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果てなきは空の彼方  作者: 天野 みなも
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空の彼方②


護符から光があふれ出し、そしてカティスに巻き付く。


「リン!?何をしたの!放して!!放してよ!!」


必死にもがくカティスだったがもがくほどに光はカティスの拘束を強めた。


「アンリ!!」


「大丈夫です。」


ちょうどアンリの方もイシューを聖具に封印したところのようだった。


リンは息を大きくついた。ゼイゼイと肺が悲鳴を上げている。


「兄さん……大丈夫?」


ヨロヨロとする足を立たせてリンはサイソルフィンに近寄って、そしてその拘束を解いた。


「リン……。ごめん。」


「兄さん……無事でよかった。」


「リン、まだ終わってませんよ。」


アンリの言葉に弾かれるように上を見上げた。誰か……いる……。


「……ウラニア先生ですね」


リンは黒い羽根をはばたかせ天窓に浮かぶ人物に言い放った。その人物はあの月夜で姿を現したときと同じにローブを被って表情が見えなかった。だが、リンには確信があった。あれはウラニアだと。


「あらぁ。バレてたのかしら?」


悠然と言いながらローブを脱ぐと現れたのはウラニアだった。


「参考までに聞いていいかしら。いつから私だって気づいたのかしら?」


空に浮いたまま首をかしげて楽しそうに問うて来た。


「第一の事件から。村でハイヒールを履く人間はそんなにいない。そして第二の事件。犯人は教会に近しい人間だと思ったの。第三の事件で犯人は二人組だと分かった。そして第四の事件。疑念は確信に変わったわ。」


そうだ。村の保険医である彼女は教会に怪しまれずに忍びこむことができる。基盤石に関する資料を探すことも出来ただろうし、なによりカティスを使って犯行を行うには、彼女の身近な存在だったことを利用したのだろう。


だからカティスがクグツとなったことが分かった時、ウラニアがイシュラであることは容易に推察で来た。


「まぁ驚いたわ。そんな最初から分かっていたなんて。でも残念。今は基盤石もなくなりこのコアさえなければこの村がイシューの餌食になるのも目に見えているわ。」


脳裏に今までの被害者達の惨状が蘇った。まさか……村を襲おうとしていいるのか。


「まぁ、まずはそうねぇ……サイ。あなたから殺してあげる……」


そうやって急降下したウラニアに反応してリンがサイソルフィンの元に動いた。


「アンリ!!」


リンの言葉に反応するように、アンリはリンの行く手を阻もうとする獣型のイシューにナイフを放った。


シュっと音がしてナイフがイシューに突き刺さると、イシューは咆哮を上げながらアンリへと向かっていった。リンはその隙にサイソルフィンの元へと駆け出す。


いつの間にかウラニアの右手は黒くて鋭いナイフのように変形していた。それをリンは弾いた。


「小癪な!!」


「させない!!」


ウラニアは標的をリンに絞り攻撃を仕掛けてきた。自在に伸びる右手は今度は五本の鋭い爪になり、異様に伸びた詰めがリンの左肩を射抜いた。


「っ!!」


ウラニアは一旦爪をもとに戻す。右手はリンの血で染まるのを艶めかしくペロリと舐めた。


「ウフフフフ……美味しい。甘い香りね。サイソルフィンの血も美味しそうだけど、リンあなたの血もとても美味しいわ。」


ボタボタっと音を立ててリンの血が床に滴り落ちた。思わず前傾姿勢になり、剣を落としそうになるのを必死で握りなおす。


「それはどうも……。でも残念ながらこれ以上はあなたの好きにはさせない。」


リンはそう言って床を蹴った。


ウラニアはそれに反応して空へと舞い上がった。翼の無いリンには空に逃げられては戦えなかった。


「くっ!!卑怯者!降りて来なさい!」


「あらそう?……じゃあ降りてあげるわ!!」


見上げたリンにウラニアは笑みを浮かべて急降下してきた。すれ違いざまリンの腕を切り裂く。服が破れリンの腕に赤いシミができた。そしてウラニアは壁を蹴って軌道を変えると再びリン目掛けて右手の鋭い爪を繰り出した。


リンはそれを横に飛んで回避する。今度は右から獣型イシューが襲い掛かってくるのを左に避けた。バランスを崩したリンは床に座り込む形となる。そこに獣型イシューがその牙を喉元を切り裂かんばかりに飛び掛かってきた。


「リン!!」


アンリが獣型の横腹を蹴りつける。獣型イシューはそのまま体制を立て直し、アンリに噛みつこうと飛び掛かってくる。


「アンリ!!」


アンリほどの大きさのイシューはアンリをそのまま押し倒した。リンは思わず叫び声を上げた。


だが動かなくなったのはイシューの方で、二、三回痙攣すると口から泡を履いて崩れ落ちた。


「大丈夫です。」


イシューを横に放ったアンリの手には真っ赤に染まった短刀が握られていた。イシューはそれでも尚立ち上がろうとするのをアンリは視界の隅に捉えながら捕縛の詠唱を唱えた。



妹神に創られし、哀れな化け物よ。

女神の腕に抱かれ、暫しの眠りを。


 「縛!」



気づくと獣型イシューはアンリの聖具に捕縛されていた。


だがウラニアはそれを天井から見ていた。


ウラニアに一太刀も浴びせられていない。無傷で不敵な笑みを浮かべてウラニアは天井に浮遊していた。一方でリンは満身創痍だった。痛みで感覚が麻痺し始めている。剣を握る手が自分の血でぬめり、落としそうになるのを何とか堪えていた。


圧倒的な戦力差にリンは呆然としていた。何とかしなくては。だけど空を飛ぶ敵には地を這うだけの人間など相手にならないのか。


「もういいかしら。そろそろコアを壊さなくちゃ。いつまでもあなたに構っていられないの。」


再び猛スピードで急降下してくるウラニアに向かってリンが太刀を浴びせた。


キイィイン


音を立ててぶつかり合った瞬間にウラニアもリンも衝撃で弾き飛ばされていた。ゴロゴロと転がった弾みで、思わず剣を手放してしまう。


「なんてこと……私を傷つけるなんて!!」


体中が痛い。何とか声の主の方を見ると、ウラニアがわなわなと震えて言った。よく見るとウラニアの顔にうっすらと傷がつき、血が流れていた。


「よくも!!よくもよくもよくもよくもよくも!!」


狂ったように叫びだしたウラニアにリンが立ち上がる時間も与えられず頭を掴まれる。人間ではない力でぎりぎりと頭が締め付けられる。


宙に浮いた体を何とか弾みをつけてウラニアの体を蹴ろうとするが叶わず、リンはそのままコアに向かって放り投げられた。


メキっと何か嫌な音がした。


したたかにコアへと叩きつけられる。


「終わりにしましょう」


瞬間移動をしたかと思うほどに尋常ではないスピードでウラニアはリンの元に飛んできて、そして耳元でささやいた。


その声を聞いた瞬間、リンの腹部に鋭い痛みが走った。


リンの腹部をウラニアの爪が貫いていた。


パリン


乾いた音がしてコアが砕けた。


そして赤い光が堂内を染めていく。それを薄れ行く意識を何とかしようと抗ったが、リンは意識を手放した。


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