あのひから
ばらばらというよりはもっと衝動的な何かです
たまに普通の人の顔をして
わざとらしい笑顔を浮かべて
ひとごみにまぎれてみると
さびしい というよりは しにたい というよりは どうしようもないかんじの
夜の帷に縋りつきたくなるような
一足とびに 白線の外側に 迷ってしまうものです
迷子は加被のどちらかに選別されます
なんて恐ろしいこと 教えてもらったのは何時だったか
ひとり 病室で ひとり 実験をします
なにかしなきゃいけない けれど なにかしちゃいけない
暗黙のルール 温かい苺 砂糖蜜 甘くて苦い
かちかちと削りとるのです 私のようなものを
音をたてて けれど密やかに 私はばらばらになるのです
それはほんとになんでもよくて いきものじゃなくていい
私は少しずつ無くなって欠片になるのです
昨日、という概念がぽっかりと抜け落ちていきます
時間のこと 考える時間 増えたような気がするけれど
まるで海を隔てた遠い国を考えるように
私の思考はふわふわと何処かへ 離れてゆきます
あのひ、さようならをしたのは 誰だっけ
あのひ、指きりをした約束は 何だっけ