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果てなきは空の彼方  作者: 天野 みなも
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基盤石の在処④



軽口を言いながらリンとサイソルフィンが礼拝堂から出ようとした瞬間だった。カタリと音がして思わず振り返った先に、アロイスがいた。


「アロイス!?」


その様子を見て戸惑ったのはリン達だけではなく、アロイスもそうだったようだ。大きく目を見開き、動揺したように二、三歩後ずさった。


「リン……姫……。」


「どこにいたの?探していたのに。」


おかしい。さっきまで礼拝堂に人はいなかったはずなのに……。


「えっと、ちょっと椅子で寝てたんだ。気づかなくて、ごめんな。」


確かに礼拝堂には人が寝れるほどの長椅子が10数個ある。そこで寝ていたのだろうか。


「えーと、それで、リン姫は何で俺を探してたんだよ?」


「ライカの件のことで。」


「ライカの……事件のこと?」


「そう。さっき現場を見たんだけど、また基盤石が壊されていたの。アロイスはそれを知ってたの?」


「いや、し、知らないなぁ。」


「自衛団がね、教会の人間がこの結界の揺らぎに気づかないはずはないっていうの。それに、普通なら教会が自衛団に連絡するみたいなことを言っていたし……」


「でも、知らないんだってば!!」


アロイスがリンの言葉を遮って怒鳴った。いつも飄々としているアロイスが声を荒げるのは珍しい。


リンは思わず言葉を失った。


「……アロ……イス?」


するとアロイスは自分の言葉にハッとしたように口元を手で覆うと、目を背けながら小さく言った。


「……ごめん。でも……これだけは言っておく。リンはこの事件に関わらない方がいい……」


それだけを言うと、アロイスはリンが呼び止めるのも聞かず、礼拝堂から出て行ってしまった。


後に残されたリンとサイソルフィンはお互いの顔を見合わせた。


「アロイスのやつ、どうしたんだろう……。」


「そうね。なんかいつもと違う感じだったわね。」


アロイスといい、カティスといい。何か普段とは様子が違うようだった。


「次はどうする?」


「基盤石がどこに埋まっているか、知る方法はないかしら……?」


今回の事件は基盤石の破壊にあるように感じられたリンは、何とかして基盤石の在処を知りたかった。そうすれば、この何かわかりかけた点がつながるように考えていた。


「基盤石の場所……ねぇ……。いったん、家に帰って作戦会議をしない?」


「家に?」


「うん。基盤石は一部の人間しか知らないんだろ?セシルさんの様子じゃ、セシルさんも知らなそうだったし。」


「そうね。」


「君たち、何をしているんだ」


礼拝堂にバリトンボイスが響く。礼拝堂の入り口に恰幅の良い男性の姿があったが、逆光で誰だか判別できなかった。


はじめは張り詰めた緊張感のある声だったが、リン達の姿を認めると急に優しい声になった。


「なんだ。リンとサイか。」


「ヨーゼフおじ様……。」


逆光に目が慣れてきてよく見れば、そこにはアロイスの父でありエンロ村唯一の神官であるヨーゼフが立っていた。


「ライカのこと知っているだろ?あんな物騒な事件の後だ。早く帰って家にいなさい。」


「あ、おじ様、ちょうど良かった。ちょっと聞きたいことがあったの。」


「なんだい?」


「えっとね、基盤石のことなんですけど……。」


「あぁ、基盤石。まさか二か所も破壊されるとは思わなかった。」


ヨーゼフは渋い顔をして、豊かに蓄えた白髪交じりのあごひげを撫でた。


「基盤石が壊されて結界が揺らいだこと、なぜ自衛団に伝えなかったんですか?」


「さっきもセシル団長に聞かれたんだが……おかしいなぁ。自衛団への報告はアロイスに頼んだんだが……。」


「アロイスが?」


確かアロイスに聞いたとき、彼は揺らぎのことは知らない。そう言っていたはずだ。


この矛盾は一体何を意味するんだろうか……


「探偵ごっこかい?危険だから事件のことは大人に任せて、君たちは家に帰りなさい。」


アロイスに似て普段は飄々としたいい神官であったが、その口調は有無を言わさぬ神官らしい厳格さが感じられた。


「分かりました……。」


そう言ってリン達は礼拝堂を後にした。



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