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果てなきは空の彼方  作者: 天野 みなも
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残り香②

王の使者として王都から遣わされたアンリ。アンリと旧知の仲である母のリコ。王命とは一体何だったのだろうか


そしてアンリがエンロ村から来てから発生したイシューによる基盤石破壊事件と惨殺事件。


第一の現場……ジャンとタングが殺害された現場ではハイヒールを履いた女性が犯人。だがそれはイシューだったのか。イシューなら女神の力を宿した基盤石には触れられないはず。


第二の現場……ライカの事件。殺害された状態から鑑みて知り合いの犯行……。ということはこの村人の犯行の線が濃厚だ。ただ殺害状況からして犯人は村人がイシューとなったクグツという存在か。


第三の現場……主婦二人の事件。ここにきて学生ではない人間が殺害されている。でも共通なのは三つの事件とも私が知っている人物。


犯人は単独?いや、女性とはいえ大人二人を相手にできるとは限らない。だからこそ犯人は紐で手首を縛り、身動きの封じた。……となると、実行犯はやはりクグツとなった村人。


肝心なのは誰がクグツとなったのか。そしてなによりも今回の基盤石の場所を正確に把握しているのは教会関係者だけ。となると、犯人はアロイスである可能性が高い。




「リン、どうしたの?」


「兄さん……うん。今回の事件、やっぱりアロイスが犯人なのかなぁと思って。」


「僕は、アロイスが犯人とは信じられないな……。」


サイソルフィンにとっては大切な親友だ。リンとしても仲の良い先輩でもある。やはりアロイスが犯人なのかは信じられない思いであった。


「でも……状況証拠だけで考えるそうなるのよね……。」


うーんと考え込むリンであったが、その時何か風のようなものがリンの頬をかすめた。


「なに!?」


「どうした!!」


エルマーがリンに問いかけた。


「なにか……いる!!」


触れた頬にぬめりと何かがついた。……血だ。何かが闇を切り裂きリンの頬を薄く切った。


「火を消してみんな固まるんだ!向かえ撃つぞ!!」


エルマーの言葉にゲートルトが弾かれたように焚火を消した。皆基盤石を守るように集まった。


その時だった。


空を切って黒い羽が空気を切り裂く音とともに、リン達に降り注ぐ。それを反射的に避ける五人。


硬質の羽がリンのいた地面に刺さる。これをまともに受ければ致命傷だっただろう。


避けるとき少し足を擦りむいた。痛みが膝に走る。だがそれさえも気にできないほどの殺気を感じ、闇夜に目を凝らす。


「くそっ!!どこにいる!?」


ゲートルトが苛立ち気に言い放つ。頼りになるのは朧な月明かりだけで、でもそれは敵も同じなはずだ。


「上です!」


アンリの言葉にリンが見上げると、いつの間にか赤く染まった十六夜の月があり、それを背にして黒い翼を持つ人物がこちらを見ていた。


目が赤く光っているように見えるのは錯覚か。逆光で誰なのかは分からない。ただ翼を持ち大空を翔る人型のイシュー―イシュラに対し、圧倒的に不利な状況であることは変わらない。


イシュラは口元をマントで覆い、外套を頭からあぶっているため、どんな容姿をしているかも分からなかったが、その存在感だけはヒシヒシと感じることができた。


「まさか……イシュラ……が。」


エルマーとゲートルトが驚きの声を上げたが、リンはやはりという確信をもってそれを見上げた。


アレが犯人であるとすれば、クグツになった村人が出てくるはず!


「エルマー、ゲートルト!!犯人は他にもいる!」


「なんだと!?」


その言葉に呼応するかのように、茂みから何者かがリン目掛けて飛び出してきた。


ひゅん


音がしてリンは反射的に避けた。


それは小柄な人物だった。体格はリンと同じくらい。だが深くマントを被り、表情はおろか、顔の判別はできなかった。


リンは踵を返し、その人物のマントを剥がそうと手を伸ばしたところで、イシュラが急降下してそれを阻止する。


だが、その時かすかな香りを感じた。これは……。


「リン!!」


サイソルフィンの言葉に見上げると、イシュラが自分に剣を振りかざしていた。


リンはそのマントをつかもうとした手を引き、イシュラが振り下ろした剣を避けた。



慈悲深き女神ラーダよ

暁の光の如く

その聖なる力で闇を切り裂く力を

我が手に


 「聖具・解放!」


アンリの詠唱が闇に響くと同時に、解放された女神の力が短刀となり、アンリはそれをイシュラに投げつけた。


だが空に舞い上がり、それがイシュラに届くことはなかった。


アンリがリンとイシュラの間に割って入る。アンリの背に隠れるような形になったところで、アンリがイシュラを見つめつつ、リンに言った。


「リン……貴女の役目は囮になること。もう十分です。ここは我々に任せて逃げなさい!」


「でも!!」


イシュラは聖騎士とて厄介な敵だと聞いている。そんな状況下でアンリを放って逃げるわけにはいかない。


「聖具は私が持っている。戦わなくちゃ!」


「貴女はまだ目覚めていない。いけません。」


グルグルグル


地を這うような獣の呻き。そして闇夜を凝って作ったような漆黒の翼に六つの目を持つ化け物が三体現れた。


「まさか……。」


「獣型のイシューまで……」


圧倒的な戦力差。リンは覚悟を決め、力ある言葉を紡いだ。


慈悲深き女神ラーダよ

暁の光の如く

その聖なる力で闇を切り裂く力を

我が手に


 「聖具・解放!」

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