アンリ④
「その使い手の最高クラスの能力者の集団が私が所属する聖騎士団です」
「なるほど……。」
「この制服と左手に装着しているこの玉こそが聖騎士の証です。」
見ればアンリは純白の生地に蒼のラインの入った制服に身を包んでいる。そして左手には血の色に似た赤い宝玉のついた装飾を身に着けている。
これらが聖騎士の証。なぜかそれを纏うアンリがひどく神聖な存在のようにリンには感じた。
「この宝玉を人は聖具と呼びます。別名をラーダの羽とも言いますね。」
「これは何?日の光の加減で同じ赤色でもなんか違う色にも見えるのね?」
「これは聖騎士だけが持つことを許された武器です。女神ラーダの翼から零れ落ちた羽が姿を変えたとされます。」
「これが武器なの?!」
「はい。」
「どうやって戦うの?こんな石にそんな力があるの?」
「ふふふ。そうですね。まぁ、百聞は一見にしかずですが、まだお見せできません。」
「えぇ?今見せてくれないの?」
「学校に荷物を忘れているでしょう?まずは学校に戻らなくては。」
「あっ!そうね……。」
気づくとずいぶん長い時間アンリと話し込んでしまったことに気づく。サイやカティスが待っているだろう。
一つのことに集中してしまうと周りが見えなくなるのは自分の長所でもあり、短所であることを知っているが、今回もやらかしてしまった。
とはいうものの、アンリが学校にきてこのような騒ぎになるのはそれはそれで困る。
「アンリ、あのね、もう学校には来ないで。」
「どうしてですか?」
「だって、恥ずかしいもの。みんなから色々追及されるだろうし。……とにかく困るの!」
「そういうものですか?」
「そういうものなの!!」
強く放ったリンの言葉に、まるで捨てられた子犬のようなしょんぼりとしたアンリを見て、リンははぁとため息をついた。
「その聖騎士の制服も目立つのよね……。」
「やはり目立ちますか?一応任務なのでこの制服を着るのが規律なんですが……。」
「任務って母さんのことでしょ?普段は脱いでいてもいいんじゃない?」
「残念ながら制服しか持ってきてないんです。」
代わりになる着替えがあればいいのだが……と、考えを巡らせていたとき、ある提案を思いついた。
「あ、父さんの服ならいいんじゃない?」
「マーレイの……ですか?」
アンリの言葉から父の名を聞いてリンは驚いた。
「父を知っているの?」
「はい。彼とも旧知の仲ですね。」
父は40歳を超えているし、いったいいつからの知り合いなのだろうか……。
そもそもアンリ自体年齢不詳だ。
でも、昨夜の母への接し方といい、今の父へのもの言いようを聞いていると、立場は対等であるかのような様子だ。
「……ねぇアンリ、アンリっていくつなの?」
「歳ですか?……そうですねぇ、それは秘密で」
「またぁ?」
さっきは聖騎士であることをあっさり認めてくれたのに、今度はまた秘密にされてしまった。
がっくりと肩を落とすリンにアンリは少しかがんで目線をリンの高さに合わせると悪戯っこのように笑った。
「多少は秘密があったほうが、リンは私に興味を持ってくれるでしょう?」
アメジストの瞳が熱を帯びる。それを見たリンは思わずどきりとしてしまった。
それを隠すように飛びのいてリンは言った。
「べべべべべつに!!そそそそんな手にはのらないんだからね!!」
「それは残念です。」
明らかに勝ち誇った様子のアンリを見て、リンはなんだか負けたような気がした。
「ま、それより早く準備しなくちゃ。アンリも一緒に来て!」
リンはアンリを引っ張るように家へ歩き出した。
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