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砂糖蜜  作者: まったりorz
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えそらごと

 ぶあつい雲を喰いちぎっている黒い犬が尖らせた赤い舌に舐められている筋肉質な足の指先に跪いている私の両手の指の隙間から生えている濡れた雑草が風に揺らめいて切っ先で脹脛に小さな傷を残したところからぽとりと艶やかな赤い珠が視界を濁らせた午前二時、


 雲間が白くなる前にと焦燥感にかられる私の睫から抜け落ちた薄赤の涙が汚した胸の膨らみの先から透明な闇が続く概念の秒針にはたと立ち止まる人の孤独な喧騒に笑みを浮かべている魚の棲家から水が溢れ出してゆくとき、


 髪を濡らすものが何か分からないまま、私は私が何か分からないまま、いつも赦しを請うのだ。


(――何でもない何か、存在でも行為でも感情でもない、私と呼ばれる何かに対して、いつも私は同じ言葉を繰り返し、その真意すら忘れ、また同じ言葉を繰り返し、それは観念に似た意味のないものへと変容し、停滞する)


 ひとつのただの小石の形へと姿を変えた言葉を地に落として、まるで意味を持たない音の羅列になってしまった思考の断片から生まれるものは全て架空の共感だったというのなら、


「分からない」

「もっとちゃんと説明してよ」

「順序だてて、話してみて」

「ゆっくりでいいから、落ち着いて、皆に分かるように」


 不恰好な四角の部屋には一人の男と二つのマグカップと机と椅子とパソコンとボールペンとカレンダーと時計とそれから――「皆」には人間以外のものも含まれるのだろうか――あいにく日本語以外は使えないのだけれど、「皆」は日本語が分からないのかもしれない、そんなはずはない、男は日本語を使っている。


 意味を履き違えていたと気付かされた頃には私の思考は誘導されて別の何かになっているのだろうか


 男と同じ目をしたまま、口角をあげる

 乾いた髪の上、白い魚が群れをなして空へ消えてゆく

  






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