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三日目 対幻獣召喚戦とワニ討伐の報酬

 「じゃAでいいや。どうせ少しの間だけだしな。街の出入りが楽になるならなんだっていい」

 なおざりに答える俺。あ~、でももしここで目的のスキルが手に入らなかったら、よその街や国に行って探さないといけないのか? そうなるとAランクなんて悪目立ちするかも……。ブツブツと考え呟きながら歩くと、立ち止まったコニスを追い越してしまう。

 「ん? どうした」

 振り向くとコニスはこちらを見つめていた。

 「……少しの間だけって、マビァさん、すぐ出ていっちゃうんですか?」

 「あぁ、俺は元々探し物があってこの街に寄ったからさ、ここまで色んな事に首を突っ込むつもりはなかったんだよな。手ぇ出した以上はそれなりに目処(めど)が立つまで手伝うけどさ、探し物が見つからなかったらよそを探さなきゃいけないし、見つかったら元いた場所へ帰らなきゃいけない。そんなに長くはいられないかな?」

 石鹸なんかのノウハウも持ち帰りたいから、スキルが手に入っても、もう少しは帰らないかもしれない。でもその場合、プレイヤーがいつまでこの世界での滞在を許してくれるのか分からないしな。

 それに数日ぶりの全力戦闘で少し火が着いちまった。こっちにいる間は強くなれそうにないから、早く元の世界に戻って、実戦や訓練で技を磨きたくってムズムズしている。

 「その……探してる物ってなんなんですか?」

 「スキルなんだ。こっちでなんて名前が付いているのか知らないんだけどさ……」

 コニスにも『危機探知スキル』の概要を説明する。やはりコニスには心当たりが無いようで「聞いた事もないです」と、口振りは残念そうだがどこか嬉しそうな声で答えた。

 「さ、急がないと皆さん待たせたままですから」

 と、俺の背中を両手で押して急かすコニス。確かに待たせてるのに少し話し込んだ。この後も予定が詰まってるんだから急がないと。


 試験場に入るとロージルさんとギルマス、記者が二人に職員が数名に冒険者らしき者が数名。あわせて十五人程が待っていた。上を見上げると観客席には見世物見物、宴会気分の何十人という職員や冒険者がこちらを見下ろしていた。

 「ありゃ。随分と待たせたかな? ごめんな。あ、ギルマス、そっちの具合はどうなんだ?」

 ギルマスは昨日の昼に会った時とは別人のように細くやつれていた。一体何があればそうなる?

 「市長達と話し合った結果、この国の各地のギルド支部で、過去数百年間でキマイリャの討伐履歴があるのかの確認が最優先で行われる事になりました。昼に各地に向けて伝令を出したところですから、数日は返答待ちですね。私は明日から王都の本部に向かい、返答を待ってまとめた結果を国王様へ上申。その後に謝罪文の作成に移る予定です」

 カスカスと言っていいほど、気力と体力と水分量が不足していそうで、声も掠れて力がない。だけど眼だけは力が宿っている気がする。

 「大丈夫? なんかかなりやつれてるように見えるけど」

 「ははははっ。お任せ下さい。『幻獣召喚』は私の生き甲斐ですからな! 大勢の召喚が必要とならば私が参加しない理由はないですな」

 そういえばこのおっさんとの初対面はこの試験場だった。その後ギルマスの部屋であった時と態度があまりにも違ったから驚いたもんだ。どうやら『幻獣召喚』の事になると、テンションが一段階上がるようだ。明日王都に発つのに体力は大丈夫なのか心配になり、ロージルさんに目を向けると「好きにやらせてやって下さい」という意味を込めた困り顔で頷いてくれた。

 「じゃあ早速お願いしようかな。ここに立ってるから俺の前に六頭とその後ろに五頭ほど出して、ターゲットは全部俺にしてくれ。クロエとハンセルさんは俺の後ろな。二メートル離れたところから逃げるなよ」

 「「ええぇーー?!」」

 ハンセルとクロエの悲鳴が重なった。あれぇ? そこ驚くところかよ。

 「な、ななななんで私達まで?!」

 「そっそうですよマビァさん! 普通は昨日みたいに上から見させてもらうんじゃ……」

 ハンセルが露骨に焦るところを初めて見たな。なんとか逃げれないか周りをキョロキョロ見渡している。クロエも葦原で言った事が冗談だと思っていたのか、急にカタカタと震えだした。

 「葦原で肉食ってる時に俺言ったよな。密猟者が出ないように、素人が手を出したらどうなるか記事にしてほしいって。あんな上から見てたんじゃ本当の恐怖が伝わる記事なんて書けるわけねーだろ? だから逃げるなよ? 守ってやるし、攻撃がそっちに行っても死にゃしないからさ。もし逃げたら俺があんたらより下がってワニとの間に挟んでやるからな」

 「ひぃ!」と小さく悲鳴を上げて竦み上がる記者達。そんなことする気はまぁないが、そう言っておけば逃げることもないだろう。

 そもそもここでさっきのワニワニ大混乱を再現しようと思ったのは、自分の剣と盾が帰ってきた今、さっきの防衛戦の見直しと、もっと有効的な体捌きが出来なかったのかを確認するためである。本物の魔獣でないから死ぬことのない低い難易度になるので、守る対象があった方が緊張感を保てるからと思い二人を後ろに立たせることにした。

 別に二人の記事で嫌な思いをした意趣返しのつもりで、ちょっと怖がらせてやろうなんて気持ちはこれっぽっちも無い。


 上でワニを出す準備が調ったようなので、俺も剣を抜き放つ。ガラムさんに整備してもらった剣と盾は、少しあったガタツキが無くなり輝きを増している。盾の裏側の革面も新しいものに張り替えられておりまるで新品のようだ。両方とも軽く振ってみるが以前よりバランスが良くなってる気がする。あ、お金払うの忘れてた。後でちゃんと払わなきゃ。


 「それではいきますぞ! 出でよバーンクロコダイル!!」


 ギリマスが召喚するのを皮切りに、職員や冒険者達によって次々と呼び出されるバーンクロコダイル。後ろの二人が震え上がるのを背中に感じながら構えると、魂を宿したワニの幻がこちらを睨み付け一斉に躍りかかってきた。


 取り敢えず先ほどの実戦の時と同じように、剣と盾でワニの攻撃を次々と捌き逸らせる。

 やはりここで借りたなまくら剣やすぐにベコベコになる盾と、自分の愛用の武具とでは防御力が段違いだ。

 剣には『劣化耐性』の付呪がされているので、折れるのを心配しながら防いでいたなまくら剣の時とは、動きや力加減が全然違うし精神的疲労もない。盾にも『硬度増強』と『衝撃吸収』の付呪が付いてる。ワニごときの攻撃では咬まれない限り凹んだりすることはないが、火炎や熱の耐性は無いので、前方奥から今まさに降り注ぐ五つの火球が本物だったら、受け続ければまた左腕が犠牲になる。今回は四十秒に一度しか使えない『ミラージュシールド』と『ミラージュバッシュ』、二十秒に一回の通常の『バッシュ』以外の火球の対処は、回避かワニの頭を打ち上げて盾にする事で防ぐようにした。


 三分ほど防衛を続けて、動きに慣れてきたので防御の見直しは終わりだ。攻撃に移ることにする。

 前衛のワニ達の動きは連携などあるはずもない。それぞれが思うままに咬み付きを繰り返すので、自然とワニからの攻撃が止む瞬間がある。それを先読みして一頭のワニの顎を盾で打ち上げ、ガラ空きの喉から心臓に向かって剣を突き入れる。血抜きや解体もしたし、紅月の突きも何回か見たので心臓の位置は完璧に把握した。一撃で光の粒子になって消える一頭のワニ。空いた隙間に後ろから一頭が入り込んでくる。後は同じことの繰返しだ。

 残り二頭になったので派手に〆る事にする。剣に『シャープシフト』、二頭の間に前傾姿勢で飛び込み、身体を三回転高速で捻り左右の敵を回転斬りで切り裂く。


 突進範囲斬撃スキル『スクリューライド』。


 前方と技後の隙が大きいスキルなので使い勝手が悪いが、シャープシフトと併用すると射程が倍になる強力な技だ。

 螺旋軌道を描く刃は左右の二頭の首から後ろを三度断ち斬り、光となってワニが消えると、地面には三つの斬撃の跡が残っていた。


 「ふぅ……。こんなもんかな」


 技後の硬直が解け、着地姿勢から立ち上がると剣を鞘に納める。チンッという剣の音がやけに大きく聞こえ、辺りがシンと静まり返っていることに気が付く。振り向くと後ろの記者達は座り込み、白目を向いて魂が抜けたように気絶している。あ~ぁ、と思いながら召喚台のみんなに目を向けると、みんなも呆然とこちらを見ている。他の観客達も言葉を失ったかのように黙ってこちらを見下ろしていた。

 「あの~、みなさん? 終わったんだけど……」

 「………」

 みんなのなんとも言えないジトッとした目で見返される俺。

 「な、なんだよ。俺、なんかおかしいことしたか?」

 「……マビァさん……」

 他の連中より一歩前に出て、ビシッと俺を指差すコニス。

 「マビァさんは強制的にSランク決定です!!」


 決定です!!……です……です……。


 と、コニスの声の木霊が響く中、他の連中もうんうんと頷いている。

 予想外の事を言われて呆けてしまった。後れ馳せながら脳にコニスの言葉が浸透して、何を言われたかやっと理解する。

 「なっ! なんでそうなるんだよ! Aが最高じゃなかったのかよ! Sランカーなんて嫌だぞ俺は!!」

 「ロージル先輩やクロエさんから話を聞いた内容では、マビァさんはめちゃくちゃ大怪我してなんとか生き残ったって感じでしたし、さっきマビァさんに聞いた時も十一頭を倒すのがやっとだったって言ってたじゃないですか! なのに今のアレはなんです? ものの数分で! 無傷で! 余裕で全部倒しちゃったじゃないですか! 実戦では手を抜いてた? いいえ、左腕を火傷でダメにしてまでやる理由がありません。何がどーなったらこんなに差が出るんですか!」

 大声で一気にまくし立てるコニス。

 その後ろで放心したギルマスを、

 「マスター、そろそろ休みましょうね~。明日に疲れが残りますよ~。あ、ほら足元気を付けないと。ほーらあんよがじょーず、あんよがじょーず」

 と、一人の職員が連れ出していく。

 まだ呼吸荒くはぁはぁ言ってるコニスに、いや他のみんなにも分かるように説明してやる。記者達も意識を戻したので、めんどくさいけどSランク阻止の為だ。

 「何が違うって、そりゃ二回目だからだよ。一回目で焦りや不慣れで失敗した防御方法や体捌きを、ここに来るまでの間に頭ん中で『あそこはあーするべきだった』とか『今度はこう動こう』と反省し続けていたんだ。それを二回目で実行に移しただけなんだよ。

 それに、ここで借りた武具と俺の愛用の武具じゃあ、性能に雲泥の差があるんだ。たとえ大きさや重さのバランスが似ていてもな。

 ここで借りた剣と盾はかなり脆かったから、壊れないように庇いながら、長く戦い続けられるように扱わなければならなかったが、俺の武具はそんなヤワじゃねぇ。大した業物じゃあないが、全力を出せてこその装備だからな。動きや被ダメージが違って当然なんだよ。

 つまり、経験値の差と武具の性能の差ってわけだ。分かったか?」

 言い終わった後、全員の顔を見渡す。職員や冒険者の中には納得のいっていないような顔をしている者もいるが、ロージルさんは「ふむ」と頷いた。一方後ろの記者達は何やら必死に書き留めている。


 「……マビァさんの仰いたい事は分かりました。つまりもう一度同じ戦いをここですれば、先程よりも早く上手に終わらせることが出来るというわけですね?」

 「お、おう。まあそうなるかな?」

 確かにさっきの二回目は序盤が様子見だったし、慣れるまでの時間もあった。三回目はもっとスキルを使って攻めるパターンを増やせば数分は縮められると思う。……しかし何でコニスがこの場を仕切ってんだ? ロージルさんの方が役職的には上だと思うが。当のロージルさんは薄い微笑みを湛えたままこちらのやり取りを見ている。


 「ではやはりマビァさんは、この国の冒険者、兵士、騎士の誰も持ち得ない戦力を有しており、また今後誰も到達できない境地に達しているものと思われます。よって我がギルドはSランク、いえ、特別枠としてSSランクに強制認定することと致します!」

 「ちょっと待てー?! さらに上に上がってんじゃねーか! ふざけんじゃねー!!」

 今後も含めて今の俺がこの国最強だと? 冗談じゃない。

 「詳しくは言えんが、元いた場所じゃ俺なんて下から数えた方が早いくらい弱かったんだよ。俺が戦い始めて七年だ。この国の奴らだってそれくらいやってりゃ同じくらいの強さにはなる筈だぞ!」

 「……マビァさんで弱いなんて、どこの国のどの地域の話ですか?」

 う……、不味い。つい口走ってしまったが、元の世界の事を臭わす話はするべきじゃなかった。俺が異世界人だとバレれば、今頑張り始めている冒険者達が「やはり特別だった。自分達とは違う」と努力を放り投げかねない。

 「いや、その、だからな。それは俺の口からは言えないんだよ」

 「……ふ~~ん? じゃあそれはどうでもいいですよ。現状この国の中での冒険者登録になりますし、ギルドは国ごとに管理されているので、よその国でマビァさんがCランクだろうと関係ありません。もし他の国での冒険者ギルドのタグなり、身分証なりをお持ちでしたら提示してください。登録元に確認すればマビァさんのご希望通りにCランクで登録することも可能かもしれませんが、場所によっては確認だけで何ヵ月もかかるかもしれませんよ?」

 「う……」

 確かに俺の服の中には、首からぶら下げた元の世界のハンター登録カードがある。もちろん見せるわけにはいかないが。仕方ない。これ以上ごねても時間の無駄だ。

 「分かったよもう。SでもSSでも好きなの付けてくれ」

 「はい! ご理解ありがとうございます」

 嬉しそうにコニスマイルで返すコニス。初めてこの娘にやり込まれてしまったかもしれない。



 取り敢えず、この場は解散となった。後でギルドタグとやらの使い方の説明をするので受付まで来てくれとコニスに指示されたので、先に記者達に話を聞くことにする。

 「で、どうだ? 今回俺達はワニをまだ狩る気はなかったのに、小動物一匹を間違って死なせてしまっただけで、今見てもらったような状態になったんだ。今の再現は俺一人だったからワニの数も少なめだったけど、本当は今の三倍の数に襲われてたんだぜ? それは討伐総数が二十四頭って事からも分かってもらえると思う。

 素人が密猟なんてしようとしたら、どうなるか分かるよな?」

 未だ青い顔をして必死に書き留めている二人に声をかけると、二人揃ってビクッと肩を跳ねさせる。

 「は、はい。自分一人でしたら一口で食べられるか、火の玉に焼かれて死んでますね」

 「一息で死ねりゃいいですが、数匹に食い千切られちゃ堪んないですな」

 「ハンセルさん、怖い想像しないで下さいよ~」

 またもや腰砕けでしゃがみこむクロエ。こりゃ当分夢に見るかもな。

 「いや、実際私は始まった瞬間にマビァさんがそうなると思ってしまいましたよ。マビァさん、やはりここでの事を大袈裟にでも書かなければ、密猟の抑止にはならないかもしれません。SSランカーとして派手に書かせて戴きますよ?」

 ニヤリと笑って肩を竦めるハンセル。好き勝手に書かせたら怖いものがあるが、この際仕方がないので了承する。

 「どう控え目に書いたとしても、読む側は大袈裟に感じそうですねぇ……」

 やれやれ、と立ち上がり少し手帳に書き加えると、ハンセルに続いてクロエも帰っていく。今日は書くことがてんこ盛りだろうな。朝の出版に間に合うのだろうか。

 


 俺も移動しようと出口に向かうとロージルさんが待っていた。

 「マビァさん、これからどうされますか?」

 「着替えが一式なくなっちまったからね。もう夕刻になるし、服屋が閉まる前に買い足しに行ってくるよ。その足で木工ギルドに行ってみるかな?」

 「では、少し現金の方をご用立て致しましょうか? 実はマビァさんへのバーンクロコダイルの討伐報酬がまあまあありまして」

 「ああ、ちょっと足せるとありがたいかな? ガラムさんに武具の修理代払いたいんだけど、まだこちらの貨幣価値に慣れてないからいくらかかるか分かんなくてさ。で、いくらくらいになったの?」

 元の世界だとメンテには大体ニ万五千チル、大銀貨二枚銀貨五枚くらいだった。手持ちに大銀貨も金貨もあるから足りないことはないだろうけど、今回は服も多めに買っときたいから、どれくらい使うか分からない。

 「金貨十三枚と大銀貨二枚で、百三十ニ万カルダになります」

 思わず「ぶっ!」と吹き出してしまう。

 「あ、これはバーンクロコダイル十一頭の討伐報酬だけでして、素材の買い取りを含めますと総額三百八十五万カルダになります」

 カクンと開いた口が収まらなくなった。一回の戦闘の稼ぎがそこまで高額になった事は、元の世界でパーティで狩りをしている時でもない。数日前の『ゲート防衛戦』の強制参加報酬だって五人パーティで金貨四百枚ぐらいだったはずだ。それでも一人当たり八十万チルなので、準備にかかった経費と防衛後の装備のメンテや買い直しを考えると赤字になるのだが、独り占め出来るならそれなりの高額だ。死にかけたにしちゃ安過ぎるくらいだけど。

 こっちでだって安い額ではないだろう。ウェルの宿『翡翠のギャロピス亭』だって一泊七千カルダだったんだ。えっと…………分かんないけど一年半は泊まれるんじゃないか?

 「ち、ちょっと待った。さすがにその額はおかしくはない?」

 「これでも魔獣のランク見直しで報酬の減額はされているんですよ。以前は一頭につき二十万カルダでしたから」

 「でも、確か俺が最初に貰った金額は金貨一枚と大銀貨六枚だったような……」

 「それはマビァさんがまだ冒険者登録をされていなかったことと、依頼を受けてからの討伐ではなかったこと。それに戦って倒したのではなく、たまたま死体を見つけて素材を持ってきただけの可能性もあったことから、討伐代金の半額、金貨一枚になったんですね。残りの大銀貨六枚は半分以上はジェムの代金で他が素材代になります」

 あれはそんな内訳だったのか。いやいやそうじゃなくて。

 「でも、今回のは土木ギルドやナン教授、クロブや紅月だって戦ったんだ。確かに俺がとどめを刺したのは十一頭だけどさ、それを丸々貰うってのもなんか違わない? 街までの輸送費の支払いだって、あれだけ荷馬車を手配したなら経費も高くついただろうし」

 「今回はワニ皮が大量に手に入りましたから、買い取り額を大幅に安く見積もってあります。その浮いたお金で輸送費を支払ってもお釣りがくるので問題ありませんよ」

 うーんなんか釈然としないなぁ。元々金勘定や計算は苦手なんだ。耳からプスプスと煙が出そうになる。

 「ウェルザニア氏からも十一頭分は丸々受け取ってもらうようにと言付かっております。まだお肉の価格が決まっていないので、ウェルザニア商会が全て無料で引き取る事になりました。この先複数の商会とギルドで構成されるワニ専用ギルドが創立されると、ウェルザニア商会も買い取り額を支払う事になるので、ワニ一頭の金額は更に上がります。もちろん安全に捕獲できるようになれば話は別ですけど。

 最前線で命張った報酬にしては安過ぎるくらいだから受け取ってくれ。との事ですよ。わたくしもそう思います」

 頬を染めニッコリと微笑むロージルさん。これは断り切れないかなぁ。

 「分かりましたよ。でも全部貰っても重過ぎて動けなくなるから、殆どを預かって貰ってもいいかな? この街にいる間は殆どウェルに養ってもらってるようなもんだからさ、このあと使う以外には金ってあまり必要ないんだよね。手持ちに金貨もあるし大銀貨も少しあるから、大銀貨を足すだけでいいと思うんだ」

 「かしこまりました。では受付までお届け致しますね」

 そう言い、綺麗なお辞儀をして下がっていくロージルさん。やれやれ、いらんところで疲れた。

 窓から射し込む陽射しが夕暮れの色に近付いている。早くコニスをやっつけないと買い物に行けなくなるな。

 今日は走ってばかりだと脳内で愚痴りながら受付へと急いだ。


 次回は二月七日(日)の正午に更新予定です。


 よろしければまたお付き合い下さいませm(_ _)m

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