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五日目 コニスへの説明

 ロージルさんがモテモテな理由は分かる。コニスの言う通り、ほぼマイナス要素がないからだ。俺だって何回かこちらに向けられた微笑みには惹かれそうになったくらいだ。だから男達が次々と惚れていったのも無理はないだろう。


 俺が彼女に惚れなかったのは、早い段階でガラムさんに初恋してしまったことを知れたからだけど、もしロージルさんが恋心を発動させていなかったら、数日後には告って自滅していた可能性が少しはあったかもしれない。


 ロージルさんが男達の好意に気付けなかったのは、彼女の男性の好みがハッキリしていて、それ以外の男は恋愛対象外にしてしまっているからだろうと思う。そして彼女は相手からの告白を待つタイプではなく、自ら告白するタイプのようだ。

 それに合わせて自分がモテているとはまったく思っていないから、例えハッキリと告白されても「からかわないで下さい」と冗談として受け取っていたっぽい。相手の男が真剣に告っていたのなら可哀想とも言えるが、本来恋愛において、女性側にこそ相手を選ぶ権利があると俺は思っている。ほとんどの動物だってそうだろ? こちらの世界ではどうなんだろう?


 告る前に彼女の好みを探っておけば痛い目を見ることはなかったと思うのだが、そう上手くはいかないよな。



 「それで、先程の『感知した』話と、マビァさんの能力が嘘ってのはどう繋がるんですか?」


 コニスがお茶をテーブルに戻して聞いてくる。随分と胡散臭い物を見る目で俺を睨んでいる。


 「あぁ、その話だったな。俺達はロージルさんを身の危険から守る為に俺が持つ能力という名目で、あの場限り見せたってことにしなきゃいけなかったんだ。だから全然信じていないコニスには見てもらった方が早いかな?」


 と、俺はロージルさんの前に容器の入った包みをドンと置く。途端にボンッと赤面してモジモジしだすロージルさん。

 「おい」と俺に注意しようとするイルマさんを無視して言葉を続ける。


 「美味しかった。また今夜もお願いしたいってさ」

 「はうっ!」


 ガラムさんの感想にビクッと反応し、右手で左の二の腕を抱き、左拳は膝のミニスカートの裾をギュッと握り込んでプルプルと震える。シャツの合わせ目から見える抱き寄せた胸の谷間や、握りしめてたくし上がるミニスカートの太股が相変わらずエロ過ぎて目が釣られそうになるが、このパターンには大分慣れた。平常心で続ける。


 「うぁ…」とコニスが両手で顔を隠し、指の間から覗き見ながら小さく声を漏らした。少し顔が赤くなってる。以外とおぼこいなコイツ。


 「ちっ!」とイルマさんが舌打ちをし、懐から手鏡を引っ張り出そうとするが、結構大きな手鏡で引っ掛かっているのかなかなか出てこない。


 「あ、それと作ってくれたのがロージルさんだとアッサリバレたから」

 「あぁん!!」


 と扇情的な声を上げたロージルさんは、テーブルに突っ伏して「きゅぅ……♡」と動かなくなった。やっべぇまたやり過ぎた。なんか更に反応が強くなってる気がする。


 「くっ! 間に合わなかった……」


 手鏡をロージルさんに見せるのが間に合わなかったイルマさんが悔しげに呟く。


 「まったく君は! 物事には順序というものがあるだろう。こっちが動くのを待ったらどうだ」


 ソファーに座り直しながら俺を睨み付け叱るイルマさん。確かに急すぎたので大人しく謝る。


 「ごめんイルマさん。まさか更に過敏になってるとは思わなかったんだよ。それに今の反応じゃあ昇天するのを止められたとは思えないけど……」

 「昇天って……。殺すな」


 ふすーと煙を吹かしソファーに深く沈むイルマさん。だって『絶頂に達した』とか『イッちゃった』とかで表現するとエロく聞こえるじゃないか。


 「ふわぁ~。びっくりした……。これが昨日のえっちぃロージル先輩ですか。これはヤバい、ヤバすぎますよ」


 まだドキドキしているようで、赤い顔をして両手で胸を押さえるコニス。なかなか刺激が強かったようだ。


 「あんなの男には絶対に見せちゃダメですよ男達が『見たい見たい』って騒いでたのも分かりますいや見せた途端に襲われちゃいますよてゆーかマビァさんなんであれ見て無反応なんですか不能ですか男色ですか変態ですか!」


 首や手を振り振り一気にまくし立てるコニス。最終的に俺の悪口になってんじゃねーか。


 「何回も見たし、慣れてんだよ。それに見た目はああでもロージルさんにその気は一切ないんだからな。あと俺は不能でも男色でも変態でもねぇ」

 「あぁ……。まだドキドキする。今何がいったいどうなったんですか?」


 俺の返事など聞いた様子もなく、気持ちを落ち着かせたコニスは次の質問に移る。俺はロージルさんが恋をしていること、想いを募らせ過ぎて徐々に過敏になっていること、さっきの状態になっていても、本人は決して劣情を暴走させていないこと、昨日事務室の職員に見せてしまったのを誤魔化す為に、俺が集団催眠の様に夢を見せたことにして、イルマさんが俺に押し付けたことなどを話す。


 「この状態のロージル先輩を男達の前に引きずり出すなんて、どんな鬼畜ですか! もともとゲスい人だとは思ってましたが、変態! ちょっと離れて下さいよ!」


 座ったまま跳び跳ねて俺から距離を取るコニス。


 「悪かったと思ってるし反省もしたよ。でも仕方無かったんだよ。ロージルさん自分がエロく見えてるなんて自覚全然無かったんだからさ。ロージルさんにだってちゃんと謝って許してもらったんだ」

 「あたしも思い出すと腹が立ってくるが、ロージル本人に確実に自覚させる必要があった。遣り方は強引過ぎたが仕方ないと思っている。それに今こうやってあたしの作った嘘に付き合って、この子を守ろうとしてくれているんだ。マビァくんは色々とアレだが悪いヤツじゃないよ」


 アレとは何か気になるが、一応フォローしてくれるイルマさん。あの件に関しては謝るしかないので、コニスを宥めるイルマさんの気持ちがありがたい。


 「……イルマ先輩がそこまでいうなら……」


 じわりと座り直すコニス。こちらをジト目で睨んでくるが、お前の俺に対する評価は端からあまり気にしちゃいない。なのでちょいとつついてみる。


 「……でな、ここまでロージルさんが悪化した原因の一端には、お前にも責任あったりするわけだコニス」

 「…………は?」


 まさかここまでの流れで自分に飛び火が来るとは思わなかったであろうコニスが「何言ってんだコイツ」って顔をする。


 「お前、初対面の男には取り敢えず自分に惚れさせようとする性癖だか趣味だかがあるよな? あれってなんかスキル使ってんだろ?」

 「な……なんのことでせう」


 あからさまに顔色を悪くしたコニスが座ったまま俺からまた身体を遠ざけ目を逸らす。白状したようなもんじゃないか。


 「で、だ。ロージルさんは想い人が街のどこかでお前と接触でもしたら、粉かけられて誑し込まれるじゃないかと不安で不安で仕方がないんだよ。ちゃんと謝っとけ」

 「う……。ごめんなさい……。ってわたしまだ何もしてないじゃないですか! やってもない事で責められるなんて横暴ですよ! 濡れ衣です! 冤罪です!!」


 うっかり素直に謝ってしまう辺りがコイツの良いところなんだが、流石に騙されなかったか。ぷりぷりと怒りだすコニス。


 「ホントかぁ? お前が粉かけた男ってかなりの数がいるんだろ? その中にロージルさんの想い人がいないとは限らないじゃないか」

 「そ、それは……。…………うぅ~…………。分かりましたよ。ロージル先輩に確認したいですからイルマ先輩、起こしてもらってもいいですか?」


 言われたイルマさんはロージルさんの肩を揺すって起こす。

 ロージルさんが「う、う~ん……。わたくし、どうしたんでしょう?」と言いながら頭を振って身体を起こす。衝撃が強すぎたのか、それとも脳ミソが自己防衛の為に無かったことにしたのか分からないが、先程のことは覚えてないらしい。


 「マビァさん、出てってくれますか?」


 コニスが立ち上がり、俺を立たせようとグイグイ腕を引っ張るので素直に立ち上がる。


 「なんでだよ?」

 「わたしのスキルをマビァさんに知られたくないからですよ。ここまでの流れから察するに、『悪意を感知した』のはロージル先輩のスキルですよね? そしてロージル先輩と想い人さんの関係を私が邪魔するかもしれないっていうのなら、その問題は私とロージル先輩だけの問題です。マビァさん関係ないですよね? なんかどさくさに紛れて私のスキルを探ろうとしてたみたいですけど、そうはいきませんよ」


 ちっ、バレたか。


 「イルマ先輩も出来れば出てほしいんですが……」


 俺を扉の外に押し出しながら、コニスはイルマに聞く。少しぼーっとしてるロージルさんをちらりと見たイルマさんはすぐに拒否する。


 「いや、ダメだ。ロージルの情緒不安定っぷりを見ただろう。放っておけると思うか?」

 「……ですよねぇ。じゃあ私のスキルの事は絶対に誰にも話さないって約束してください」

 「あぁ分かった。約束しよう。悪いがマビァくん。しばらく他所で時間を潰してきてくれ」


 煙草を携帯灰皿に捨てて、こちらを軽く睨むイルマさん。確かに進め方が強引だったし、怒られても仕方がない。


 「分かりましたよ。ついでにさっき話した方も対策考えといて下さい」

 「ああ、勿論だ」

 「こっちは任せて下さい。上手く纏めますから。

 マビァさんは冒険者達相手になんかしてきて下さい。木製武器が届いてますから」


 そう言うとコニスに扉をピシャリと閉められた。

 まぁいいや。俺のここでの役割は頭脳労働じゃない。気持ちを切り替えて一階ロビーへと向かう。




 「おう! マビァさん待ってたぜ」


 階段を下りているとマッチューが声をかけてきた。オルティーガとガイヤーン、その他の冒険者達も十数人いるが、一昨日中庭にいた人数の半数にも満たない。


 「身体の具合はどうだ? 動けそうか?」


 ここにいる全員の顔を見渡しながら聞いてみる。皆苦笑いを漏らすがやる気はあるようだ。


 「あぁ、あんなに動いて走ったのはみんな初めてだったんでな。まだ身体中ガタピシいってて痛ぇけどやる気はあるぜ! 今ここに来れてない奴らにも声をかけたんだがな。まだ動けねぇみたいだった。

 俺ら全員、たかが筋肉痛に教会の癒しを受けられるほど稼げちゃいねぇし、冒険者の神官の手を煩わせるのも良くねぇからな。勘弁してやってくれねぇかな」


 申し訳なさそうに言うマッチュー。ここに来れていない連中も気にかけてるなんて、なかなかの親分肌じゃないか。みんなも慕っているようなので少し感心する。


 「それぞれのペースでやればいいんだよ。まだ訓練方法も確立しちゃいないんだからさ、焦る段階じゃあない。むしろ一昨日の持久走みたいな基礎練習の積み重ねが大事なんだ。途中で心が折れなきゃ誰でも強くなれるのは忘れないでくれ」


 何を偉そうにと思われるかもしれないが、全部自分に向けて言ってるつもりだ。それを聞いたみんなはホッと溜め息を吐く。それぞれパーティメンバーを残して来たりしているんだろう。自分だけが来た後ろめたさもあったのかもしれない。


 「今朝のタブカレ読んだなら分かってくれると思うけど、職員さん達はお疲れ気味なんだ。お前らが幻獣召喚を教わって交代で練習するなら試験場を使わせてもらえるように頼んでみるがどうする?」


 「オレそれやってみたい!」「俺も」「私も」と次々と声が上がる。結局全員そちらへ行くことになり、『黒い三連狩り』の三人もそっちに行こうとしてたので、それは引き止めた。


 「あんたら三人は中庭で木製武器を使っての訓練だ」


 そう聞くと三人は目を輝かせて喜ぶ。


 俺は受付カウンターに向かい、まず受付嬢に幻獣召喚の指導と試験場の使用許諾を頼み、冒険者達を送り出す。


 「まずは逃げずに防御することに専念しろ。それが恐怖に打ち勝つ一番の近道だからな。あと、午後から基礎練もやってほしいから魔力も体力も残しておけよ」


 と、少しだけアドバイスしておく。彼らの中には一昨日『黒い三連狩り』達と一緒に訓練した連中もいたから、要領は大体分かるだろう。



 次に木工ギルドから届いている木製武器を出してもらい、マッチューに両手斧、ガイヤーンに片手斧、オルティーガに両手剣を渡す。三人は新しいオモチャをもらった子供のようにはしゃいだ。最後に俺が片手剣を使うことにして中庭へと向かう。訓練に参加していない冒険者達が食堂のテーブルからこちらをチラチラ見て気にしているのが目に入った。


 やる気があるなら向こうからこちらにやってくるだろう。別に強制じゃないからそれまで放置だな。

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