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六日目 リムスがスキルを抜いた理由と本来の目的

 「スキルオークション?」

 【はい、ゲーム参加者のコア・ハンターはゲーム中に披露した攻撃系スキルや技能系スキルを観客のアエレフィー人達に売ることができます。買い手はオークション形式で入札し最高額の入札者が落札致します】

 「なんと、古代人はスキルの売り買いをしていたのか。技能系というのは常時または任意に拘わらずスキル使用時に発光現象のない、外観から分からないスキルのことか? 例えば『獣使い』のような」


 俺の『夜目』や『熱源感知』もそうか。これらはクールタイムも硬直もないし、いつでも使えるしいつでも止められる。

 ちなみに外観から分かるのは攻撃系スキルで赤く発光したりするのを指す。俺の『威圧』はどうなんだろうな? どこも発光はしないけどクールタイムはあるし使い続ければ疲れもするんだよな。


 【はい、ゲーム参加者は我がスキャンを行いますので、所持スキルは全て把握可能です。『獣使い』のようなレアスキルは研究好きなアエレフィー人にとっては垂涎のスキルになります】


 映像ではチャラいのが一人のコア・ハンターを前に出し、オークションに出すスキルを口にする。

 彼は確か剣で戦ってたな。と思い出しているとスキルを実演してみせた。


 片手剣突きスキル『ギムレット』と大きく文字が映し出される。


 右足を引いて腰を落とし、右腕を後ろに突きの構えで引き絞ると同時に後ろの右足へ体重移動、左足が宙に浮く。刀身が赤く発光。左足を強く前へと踏み込み、腰の捻りと右手を突き出すと同時に手首を捻って刀身を回転させる。

 スキルの効果で速度・射程距離・刀身の回転数と威力が上がり、突かれた空間が穿たれ渦を巻いたのが見えた。

 なかなか良さそうなスキルだな。ハードシフトと併用して硬い敵を貫くのにいいかも。真似して修得してみようか? いや、元々持ってる『スティング』と被るか?


 〔キャー! カッコいいー!〕

 〔うぉー! オレもあれやってみてぇー!〕


 大きく歓声が観客から上がる。技を披露した彼も嬉しそうに手を振って応えていた。


 「単発スキル程度で凄い人気だなぁ」

 【アエレフィー人はスキルの修得が不可能なのです。身体も弱いので運動も苦手ですし……。だから己の身一つで戦い抜き、スキルで強力な一撃を放つバスクーレル人に強い憧れを抱いていますし、違うかたちでスキルを使いたいと願うのです】

 「違うかたちって?」

 【先程大きな人型の機械にアエレフィー人が乗り込んで動かす映像があったでしょう? あれは『コンバージェンス・ギア』といい、アエレフィー人が危険な大型コア・クリーチャーの討伐に使用したり、対戦ゲームをしたりするための兵器です】


 そう言うと、一旦オークションの映像を止めて別の窓に移し、新たな映像を天幕に映し出す。

 体高十メートルはあろうかと言う、後ろ足二本で立つトカゲのような巨大な魔獣……。元の世界に居た『フレイムレックス』という魔物を数倍大きくして、身に纏う炎を消したのに似たヤツが牧場の家畜を襲っているのを『コンバージェンス・ギア』とやらが数体で討伐する映像だった。

 大きな人型の機械がまるで人間のように滑らかに動く姿は大迫力で、みんなも食い入るように見つめて「おお……」と感嘆の声を漏らした。

 その内の一体が魔獣の側面に回り込み、先程の『ギムレット』の構えをとり技を繰り出し横腹を貫いた。大量の血を噴きながら横倒しになる魔獣。剣の血を振り払い背中の鞘に納める人型機械。まるでフルプレートの騎士のようだった。


 【このように、オークションで得たスキルをコンバージェンス・ギアにインストールすることにより、戦闘で使えるようになります。様々なスキルをインストールし自分好みのギアに育て上げるのがアエレフィー人の間で流行っていました】


 色んな形と色、持つ武器も様々な人型機械が映し出された。それぞれ個性的で外観で誰のものか一目で分かるだろう。正直かなりカッコいい。


 天幕の映像とオークションの映像が入れ替わり、オークションの方が動き出す。次々と入札され金額が跳ね上がっていく。最終落札金額は0が五つ付いていた。当時の貨幣価値がどれくらいか分かんないけど、売った彼は喜んでいるので高額なんだろう。


 〔取引成立おめでとう! では君はここに立って。これからスキルを読み取らせてもらうよー〕


 チャラいのに促されて緊張した面持ちで指定された場所に立つコア・ハンター。

 壁に四角い穴がシュコンと開き、現れた『キューブ』が光を放ち男を貫く。

 シャル以外はあれに撃ち抜かれて激痛を味わったので、思わず「あっ!?」と叫んでいた。

 しかしコア・ハンターの男は全く苦しそうでなく、一秒ほどで解放され笑顔で仲間の元へ合流する。


 「あれ? 痛くないのかなぁ? それにスキルを抜かれたのに嬉しそうだよ」


 チーダスさんの感想は俺らも同じで、俺達みんな首を捻る。


 【彼らとの取引ではスキルは抜き取ったりしません。情報をコピーさせて戴くだけです。何か重い罪を犯した場合は刑罰としてスキルを抜き取りもしますが、その際でも痛みはありません。わざわざ痛み……幻痛ですが、それを付与したのは今回貴方がたにしたのが初めてでした】

 「……なぜに?」

 【言ったでしょう? 貴方がたの過剰な戦力を前になりふり構っていられなくなったと。スキルを抜くことによってステータス低下を図り、激痛を与え精神的にも追い詰める……つもりだったのですが、マビァには逆効果でしたね】


 追い詰められたからこそ必死になったんだけどな。


 「なんだ? すてーたすの低下って?」

 「昨日話しただろ? スキルを修得して育てると基礎能力に(プラス)補正が加わるんじゃないかって仮説だよ。君もスキルを抜かれたあとに何か違和感があったんじゃないのかい?」


 そう言われれば、と思い返す。

 最初に抜かれた『リバースウィンド』は修得したてでレベルを一つも上げていなかったから、+補正も少なかったんだろう。全く違和感を感じなかったが、二つ目にマスタークラスの『アスター・ザッパー』を抜かれた後は、思考と身体の繋がりに僅かにズレがあるように感じたんだった。


 【マビァには何度も撃ったのですが、最初の不意打ちと倒れたところを狙った時の二回しかスキルを抜けませんでした。後は全て避けられました。全て当てていればこの部屋へ突貫されることはなかったかもしれませんね】


 悔しそうにこちらを睨むリムス。そういえば俺が狙われる回数が一番多かった気がする。全部食らってたらどうなっていたのか……。

 天幕の映像が消え、部屋の明かりが戻った。


 【これでこの施設の存在理由を分かっていただけたでしょう。マビァの言う通り分厚い壁で通路を塞ぐか、通路自体を無くし侵入場所を埋めることは可能でした。しかし全てを拒絶していては何も情報を得られません。我は外の情報を欲していたのですから】


 大事な何かを守るために存在していた施設じゃないってのは分かった。リムスが中将達地上の人々のことを(今回は俺も含めてだが)『施設内を荒らし強奪する言語の通じない敵対人種』と認識し、それらからここを守るために慣れない防衛戦を行ったってのも分かった。

 でも、なんか腑に落ちないというか、まだ知ってないことがありそうだ。

 みんなも同じようで、代表して中将が質問する。


 「ふむ。ではいくつかの疑問に答えてもらってもよろしいか?」

 【ええ、どうぞ】

 「我々を容易く近付けないために長い通路を用意したと申されたな? では先程の映像にあった迷宮を用意し、かつここへの道は閉ざし延々と迷わせておけば良かったのではないか?」

 【映像のような迷宮を造り管理すると、配置できるガードボットの数が極端に目減りします。また貴方がたの情報を深くスキャンするためには、そこの広間に通す必要がありました。我の想定では貴方がたが百メートルと進まない内に麻痺毒か電撃で動けなくできていた筈だったのですが……】


 リムスはちらりとシャルに視線を向けた。なるほど、シャルのお陰でほとんど疲れることなくここまで来れたもんな。


 「僕らにさっきの映像のような擬似魔獣を差し向けずにキリバチやヒラグモに限定したのは、あれだけの数を動かすにはそうするしかなかったってことかい?」

 【はい、我らがG型F型と呼称するあの二機種は最低限の防衛機能を備えた標準機で、全都市で利用されていたものです。擬似コア・クリーチャーは元になったコア・クリーチャーの特性再現により機能が複雑になるため、一度に制御できる数に上限があります。狭い一本道の通路を数千のG型F型で埋め付くし、電撃と麻痺毒で無効化するのが最適だと考えました】


 またちらりとシャルを見る。だよなぁ。電撃も無効化されたし麻痺も治癒されたからほぼ意味無かったもんなぁ。

 シャルもそれに気付いているのだろう。黙ってリムスを見つめ返していた。


 「じゃあ、あの三体の大型魔獣モドキはなんだったんだ? カラスはともかく蠍と狼は食らえば死ねる一撃だったぞ? 俺が死ななかったのは運が良かっただけだ」

 【それも先程言いましたが、貴方がたが強過ぎたからです。特にマビァ、貴方にはどれだけの威力で攻撃すれば無力化できるのか不明でした。我が計算で導き出した最大攻撃力で攻める他無かったのです】


 今まで使ったことのない魔獣の巨大化。さっき見たホシノワグマを三頭巨大化した方が強そうに思えるけど、スピードが俺より劣るのであの三体が選ばれたらしい。それと、疑似コア・クリーチャーは冒険者ギルドの試験場での幻獣魔法と同様に、魔獣の本能による行動をするので、造り出したあとはリムスの命令を受け付け難くなる。正確に言えば、精々標的を決めるのと緊急時に強制停止させることしかできなくなるらしい。

 慌てて造り出したあの三体は、リムスの意志で操作できるようにした結果、あんなに中途半端な戦闘になったようだ。


 「大きく破壊されたら再生のために動きが止まるのが欠点だったな」

 【ああも容易く破壊されるのは想定外だったのです。すぐに修正プログラムに取りかかり、時間稼ぎと戦力低下を狙ってスキルリムーバーを使ったのですが、壁ごと破壊されました。この広間の壁は通路のものよりも頑強ですのに、飛び道具ではなくあの高さまで跳び上がり鋼鉄の剣で切り裂かれるなんて。バスクーレル人達の戦闘パターンからでは推測しようがありませんでした】


 バスクーレル人達が使う武器、光る剣や光線を飛ばす杖はビーム兵器と呼ばれる物で、この広間の壁には対ビームコーティングという加工が施されていて、あの武器では傷一つ付かないそうだ。

 さらに通路の壁と違ってツルハシでも砕くのは困難なんだとか。

 俺の攻撃に使った『シャープシフト』や『ハードシフト』が良かったのか。投げたハチェットも刺さったんだけど、あれはあの黒い材質のお陰なのか……。


 でもこれで俺の独りよがりな推理とリムス側の事情との擦り合わせができた。


 リムスの防衛が(ぬる)かったわけではなく、彼女なりに必死に守っていた。


 『キューブ』、スキルリムーバーを使う場所ではあったので俺の予想は当たってはいたが、使う目的がスキル所有者から無理矢理強奪するためだったのではなく、スキル所有者が喜んで売り渡していた。

 スキルリムーバーで撃たれた時の激痛は俺達から戦意を喪失させるためにわざわざ付与した幻痛で、本来の仕様では無かった。

 加えてリムスが蓄積してきた戦いの経験値を上回る勢いで俺らが攻め立てた。結果リムスは今までしたこともない方法で魔獣モドキの巨大化やスキルリムーバーに激痛を付与など、即興で手立てを増やすも十分に実力を発揮できずに終わってしまった。

 確かにリムスの言う通り、俺の推理は全く外れていたわけではないが、真実とは大きく離れていたものだった。

 今ならあの時悲しげに笑ったリムスの気持ちが良く分かる。かなり的の外れた事を自信ありげに言った俺の姿は、さぞやマヌケだっただろう。


 昨日の駐屯基地でのヤーデン中尉とのやり取りを思い出す。あれも現場を見ていないヤーデンが新聞や部下からの報告で得た情報だけでラクスト大尉に反旗を翻し、中将や大佐、俺の前でマヌケなご高説を宣った。今の俺はまさにそのヤーデンがやった事と同じってわけだ。あぁ恥ずかしい。


 「だったとしたら、リムスさんと僕らがこんなにも大きく認識が食い違ったのは、古代文明研究所のせいだね。長年培ってきた研究が全て間違ってたんだから。マビァくんごめんね。この世界のことを碌に知らない君に研究結果を刷り込んでしまったせいで、僕らの考えが正しいと思い込ませてしまい、リムスさんに突っ掛かる原因を作ってしまった。本当に悪かったよ」

 「い、いや。今回のこれは仕方がないでしょ? ここが娯楽施設だったなんて誰も思い付かないことだったし、チーダスさん達も先人の研究を引き継いだ結果なんだから、俺と大して変わりませんよ」


 チーダスさんと他の研究員さん達が俺に頭を下げて謝って来たので少し慌てた。確かに昨日、遺跡についてあれこれ教えてもらったことを鵜呑みにしたせいで今回は恥をかいた。

 しかし、違う文明同士がお互いのことを碌に知らず、相手のことを勝手にあーだこーだと考えて推論を立て、その考えに凝り固まってしまうと、実際にお互いが向き合った時にこうも話が食い違うのか、ということを痛感した。

 チーダスさんはナン教授の紹介だったので全面的に信頼している。でもチーダスさんが教えてくれた情報は真実とは大違いで、本人ですらそうだと知らずにいたんだ。信頼してるからって真に受けた俺にも責任あるよな。


 これはあれだ。身近にもよくあることだ。

 親しい人が「あの人○○らしいよ」と俺がよく知らない第三者の悪い噂を言ったとする。

 それを「へー、そうなんだ」と俺が真に受け、その第三者のことを勝手に嫌う。

 だが、その親しい人も他の信頼している人からその噂を聞いただけで、真相はその第三者以外誰も知らない。なんてな。

 な? よくあるだろ。「碌に知りもしないクセに好き勝手言いやがって」ってヤツだ。


 今回みたいな『一万年前のしゃべる機械と現代の研究員』なんて取り合わせ、考えや情報が食い違って当たり前だし、もう二度と起こり得ない関係性だと思うけど、身近なことに置き換えて考えれば良い教訓になったかな?

 


 【我からも質問があるのですが、先に抜き取ったスキルを全てお返ししましょう】


 リムスは左側を示すと壁に四角い穴が開き、そこからスキルリムーバーが次々と滑り出てきた。

 全部で十八個。俺は二回だけだけど、みんなでこんなに抜かれたんだ。


 【出てきた順に、マビァが二つ。次にアリアが四つ。次に……】


 リムスの説明に自分のスキルが入ったスキルリムーバーに触れていく。目を閉じ脳裏に声が響き文字が浮かび上がる。


 《片手剣四連撃突進スキル『アスター・ザッパー』が再修得可能になりました。前回消失時の修得枠及び、修得レベルで再修得可能です。修得しますか? イエス・ノー》


 良かった。抜かれた時の状態で戻ってきてくれた。続いて『リバースウィンド』も再修得する。二つのスキルが戻ってきて、少しだけ身体が軽くなった気がした。

 他のみんなもスキルが戻ってきて、ホッと笑顔がこぼれた。それぞれ大切に育ててきたんだろうから、気持ちは良く分かる。


 【では、まず貴方がたがここへ侵入した目的を教えて下さい】


 俺らがスキルを全て取り戻すのを待って、リムスが質問してくる。スキルリムーバーはまた床を滑って壁の中へと帰っていった。

 質問には中将が答える。


 「我らがここへきた目的は、『調和のオベリスク』と言ったか? それが制御できないものか調べるためだ。開国以前から我が国の都市全てで潜在的に付与され続ける『恐怖』の状態異常効果。おかげで治安はすこぶる良いのだが、いざという時に民を守らねばならん兵士まで対戦訓練ごときも碌にできなくなっていてな。しかも汚職や腐敗の温床になっている有り様だ。俺を始めそれを不快に思う将校達が力を合わせ軍を建て直そうと密かに動いている。今すぐどうこうと言うわけではないのだが、このままでは将来的に有事の際、国民を守ることができん。そこでこの原因をなんとかできないかと思い二年前と今回ここに挑んだというわけだ」

 【なるほど、治安の良さなどの有効な効果を保ちつつ、マイナス要素を取り除く。そんな操作ができないのか調べに来たわけですね】

 「うむ、見たところこの施設は我々の手に負えるところは一つもなさそうだ。君に頼めばなんとかなるものだろうか?」

 【我の存続を盟約してくれるのであれば協力しても良いでしょう】

 「ありがとう。我がルーリライアス家が存続する限り盟約を誓おう」

 【今、貴方がたの基礎データをもとにシミュレート中ですが、その『恐怖』付与というエラーは取り除けそうです。バスクーレル人に施していた『調和』の効果を付与することも、他の効果に変えることもできそうです。……おや? 現状で約三百八十万人に一人の確率で異常な数値の別のエラーが発生するという結果が出ました】


 リムスは不思議そうに首を傾げた。俺達も言ってることがよく分からなくて同じく首を捻る。


 「異常なえらー……? えらーってのは要するに『想定外の結果』みたいなもんでいいのか?」

 【はい、その解釈で構いません。ごく稀な確率で『恐怖』とは違う状態異常が発生している可能性があるようです】

 「具体的にはどんな?」

 【シミュレートを繰り返す度に違う状態異常の結果が出ているようです。通常のエラーでほぼ全員が『恐怖』の状態異常を付与される中、該当者は別の何かの感情を……。例えば嫉妬だったり、性的欲求だったり、怒りだったりと、本人の意思とは(・・・・・・・)関係なく何かの(・・・・・・・)きっかけで激しく(・・・・・・・・)暴発させる(・・・・・)というものです】


 最後の一文でハッとした俺とシャルは顔を見合わせた。


 「エリ公か!?」

 「エリィお兄様!?」


 それを聞いたザンタさん夫婦も「ああっ!?」と大きく声を上げる。そうだ、この夫婦もエリ公のことを良く知ってんだった。

 ってことはロージルさんもか?


 【何方(どなた)かに心当たりがあるようですね】

 「あ、ああ! リ、リムス、この異常なエラーってのは無くすことはできるのか? 実は知り合いにそれっぽいのが二人居るんだよ!」

 「ひ、ひとりはわたしのお兄様なのです! リムスさん、どうか、どうかお兄様をお救い下さい」


 俺とシャルはリムスの元へと駆け寄った。

 俺はリムスの映る窓にその向こうへ行けないものかとビタッと貼り付いてぐいぐいと押し、シャルは板の前に膝を付いてリムスにすがりつき、目に涙を浮かべながら猫のように両手で窓をカリカリと引っ掻く。

 こちらの奇行に驚いたリムスは窓の奥の方へと下がり小さくなった。


 【ふ、二人とも落ち着きなさい。エラーの修正は可能です。生後からオベリスクの影響下にあったのでしたら数年は後遺症が残るようですが、やがて症状は無くなるでしょう】

 「や、やったー!!」


 俺とシャルは抱えていた悩みの一つが一気に解決しそうな、この奇跡のような出来事に跳んで喜び、シャルを抱き上げてぐるぐると振り回した。

 シャルもキャーキャーと喜び笑い、ザンタさん夫婦も嬉しそうに微笑む。

 他のみんなも街の有名人であるエリ公の事情はある程度知っていたのだろう。なるほどそうかと納得顔で微笑んでくれていた。


 【お役に立てそうで何よりです。喜んでいるところ申し訳ないのですが、我からもう一つ質問があります】


 目を回して座り込んだ俺とシャルにリムスが声をかけてきた。いや、正確にはシャルに、だな。


 【シャルンティン、貴女にお聞きしたいのです。よろしいですか?】

 「ひゃ、ひゃいっ!」


 目を回してへろへろしてたシャルは、急な質問に慌てて頭を振って立て直し聞く体勢に入った。 

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