英雄がいて……。そりゃもう目を瞑って石を投げても当たるくらいにわんさかあるわけなんだ」

 そうなのか。俺と同じように頑張って強くなろうとしてる人達が沢山いるって知って嬉しくなるけど、プレイヤーはそうではないらしい。

 「そりゃ細かいところを見れば違いはあるけどね。君の世界なんかベタ中のベタ。ベッタベタだよ。正直、見始めてすぐにゴミ箱にでも棄てようかと思ったくらいさ」

 俺達の世界ってそんな理由で棄てられる程どうでもいいのーっ?!

 「もううんざりってほどよく似た世界を見てきた。君がさっきイメージしたような袋に、似たような世界だけ詰めてゴミの日に出そうかって思うくらいさ」

 本当に酷い言われようだ。ゴミの日ってのが何なのか分からないが、悔しいので俺が今まで楽しかったことや、シーヴァの街の良さ。好きな食べ物やお気に入りの酒場なんてのを思い付く限り言ってやろうかと考えたが止めた。考えた時点でプレイヤーには伝わってそうだし、そんなものは彼にとってはさっき言ってた些事にすぎないだろう。

 「あ、誤解して欲しくないから言っとくけど、君が他の異世界含めて一番面白かったって訳じゃないからね。正直くだらない方にいつもなら入れてる。君より面白い子は一杯いたさ。あまりにもつまらない君の世界で君に偶然目が止まったからウケたってだけだから、そこはよろしく」

 俺はウケようとして生きてる訳じゃない。人生全力で本気だ。心外だ! とプレイヤーを睨み付ける。

 「まあまあ。ここからが本題なんだ。君にとってはいい話だと思うんだけどな。どうだい? 君の望み通りに生き返らせてあげようじゃないか」

 「おおっ! ホントかそんなことできるのか?  だったら…」

 と、続きをいいかけて思い止まる。俺だって伊達に貧民街の孤児院出身じゃあない。うまい話には裏がある。タダより高い物はない。なのてのは貧乏な子供が最初に教わる言葉だ。わざわざ死にかけの俺を拾い上げて何も要求無しに還そうって奴がいたならバカか底抜けのお人好しのどっちかだ。それともやっぱりコイツ、悪魔か魔王なんじゃないか? おとぎ話のそれらは、大抵引き換えに魂とか生け贄とかを要求してくる。どうせ考え読んでるんだろ? どうなんだよ。

 「ボクは悪魔じゃないよ。ましてや魔王でもね。魂だの生け贄だのなんて欲しくもないね。でもやっぱり君は鋭いな。そのとおり! 要求ならもちろんあるさ。でもその前にひとつ質問いいかい?」

 「ん? ああ、答えられることならな」

 「じゃあ聞くね。君の今回の敗北の理由とそれを解消できる力があるとしたら、それは何だと思う?」

 結構難しいこと聞いてきたな。そりゃ俺が弱いからだしアルフレイドさんみたいな力があれば何も怖くない。でも聞かれてるのはそんなことじゃないんだろうな。直接の死因はゴブリンの毒ナイフだろ? でもあのゴブリンをちゃんと仕留めていればあんなことにはなってないから、油断から? いやでも戦いの後に油断があったのは確かだけど、そもそもあそこに行くことを思い付かなかったら死ななかった訳で…。俺は色々考えてなんとか答えを出した。

 「答えは出たかい?」

 プレイヤーが聞いてくる。どうやら今回はこちらの頭の中は読まなかったみたいだ。

 「ああ。俺の敗北の理由はやはり油断だったと思う。もちろんあのゴブリン達との戦いで、他のCランクハンターのように一撃で殲滅できる力があれば、後になってあんな死に方はしなかった。でもそれはこれから強くなっていけば手に入る力だと信じたい。あと、ゴブリンロードの元に戻らなかった時のことも考えたけど、やっぱり注意力の足りなさで、これからも他の場所で同じような不意打ちや突発的な罠や事故なんかで死ぬ可能性は高いと思う。こうゆーのも修行や経験で高められるのかも知れないけれど、どんなに修行してもたった一度の油断や失敗で即死なんて類いの話だから、事前にそんな情報を感知できるスキルみたいな物があればいいのかな…と」

 ふんふんと頷きながら聞いているプレイヤー。

 「なるほどねぇ。つまり『危機探知スキル』って感じかな? 実に君らしい回答だと思うよ。そうだね。スキルって形なら色々と楽しめるかもしれないな。」

 楽しめる? 何をだろう。

 「ところで君の世界のスキルってどんな物か説明できるかい?」

 そう言われて、ええっと…と思い出しながら言ってみる。

 スキルには大きく分けてふたつあり、あらゆる職業の者が身に付けることのできるノーマルスキルと、ある一定の職のみでしか使えない専門スキルがある。ノーマルスキルには、例えば俺が使っている『ワイドスラッシュ』は片手剣を修練すれば使えるようになり、『ミラージュシールド』なら盾といった感じに、その武器や防具を修練すれば身に付くものと、レイセリアが使える『隠密』『鍵開け』『罠検知・解除』等のようにその行動を修練すれば身に付くものの二種類ある。どれもどんな職でも修得できるのだが、やはり職との相性というものがあり、例えばレイセリアが『ミラージュシールド』を修得したところで、素早さ身軽さと弓の扱いが重要な弓使いにとっては、重い盾が邪魔になり盾があると弓を引けないので、修得する意味がないってことになる。

 逆に俺が『隠密』『鍵開け』『罠検知・解除』のスキルを身に付けたとしても、どのスキルも身軽さと器用さが必要で、それなりの金属製の鎧や手甲を着けている俺は、ガチャガチャと動く度に音を立てるので『隠密』には向かないし、手甲の分厚い革手袋では繊細な作業には向かないので、とても使いこなせないって訳だ。

 もうひとつの職業専門のスキルというのは、神官であるメイフルーが使う神聖スキルがこれに当たる。他にも召喚士のチコさんの召喚スキルもそうかな。神聖スキルには強い神への信仰。召喚スキルには精霊との契約が必要になり、どちらも施行には魔力を差し出す必要がある。

 魔術師の魔法は魔術師自身の魔力のみをあらゆる事象に変化させて放つ、魔法学により人間が編み出した技術なのでスキルとは関係がないそうだが、魔術師が修得しやすいノーマルスキルもあり、『魔力増強』や『魔力自動回復』などがあるらしい。これらは魔力を使う職に限らず、鍛練さえすればどの職でも修得可能なのだそうだ。どの職にも上級スキルには魔力を使わないと使用できないものも多いらしい。

 そう、アルフレイドさんが使った極炎なんちゃらも炎に魔力が使われているはずだ。これらは大抵上級スキルに入るので、俺達のパーティはまだ誰も使えない。

 スキルは修得可能になると、脳内に閃きのようなイメージが湧く。その際に修得するかしないかの二択があり、『する』と念じると使用可能になるわけだが、どうやら修得可能数には上限があるみたいだ。自分の成長と共にスキル枠も増えるらしいが、個人差もあるようで、仕組みはまだ解明されていない。

 うっかり下らないスキルで枠を埋めてしまうと、後から欲しいスキルが修得可能になった時に、泣く泣く諦めるなんて話はハンターにはよくある。

 教会の司祭様にお布施を払いお祈りすれば、必要のないスキルを消すことができるが、そのスキルを再び得るには、一から修練が必要になるらしい。

 あと、スキルは『ワイドスラッシュ』等、一度使用すれば発動後に数秒の膠着時間が発生する。それに再度使用出来るようになるまでに数十秒から数分掛かる俗に言う『クールタイム』があるものと、『隠密』のようにいつでも使用できるし、使いっぱなしにもできるし、クールタイムもないものとの二つに別れる。

 強い力を発揮するものほど、長いクールタイムが必要になるみたいで、例えばトーツの『グランドシールド』は発動から三分間連続使用できるが、防御技なので膠着時間は無く、クールタイムは発動から十分という具合だ。

 レイセリアの『罠検知・解除』なんかは、さっき俺の言った『事前に情報を感知するスキル』ってのに少し当てはまるが、罠だけじゃなく色々知りたいし、罠解除もできなくていい。

 最後に、すべてのスキルは鍛練次第で強化されていく。スキルアップした時に脳裏に『スキル・○○が2にレベルアップしました』とメッセージが浮かぶ。すると今までよりもそのスキルは使いやすくなり、攻撃スキルならば速度・威力が上がり、クールタイムが少し短くなる。スキルそれぞれに上限はあるらしいが、それまでは使うほどに成長できるので、どのハンターも自己研鑽の為に鍛練は怠らない。

 「うん、その見識であっていると思うよ。さて、ボクが君に望む要求はね、君が望む力の修得をボクが手伝って上げること。君が無事に力を身に付ければボクが君を生き返らせてあげるよ。それでボクが何を得るのかって思ってるだろう? ボクは君の人生を見て楽しければそれでいいんだ。どうだい? 悪い条件じゃないだろ?」

 そう言ってプレイヤーは胸を張る。それだけでいいのか? まだ何かありそうな気がする…。

 「疑り深いなぁ君は。そうだねふたつほどあるかな。ひとつはこれまでただの『傍観者』だったボクが、君に関わったことで『プレイヤー』になれたこと。これは大きな変化で久々に興奮するね。後ひとつは、これはボクの気紛れで始まったということ。ボクが飽きるまでってのが最終的な条件かな」

 そういうプレイヤーに俺はドキッとする。もし途中で飽きたら俺達の世界もゴミ箱行きなのだろうか。

 「ああ、その心配はないよ。数百万ある異世界の中には本当にどうしようもなくつまらない世界が幾つもあったんだ。もう見返すつもりなんて更々ないけれど、一度も消したことはないよ。君がここに来る条件は、君が死にかけた時以外にも、ボクがちょっかいを出して引っ張って来ることもあるかもしれない。ボクがもし飽きたらその条件がなくなって、死にかけた君がそのまま死ぬだけ、ってことだね」

 条件は悪くなさそうだ。

 「分かった。その要求を飲むことにするよ。それでどうやって力を手に入れるんだ?」

 「君の望む力がある異世界へボクが入れてあげよう。あ、言葉が通じなかったり文字が読めないのは困るから、それくらいならボクが付けてあげるよ。あとは全て君次第だ。力を手に入れたらボクのことを念じてくれ。君の都合の良い時に引き揚げてあげるよ」

 最後に俺はこの一連の会話の中で気になっていたことを聞くことにする。

 「力を手に入れる、与えるってことでずっと気になっていたんだけど、アルフレイドさん達五人に力を与えたのプレイヤー、お前なのか?」

 「いいや、ボクが異世界人と接触したのは、今のところ唯一君だけだよ。彼等が力を手にしたのはあの世界の中だけの出来事だ」

 「あともうひとつ。俺が望む力がアルフレイドさん達みたいに強くなることだったら、プレイヤーは力を貸してくれたのか?」

 「ボクなら今すぐにでも、彼等と同等の力を君に授けることができるよ。君はそれを望むかい?」

 俺は間を置かず答える。

 「いいや。俺は望まない。トーツもアルフレイドさんに『自分で見付けろ』って言われたらしい。だったら俺達はパーティのみんなでそこに辿り着きたい」

 プレイヤーは腕を組み、大きく頷く。

「いい答えだ。そんな君だからボクは選んだんだ。それじゃ、準備はいいね?」

 「ああ、頼む。プレイヤー、ありがとう」

 「ふふっ。まだお礼は早いよ。じゃ頑張ってね」

 俺はプレイヤーに握手を求め、彼が少し照れた後、手を握り返してくれる。そして少し離れた俺を白い光が包んでいき、俺は意識をまた失った。

 はい、異世界転移しちゃいました。


 お気付きだと思いますが、本作は『異世界転生』『異世界転移』のキーワード設定にチェックをしていません。

 本作を書き始めるのにあたり、ガイドラインを読んだ結果、

 1 主人公が『現実世界』の人間ではない。

 2 『異世界』から『異世界』への転移であり、『現実世界』との関わりがない。

 3 六話まで『異世界転移』ものである事を伏せる為、ネタバレ防止として。


 以上の理由でキーワード設定を付けませんでした。


 次回から主人公マビァくんは、ひとり未知の世界で目的のスキルを求めて活動を始めます。

 次回は四月二十六日の正午です。

 宜しければ続きも読んで戴けると嬉しいです。

 宜しくお願い致します。

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