変化②
※ ※ ※ ※
基盤石の確認から帰る時だった。
レディ・マースの館の門の前に見知った顔がいた。
「あら?アロイス?」
何気なくいつものようにリンが声をかけると、アロイスはビクリと肩を震わせて息を飲むのが分かった。だが、リン達であることを認めるとホッとしたように息をついて向き直った。
「なんだ、リン姫かよ。驚かせるなよ。」
「何よ、なんか声かけちゃマズイことでもしてたの?」
「いや、そういうわけじゃないけどさ……。」
煮えきれない態度にリンは若干苛立ちを覚えて言い放った。
「じゃあ何しに来たのよ。レディ・マースの館は昨日の事件の現場よ。またイシューが出るかもしれないし、危険よ。」
「そういうリン姫こそ現場に来てんじゃん。」
「わ、私は、調査の一環よ!アロイスみたいに野次馬で来てるわけじゃないんだから。」
「俺だって野次馬で来てるわけないんだぜ」
「じゃあ何しにきたのよ?」
「あ、あのさ。昨日の時点ではリン姫は誰も見なかったんだよな?」
「そうね。ジャンとタングとここで肝試しして、その後イシューが現れて……それ以外は。後はアンリとサイと自衛団の人が助けに来てくれたくらいかしら。」
「そう、それならいいんだ……。」
明らかにホッとするアロイスに、リンは奇妙な違和感を覚えた。
「それより、なんで昨日の私がレディ・マースの館にいたことを知ってるの?」
その言葉を聞いてアロイスは驚愕の表情を浮かべた。
「何言ってるんだよ!もうこの話は村中に話題になってるんだよ。」
「そうなのね。」
小さな村で起こったことだ。さっきの主婦といい、もうリンがこの件に関与していることは知れ渡っているようだ。
「で、何か分かったのか?」
「え?」
「村にイシューを招いた犯人だよ。」
「まだ何も。」
「そう……か……。じゃ、俺はもう帰るから。」
「え?アロイス?……なんなんだろうね、アロイスのやつ。」
慌ただしく逃げるように帰るアロイスを見送って、まで黙っていたサイソルフィンが口を開いた。
「そうね、ちょっと様子がおかしかったわね。」
「まぁ、野次馬なのは今に始まったことじゃないけどね。」
「でもわざわざイシューが出た現場にくるかしら?」
「そう言われれば変だね。」
事実、現場には自衛団の団員が数名しかおらずその他の村人の姿は認められなかった。
「何か見た……か。」
「どうしたの、リン。」
「いえ、アロイスの言葉が気になって。アロイスは何かを確かめに来たのかしら。」
「何かって?例えば何を?」
「それは分からないけど……。」
「まさか、アロイスが犯人だとでも?確かにおちゃらけた部分もある奴だけど、アロイスが犯人の可能性より、アンリが犯人の方が有力だと僕は思うけどね。」
「アロイスが犯人……。でも可能性は無いとは言い切れないかもしれないわ。ま、私も本当には思ってはいないけど。」
「もう少し様子を見よう。まだ調査は始まったばかりだし。この後どうするの?」
「一旦家に帰ろうと思うの。」
そうリンが答えると同時にリンの腹の虫が鳴った。
ギューグルグルクという音は自衛団にも聞こえたようで、団員達はくすりと笑う者や呆れた顔をする者もいて、リンは顔を赤らめた。
「そういやお昼食べていないね。」
「うん……お腹、空いちゃって頭が回らないの。」
「じゃ、帰ろうか。」
サイソルフィンに促され、リン達は一旦家に帰ることにした。アンリの処罰が 行われるのは後一週間。時間は惜しいがまずはご飯はしっかり食べなくてはいざという時動けなければ困る。アンリもご飯食べれてるのだろうか。自衛団の団員に酷いことされてないだろうか。ふと心配になって、リンの足が止まった。
「どうしたの?」
急に止まったリンを訝しげにサイソルフィンが問いかける。
「ううん。なんでもない。早く帰ろう!」
焦る気持ちを抑え、リンは再び歩き出した。
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