三話 出会い
遅くなりすいません。
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治療を行って数十時間が経過した。ダレオは自身の魔力を彼女に分け与え、彼女個人の修復機能を上げようと試みた。
結果は数十時間要してダレオのゼン魔力が計数十回注ぎ込んでも、彼女の魔力はほんの少ししか溜まらなかった。それほど彼女の魔力量が凄まじく強大であったのだ。
しかし、ここからが本番なのだ。魔力を回復させて修復機能を上げ、本格的な治療へと移行するはずであった。
既に彼女の抉られた傷跡は少しだけ傷跡が残るが、完治に近い状態であった。
「こんなことってあるのか?」
ダレオが不思議に思うのは、当然であろう。本来なら修復機能を上げたとしても、回復の補助としての役割のみなのだ。修復機能が傷を完治させるなど不可能であるのだ。しかし、現在その光景を目の当たりにしている。信じられないが、信じるしかないのだ。
「.......っ!!」
ダレオは体のふらつきに堪えることが出来ず膝をついてしまった。視界が朦朧しはじめ、吐き気、頭痛も押し寄せてきた。
『魔力枯渇症』文字道理、魔力が枯渇することで引き起こされる症状である。視界の歪み、吐き気、頭痛など様々な症状を起こす。
「.......く、そ...」
ダレオはその痛みに耐えることが出来ず、意識を手放してしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「.......ん、こ、ここは...」
ダレオは夕方の暖かい日差しによって、意識が覚醒した。
「俺は何でベットにいるんだ?」
ダレオは自身が床で意識を失ったことを認識していた。そのためどうして自分がベットで横になっているのか、知らなかった。すると、
「起きたか、人間」
凛々しい声にダレオは思わず振り向いてしまった。そこには瀕死状態であった彼女の姿が目に入った。
少しつり気味な青海の如く青の眼、しっかりと通った鼻筋、黒くて艶やかなロングの髪からは『悪魔さ』が漂っていた。背丈はダレオよりも高く、細身でありながら出ているところは出ており、美が内側から滲み出ているような絶世の美女であった。
「嘘だろ.......」
そう、ダレオの目の前に居たのは、ダレオが助けた魔族であった。しかし、彼女は一日二日で治るような傷ではなかったのに、今ではすんなりと立っている。そのおかしな事実にダレオの頭の中は大渋滞を起こしていた。
「なんなのだ、その眼は」
「いや、す、すまない」
「人間はそうすぐに謝る。だから下等生物なのだ」
「す、すまん.......」
種族の争いがあるとはいえ、助けてもらった恩人に対して彼女は好戦的な態度を取った。それは仕方がないことかもしれない。同胞の多くを人族の手によって殺され、少なからず悲しみを味わったのだ。ダレオもそれは理解できていた。
「とりあえず、治ってよかった」
と、ダレオは万弁な笑みで彼女に向かて言った。
「なっ!? か、下等種族のくせにいい気になってぇ!」
何故かぷんすかと怒っている彼女をよそにダレオは体を起こした。
「なぁ、人間」
先ほどとは打って変わり真剣な雰囲気が漂った。
「んー?」
「なぜ我を助けた。我ら魔族と貴様たち人族は対立関係であろう? なのになぜ我を助けたのだ?」
と、真剣な声で言った。
純粋な疑問であった。敵対勢力は殺し、殺される関係。それが世にこべりついている時代であるがために、なぜ助けたのかが気になったのだ。
「お前が命の危機に瀕していた、以上だ」
「え」
拍子抜けな答えに彼女は呆気を取られた。数秒の沈黙が流れた。たかが数秒であったがダレオと彼女にとっては長く感じた。
「貴様、名前は何と言うのだ」
沈黙を破った彼女が不意に名前を問いてきた。
「ダレオだ」
「.......ダレオか」
「お前は?」
「我か? 我はヴィンゼフだ」
「そうか」
「ダレオ、助けてくれてありがとう」
ヴィンゼフがダレオに対して頭を下げた。先ほどの好戦的な態度とは打って変わった態度でダレオは驚いていた。
「ど、どうしたんだよ急に.....」
「なに、例え相手が下等種族であるクソ野郎でも、我は礼はするのだ」
「お、おい! クソ野郎は余計だろ!!」
「ふんっ!」
何故かそっぽを向いてしまった。
しかし夕焼けのせいかその顔は赤く染まっていた。
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