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果てなきは空の彼方  作者: 天野 みなも
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変化①


「さて、何から始めるんだい?」


サイソルフィンがカティスを見やったのち、リンに向き直って言った。


「やっぱり、現場を見ておこうかなって思って。」


「イシューが出た現場だよ?危険じゃない?」


「まだ日も高いし。」


「はいはい。リンに何を言っても無駄だよね。2度も勝手に家を抜け出すような人だもんね。」


嫌味を言われ、ぐうの音もでないリンだったが、だからといってやめることもできず、リンは強がりを言った。


「嫌ならサイは来なくていいわよ。私は1人でも行くから。」


「だろうね。ま、乗りかかった船だからね。お供しますよ。」


確かに不安はあるが、次こそはイシューに怯んだりはしない。リンは自分に言い聞かせてポケットの中にある聖具に触れた。ひんやりとしたそれはだけど、なにか勇気を与えてくれるようにリンには感じられた。


村はずれのレディ・マースの館まで歩いていく。村はずれということもあり、徐々に木が生い茂り始める。昨日のこの場所であの様な惨劇があったとは思えない。若葉が萌え、春の木漏れ日がリンの頭上を照らしていた。


レディ・マースの館の前に着く。鉄格子は固く閉ざされている。それをそっと開けるとキィーという金属音がなって門が開いた。


昨晩の事を思い出す。ここでジャンとタングが命を落としたのだ。夜は分からなかったが、茂みや地面に血痕が付いていることに気づく。それを見てリンは顔をしかめた。


その時だった。


「おい、君たち何をしてる。ここは立ち入り禁止だぞ。」


自衛団の制服を着た少し小太りな男性がリン達に声をかけて来た。


リンはセシルから言われたことを簡単に説明すると、自衛団の男は困ったように肩をすくめて言った。


「まぁ、団長らしい考えだけど、子供だけでは中には入れられないな。」


「死体は見つかったんですか?」


「血を辿って行ったけど、森の中に引き込まれたみたいだ。」


「ちなみに基盤石の設置場所は私はしらないのですが、大人の人ならみんな知ってるんですか?」


「基盤石は一般人には極秘。自衛団でもある階級クラスではないと分からないなぁ。俺も今回の事件で初めて見たものな。」


自衛団の団服には肩のラインが多いほど階級が高い。目の前の男性はラインが一つしか入ってないことを見ると、下っ端といったところだろうか。


「あとは、教会関係者なら基盤石の埋まっている場所もある程度分かるだろうな」


「それは結界が女神の力でできているからですか?」


「そうだな。基盤石は分からなくても結界の揺らぎや強度は訓練した使い手なら分かるかもしれないな。」


「基盤石を見たいんですが……。」


自衛団の男にリンは頼んでみた。男は少し考えて、再びため息交じりに言った。


「お前、リコの子供達だろう?リコには借りもあるし、少しだけだぞ。特別だからな。」


「ありがとうございます。」


「こっちだ。」


そういうと男はリン達を誘って、館の裏手に回った。


館の裏側は、朽ち果てた噴水が庭の真ん中にあった。敷き詰められたタイルは所々欠落ち、隙間から雑草が伸びている。それを横目で見ながら、そのまま裏庭を突き抜けてくと、立ち入り禁止を示すロープが張られていた。その前に自衛団が三名ばかり立っていた。そして、そのうちの一人がリン達に気づいて何かを言おうとしたが、小肥りの男がそれを制した。


「さぁ、これが基盤石だ。」


男はが指差す所には平たい石の中央に、聖具と同じような真っ赤な玉が付いていたが、聖具のような輝きはなかった。しかも、よく見ればその玉には大きな亀裂が走っていた


「これが……基盤石。聖具に似てるのね。」


「ここに傷がついてるだろう?俺たち自衛団は結界の揺らぎはこの基盤石が破壊された事にあると推察してる。」


「誰かが意図的に傷をつけた……か。それに……これは血?」


何か基盤石に液体がついている。触ってみたところ変色した血のようなものだった。


リンは誰にいうとも無しに、ポツリ呟いた。ふと足元を見てみる。基盤石のあたりには不思議な跡が残っていた。というのも、棒でつついたような跡がかなりの数開いていたのだ。


「何かしら?足跡……?」


「でも足跡は昨日の雨で消えてしまったからな。」


基盤石の周辺は館の裏庭の茂みにあった。その場所だけが茂みが開いていた。不思議な跡は裏庭から続いているようだった。


リンはその跡をしゃがみこんで見ていたが、ふいに立ち上がり辺りを見回してみた。


周りは雑木林と背の低い木の茂みだけで、こんなところに基盤石があるとは想像にしていなかった。


見れば基盤石は土に埋められていたようで、掘り起こして結界の要となる赤い玉が壊された形となっている。


「犯人は基盤石の位置を正確に把握していた。どうしてなのかしら……。」


「さぁな。さっ、そろそろいいだろ?分隊長殿が来たら大目玉だ。」


「あ、もう一つ質問いですか?」


「なんだ?まだ結界は揺らいでますか?」


「そうだな。一応隊がこうして監視してるが、基盤石を失った今、村は危険な状態にある事には変わらないな。」


「基盤石の交換できないんですか?」


「今近くの村に予備がないか確認に言ってるが、たぶん今日は無理だろう。早くても明日設置できればなぁ……。最悪は王都まで買い付けに行かなくてはならないな。」


女神ラーダの守りが入っている基盤石は簡単に手に入るものではない神聖な代物だからだろう。


それにしても今日は守りが揺らいでいる中で過ごさなくてはならない不安をリンはぬぐえなかった。


「もういいだろう。行くぞ!」


「あっはい!!ありがとうございました!」


急かされるようにして、リンはもう一度基盤石を見ると、促されるようにこの場を後にした。




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