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果てなきは空の彼方  作者: 天野 みなも
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罪ある者②

外はまだ朝もやが立ち込めていて、村の中心部でも人気がなく静かだった。


息をするとまだ冷たい空気が肺に入り、リンは思わず身をすくめた。


今回の現場は自衛団本部のある村の中心部から西の方角で、村と森との境界でもある街道の奥だった。


「お前たちは?」


警備の自衛団員がリン達を認めると怪訝な顔をした。


「えっと、これ。セシルさんから。」


「団長から?……分かった。入るといい。ただし、中はまだ遺体はそのままだし、悲惨な状態であることは覚悟しておくといい。」


そう警備の自衛団員から釘を刺され、リンは小さく頷くと規制線の中に入っていった。


林の奥まで歩くと不意に開けた場所に出た。すると何やらむせ返るような血の匂いがして、思わずリンは口を押えた。


「リン、大丈夫ですか?」


その様子を見てアンリが心配そうに声を掛けた。


実は死体を見るのは実は初めてだった。ジャン達の事件の時は遺体が見つからなかったし、ライカの時は既に遺体は回収された後だった。


リンは小さく頷いた。


「大丈夫……。」


「でも、リン。顔が真っ青だよ。」


「兄さんまで。大丈夫。」


「いえ、ここは私が見ましょう。リン達はここで待っててください。」


アンリが遺体へと近づくのをリンは遠巻きに見ていた。正直、死体をまともに見る勇気はなかった。ただ、遠目からでも遺体の惨状が見て取れた。


「……致命傷なのは背中の傷ですね。かなり深い。たぶん逃げようと思って後ろを向いたときに負わされたんでしょう。おや……。」


「何?」


「手首に拘束された跡がありますね。生きているときに縛られたのでしょうか……。」


ふと、リンが遺体の顔を見てあることに気づいた。


「あれ……この人。」


「どうしたの、リン。」


「この人たち、確か最初に私とアンリが自衛団に拘束されたとき、噂話をしていたおばさん達だわ。」


見覚えのある顔に、リンは記憶を手繰り寄せて答えた。


ひそひそと自分を犯人扱いをして文句を言っていた主婦達だった。確かあの時はカティスが珍しく怒っていたので覚えている。


「なぜこの二人だったのかしら。……そうだわ!!基盤石!」


「それならあっちにあったよ。前回までと同様だった。」


サイソルフィンが指さした草むらに基盤石があった。見れば確かに血に染まった石の中央の宝玉が割れている。


「基盤石の傍に遺体があることって何か意味があるのかしら……。」


「それでしたらたぶん基盤石の解除が目的なのだと思いますよ。」


「解除?」


「基盤石によって対イシューの結界が張られているわけですが、その解除方法としては人間の血が必要なんです。」


だから基盤石の中央に埋められた宝珠には血がつけられているのか……。


「それって常識的な知識なの?」


「いえ。私は聖騎士だから知っています。村ですと……そうですね。教会関係者くらいしか分からないでしょうね。」


「教会関係者か……。」


ここにきてまた出てくるキーワード。教会関係者とするならば、やはりアロイスがその該当者になってしまう。


「でも、目的がやっぱり分からない。アロイスが犯人だったにしろ、他の人間が犯人だったにしろ、村にイシューを引き込もうという理由が見つけられないわ。」


「この惨殺ぶりから察するに、強い殺意を感じます。なにか恨みを持った人物の犯行……というのはないのでしょうか?」


「じゃあ、この一連の事件の被害者には接点があるってこと?」


「そうかもしれませんね……」


「接点か……。」


始めはジャンとタング。次はライカ。そして名も知らぬ主婦二人。……どれも共通項は見つけられなかった。


「……リンはこのおばさん達のこと知っているんだよね?」


「知っているっていうか見たことある、くらいだけど。兄さん、それがどうしたの?」


「これって、リンに関係しているんじゃないの?」


「私?」


サイソルフィンの意外な発言にリンは驚いた。まさか自分が原因?


「ねぇ……この一連の事件で共通があるかわ分からないけど、今度は私が囮になるわ。」


「どういうこと?」


サイソルフィンとアンリが同時に驚いた表情となった。


「一連の事件。村にイシューを引き込むためかは定かではないけど、基盤石を破壊することが狙いだと思うの。だったら次の目標になりそうな基盤石を見つけて、先回りして犯人をおびき寄せるってのはどうかしら?」


「駄目だよ。危険すぎる。」


「そうですね、サイの意見に賛成です。」


「でも、何もしなくても私が狙われる確率が高いわ。だから、準備を整えてみんなで迎え撃つ方がリスクは低いと思うの。」


しばし神妙な顔で考え込むサイソルフィンとアンリ。そんな二人を説得するようにリンは提案した。


「だって兄さんもアンリもいるんだもの。自衛団の人たちだって協力してくれるだろうし、大丈夫よ。」


「……仕方ない、か。」


「兄さん?」


「こうと決めたら一人でも行くんだろう?それよりは一緒に行動した方が安全だよね。」


「そうですね。その方が守りやすいでしょう。」


「ふふふ、ありがとう!二人とも!!じゃあ、次に狙われる基盤石の絞り込みをしなくちゃ。」


「というと教会関係者をあたるってことですか?」


「正解!ヨーゼフおじ様のところに行ってみるわ。」



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