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果てなきは空の彼方  作者: 天野 みなも
49/56

正体②

※ ※ ※ ※


リンは走った。


昨日と今日とで失態が続く。エルマー達を失ったこと、そして今度はサイソルフィンの命が危ない。


目的はアンリだったからすぐに殺されるという事態にはならないとは思うが、まさかこんな展開になるとは。


縺れる足をフルに動かしてリンは走った。


家に着くと玄関の扉を乱暴に開けるとリビングにいたリコとアンリが驚いた顔をしてこちらを見ていた。


「リン、どうしました?」


「アンリ……どうしよう……兄さんが……カティスが……!!」


「リン、落ち着いてください。まずは座って。お水でも飲んでください。」


椅子に座らされ、アンリが持ってきた水を飲む。カラカラに乾いた喉が潤され、リンはようやく声を発することができた。


そして事情を説明した。


「犯人は……カティス……でしたか。」


「アンリ、どうしよう。コアって何?どこに行けばいいの?」


「分かりました。共に行きましょう。」


不意にアンリはリコに話題を振った。覚悟とは何のことだろうか。


「リン、カティスは『コア』の場所で待つと言ったのだな。」


「うん……確かにそう言っていたわ。」


「駄目だ。お前が危険に合わせることはできない。」


「でも行かなくちゃ兄さんが殺されちゃうわ。」


「大体にしてイシューと戦えないだろ?お前はまだ子供なんだから!」


「大丈夫よ。私だって戦える。この聖具があるんだから!」


「それは……。」


取り出した聖具を見てリコが青ざめた。


「父さんの部屋で見つけたの。これがあれば戦えるわ。」


「なんてことだ……。聖具を……見つけたのか。」


「父さんは聖騎士だったの?」


「……。」


「また隠し事なの?そんなに私には言えないことなの?」


「時が来たら言うつもりだった。でもまだ時じゃない。」


「それよりどうしますか?」


気まずい雰囲気を破ったのはアンリだった。


「行かなくてはならないでしょう。自衛団は正直役に立ちません。聖騎士団の要請をするべきでしょうが時間がかかりますね。」


「私が……行かなくちゃならないわね……」


「この傷さえなければ。」


リコが悔しそうに呟いた。


「もう戦うしかないですね……。」


リコとしても複雑な思いだった。相手はクグツとなったカティスだけではない。たぶんアンリが戦ったというイシュラもいるだろう。


そんな危険な戦いに愛し子を行かせるわけない。だが、人質となったサイソルフィンの安否を思う気持ちもある。


どうしたらいいものか。


暫く難しそうな顔をして、リコは目を瞑った。


「……リコ、もういいでしょう。覚悟を決めてください。」


アンリの言葉にリコがゆっくりと目を開けるとなにか思いつめた顔でリンに尋ねた。


「リン。お前はどうしたい?無理に戦わなくていい。自衛団と団結してイシュラと戦う道もある。」


「……私は、行くわ。兄さんを助けなくちゃ。ううん、それよりもカティスを助けないといけない気がする。カティスは私しか止められない。そんな気がするの。」


まっすぐにリコを見つめるリンの真摯な目にリンは小さくため息をついた。すると不意にリコが言った。


「リン、すまない。」


そう言ってリコはリンを抱きしめた。


「不甲斐ない母ですまない。お前にすべてを託することしかできないなんて……」


「母さん……。」


「大丈夫ですよ。リンには私がついていますから。」


「アンリ……。そうだな。お前だけが頼りだ。」


「えぇ。ということはリコ、覚悟ができたのですね。」


「そうだな……。リン、お前に言わなくてはいけないことがある。戦いから帰ってきたときにはそれを伝えよう。」


なんだろうか。アンリと関係あることなのだろうか。


「コアは教会の礼拝堂の下にある。」


「教会の下に?」


そういえばアロイスを追って教会の礼拝堂に行ったとき、アロイスを見失った時があった。あれはきっとアロイスがコアが無事かを確認しに行ったのかもしれない。


「じゃあ、行ってくるね。」


リンはそう言って聖具を身に着けた。何度か装着しているがだんだんと馴染んでいる気がする。


リコは再びリンをぎゅっと抱きしめた。そして額に優しくキスをした。


「女神の加護があらんことを……」


※ ※ ※ ※



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