六日目 話の続きと、翡翠のギャロピス亭へ(眠い)
「それで……その……、ロージルさんは結局どうなったんだ?」
「あぁ! そうだった」
すっかり話が逸れてしまった。えぇと、どこまで話してたっけ?
「そうそう、俺が遅れて弁当箱を届けて、ロージルさんが包みを開いたら手紙があって、それを読み終わった途端にまた気絶しちゃったんだよ」
「な……、大丈夫だったのか……?」
自分が書いた手紙を読んで相手が気絶したと聞いて、顔色を悪くして狼狽えるガラムさん。
いや、今のは俺の言い方が悪かった。でもさっきロージルさんの醜態をなんでもガラムさんに話し過ぎててイルマさんに怒られたばかりだし、ちゃんと言葉を選ばないと。
「ゴメン、言い方悪かった。ガラムさんの手紙のせいじゃないと思うよ。なんだか幸せそうな寝顔だったし、疲労と寝不足が限界だったみたいだし、多分手紙を読んで安心したからじゃないかな?」
「そうか……。だったらいいが」
とは言いつつも、あまり安心したように見えないガラムさんの挙動。そわそわと手に持った工具を弄んでいる。
「あー、それで、ロージルさんをベッドに寝かせて、状況把握のために俺とイルマさんで手紙を読ませてもらったんだ。勝手なことしてゴメン」
「あぁ、それはいい。別に疚しいことは書いていないしな。お前が読むことになるかもとは思っていたんだ」
おお、さすがは大人の対応だ。俺だったら他人に読まれると恥ずかしいと思った文章でも、ガラムさんは平気だったみたいだ。人生経験の差か。
「それで、明日の晩飯の用意を多分できるって言ったのは、ロージルさんが目覚めてからの様子を見ないとなんとも言えないって話でさ……」
現状のロージルさんの状態について説明しておく。日に日にガラムさんへの想いが募り、明日職場に出すことも躊躇われる状態になっていること。『無自覚痴女化』は、正午に鳴り響く『鐘』が原因であったと判明したこと。その症状を取り除くために地下遺跡で知り合った古代文明産のリムスに招かれ、明日ロージルさんを地下遺跡に連れていくことを話す。
昨日と今日で状況が一変して、さすがのガラムさんも目を見張る。
「そんなことが今日一日で起こったのか? とんでもない状況の変化だな」
「侯爵様達も歴史に残る日だって騒いでたよ」
俺がそう言うと、ガラムさんは少し顔を曇らせ、「……そうだな」と呟いた。ん? と表情の変化を訝しんでいると、ガラムさんはこちらを見て話を変える。
「ロージルさんのソレは一度も見ていないからなんとも言えんが、無くせるのなら助かるな。面と向かって話もできなかったから。もっとも仕事に集中したい日々だったから、そんなこと言える立場じゃないけどな」
「ロージルさんと比べるのもなんだけど、ガラムさんは随分と冷静なんだね。もうどうするか決めてるってこと?」
「いや、そうじゃない。ただ俺だってこの歳まで女が居なかったわけじゃないってだけだ。もっとも捨てられた身だけどな」
「ほほう」
そう言って苦笑するガラムさん。期待を込めた眼差しで見つめていると、渋々ながらも過去の話を語ってくれた。なんでも二十代頭まで二年ほど同棲していた女性が居たらしい。ちょうどその頃、仕事で次々と新しい技術を身に付けたガラムさんは、仕事に熱中するあまりに彼女さんをほったらかし過ぎて愛想を尽かされ、出て行かれたそうだ。
「ロージルさんはそんな俺のことをなんにも知らない。聞けば幻滅して目が醒めるかもしれない。俺だってロージルさんのことはほとんど知らないんだ。初恋なんてのは大抵の場合は気の迷いや思い込みだって言うしな。もし彼女の一時の気の迷いなら俺なんかが受け入れていい話じゃないとは思ってる。だからちゃんと話すことが必要がなんだ」
なるほどと頷く。ちゃんとロージルさんのことを考えていて、さすが大人だなぁと感心した。
「しかし、古代文明の喋る機械か……」
「? リムスがどうかした?」
「ん……ちょっとな。……マビァ、領主に取り次いでもらうことはできるか?」
「そりゃまぁ、明日遺跡に潜った後なら多分大丈夫だと思うけど。何時になるか分かんないよ?」
「それでもいい。伝えておいた方がいいかもしれない話がある。明日、仮眠をとっているかもしれんが、勝手に上がって叩き起こしてくれればいい」
雰囲気からしてあまり良い話ではなさそうだけど、なんだろう? 了解して、取り敢えず今日はもう話すべきことがないか思い返して、特にないのでガラムさんと別れて宿へと戻ることにする。
『翡翠のギャロピス亭』に戻ったのが九時少し前だった。いつも通りにシェルツさんとフェネリさんがカウンターで迎えてくれる。
「お帰りなさいませマビァ様。お着替えをこちらに準備しております。ポーチと武器はこちらでお預りしておきますので、直接浴室へお向かい下さいませ」
カウンターにスッと差し出される着替え。フェネリさんは控えめだけど綺麗な笑顔だ。そんなフェネリさんを見てシェルツさんがため息を吐いてゆっくり首を振る。
「フェネリ、マビァ様たってのお願いで貴女への厳罰は取り消しとされているのです。忘れてはなりませんよ」
「重々承知しております」
恭しくシェルツさんに礼をするフェネリさん。俺は二人を「まぁまぁ」と宥めて、腰のポーチとハチェットを取り外す。
「マビァ様、お食事はいかがいたしましょう? まだご用意できますが」
「ん~、食えないわけじゃないんだけど、疲れの方が強いから食いながら寝そうなんだよね。風呂でもまぁそうなんだけど、頑張って早めに出てすぐ寝たいから、明日朝たっぷり食わせてもらうよ」
腹を摩りながら考え言う。コーヒーの頭スッキリ効果が切れてきたみたいで、徐々に眠たくなってきている。急がないと部屋まで辿り着けそうもない。
腰の物を預け着替えを受け取ると、急ぎ大浴場へと向かった。
大浴場の脱衣室へ近付くだけで、中が賑わっているのが分かった。楽しそうな子供の声や談笑する大人達の声、盛大に湯が流れる音や、かこーんと盥が床を打つ音が反響して聞こえてくる。こりゃあまり湯に浸かっていられそうにないかなと、脱衣室の扉を開けた。
小さな子供二人が裸で楽しそうに走り回っていて、大人も数名、これから浴場に向かう者、着替えてもう出る者、中休みでもしてるのか裸に腰巻きタオルて長椅子に腰掛けて、冷たい飲み物を飲みながら団扇で扇いでいる者などなど、過ごし方は様々だ。
「こら、遊んでないで早く服を着なさい」
父親らしい一人の大人に叱られた子供達は、ぴたりと遊ぶのを止めて「はーい」とそちらへと駆け寄り身体を拭き始める。小さいのにちゃんとしたお子さん達だ。籠を取りながら微笑ましく感じた。
脱いだ衣服を籠に入れ、棚の空いているスペースを探して置く。浴場への扉に手をかけると、「おい、君」と後ろから声を掛けられる。振り向くと長椅子で涼んでいた男がこちらを見ていた。
「なんですか?」
「今は入らん方がいいぞ。碌なことにならん」
やめとけやめとけと手を振る男。なんで? と首を傾げて他の方に目を向けると、誰もがこちらをチラリと見て首を横に振った。どうやら迷惑な連中でも居るらしい。
「ん~……、でも今入らないと、もう寝ちゃいそうなんですよね」
「そうか。いや、無理に止める気はないんだ。忠告はしたからな」
小さく溜め息を吐く男に礼を言って、浴場への扉を開ける。
浴場は思った以上に賑わっていた。子供がやたらと多いのだ。三歳くらいから十歳くらいまでと年齢も様々で子供だけで八人は居て、大人は五人しか居なかった。
ガキどもはモコモコの泡だらけになって洗ってんのか遊んでんだか分からない奴らや、シャンプーを身体に塗って腹や尻で床を滑ってる奴ら。浴槽にオモチャを持ち込んで遊んでるのも居るし、大きい浴槽で泳いでいる奴も居た。まぁ小さな子供にとってこんなに広い風呂場は最高の遊び場に思えるだろう。ちぃと躾がなってない気がするが。
一緒に居るのが親達なのか、二人のおっさんが酒瓶を風呂にまで持ち込み、瓶から直飲みしながら大声で談笑していた。どうにも品がないように見える。孤児院育ちの俺から見てもそう感じるのだからよっぽどだ。
他の大人三人は、そんな親子達を不快に感じていたのだろう。顔をしかめながら堪えているようだ。他の子供達が悪戯でバシャバシャと湯を掛けたり、頭を洗っていて目が見えないのをいいことに、後ろから冷たい水を盥でぶっかけたり、シャワーで泡を流している上からシャンプー液を垂らしたりして、キャッキャと喜び騒いでいたからだ。さすがに堪えかねたらしく、しかし親が叱りもしないので、子供に怒りをぶつけるよりかかわり合いにならないことを選んだのか、三人ともそそくさと出ていった。
それを見て、子供達は喜んで大騒ぎだ。
このクソガキども。どれだけ質悪いんだよ……。まるで元の世界のグレムリンかインプのようだ。
親らしき二人に目を向けると、度を過ぎた子供の遊び方や悪戯を叱るどころか、ニヤニヤ笑って煽っている。ここ『翡翠のギャロピス亭』は決して安い宿ではない筈なのに、この宿の品格にこの客達は相応しくないんじゃないか?
これもタダ飯で釣った祭りの弊害かと感じながら、洗い場でさっさと身体を洗い始めた。
親二人がこちらをジロリと睨んで舌打ちをすると、すぐに悪ガキどもが新参者の俺に目を付ける。多分こちらがシャンプーで頭を洗い出したら悪戯を仕掛けてくるつもりかな? と、泡々になりながら正面の鏡でガキどもの位置を確認する。すると、一番年上っぽい十歳くらいの男の子が偉そうに話しかけてきた。
「お前さぁ、見てわかんねーの? ここは僕達の貸し切りなんだよ。なんで無視して勝手に身体を洗い出してんだよ」
ふんぞり返って嘲るように見下して言う十歳児。一番年上が堂々と文句を言えたもんだから、他のチビッ子たちも、まるで闇ギルドのチンピラのように俺を囲い出す。それぞれが濡らして捻ってこん棒状にしたタオルで、空いた手をペチペチ叩いたり、肩をトントン叩いてニヤニヤ見下してくる。
やっべぇ……、いきがるチビッ子って生意気で面白すぎて笑いが込み上げてくる。
俺が居た孤児院でも、少し大きくなって入ってきた子の中には、いきがって子供達をシメて頭をとってやろうとするヤツが何人かいた。しかし、孤児院育ちを舐めてはいけない。十二で孤児院から出されるまでに個々の素質に合った最低限の学力と技能を身に付けなければ、その後生きてはいけないのだ。
頭が悪く身体を動かすのと元気だけが取り柄だった俺みたいなのはハンターになるしかなく、三歳からは家事手伝い、五歳からは畑仕事の手伝いや薪拾いで日銭を稼ぎ、十歳からは養成学校に通い簡単な採取や魔物討伐で働き始めていた。孤児院に入れられるまで親元でぬくぬくと育ったヤツなど、例え年上だろうが返り討ちにしてやってたもんだ。このガキどもがなんでこんなにいきがれるのか分からんが、滑稽すぎて笑ってしまう。
「おいおい、こいつブルッてんじゃねーか。ションベンちびってんじゃねー?」
笑いを堪えてプルプルしていると、ビビって震えていると勘違いしたのか煽ってくる十歳児。ヤツの言葉に合わせて他のチビッ子が嘲笑う。
大人のチンピラならともかく、どんな育ち方したらこの歳で『チンピラリーダーとその取り巻き』みたいな一セットが仕上がるのだろう? 腹が立つとかよりそっちの方が気になった。
「ゴホン……、あー、いつからお前らの貸し切りになったって? フロントでは何も言われなかったし、入り口にも何も書いてなかったぞ?」
笑いを誤魔化すために一つ咳払いをし、十歳児の目を見返して聞いてみる。ヤツが思っていた以上に俺が落ち着いていたからか、目が合っただけで一歩下がる十歳児。
「そ、そんなのなくていーんだよ! 僕達はフン……マスキッテファミリーなんだ! あのマスキッテファミリーだぞ!? 僕達が占領したらどこだって僕達の貸し切りになるんだ! わかったら早く出ていけ!」
「プッ なんだよそのマスなんたらファミリーって。知るかそんな名前の一族なんか。チンピラグループかなんかか? そんなお子ちゃまの理屈が通るわけねーだろ。アホか」
「な、ななな……」
クソガキどもは罵られた怒りにかっとなってタオルのこん棒を振り上げるが、何故かみんな殴ってこずにそれぞれ口汚く俺を罵り始めた。まぁ語彙力がないので、「バーカバーカッ!」とか「ウンコたれー!」とかしか言えてない。
あぁなるほど、これが『調和』の効果なのか? こんな自制心の育ってない幼い子供が、怒りに任せて殴ってくるところが、人を罵るだけに止まっている。『調和』の効果を確認するには子供は最適かもしれない。
しかし悪戯は止められていないのはさっき見た通りだ。俺がシャンプー液を手に伸ばし、頭を洗い出したら「今だ、やれ!」と十歳児の声が聞こえた。
水でもぶっかけられたら冷たいし嫌なので、スキル『威圧』を強めに発動。周囲でバタバタと倒れる音がして、岩肌を流れ落ちるお湯の音とワシャワシャと頭を洗うだけが聞こえてくるようになり、静かになった。
「…………な、なに?」
「ど、どうしたムストン、カルティオ、グルデクス……」
間抜けにもかなり反応が遅れて親二人がザバァと湯船で立ち上がる音が聞こえてくる。長々と名前を呼び出したのを無視して、シャワーで泡を洗い流す。倒れたガキどもが被るかもしれんけど無視無視。
「き、貴様が何かしたのか?」
「スキルの『威圧』だよ。うるせーしなんかされたら嫌だから黙らせただけだ」
キュッとシャワーのレバーを閉めて、タオルで頭を拭きながら答えてやる。
『威圧』は範囲と強弱をある程度調整でき、有効半径はゼロ~十メートル。標的数が少ないほど有効半径は広く、弱い相手ほどよく効く。また、相手が強い場合でもこちらへと注意を引かせることができるので、仲間が狙われた時などにも有効だ。
今回のように前以外の周囲を固められてても、短距離で強めにぶちかませば、軟弱な悪ガキの八人程度なら目を瞑っていても恐怖で意識を刈り取れる。
周りを見渡すと、ガキどもはそれぞれに、泡を吹いて白眼を剥いてたり、失禁してたりしてはいたが、倒れた際に硬い床で頭を打って流血とかはしていないようだ。タンコブぐらいはできたかもしれないけど。
「ま、上出来だろ」
「お、おい! 待て、うちの子達になんてことをしてくれたんだ!」
「うちのファミリーにこんなことをしておいて、ただで済むと思っているのか!」
立ち上がり薬湯の浴場へ歩き出すと、親二人が及び腰ながらもこちらへと近寄りながら言い掛かりをつけてくる。
「ふぁ……ぁ~ぅ……。だから知るかっての。どうせ田舎のマフィアかチンピラかなんかだろ?」
さすがに眠くなってきた。大あくびをしながら親二人を適当にあしらい、薬湯に浸かって身体のあちこちを揉みほぐす。あぁ……ちょっと痛いけどすっげぇ気持ちいい……。もう頭があんまり回らなくなってきてる。
「バカにするな! 俺達をそんな下賤な連中と一緒にするな! 我らがフ……マスキッテファミリーは栄光あるマスキッテ伯爵家の──」
「うるせぇ」
せっかくの至福の時を邪魔されてムカついたので、屈んで子供達の様子を気にしながら睨んでくる親二人にとびきり強い『威圧』を叩き付ける。
二人は「ひぃ!?」と硬直したあと、崩れ落ちて子供達に被さるように倒れ、気を失った。
「やっと静かになった」
んん~っと身体中の筋や腱を伸ばし、ゆっくり弛緩して湯船に漂う。あぁ、このまま眠ってしまいたい……。
「……ビァ様、マビァ様……」
「あ……あれ? シェルツさん?」
一瞬のまどろみだったようにも感じるし、しばらく寝ていたようにも思える。名を呼ばれて目を開けば、目の前にシェルツさんが湯船の縁に手を突いてこちらを覗き込んでいた。
「……あー、また俺寝ちゃってたんだ。今何時ですか?」
「マビァ様が戻られて浴室へと向かわれてから、まだ十五分も経っていませんよ」
上体を起こして辺りを見渡すと、裸のまま気を失って倒れている親子達を介抱?(ただ単に並べて寝かしたままシャワーで洗い流してるようにも見える)している数人の男性スタッフの姿が見えた。
「先にここを出られたお客様が、この者達が浴室を独占するような横暴な振る舞いをしていたことを教えて下さいました。マビァ様が浴室に入ってすぐにこの者達の剣幕の激しさが増したので、慌ててフロントまでお伝え下さったのです」
あぁ、俺に忠告してくれたあのおっさんかな?
「当宿は、他のお客様に迷惑を掛けるような横暴な者をお客様として認めるわけにはまいりません。お話を聞いてすぐに捕縛に向かったのですが……」
後ろの寝かされた親子達を振り返り見て、肩を竦めて苦笑するシェルツさん。
「マビァ様がなにかなさったのでしょう? 多少頭を打った者も居るようですが、ほぼ無傷で抵抗されることもなく捕縛できそうです。手間が大きく省けました。ご協力ありがとうございます」
「やめてよ、こっちはゴチャゴチャうるさいのが腹立ったから黙らせただけなんだからさ」
頭を深く下げてお辞儀をするシェルツさんを慌てて止める。お礼を言われるようなことはやってない。
「で、なんだったんですコイツら? マスカイタ伯爵だっけか? とかなんとか言ってたけど」
「ンンッ……ゴホッ、失礼しました。この者達の取り調べをこれから行います。詳しいことが分かりましたらオーナーからお話があるでしょう。今日はもうお休み下さいませ。今日この街で最もお疲れなのはマビァ様なのですから」
確かにもうフラフラだ。シェルツさんに促されて脱衣室に出てのそのそと着替え、外へ出るとフェネリさんが待っていた。一人で歩けるけどフラフラな俺を部屋まで送るために待ってくれていたらしい。途中で行き倒れたらその場で寝てしまいそうなので、ありがたく送ってもらうことにする。
部屋に戻るとフェネリさんが手早く冷たい水をコップ一杯用意してくれるので、一息で飲み干してベッドに倒れこむ。その際のフェネリさんの動きが見事だった。俺が倒れる動きに合わせて毛布をバッと跳ね上げ、ふわりと滞空する間にサンダルを脱がせて、倒れる勢いを利用してくるりと仰向けにされた。そこに毛布がゆっくりと降りてきて、首から下に被さる。
「一応、朝八時半に目覚まし時計を設定しておきますね」
「……うん、ありがと……」
意識が遠退く中でなんとか返事を返すと、「お休みなさいませ、マビァ様」とフェネリさんの優しい声が聞こえた気がした。
やっと六日目の終了です。




