第二の被害者③
夜も遅い時間。
生徒のいなくなった夜の学校はそれだけで不気味だ。だが、校舎の裏庭に人影が二つあった。
「何なの?こんな夜中に呼び出して。サイのことって何よ。」
目の前の少女は苛立ちを露にしていた。
それもそうだ。恋敵に呼び出されて楽しいわけもないだろう。
「私、あなたのこと、大嫌いなの。」
そう言うと、ライカは大きく目を見開き、とても驚いた表情をした。
たぶん以前の自分だったらそんなこと怖くて言えない。
でも今は違う。
人としての生は終わったかもしれないが、絶対的な力を手に入れ、自分は以前の自分と決別したのだ。
「……あ、そう。」
かなりムカつくであろう言葉を使ったが、ライカは一瞥しただけで、また気のない返事をした。
「もうサイに近づかないで。」
「はぁ?何を言っているの?確かにいつもサイに気にかけられているからって、いい気にならないでよ。」
そういって、ライカは胸倉をつかみ、睨みを聞かせる。
「やっぱり諦められない?」
「あんたにどうこう言われる筋合いはないんだけど。それとも両想いだからって勝ち誇っているわけ?」
「勝ち誇っているつもりはないわ。」
「じゃあ何なの?私もう帰りたいんだけど。」
「1つだけお願いがあるの。私たちのこと、そっとしておいて。みんなを巻き込まないで。」
「つまり?」
「リンとサイト、私と。ただずっとこういう関係で居たいの。」
「ふーん。完全に依存ね。」
「依存?」
「一人では何もできない孤独なお嬢様は心のよりどころにリンとサイを使っているってこと。」
「私は孤独じゃないわ。新しい力を手に入れたし、2人のことをただ大切に思っているだけ。」
「それが依存ってことでしょ?」
「違う!!」
思わず声を荒げてしまった。
ライカはそれを冷ややかに一瞥すると、言葉を続けた。
「サイのことならもういいの。どうせ脈もないし、ウチのクラスで私と付き合いたいって言ってくれる男はいっぱいいるのに、サイだけは私に興味を持ってくれないの。」
「だから告白して興味をそそろうとしたの?」
「そう。本当は好きじゃなかったし。クラスのみんなで賭けてたの。でも大損だわ。」
「じゃあ、本気の恋じゃなかったの?」
「まぁね。これで分かった?なら帰らせてよ。イシュー騒ぎが起こっているし。」
その言葉を聞いて無性に腹が立った。あの告白は賭けだったのだ。
もしサイがライカの交際を受け入れても、どうせ捨てられるだけだったのだ。
思わず、手に力が入る。
背中がうずく……。体が熱を帯び、呼吸が荒くなる。
そんな異変に気付いたライカが自分の顔を覗き込む。
「ちょっと……大丈夫なの?私あんたがここで倒れても何もできないからね。」
「……これは罰よ。」
「え?」
低くつぶやく。のどが渇く。
そして、ライカの首を両手でがっちりと掴んだ。
「ちょっと!?なんなの!?やめて!!く……苦しい」
「大丈夫。最初だけだから。」
―ダッテ、スグ死ンジャウンダカラー
ライカの抵抗も、今の自分にとっては赤子ほどの力には感じない。首をこのまま折るか。でもできたら後悔して死んでほしい。
ライカの首筋に歯を立てる。そして一気に切り裂いた。
血が勢いよく飛び散り、全身が紅に染まった。
その血は臭かった。でも飢えを満たすためにそれを屠った。
「やっぱり、美味しくないわ……。」
血に染まった両手を見ると同時にライカの遺体がばたりと地面に倒れた。
これで邪魔者はいなくなる。
ずっと一緒に居るための大切な仕事。今まではリンとアンリが自分を守ってくれた。だから今度は私が守る。
―ねぇ、どうして空は果てがないの?
―空の彼方には何があるのかな?
答えはまだ出ていない。
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