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果てなきは空の彼方  作者: 天野 みなも
48/56

正体①

その屋敷は村の中心から西にあった。ひしめき合う家々が立ち並ぶ集落をから少し離れた大きな屋敷はその家の財力を示すように建てられていた。


豪華な扉を問答無用に開けて入る。


伽藍洞の玄関の踊り場は暗く家人は息を潜めたようだった。


この家でカティスは孤立していた。


村の有力者の家であったが、カティスの両親は弟を可愛がり体の弱いカティスはいないものとして扱っていた。


だからカティスの友人であるリンが家を訪れても何も咎められないが無視されている。


そんなことは慣れていたのでリンはずかずかとカティスの部屋を目指した。


途中一緒についてきたサイソルフィンが行先が分かると何度か止めようとする声を上げたがリンは無視した。


コンコン


軽くノックをすると中から返事が返ってきた。


「はい。」


「カティス、入るね。」


「あ、リン。こんな朝からどうしたの?」


カティスは部屋で机に向かっていた。本を読んでいたのだろうか。


視線を本から上げていつものように微笑む。


「カティス……こんなに朝早くごめん。リンも。どうしたんだい?急にカティスの家に来るなんて。」


サイソルフィンが申し訳なさそうにカティスに言うが、リンは厳しい表情をしたままカティスを見つめた。


「カティス……あなたなんでしょ?クグツになったのは……。」


「クグツ……?」


カティスの目の色が変わった。何か物憂げで生気を失ったような、そんな表情だった。


「クグツはイシュラによって人間がイシューとなったもの。イシュラの命令に応じて生きる化け物よ。」


「なっ……ちょっと待ってよ。じゃあリンは昨日のクグツはカティスだっていうの?」


サイソルフィンが慌ててリンに抗議した。


そうだろう。カティスがクグツだったなんて認められない気持ちも分かる。だがすべての事実がカティスがクグツであることを表している。


「うん。そう。ここにクグツの黒衣がある。この独特の香り……ラベンダーね。カティスがいつも身に着けているポプリのラベンダーと同じ香りね。」


「……。それでリンは私を疑うの?」


「信じたいけど、カティスがクグツだと全部つじつまが合うの。第一の事件が起こった時、アロイスがカティスが現場にいたことを証言しているわ。それにアロイスは基盤石に在処をカティスに教えてしまったと。そして女神の力に関する機密文書を渡してしまったと。つまり、基盤石の位置を把握することも、それを壊す方法もカティスは知っていたことになる。」


「リン!!止めなよ。カティスがそんなことするわけないだろう!?大体一体なんの目的でこんな事件を起こしたんだっていうの?」


「サイは私の味方なの?」


「そうだよ、カティス。僕はカティスを信じる。」


カティスとリンの間にサイソルフィンがカティスを庇うように立った。


「嬉しい……。」


カティスは後ろからサイソルフィンを抱きしめた。サイソルフィンは背後にカティスを感じながらリンに厳しく言った。


「大体カティスが殺人を犯した目的は何なの?」


「目的は……ひどく曖昧なの。最初2つの事件はカティスが復讐したい相手だった。そして残りの2件は私を守るためだったのよね。」


「クク……ククク……。」


サイソルフィンの陰に隠れて表情は見えないが、カティスは喉を鳴らして低く笑った。


「だって……私たちの邪魔をするんだもの。私はずっとリンとサイと3人でいられれば良かったの。それなのにあいつらは邪魔をして。ジャンとタングは邪魔だった。私のサイからもらった大切なポプリを汚した。ライカはサイを傷つける存在。決して傍にいてはいけない最低な女よ。死んで当然。あの主婦たちはリンを犯人だと決めつけて。リンは悪くないのに。それに自衛団に二人もリンを犯人だと決めて勾留して。全部全部あいつらが悪いのよ!!」


後ろから抱きしめるカティスの力がすごく強くなり、サイソルフィンはそっと後ろを見ようとした。そして、凍り付いた。


首筋に何か冷たいものが当たっている……これは……ナイフ?


「カティス!!」


そこには豹変したカティスがいた。目は赤く染まり、妖艶な微笑みを浮かべてカティスはリンに言った。


「サイは私のモノよ。リンには絶対渡さない。」


「カティス止めて!もう罪を重ねないで。」


「ねぇ、リン。空の果てには何があるのかしらね……。」


不意に寂しそうな瞳をしたカティスだったが直ぐに今までのカティスでは見たことのない怪しげな笑みでサイソルフィンを抱きしめながら後ずさる。


「えっ!?」


「サイは私と来てもらうわ。隠された『コア』のある場所で待ってる。アンリさんとともに。それ以外の人を呼んではダメ。じゃなかったらサイを殺すわ。」


そういうと、ベランダへ出るための大きなガラス窓を突き破った。


ガシャン


盛大な音が部屋中に響き、窓ガラスの破片が散らばる。思わずリンは顔を腕で庇って背けた。


そしてすぐにカティスの後を追ってベランダまで出たが、その時にはすでに二人の姿はなかった。


※ ※ ※ ※


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