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果てなきは空の彼方  作者: 天野 みなも
53/56

空の彼方③


※ ※ ※ ※



「ここは……どこかしら……」


そこは白一色の世界でもあり、黒一色の世界でもあった。


上なのか下なのか、右なのか左なのかも分からないままリンは歩みを進めた。すると目の前に誰かがいるのが分かった。


「ここは時の狭間。過去と現在、虚像と現実が入り乱れる世界」


「……アンリ、よね?」


声から察するにアンリのように聞こえたが、顔は良く見えない。ただ、リンにはそう感じられた。


「私に名はありません。」


「じゃああなたは誰?」


「人は私を『女神の翼』と呼びます。」


「女神の……翼……。」


「そう。女神ラーダの奇跡の一つ。イシューを滅ぼすための絶対の力。それが翼です。」


「イシューを、倒すことができるの?」


「えぇ……」


「イシュラも?」


「えぇ……」


アメジスト色の宝石のような瞳が不思議な色を湛えた。


「私は女神の翼。翼の使い手となるか、小さきものよ。」


その言葉は契約。これを受け入れることが何を意味するのか。考えるまでもなかった。リンには必要な選択だった。そして迷いなく選んだ。


その人が手を差し伸べ、リンは誘われるように手を伸ばした。


光が溢れる。


リンの中に何か心の芯が補完んされるような、満たされるような、温かな想いが流れ込んできた。


そしてリンの周りの世界が色づく。


世界がまばゆく光輝く。やがて白に飲み込まれていった。



※ ※ ※ ※


目が霞む。だけど今度は自分がどこにいるのかリンは理解できた。


コアに体を打ち付けられそして腹部を刺された……はずだったが、気づけばリンの体の傷はなくなっていた。そして体は発光している。両手から何か力が溢れてくる感じがしてリンは両手を見つめた。


「何……これ……。」


自分でも理解できないが、何かの力が体に流れこんでいることは分かった。体をゆっくり起こし、地面に両の足をつく。


倒さねば、ウラニアを。


そう思った瞬間口が勝手に詠唱をし始めた。


その詠唱に呼応するかのようにアンリが傍へと近寄ってくる。そしてアンリはリンの手を取った。





 慈悲深き女神ラーダよ

 その身を切り裂き地に与えた奇跡の力

 わが身に請う

 翼よ

 今こそその力、解き放て

 我ら女神の双翼となりて

 永劫の闇を打ち砕かん




「エストラーダの血を依り代に、開放せよ!」


二人を繋ぐ手から光が生まれる。


リンはアンリの手から光を引き抜くと、それは一振りの刀へと姿を変えた。同時にリンは背中に違和感を感じた。刹那、背中から光が溢れ、リンの背中には純白の翼が生まれた。


「これで……互角ね。」


剣を握り直し、リンは空中で制止するウラニアを睨みつけて言った。


「まさか……翼、ですって!?」


瞠目するウラニアに構わず、リンは大地を蹴り、そして飛翔した。


リンが剣を振りかざし、ウラニアに目掛けって振り下ろす。それを二度、三度と繰り返す。ウラニアはそれを長くとがった爪を使ってかわした。


「ふふふふ、覚醒したのね。ようやく……ようやく探し出せた。あぁゾクゾクするわ……。」


空中で戦いながら、ウラニアは恍惚の表情を浮かべた。と思った瞬間、その表情は一変する。


「早く殺させて。その忌々しい女神の奇跡を。あの人を殺したその力を!!」


狂気の表情で今度はウラニアが攻撃に転じる。それをリンは剣で弾き返す。


剣戟が堂内でこだまする。


カキンと金属音を鳴らしてリンとウラニアはもつれるように戦った。


今までの戦いとは雲泥の差が出るように互角の戦い。体が思うように動き、リンの身のこなしが軽やかになる。


形勢は逆転した。ジワリジワリとウラニアを追い詰めている。


「くっ……!」


鍔迫り合いになるが力はリンの方が上だった。そのまま空中で押し返すと、リンはウラニアの腹部を蹴った。今度はウラニアが床に激突する形となった。


ヤレル


リンは思った。この瞬間完全にウラニアには隙ができた。一気に急降下してウラニアの心臓を狙った。


ザンッ


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